阿修羅!限界を超える潜在能力解放!?
黄風魔王の裏切りで倒れる阿修羅。
その黄風魔王も東華帝君の手に倒される。
その時、再び戦士は立った。
僕は阿修羅。
僕は黄風魔王の裏切りに毒手を受けて倒れた。
全身の麻痺に、呼吸が苦しい。
身体が焼けるように熱く、視界がぼやける。
これは正しく猛毒による症状。
黄風魔王、君は僕を裏切ったのか?
かつて生死をかけて戦った好敵手。
多少なりとも、心を許してしまっていた。
(このままでは法子が)
気力が働かない。
全ての神経が遮断されているようだ。
このまま意識が消えたら、法子が!
その時、僕を裏切った黄風魔王が東華帝君の剣に敗れ、血溜まりの中に倒れる。
が、その時僕は気付いた。
「!!」
僕は立ち上がっていたのだ。
しかも身体が驚くほど軽く、受けた痛みを感じないでいた。
その姿を見た黄風魔王は笑みを見せて、静かに呟く。
「劇薬は猛毒から霊薬に転じる。一か八かだったが、阿修羅、君は乗り越えたようだな」
そう。黄風魔王が打ち込んだ猛毒は僕の全神経を強制的に刺激させ、強引に全てのチャクラを開かせたのだ。
一度尽きかけた力が丹田で新たに貯蔵されて溢れんばかりに湧き上がる。
「その力は無尽蔵ではないぞ。無理矢理僕の毒で開いたチャクラは肉体を蝕む。もって数分。それまでにあの敵を討て!」
その意図を僕は気付いていた。
恐いくらいに溢れる力は限界を知らずに尽きるまで吐き出してしまいかねない。
それは諸刃の剣。
しかし、法子を守れるなら僕はこの力を有り難く使わせて貰うぞ。
「ウォおおおおおお!」
僕の雄叫びが戦場に響き渡った。
「フフフッ。最後の悪足掻きか。しかし俺との力の差は、ヌッ!?」
東華帝君が言い終える前に間合いに入った僕は手刀を振り下ろしていた。
剣で受けた東華帝君にのしかかる重圧に足下の地が陥没し、更に重圧がのしかかる。
「馬鹿な、何だこの力は?この俺に匹敵するほどの覇気は!」
「法子に手を出す者は僕が許さない」
「クッ、生意気な!」
鬼気迫る僕の力に、東華帝君は本気を出して振り払うと、その剣に血蒸気を籠める。
「もう容赦はせぬ。この俺を多少なりとも揺るがせた事は称賛する。その褒美に俺の剣で一刀両断にしてくれよう」
振り下ろした剣が僕の頭上に迫る。
「!!」
だが、その剣は僕の眼前に止まった。
僕は両掌を合わせて挟むように剣を止めたのだ。
真剣白刃取り。
「馬鹿な。この俺の剣を止めただと?否、カミシニの剣を素手で止めるなど有り得ぬ」
それは僕の瞳が金色に光り輝き、魔眼が発動していた。
「そ、それは魔眼か?度々、お前達から発気するソレは古より噂されていた金色に光り輝く伝説の魔眼。カミシニの血をも受け付けぬ能力、救世の力か。忌々しい」
東華帝君は剣を手放すと、片手を挙げて血溜まりを作り出し、その中より新たな剣を生み出す。
「先程の剣とは別格の俺の血を凝縮させた剣だ。今度こそお前を斬る」
その構えは剣士として、手加減のない本気。
東華帝君は僕を好敵手として見ていた。
「血呪秘剣・金丹火候青龍剣法」
繰り出された剣から無数の血龍が放たれ、僕に向かって迫る。
「無神速」
僕の神速の動きは透過する。
その一瞬、時が止まったかに思えた。
僕を擦り抜けていく攻撃。
今の僕には誰も触れられない。
「降魔の虚面」
僕の動きが変わる。
ただ目の前の敵を倒すための刃の如く。
「クッ!」
僕は東華帝君に接近し、その掌を向けていた。
「漆黒金獄焔掌」
「ぐぁっうう!」
胸から焼ける炎が東華帝君を襲う。
焼き爛れる身体を再生しようにも、絡みつく炎が許さなかった。
同時に僕の透過が解けて、脱力しながら膝をついた。
かなり限界ギリギリだった。
「東華帝君!そのまま消滅せよ」
無慈悲で冷淡な僕の言葉。
「ヌゥオオォォォ!させるかぁ!」
東華帝君は剣を己に向けて、自らの首を斬り落とす。
燃え盛る炎に消える身体から解き放たれた頭は、転がりながら血を撒き散らした。
そして浮かび上がる首から流れる血が新たな肉体を作り出し、復活したのだ。
まさに不老不死の化け物。
しかし東華帝君もまた驚愕していた。
この僕の力が余りにも異形だったから。
「まさか、お前は?そ、そうか」
すると東華帝君は僕の姿に別の何かの存在を感じ取っていた。
それは黄風魔王も同じく驚異的に跳ね上がった僕の力に疑問を抱く。
(僕の毒を転換したからと言って、あの力の跳ね上がりは異常だ。僕の毒は阿修羅の肉体を刺激して活発させただけでなく、その潜在能力を開かせ阿修羅の中に眠っていた力を呼び起こしたと言うのか?これはとんだ誤算だ。後に相手する時に手が焼けるよ。ふふっ)
東華帝君は、僕の中に感じる力を指さして言った。
「お前の中で渦巻く力は正しく俺と同じ始祖神。しかもかなり強大な力を持つほどの」
始祖神が僕の中に眠っている?
それは、心当たりがあった。
蛇神族との戦いの最中で、太古の聖戦で感じた始祖神が僕に力を貸してくれた事を思い出す。
確か、その名は・・・
「アフラ・マズダ」
その力が未だ僕の中に眠っていたのか?
僕の魂が溢れ出すように解放されると、全身が金色に光り輝いていた。
「こ、コレは?」
その力に東華帝君は怯みながら答える。
「まさか、聖天の力を、お前が!?お前は一体、何者なのだぁ!」
その問いに、僕は、
「僕は法子を守る闘神・阿修羅」
そして手刀を天に翳して振り下ろした。
閃光の刃が東華帝君を斬り裂く。
受け止めた剣をも斬り裂き、頭上の冠を切断して一刀両断にした。
「俺は死なぬぞぉおおおお!」
東華帝君は懐から何かを抜くと、その掌から凄まじい力が僕の閃光の刃を打ち消していた。
「くっ、はははは!やはり奥の手は残して置くものだなぁ!」
東華帝君が取り出したモノは、その手に握られた眼球だった。
そしてそれは、玉面乙女の左目より抜き取られた「忌眼」であった。
「この世界を創り出し消滅させる鍵。この忌眼こそ、この俺が持ちしに相応しい力よ」
東華帝君は思い出したかのように、別の誰かに合図をした。
「忘れる所だった。用意は済んだか?」
東華帝君は指を鳴らすと、頭上に空間が歪んで何者かが飛び出して来た。
「抜かりはないよ。東華帝君様」
それは唯一の生き残りの八仙だった。
そのハ仙は少年の姿で、藍 采和。
仲間を呼んだのか?
関係ない。二人共倒すまでだ。
僕が飛び出そうとした時、
藍 采和は笑みを見せて叫ぶ。
「良いのかい?僕達を攻撃したら殺しちゃうよ。彼らをね」
「何!?」
藍 采和は風呂敷を開くと、その中から丸太に張り付けにされた二人の姿があった。
それは、沙悟浄と姜子牙の姿だった。
二人は隠れ家で待機していたのだが、襲われたのか?
二人は額から血を流して、動かなかった。
微かに息と、胸の鼓動が聞き取れた。
生きてはいるが、眠らされているのか。
「俺が手にしているのは左目の忌眼。そして藍 采和に取りに行かせたのが、その男の右目にあるもう一つの忌眼よ」
まさか姜子牙の忌眼をも手中に収めたというのか?
「お前の存在は予想外ではあったが、この両方の忌眼を手に入れた俺こそ、この世の全てを思いがままに出来るのだ」
そして姜子牙に近づくと、その右目に向けて指先を近づけさせる。
「させはしない!」
僕が東華帝君に向かって飛び出して手刀を突き出すと、地面を数度に足踏みさせた藍 采和の姿が消えて僕の前に飛び出したのだ。
「なっ!?」
僕の手刀は藍 采和の身体を貫いていた。
抜こうとするが、藍 采和はしがみつくようにして僕の腕を掴んで離れずにいた。
「離れろ!」
「邪魔はさせないよ。僕の最期のお役目は東華帝君様が世界を掴むまでの時間稼ぎだからね」
藍 采和の身体から血飛沫が全身を覆うと、徐々に膨れ上がっていく。
僕の身体ごと自爆するつもりか?
そして東華帝君の手が目覚めぬ姜子牙の瞼に触れ、押し込んでいく。
「永年思い浮かべた俺の計画が成就する!」
終わらせてたまるか。
僕は諦めない。
僕の戦いは終わらない。
次回予告
捕らわれた沙悟浄と姜子牙。
二人に何が起きていたのか?




