玉面の転機!?運命の邂逅!
玉面は全てを失った。
失った彼女に残るは、生きるための試練だった。
私は、妾は玉面。
あの日、唯一の支えだったサクヤが私の目の前で失った。
私は気が狂ったかのように泣き叫び、絶叫しながら気を失った。
そして目を覚めした時、私は、
「ヒヒヒヒ、フフフ、アハハハ」
私はもう何もかも失った。
痛みや恐怖、苦しみから解き放たれ、同時に支えすら失ったもぬけの殻。
私は立ち上がり、ふらふら歩きながら涙跡を拭き取ると、その瞳が妖しく光る。
「もう、何も、私を縛るものは何もないわ。私は自由を手に入れたのよ。私は、今、産まれたのよ」
そして、この地を離れた。
地上界は今、妖怪達が世界を蹂躙し、神族すら見放す無法地帯となっていた。
「力が欲しい」
私は生き抜くために、何でもした。
もともと潜在能力は並外れていた。
妖怪盗賊が私を手に入れようと近付き、売り払おうとされた事もあったが、
私は全身から水を噴き出させて盗賊達の顔を覆い、窒息させた。
もう二度と誰にも縛られてたまるか!
私は誰も従わせられない!
それでも自分より強い者には、自分の女を使い取り入られ、油断したところを始末した。
やがて私の名は広まっていく。
水妖の残虐魔王。
玉面魔王と・・・
私が女の魔王だと知り、力だけでなく絶世の美女へと成長していた事で幾多の力のある魔王が私を手に入れようと近付いた。
「妾には不釣り合いな下衆」
魔王であれど、妾を縛れる者はいない。
妾は女軍を率いていた。
私に従事する手下共は、私が作り出した。
誰も信じられない、疑念を抱く者共を身近には置けない。
私は牢獄で監禁されていた時に、泥臭く異臭に満ちた私に群がる虫達が寄って来る事に、唯一の救いを抱いていたときがあった。
こんな私に近付く虫けら。
ならばと、私は自らの妖気を分け与え、昆虫に意思と、人型の姿を与えてやったのだ。
私、妾の運命が変わって行く。
その後、戦乱の中で妾は四大魔王と呼ばれるようになっていた。
地上界で君臨した当時の大魔王である金剛魔王を中心に、四元素を支配する最強の魔王。
炎の炎獄魔王、風の黄風魔王、雷の雷獣魔王、そして水の玉面魔王として、地上界に君臨した。
これが千年前の出来事。
それから力を付けた魔王が新たに名を挙げ十大魔王として地上支配をし、その下に魔王の称号を与えられた四十八魔王が現れた。増える魔王は、この数を取り決めとした。
それでも君臨する妾の地位は安泰。
魔王である事で、天界から狙われる事もない。
好き放題、自由を手に入れた。
それでも、毎晩妾は地獄の体験を夢に見ては、寝られずにいた。
そんな私に十大魔王の蛟魔王が現れた。
(この龍神の女)
直ぐに気付いた。
蛟魔王にサクヤの姿が被って見えた。
特に姿が似てはいないが、醸し出すオーラが血縁だと気づいた。
「お前、サクヤを知っておるのか?」
「お前、サクヤ姉さんを知っているのか?」
「妾が先に聞いておる。言うのじゃ!」
「サクヤは私の姉だよ!」
「何と!」
そういえばサクヤから何度か耳にした。
サクヤには実の妹がいるのだと。
蛟魔王は十大魔王の六番の称号であった事に不服で、その上の称号を奪いに妾と勝負をけしかけて来たが、この妾とサクヤの関係を知り、不可侵条約を結んだ。
聞けば蛟魔王もまた龍神族から追われる身であったため、同じ境遇に惹かれた事もある。
それから月日が流れ、時代が動く。
時は新たな戦乱。
頂点の魔王生活安泰の地位の妾を脅かす事件。
それが美猴王が地上界統一のために、数々の魔王を倒して天下を取りに出たのだ。
「怨めしい」
そのような身の程知らずの妾は始末してしまえば良い。
しかし手が出せずにいた。
美猴王には義兄弟として蛟魔王が軍師として仲間となり、更にその義兄弟の中には?
「えっ?嘘?」
そこに、あの方がいた。
地上界に捨てられた妾を助けた恩人。
額に二本角のある漆黒の魔王が!
「牛角魔王様!」
それが、この妾の運命を狂わせるなど知らずに舞い上がっていた。
次回予告
玉面の環境が更に変わっていく。
戦場に身を置く事は、彼女にとって・・・




