サクヤ龍王、その約束!
玉面乙女の過去。
しかし、記憶の中にサクヤ龍王の記憶も流れ込んでいた。
繋がる記憶の行方は?
私はサクヤ龍王
私は拐われた四人の中で、玉面に対して特別な感情を抱いていた。
それは私には可愛がっていた実の妹がいたから。
きっと妹と同い年に見える玉面を他人には思えなかったのでしょう。
玉面は最初、言葉すら知らなかった。
それどころか感情の表し方もままらない。
恐らく実験素体として育てられたので、言葉や感情は不必要だったのだろう。
今日まで、どれだけの苦痛を味わって来たのだろうか?
それどころか痛み以外の苦痛の感情しか知らない幼い少女。
私は地獄の実体実験に蝕まれ、疲弊する身体に鞭打ち、それでと玉面にコンタクトを送る。言葉を知らない玉面には私の得意な念話が良かった。
イメージを映像として彼女の脳に直接送り、次第に興味を抱いてくれた事で言葉を教えました。
玉面との交流は私に取っても生きる希望になりました。
必ず私は龍神界に生きて戻り、彼女を連れて行こうと約束した。
玉面は私に懐き、妹のように思えた。
彼女は純粋無垢で、私の記憶の映像に目を輝かせては、彼女もまた絶望の中で生きる希望を見つけてくれた。
「私、サクヤお姉さんと一緒に龍神界に行きたいです」
「必ず連れて行ってあげるわ」
それは誓いだった。
それから月日は流れ、私は玉面を連れて妲己と太公望と共に脱走を決行した。
しかし失敗に終わり、私達は互いから引き離されてしまったのです。
それから選別の時
私達、四人は神族の計画により、次元の狭間に封じられているカミシニの王より、その力の根源である忌眼を奪取する者を選定される事となりました。
選ばれたのは妲己と太公望。
私はカミシニとしての能力が及ばず、妲己は精神の不安定からと除外された。
必要なくなった私達は、その身の能力を特殊な術を用いてカミシニの能力を妲己と太公望へと注ぎ込まれた。選ばれなかった私と玉面は使い捨てだったのです。
力を失い、それでも私は生きていた。
そして私には別の任務が与えられる事になる。
それは私にとって死ぬよりも酷い仕打ち。
私は囚われていた全ての記憶を消され、龍神界へと返されたのです。
記憶を失い、意味も分からずに私は竜宮城へと帰還した時、龍神族は神隠しに合った私が無事に戻った事を涙し、国をあげて喜ばれた。
元の巫女として龍神界での生活が戻る。
私は囚われていた記憶は何も残ってはいなく、全てを忘れて、新たな生を送れば良い。
その後、私は龍神界で四海龍王として戦乱の中に身を投じる。
龍神界、地上界の魔王達との千年前の大戦。
私は同じ四海龍王の一角鯨龍王と共に戦い、強敵と対峙した。
相手は絶対零度の魔王。
その正体は凍結魔人。
私達が戦う敵もまた悲しみを背負い、戦っている事を知る。
私はこの戦争を終わらせる事を決意した。
単身、凍結魔人との一騎打ち。
その際、私は頭に傷を負った。
出血する私は、その血を見て目眩と全身を襲う激痛に襲われて、大量の記憶が流れ込む事に意識が持っていかれた。
「そ、そうか、私は!」
囚われていた全ての記憶が戻った。
そこで私が龍神界へ帰還された理由を知る。
私は神族に邪魔になり得る龍神族を滅ぼすために戻されたのです。
私の身体からはカミシニの血が疫病のように龍神界に蔓延し、内部から殲滅させるための猛毒。ここ数年、龍神族に謎の疫病が蔓延し、死者が増えていた。
全ては戦争からくる負の病かと思われていたが、
「この私が原因だったなんて」
私は愕然とした。
この猛毒は私が成長する事に強く濃く広がり、やがて龍神族を滅ぼす。
そんな事は許せなかった。
私の愛する龍神界を守らないと。
私は自害を試みた時、その血の呪縛は解放したのです。
私の皮膚を破り、私の血が私を絡めて自害を止める。
「信じられない!こ、この血は、意思を持っていると言うのですか?血が生に執着するなんて!」
私はカミシニの血の誘惑に意識を奪われる前に、暴走していた凍結魔人が視界に入った。
(もう、これしかありませんわ)
私は残る力で凍結魔人の中心へと飛び込むと、その身体は絶対零度の凍結の中で時を止めた。
「すみません。貴方の力をお借りします。貴方の能力で私を、終わらせて」
これで全てが終わる。
乙姫なら、後の龍神界をしっかり守っていけると信じているわ。
あの妹なら、大丈夫。
心残りは、愛した男の一角鯨龍王。
そして囚われた時に離れ離れになった玉面の安否。
彼女もまた、私と同じく神族の暗躍に使われているに違いない。
それでも叶うなら、
「生きてください」
私は玉面を龍神界に連れて行く約束を守れなかった事を、叶えられなかった事を涙すると、涙は凍結して視界は消えた。
その時、私は知らなかった。
この場に今、玉面がいた事に。
彼女は大量の涙を流しながら、叫ぶ。
「いゃぁあああああ!」
彼女の不幸はまだ終わらない。
次回予告
サクヤ龍王の最期、その場に居合わせていた。
玉面の運命が、歪んでいく。




