地獄絵図!?崩壊する仙女院国!
玉面乙女を止めるべく法子と九天玄女が力を合わす。
私は法子よ。
新たな神具・白澤の杖の能力で厄介な玉面乙女の再生能力を封じた私だったけれど、
「えっ?な、何?うぅう!」
私は引っ張られるように動く白鐸の杖に振り回されているの。
「何が起きてるの?暴れないでよ〜白鐸」
(法子殿、あの玉面乙女なるカミシニの力が完全に消去出来ていない様子。その杖を手離せば、また再生能力は元に戻ります)
「えっ〜?そうなのぉ〜??」
私動き回る杖の暴走にどうしょうもなく引きずられていた。
「うきゅう〜!!」
振り回され、顔面が柱に衝突しそうになり間一髪躱して、青褪める。
「九天玄女さん!早く何とかしてちょうだい!長くは保たないわ!私!」
そして玉面乙女を前に攻撃を繰り出していた九天玄女が頷き、答える。
「分かったわ。けれど簡単ではなさそう。玉面乙女、これは彼女の力?」
すると玉面乙女の瞳が銀色に光り輝くと、九天玄女さんの動きに合わせるように殴り返す。
「アハハハハ!」
その威圧感、鋭さは、まるで自分自身を相手にしているようだった。
「あの忌眼、私を模したか?この土壇場で私を相手にするとは思わなかった。まさに最強の敵ですわ」
九天玄女さんの繰り出す拳からの上段蹴り、その一撃一撃が必殺。
玉面乙女は笑みを見せて受け止めては、楽しそうに九天玄女さんに対して凝視している。
「強い強い強い強い!でも駄目!駄目駄目駄目駄目駄目駄目!皆、死んじゃえ」
玉面乙女の手に血塊が形となると、それは鞭となって振り回される。
「打神鞭・水仙」
まるで竜巻のように回転して九天玄女さんを覆うと、徐々に狭くなり、
「!!」
中に閉じ込めた九天玄女さんを喰らうように閉じていく。
(まさか、やられた!?)
けど案ずる必要はないわ。
そんなに簡単な相手だったら苦労しないわ。
本当に味方にしたら頼もしいわ。
鞭の竜巻を中からぶち破り、九天玄女さんが飛び出す。
「穿け。打神鞭・水孔」
無数の針の如く九天玄女さんに向かって貫く。
「百戦連覇!」
しかし本当に頼もしい。
九天玄女さんは身を空中で回転させると、その勢いで連打の拳を打ち込み、全ての攻撃を粉砕。
「お前には私を縛るものはない。ならば飛び道具も有りだな」
その手に込めた凝縮させた神気が渦を巻きながら、そして放たれる。
「!!」
その一撃は一閃!
玉面乙女の膝を割り、肩を砕いた。
崩れ落ちる玉面乙女に、九天玄女さんは着地して見下ろすと、
「殺しはしない。しかしまた暴れてもらっても困るのでな。西王母が帰還するまで眠っていて貰うぞ」
そしてその手を玉面乙女の顔を掴み、神気を注ぎ眠らせる。
「嫌だ!寝たらまた苦しみが始まる。もう嫌よ!嫌だ!嫌だ!嫌ァアア!」
「お前!」
九天玄女さんが苦悶の顔をすると、私はその理由を知る。
玉面乙女の顔を掴んだ九天玄女さんの右手首が消滅して、その根本から熔解していく。
「クッ!しくじったわ」
九天玄女さんは左手刀で自らの肘から切断すると、落下した腕が熔け、血溜まりとなって吸い込まれるように、玉面乙女に消えていく。
「美味しい。もっともっと食べたい」
そして忌眼から全身へと銀色の輝きが覆い、閃光が破裂するかのように広がる。
「もう〜駄目ぇええ!」
同時に私の白鐸の杖から止めていた再生能力が消えて玉面乙女へと戻ってしまったの。
「皆さん!この場から遠く離れて!全て失敗よ!巻き込まれるわ!」
九天玄女さんの言葉はサクヤ龍王の念波で皆に伝わり、各自飛び上がり脱出を試みる。
「この塔ってどうやって外に出るのよ」
すると瑤姫が、
「安心なさい。私はこの塔戦場の結界を全て管理しているわ。私達は全員塔から外に逃してあげる」
その瞬間、私達の姿が消えて、次には塔戦場の外へと飛び出していたの。
「えっ?きゃああ!」
落下しそうな私は手の甲より羽衣を伸ばすように出現させて引っ張ると、身体に羽織る。
「後は!」
羽衣を伸ばした先に剛力魔王さんがいて、その端を握り落下から助け出したの。
他の皆は空中浮遊が出来るようね?
安心したけれど、
「も〜う!外に出るなら、しかも空中に投げ出すなら先に言ってよ!」
「あの場に取り残されるより良いと思うわ」
瑤姫は掌を輝かせると、その先に羅針盤が現れて操作する。
「あの塔戦場に玉面乙女をかくまった理由はお前たちのような部外者の敵から守る結界要塞でもあり、もう一つは万が一玉面乙女が暴走した際に閉じ込めておくためなのよ」
あの塔は幾つもの世界を空間ごと押し込め、瑤姫が持っている羅針盤を使用する以外、外に出るのは不可能だと言うの。
「もしかしたら私達も入ったら最期だったかもしれないと思うと、ゾッとするわ」
そんな中で、とりあえず安堵する。
「玉面、お願いだから鎮まって。そしたら私が必ず外に出してあげるから」
サクヤ龍王は、まるで本当の姉のようだった。
同じ忌眼体蝕者として選ばれ、そして地獄の日々を送った事の絆。
「姉さん・・・」
それを少し寂しそうに見つめる実妹の蛟魔王さんに少し同情する。
「なっ!何なのよ!そんな有り得ないわ!」
私達の安堵をぶち壊したのは羅針盤を操作していた瑤姫。
「塔の中で玉面乙女の血が暴走しながら流れ込み、今にも溢れんばかりに外に出ようとしているわ!まるで獲物を探し回るように」
九天玄女さんは、片腕を止血しながら何事かと問う。
「どういう事です?」
「塔戦場の中の異空間を広げて増殖する玉面乙女の血を逃がしていたのに。カミシニの能力が異空間の結解を無力化しつつあるのよ」
「つまり、どうなるの?」
「とんでもない事が起きるかも。あの塔戦場が崩壊すれば、この仙女院国も覆い尽くして滅びかねない」
「まさか!」
塔戦場の結解の容量オーバーなの?
玉面乙女から溢れ出す血は徐々に塔戦場を埋め尽くしていく。
その時、私達は全身に鳥肌が立つ。
それは塔戦場から感じる殺気。
そして視界から聳え立つ塔戦場が歪み出して亀裂が入ると、その一端から流れ出したのは赤い液体。玉面乙女のカミシニの血が噴き出す。
「駄目よ!外界には何も知らない民が多くいるのよ!もしあの血に触れれば」
「地獄絵図だ!」
私達は同時に飛び出すと、塔戦場の亀裂から流れ落ちる血を受け止めるようにして浄化していく。
「止まりなさい!」
私の白鐸の杖で動きを止め、全員が残る力を振り絞り、掌から放出させた熱でカミシニの血を浄発させていく。
「いつまでも耐えられぬぞ」
が、その頑張りは次の一瞬で脆くも消えた。
塔戦場の頂上が轟音と共に崩壊し、大量の血が濁流のように広がって赤い血を降らせた。
「そんな・・・」
場所は仙女院国郊外。
この場には非戦闘の民が西王母の庇護の下で平和に暮らしていたの。
突如寒気がして見上げる仙女達は雨に気付く。
「珍しいわね。雨なんて何年ぶりかしら」
「貴女、それ!」
「えっ?」
全身が赤い血に染まり、次の瞬間その血を浴びた仙女院国に住まう仙女達が全身を熔解させて蒸発していく。それは本当の大量虐殺。
誰構わず生存者を許さない無差別な死。
地獄絵図と化していく仙女院国の中心には、見上げる程の巨大な何かが動き出す。
「アレは!」
それは血液状のスライムのような化け物が、足下から血液に触れて熔解していく天女達の血を吸収しながら、更に大きくなっていく。
「止められないわ。あんなの!」
それは絶望の始まりだった。
そんなこんな。
次回予告
玉面乙女の暴走。
忌眼の暴走が仙女院国を飲み込んでいく。




