法子と九天玄女決着!?これが私の底力??
法子と九天玄女の決着か?
格上の相手に法子の打つ手はあるのか?
九天玄女は目の前に立ち塞がる人間の娘を相手に、渾身の拳を打ち出していた。
この一撃は九天玄女の生涯で最大級の覇気を込められていただろう。
当たれば、否、掠れてさえしまえば、滅びを与える滅覇の拳。
「貴女はよく頑張ったわ。けれどこれで終わりです!」
九天玄女の勝利宣言。
私の顔に接近する拳があと僅かと迫った時、この戦いの決着がついた。
剛拳が皮膚に触れて、押し寄せる力が頬を押し寄せ、口腔内の歯が割れ、下顎が砕ける。
脳が揺れて意識が途切れる。
完全決着だった。
「あ、あれ?」
この決着は、この場にいる全員の予想を完全に裏切っていた。
「ふぅ〜」
私の前で膝を崩すように倒れる九天玄女を見下ろすのは、この私、三蔵法子よ!
か、勝った。勝てた。勝てたみたい。
信じられないわ〜
私自身。
けれど私にはこれしかなかった。
私が唯一、お父さんに勝てた唯一無二の合気の応用編。
相手が打ち込んで来ると同時に拳を繰り出し、大ダメージを与えることのできる逆転技。
敵の隙を狙って、タイミングを計らい更に相手の威力を上乗せする打ち込むため、通常よりも2~3倍の威力を倍返し出来る。
私流合気の必殺技。
けれど一か八かだったの。
失敗したら私は跡形もなかったかも。
だって成功率1割だし。
あんまり試したくなかったわ。
本当に紙一重。
そして勝てたのは、彼女の力が強すぎたからこその反動の他ないの。
私の華奢な拳で倒せられるはずないもん。
今、確かに顎割れたよね?
女の子の顔を殴ったのは初めてだった。
恐くて顔をマジマジ見れないわ。
昔、お父さんが言ってた。
「それは合気じゃないぞぉ〜!」って。
私が繰り出したのは、ボクシングで言うカウンターパンチ!
合気からのカウンターパンチは、効果的。
柔よく剛を制す。
合気のタイミングと、どんぴしゃ!
理論的には似たりよったりよね?
相手の力を使不意打ちで勝つ自爆技って意味で。
そんなこんなで、私の勝利よ。
「ウッ、ウゥゥ」
「えっ!?」
私は目を丸くして、その唸り声の先を見た。
信じられないわ。
九天玄女が顔を押さえながら、フラフラと立ち上がって来たの。
そして左手で顎を押さえ、右手を私に向けて伸ばしている。
「ウッ!ウッ!ウッツウ!」
声が出ないのね。
無理もないわ。
すると左手が光り輝くと、治癒の力で砕かれた顎や歯が再生していく。
「ぶはぁ〜!いや〜やられたわ!この私が、こんな一撃食らったの初めてだわ」
嘘?私のカウンターを受けて、立ち上がれるの?
しかも砕けた顎を瞬時再生って、整形外科もびっくりよ!
「そのまま目覚めないでいて欲しかったわ」
「私は頑丈だから」
「化け物ね、本当に嫌になるわ」
そんな強気に返す私にはもう勝機なんてない。
けれど鉄扇ちゃんを手に掛けた敵を許さない。
決して絶対に!
けどけどけど〜
さっきのカウンターパンチは、本当に意表を突く攻撃で、何度も命中出来るものじゃないの。
次は上手くいかないわ〜
すると九天玄女が私に言った。
「私が起き上がって怯んでいるの?鉄扇って娘の仇はどうしたのかしら?それとも、もう私に勝ったつもり?私を倒したいなら、貴女の全力をもっと見せてみなさい!けれど次は私が貴女を潰してしまうけどね」
「全力って、ずっと全力よ」
私に奥の手はもう残ってはいない。
破れかぶれの特攻しか。
「も〜う!良いわ!」
私は両手で両頬を叩いて気合を入れてみた。
「諦めたりはしない。私の帰りを待っている連中がいるし、それに帰る場所があるから」
私はもう一度拳に意識を集中する。
「覚悟出来たようね。行きますわ!」
九天玄女が闘気を高めて拳に集中させると、私に向かって踏み出した。その踏み込みは床を陥没させて、まるで閃光の大砲が放たれた轟音が響いた。
対して私は、手首から光輝く棒を出現させる。
「如意神向!」
向かって来る九天玄女の圧迫が、見えない壁に押し留められて動きが止まる。
「けったいな武器を使っても私の攻撃は止められないわよ」
私の如意神向は軌道を変える特殊能力武器。
にもかかわらず、九天玄女は力任せに私に迫って来ていた。
徐々に迫る九天玄女に、私は負けじと念を込めて接近を阻んだの。
「大丈夫・・・」
それは私自身への暗示みたいなもの。
諦めない、負けない、沈まない!
勝って、褒められ、チヤホヤされたい!
私は出来る娘、私は出来る娘。
私には勝ち誇る栄光の未来しかない!
まるで真言のように念じる。
「ウォおおおおお!」
私の雄叫びが響き渡ると、進行方向を変える壁が歪み九天玄女の接近を抑え込む。
「しゃらくさいですわ!」
しかし九天玄女は余裕の笑みを見せると、この状況を楽しむように拳に力を集中させ、抉るように軌道変更の壁を突く。
「!!」
その力任せの拳が中心から壁を押し込んだ時、亀裂が入るように広がっていく。
や、ヤバヤバ!
「えっ!?」
その時、私の持つ如意神向が力に耐えられず手元から砕け散ったの。
「わ、私の如意神向が壊れちゃった??」
けれど泣いている場合ではなかった。
九天玄女がもう目の前にまで迫っていたから。
けれど私は負けない。
こんなんじゃ沙悟浄にも顔向け出来ない。
鉄扇ちゃんの仇は私がとるのよ!!
腕を引いてから拳を突き出していたら間に合わない。
だったら、この伸ばしたままの腕を更に突き出して攻め込むまでよ。
「掌底」
その時、私の強い意志が瞳を輝かす。
「金色の魔眼」
それは広がる魔眼の輝き。
「魔眼で力を増幅させるつもりのようだけど手遅れよ。私の拳は今にも貴女を貫くから」
「今度は顎だけじゃ済まさないからね!」
互いの掌底と拳が交差したその時、
「!!」
それは同時に気づいた。
と、言うより何故今の今まで気づかなかったのか?その接近に。
私と九天玄女の中心に何者かがヒョイッと入り込み、そして私と九天玄女の腕を掴んで止めたの。その瞬間、全身が凍てつくように動かなくなる。
これは血の気が引いている感覚。
そして力が急激に吸い出されているみたい。
恐る恐る見た相手の正体は?
「にやぁ〜」
その者は玉面乙女だった。
私は咄嗟に腕を合気の抜きで強引に引き抜き、そしてその場から離れて運よく逃れる。
これ以上掴まれていたら間違いなく命が削られると感じたから。
同時に九天玄女は玉面乙女の乱入に、
「貴女は何を楽しんでいる所を邪魔しているの?失敬だと思い知りなさい!」
掴まれた状態で蹴りを玉面乙女の顔面に当てた。
「!!」
しかし蹴りは命中したけれど、ビクともしない。
その反応に九天玄女もまた危険を感じ取る。
「離さないなら力付くです。西王母様から託されているから手加減はするつもりですが」
九天玄女は私に打ち込むはずだった拳を玉面乙女の顔面を殴ると、その顔が弾けた。
エッ?もしかして殺したの?
しかし私は鳥肌が立つ。
砕けた玉面乙女の顔が血の塊となって揺れだし集まってくると、
その顔が元通りに再生したから。
「不死だから厄介ですけれど、また痛い目に合わせて意識を飛ばしてあげます」
九天玄女は続けて剛腕の連打を繰り出し、玉面乙女の身体は何度も何度も形を失い、それでも再生してくる。それは本当に不気味なほどの不死の化け物だった。
あの九天玄女の攻撃が全くダメージを与えられてないの。
ここに来てまた新展開??
そんなこんな。
次回予告
玉面乙女の乱入に法子だけでなく九天玄女も戦況が狂い出した。
新たな災害が起こる。




