因縁決着!?竜吉公主と金聖霊母!
竜吉公主は夫を手にかけた金聖霊母を相手に、その本気を見せる。
俱利伽羅の王と始祖神の末裔。
勝負の行方は?
私は竜吉公主
私は同じ時の結界に入り込んだ者の力を借りて、再びこの世界に舞い戻った。
私はそこで再び確信したのよ。
この世界に解き放たれ、誰にも存在を悟られずに潜む滅ぼすべき者の存在。
時が経ったこの世界は、まるで異世界のようであり、それでいて変わらず戦場と化した世界だった。私はこの世界で、過去に顔見知った金禅子の元で厄介になり、私が消えた後の世界を聞き学んだの。その間、蛇神の襲撃もあったけれど、
「カミシニが跋扈する世界。やはりこうなってしまったのね。全ては私の両親が招いた災厄なのね」
私は甦ったカミシニの中に、あの宿敵である金霊聖母の存在を感じた。
しかもカミシニの王たる資質を持つ倶利伽羅王として。
「たとえ倶利伽羅の王だとしても、必ず私の手でその魂を消し去ってやるわ!」
愛する洪錦の仇。
父上と母上の件もあるけれど、今、私が最初にやるべき事は・・・
「お前を始末してやるわー!」
飛び出した私が振り払う剣を上空へと飛び上がり、そして両手を広げて笑みを見せる。
「再び殺されたいなら、殺してあげるわ。この私には敵わない。お前と私では絶対に縮められない力の差があるのよ」
金霊聖母の指先から垂れる血が、膨れ上がって破裂すると、四方八方に広がって囲む無数の血剣が私を的にしていた。
「串刺しにおなりなさい!」
私は手にした剣に始祖の力を注ぐと、飛び出すように二匹の巨大な龍が竜巻を起こして、金霊聖母の血剣を消し去っていく。
「始祖の力は消滅の力。お前の穢らしい血など、塵と消し去るわ」
神族の力を無効化させるカミシニの血。
始祖の神たる力とて消耗は激しい。
「並のカミシニなら倒せようが、この私は倶利伽羅の王!始祖神の力を喰らうわ」
金霊聖母は掌を挙げて宙を一回転させると、大量の血が宙を浮かびながらブクブクと沸騰しつつ、血にまみれた赤子のような顔が口を開き、私の放った龍を噛み砕き消滅させた。
「見た?これが力の差よ!お前は見どころがあるわ。東華帝君様に頼み、その記憶を消し去った後、私のペットにしてあげるわ」
「何処までも憎らしい女!」
確かに始祖の血を持つ私でも、倶利伽羅の王として甦った金霊聖母を相手にする事は難しい。
難しいけれど、出来ないわけではない。
そう出来ないわけではないのよ。
「黒点・太陽手」
私は左手で右腕を掴み、体内エネルギーを一点に込めながら叫ぶ。
「ウォおおおおおおお!」
カミシニは神々の力を無効化させる呪われた力を持つ。
しかし神々の種族の中にはカミシニの能力を受け付けない者達がいる。
太陽神!
そう太陽神こそ、神々の光の原点であり、始祖神の元となった。
始祖の血を受け継ぐ私には、太陽神の光を生み出すことが可能なはず。
右腕が眩く発光し、更に激しく光熱を帯びながら光の塊となっていく。
今の私の右腕は、太陽と同等の力量を持つ。
その異変に勘づいた金霊聖母は両手を振るいながら血剣の雨を降らすが、私に触れる前に熔解しながら消滅していく。
「クソ女!跡形残さず消し去るわ!」
私の右腕から発するエネルギーに、金霊聖母は鳥肌が立ち、そして身動きが止まった。
「ふふふ。とんでもないわ。これがカミシニが始末すべき神の象徴。太陽の化身、始祖神!」
金霊聖母もまた己の呪われし倶利伽羅の血を凝縮しながら右手に込める。
「如何に凄まじい力を持っていようと、お前も私の血を受ければただでは済まないのよね。互いの力が相手を串刺しにすれば決着はつく。話は容易いのです。強い方が勝つ!」
互いの動きがゆっくりと接近し、そして同時にその姿が消えていた。
この場にいるものを達の中で何人がその動きを捉えられただろうか。
実際、目前の敵を相手にしているようだから、それはそれで不可能なのだけど。
同時に相手を討ちに出た一撃必殺の攻撃。
互いの姿が粒子の塊となって集まっていき、その動きを止めて原型を、存在が戻っていく。
「あ、あぁあ!」
気付くと、私の右腕は失っていた。
大量の血が根本から噴き出し、私は視界がぼやけながら变化が解けて膝をつく。
「お前はよくやったわ。この私をここまで追い詰めたたのですから。けれど竜吉公主よ、お前は私の手で二度死ぬのよ」
金霊聖母は膝をつく私を見下ろしながら口許に笑みを零した。
私は薄れる視界の中で、最後の力を振り絞り、金霊聖母に顔を向けて、
「お前がな!」
「えっ?」
金霊聖母は胸元に光が止まっている事に気付くと、同時に焦りを感じた。
「やりやがったなぁー!」
徐々に光は大きさを持ちながら膨らみ、そのエネルギーを中心に、金霊聖母の身体を熔かしていく。エネルギーは払う金霊聖母の手を熔かして消し去り、その胸元が蒸発しながら肉を爛れさせ、骨が露わになった。
「嘘よ、こ、この倶利伽羅の王たる私がこんな娘になんかぁ、あ、うごゃあぇあえああ!」
声にもならない悲鳴をあげ、金霊聖母は私の目の前で消滅したのよ。
「貴方仇は、取ったわ。後は私の家族の問題を解決するから、だから」
私もまた意識がなくなり、その場に倒れる。
「少しだけ、寝かせて」
この場の戦いの中で決着が一つ、ついた。
そして、この戦いの行方を見て感心していたのは九天玄女だった。
「見事ですわ。竜吉公主。貴女は本当に強くなったわ。先生、家庭教師として本当に誇らしく嬉しいわ」
その手には、倒された鉄扇が胸元を掴まれ、止めを刺されようとしていた。
全く微動だにせず、生死不明の鉄扇。
そして、その姿を見て顔を青くしていた女子が口を開いた。
「あ、あんたまさか、鉄扇ちゃんを?どうしたの?」
九天玄女はその問いをスルーしていた。
何故なら関心がなかったから。
この場に相応しくない人間の娘が何かほざいていても、それはただの雑音。
それより、その後方にいた蛟魔王を次の獲物にと興味を持っていたから。
「次は龍神族最強の女を相手に出来るなんて、今日は本当にフルコースだわ」
そして鉄扇を掴んだまま蛟魔王に向かって足を向けたその時、
「えっ?」
それは予想していなかった。
背後から肩を何者かに掴まれ、強い力で引っ張られると、目の前に強力な圧迫感を感じた。それが何なのか気づいた時には、
顔面に衝撃を受けた九天玄女が吹っ飛んでいた。
確かにこの場に存在する中で、九天玄女は間違いなく最強の中の最強といって間違いない。
間違いないのだが、唯一私でも測定出来ない存在がいた。
それは私が封印されていた時の結界に迷い込み、そして抜け出せた鍵。
測定とは潜在能力から基礎値。
未来予測の成長値。
それが見えない未知力。
あの魔族でも龍神族でも始祖神でもない。
たかが人間・・・
いや、本当に人間なのか?
何もかも分からない異端の存在。
噂されていた。
その彼女が、あの蛇神の覇王エデンを討ち果たした英雄なのだと。
「あんた私の友達傷つけて、シカトこいてるんじゃないわ!」
確か名前は・・・
三蔵法子。
次回予告
九天玄女を相手に法子が、キレた?




