正義くんの迷い?振り出しなる真実?
正義は美奈さんを救うために探し求める。
正義は美奈を救う事が出来るのだろうか?
正義くんは彰くんの言葉からもう彰くんは存在しないと見極め、アータルの姿となって戦う決意をしたの。
「僕はもう迷わない!君はもう、僕の知っている彰くんじゃない!」
いや、もう最初から分かってはいたの。
ここへ来る前に立ちよった彰くんの住んでいたアパートに行った時に、既に…
「何を言ってるんだ?正義?俺の何が不満なんだ?俺はお前達と一緒にいたいだけだって!」
「彰くんの声と記憶を使って惑わすのはもう止せ!無駄だ!お前は彰くんじゃない!」
「おいおい?」
理解出来ずに困った表情をしている彰くんに正義くんは問いかける。
「君はさっき言ったよね?僕達と一緒にいたいって?そしてその後何がしたいかって!」
彰くんはさっき答えたの。
「俺はお前と美奈といつまでも一緒にいたいだけだ。いつまでも一緒に…」
その後、
「我等が王のために人間種達を駆逐し、我等が同族の世界を造り上げるためにも!」
それはまさに彰くんとは別の意思の返答であったの。正義くんの中にもアータル神が宿っている。でもそれとは違う。もしアータル神が邪悪な意思を持った化け物だったなら、正義くんは迷わずに意に反して中のアータル神事自らの命を絶っていただろう。それは完全に別の人格であるから。けど、彰くんからは別の人格が見受けられない。確かに同じ声で、同じ記憶を持っていようが彰くんが絶対に言わない言葉を当たり前のように、自覚なく喋っているの。
「彰くんは化け物の王のために人間を駆逐するなんて言わない!彰くんは僕達を犠牲にしてまで一緒にいたいなんて言わない!彰くんは隆くんや横内さんの事を誰よりも大切にしていた。もし君が化け物になって力があったなら、二人が襲われた現場にいたはずなのに見過ごすなんて有り得ない!」
そして此処に来る彰くんの部屋には監視の僧侶達の死体の他に両親が殺されていたの。彰くんは友達思いであると同時に家族を、両親を大切にしていた。
「なのに君は自らの手でおじさんや、おばさんを殺したんだろ?何か弁明があるなら言ってみて!」
「それは…」
彰くんは不思議そうに答えたの。
「目の前に餌が無防備にうろちょろしていたら、喰うだろ?普通?」
「!!」
弁明して欲しかった。何か自分の考えが間違いであって、目の前の友人が本当に化け物の姿になっただけの友人であって欲しいと願っていた。それなら自分も友人と共に化け物になっても構わないと…
「やっぱり君はもう…」
涙が流れ落ちた。
「そうか…」
彰くんも顔を伏せて落ち込む…二人の間に完全に亀裂が入ったその時、彰くんは衝撃的な事を告げたの。
「やはりお前を先に喰らえば良かったなぁ…雌の方じゃなくて…」
「それは、どういう?」
その時、彰くんの姿が完全な化け物へと変わる!
「!!」
正義くんは青ざめたの。目の前の化け物は、あの日、逃げる事に精一杯で微かに視界に入っただけだけど、間違いなくホテルで自分の目の前に現れ、横内さんを襲った化け物だったから!
「お…お前が、横内さんを?横内さんを…襲った化け物だったのかぁー!!」
正義くんは荒々しく吠えると、斬りかかった!化け物は軽々と飛び上がって天井をぶち破り屋根上へと飛び出たの。
「正義くん!」
呼び止める美奈さんに、
「美奈!君はここから直ぐに離れて?あの化け物は僕がやらなきゃいけない!」
「必ず戻って来て…」
「うん」
その正義くんの姿はアータル神だけど、美奈さんは正義くんの姿がハッキリと見えていた。
美奈さんを残し正義くんは屋根上に飛び上がると、化け物は待ち構えていたの。
「先ずは神狩りだ!」
「お前は僕が倒す!それがジャスティスだぁー!」
アータル神と正義くんの魂が同調し強い力が混み上がる。
《てっきり憎しみと怒りに身を任せると思ったが…この人間の少年、私の魂と完全同調したのか?友の姿をした化け物をこのままに出来ない。友の無念、悲しみの思いが正義の魂となって私の力を引き上げている?うむ。やはり私が見込んだ少年だ!これがジャスティス!》
アータル神と同調した正義くんは化け物にジャスティスソード[神を斬る大剣]を構える。
正義くん自体は剣術なんかやった事も喧嘩すらした事もないけど、アータルと同調する事で身体が無意識に動くの。
「バカめ!人間も神も俺には敵わん!なにせ俺は神の天敵、神を喰らう蚩尤鬼人の一族なのだからな!」
「関係ない!私は[僕は]一切の魔を滅する正義の使者!大神アータル!我が剣の前に邪悪は存在出来ん!」
互いに消えると同時に火花散り、激しくぶつかり合う!神を殺す蚩尤鬼人に触れられれば力を失い、命が削られる。またアータルの剣もまた蚩尤鬼人を斬る事が可能な特別な剣。
屋根上を移動しながら幾度と衝突していた。
「己だけでなく相手の衝撃が二次被害を起こさないように外へと逃がしながら戦っているのか?」
二人の戦いを見ている者がいたの。陰陽師の姿をした髪の長い紳士…
安倍晴明師匠!
「ならば、戦う場を作ってやろう」
晴明師匠は印を結ぶと辺り一帯が歪み出して、世界が変わる?
「これは?場所が変わった?これも化け物の能力?」
《慌てるな!これは私の友人が力を貸してくれたに違いない。この結界の中では手加減なく遠慮する必要ないぞ!正義!》
「そうなの?だったら信じるよ!」
二人の意思が統一されジャスティスソードを鞘に納める?
「バカめ!戦いの最中に武器を仕舞うとは諦めたか!」
化け物が間近にまで迫り襲い掛かり、間合いに入った瞬間!
『ジャスティス抜刀!』
鞘から抜かれた居合いの一撃は化け物を両断し、更に天井の結界をも斬りさいたの。
「結界が足りなかったようだ…想像以上にシンクロしていたようだな」
その日、正義くんの長い悪夢は終わりを告げたの。
戻って来た正義くんは美奈さんと合流出来たの。それも総本山の僧侶方達が護衛してくれていたから。
「正義くん!」
「美奈!」
二人は抱き締めあうと安堵から経たりこむ。
「美奈が無事で…本当に良かった…」
「正義くんもだよ!」
その後、正義くんは元の生活へと戻る…事はなかったの。仮にも神様を魂に宿し、化け物を倒す力を得てしまった。そんな彼が普通の人間と同じ生活なんて出来ないから。
正義くんは晴明師匠の推薦で総本山へと出家する形となったの。親御さんも度重なる事件に巻き込まれて身も心も窶れていた正義くんを知っていたし、自分達ではもう何も出来ないのだと解っていたから。
と、いっても月に数度は家族の家に戻る事は許されていたのよ?監視付きで。
それから正義くんは晴明師匠の下で修行を重ねながらしゆう鬼人専門の討伐を任されるようになったの。
そして…
「ハッ!」
私は法子。
私はアータル神によって正義くんに起きた体験をテレパシーの映像で見せられていたの。恐らく一秒くらいの間に。
「わかったか?法子よ!あの人の記憶を持った化け物はもう人間で有らずと!」
私は頷いたの。
「だけど、何故?」
そう。私は記憶を見て知ったから、今の現状に理解出来なかったの。それは正義くんも同じだったの。
だって、私達の前に現れた蚩尤鬼人は、その記憶にあった美奈さん!
それに死んだはずの隆くんだったから?
「変よ?美奈さんは無事だったはずよね?それに隆くんはもう…」
「それは私にも解らない…けど、目の前に起きている事が真実なのだ!」
私達の前に美奈さんと隆くんが道を塞いでいた。しかも己の血を刀にした武器を持っている事から蚩尤鬼人で間違いない。
「正義!どうして俺達の敵になってるんだよ?おかしいだろ?ダチなのによ!」
隆くんが正義くんに訴える。その目は真剣だった。するとアータル神の姿が再び正義くんに変わる。
「隆くんなのか?いや、隆くんは僕の目の前で死んだはずだ!有り得ない!」
その時、背後から女性の声がしたの?
「私達は生き返ったのよ?正義!」
驚き振り返る正義くんは再び目の前に現れた相手に
「横内…さん?」
それはホテルの事件で正義くんの目の前で化け物[彰くんの姿をした]によって襲われた横内さんだったの。
「私達は化け物に一度襲われ、再び蘇ったのよ」
「そんな馬鹿な…」
正義くんは首を振る。
「惑わせるな!お前達は僕の友人の記憶を手に入れて惑わしているに過ぎない!無駄だ!お前達は化け物・蚩尤鬼人だ!」
「本当にそう思う?」
「!!」
その声は美奈さんだった。
「どうして美奈が?本当に美奈なのか?」
「私も…化け物に見える?私まで殺すつもりなの?その剣で?彰くんみたいに?」
「!!」
「私は美奈よ!確かに化け物の力は持っているわ?けど、私には私の自我がある。私の目的は正義くんを守りたいの!」
「何を言って?」
「総本山だか知らないけど、正義くんを騙している組織から私が解放させてあげるわ!」
美奈さんは説明する。
総本山って組織は正義くんの力が目当てで蚩尤鬼人を討伐させている。蚩尤鬼人は確かに化け物だけど、その中身は人間だった本人だと出張するの。
「私は人は食さないわ?私が人間だって証よ?それに心まで化け物になってしまったら、もう二度と正義くんに顔向け出来ないから」
「美奈!」
心?心があって記憶があるって、それでは本人と何が違うって言うの?
また謎が深まるの
そんなこんな
次回予告
美奈は本当に人間なのか?化け物なのか?
振り出しに戻り、正義くんの迷いは戦う手を止める。