未来を歪ませる者?生み出す者?
蛟魔王とサクヤ龍王の一騎打ち。
しかしサクヤ龍王の未来視がことごとく歪められる事態に?
それは部外者からの干渉だった。
私はサクヤ龍王。
カミシニとして新たな生物へと転生した女。
私は実の妹である蛟魔王の攻撃の中を潜り抜けながら、その違和感を探っていた。
しかし、
「動きが鈍っているぞ!」
蛟魔王は龍鞭から剣へと武器を変化させ斬りかかってくると、その攻撃を受け止めた私は苛立ちから叫んでしまった。
「何者ですかぁ!この私の領域に足を踏み込む者は!」
それは私の領域を何者かが妨げているから。
(この場には10人しかいないはず。乙姫の仕業でないとすると、他の誰かの仕業だと言うのですか?しかも信じられない事に、未来干渉力は私より上だと言うの?あり得ない。この龍神国最高位の巫女だった私よりも?)
その者は気配を消している?
蛟魔王の攻撃を躱しながら、その者を探るのは困難だった。
徐々に蛟魔王の攻撃が私の身体に触れ、傷を負わせた時、この状況を理解する。
(私の選ぶ未来が歪まされ閉じていくですって?何が起きていると言うの?)
私は私蛟魔王だけではなく、他の何者かとも相互に戦っている気分だった。
(こんな事は、未来が数秒事に変わるなんて事・・・)
その時、頭を過る。
「まさか!」
そして呟いた言葉は、
「私と同じ能力を持つ者が他にいると言うの?未来を選ぶ能力者が?」
巫女の未来視には法則がある。
現時間から離れた未来は不確かである事。
枝分かれした未来への通過点は選択出来るが、確定している未来は決して変えられない事。
私が視る選択の世界は確定地点までの不確かな道を渡り歩く世界。
その選んだ道が未来の現実になる。
(なのに!?)
その世界が徐々に狭まり、一つ一つ鏡が砕かれるように散りながら消えているの。
考えられる原因は一つしかないわ。
原因は自分と同じ未来視能力者がいる事。
その者と共有した時間軸の中で、私より先に未来道を選択して決定すれば、私の選ぼうとしている道が消えると言うこと。
(今の今まで、同じ能力を持つ者を相手にしていなかったため、気にもしていなかった。していなかった!)
この未来への介入は選ばれし者の持つ特殊能力中の最上位の力。
だからこそ、同じ能力を持つ者との邂逅は本来有り得ないと言われていた。
万が一にも邂逅し、その能力が交じりあえばどうなるのか?
互いが別の未来を選んだ場合はどうなるのか?
「まさか」
早い者勝ちだったなんて!!!!
能力は選んだ未来の椅子取りゲーム。
先に枝分かれした道を先に選んだ方が未来を手に入れるのだと。
私は蛟魔王と戦いながらも、その未来選択者の持つ気配を探る。
蛟魔王の力は間違いなく私より上でしょう。
本当に凄いわ。
しかし未来視の能力は、力の差を埋めていた。
いたのに、この邪魔者のせいで!
その時、蛟魔王の攻撃が左右から繰り出され、私は僅かに躱せる右方向の道を選ぼうとした時、突如その選択肢が消えた。
(誰よ!誰!誰!誰!誰!誰!誰!)
正体不明の敵に、私は焦りを感じる。
この場にいる者達は確かに曲者ばかりだと思うけれど、少なくとも私を追い詰めるだけの力量を持つ者が何人いて?
目の前に迫る蛟魔王の突き出した剣を紙一重で躱すと、その剣先が真逆に捻られて軌道が代わり私の鎧を傷付ける。
(ーーー!!)
その時、発想が一転した。
この場にいる強者ではないとしたら?
逆の発想。
力が読めないほど、これだけの強者達の中に紛れ込んだ異物がいたとしたら?
実力不足として除外されたの八仙の何仙姑?
違うわ。
もっと弱小の力がいたはず。
相手にならないと、見向きもしないで、息を吹きかければ倒せると高を括る程度の存在。
い、いたわ!
私は飛び上がり蛟魔王の攻撃から距離を取り、その者の姿を目に焼き付けた。
「えっ?」
その者は私に突然凝視され、何が起きたかわからない顔で驚いていた。
けれど驚くのは私の方。
(本当に彼女が?あのような些細な存在が?)
私の目にうつる女子は、か弱く見える娘。
人間。
もしこの手を振るえば、その形残さず塵と消えるほどの、この場には場違いな娘。
けれど、あの娘は力を使ってはいない?
(ま、まさか??信じられないわ)
私のように時を視ているわけでもなく、ただ信じているだけ。
自分が信じて疑わない蛟魔王(乙姫)が私に負けないと言う確信に似た思い。
それが私の視ている未来を歪ませ、そして自分の思う未来を決定させている。
(そんな馬鹿な)
もしこれが、もしこの能力を自由に使いこなせるようになったとしたら、それは・・・
「私が、この場で乙姫よりも一番先に討たねばならない相手は彼女だったようね!」
私は動きを止めた。
その直後、乙姫の突き出した剣が私を貫く。
「ぬっ!?」
しかし乙姫の剣は私の残像を斬り、消えると、私は標的を変えて斬りかかっていた。
「先ずは貴女を討ちます」
「えっ?」
その娘は突然の出来事に対応出来ずに、ただ無用心に私を見ていた。
(これで不安要素は消えるわ)
が、私が振り下ろした剣は軌道を変えて、更に見えない力によってねじ曲げられる。
(な、何ぃ!?)
咄嗟に私は飛び退き、その娘を直視して戸惑う。
そして思い出した。
私の未来視の能力。
その能力を与えられた意味。
この異次元の能力は、龍神族の巫女に与えられ、同時に役目も負う。
私はこの能力を与えられた日、始祖龍の声を聞いた。
『見つけよ。この能力は救世の人神を見定めるための物。決して私利私欲の能力でも、龍神族が栄えるための能力では非ず』
『この能力が通じぬ者こそ、未来・運命・結末を改変する力を持つ救世の力を持つ者ぞ』
『その者を見つけ、未来を託せ。閉ざされた未来を開く為に』
その言葉は、龍神の巫女である私には勅命であり、生きる意味。
生涯をかけし定め。
「無理です。今の私は死者!始祖龍の意思も、運命も関係ありません!私には・・・」
その時、私と一つとなった一角鯨龍王が問いかけてきた。
「世界を天秤にかけるのか?サクヤ」
「私が消えれば、あの玉面は誰が守ると言うの?あの地獄を共に味わった私が守らないで、誰が玉面を救えると言うの!」
一角鯨龍王は、その視線をあの娘に向けた。
「それが貴方の考えと?ならば私が見定めます。あの娘が世界を左右する者か、私の手で塵と消える器か」
私のカミシニの血が生き物のように動き出すと形を変えて剣へと変わる。
「この剣で首を落とします。痛みがないように一瞬で終わらせてあげますわ」
私は飛び上がると、その娘に向かって斬りかかっていた。
(何処に逃げても無駄です。私の未来視で躱した方に軌道を変える。右?左?それとも受け止めますか?)
けれど彼女は私が頭上から斬りかかる姿を見て、視たの!
「ナッ!?」
彼女の瞳は私からの攻撃に反応するかのように光を放ち、金色に光輝く。
「その瞳は!」
その魔眼は私の視る未来を歪めた。
(やはり、彼女が元凶だったのね!み、未来が定まらないなんて!)
彼女を斬った私の未来が歪みながら消えていく。
「その魔眼が私の未来視を上回ったとしても、貴女の華奢な身体で堪えられますか」
私は再び力を籠めると、血溜まりが全身を覆い、私は深紅の血龍となって娘に向かって彼女に襲い掛かった。
「今、この場で死ぬ運命を変えてみなさい!それが出来ずに未来を任せられません」
一瞬で飲み込み、彼女の姿は他愛もなく消える。
私の中で、彼女が熔けて消える。
予言の救世主?
やはり、存在しない希望が生み出した願望。
始祖龍の掲示の者でなかったか、そもそもそのような者は存在しないか。
「フフッ」
この娘を片付け、今度は乙姫との再戦。
無駄な寄り道だったわ。
「!!」
そう思った時、私の中で異変が起きた。
熱く、そして眩しい光が体内を焦がしたの。
そして感じる。
あの娘はまだ生きているのだと。
そして抗い、私の中から抜け出そうともがいているのだと。
「諦めなさい!」
その時、聞こえた。
「却下!諦めない!」
全身を焦がす熱い光が、私の変化を解いていく。
そして、感じるのは・・・
(始祖の力を感じる?まさか彼女は始祖の神の転生者だと言うの?)
しかし始祖の力とは別の力も感じる。
深い光と闇の中で広がる無の世界?
彼女から感じるのは、
「わ、わからない」
私を消滅させる力でもなく、それでいて抗えず。
何か温かい癒しに包まれるような感覚。
私が飲み込まれていく。
(ウッ、きゃああああ!)
私は視界を眩い閃光に奪われ、そして薄々と見える彼女の背後に宇宙が見えたの。
それは無限に見える可能性の未来。
それが彼女の背後で、
(未来が見える?限りなく無限の可能性?)
それは私が視ていた未来とは別の未来の世界。
まるで銀河のように見える未来が彼女の周りを浮遊し、彼女に触れたその時、
「何が起きていると言うのですか?彼女は一体何なのですか?」
その時、彼女の瞳が今時から緑色に変色して光り輝き私を飲み込んだ。
彼女は・・・何者?
次回予告
戦いは九天玄女を引き受けた鉄扇の戦いへと移る。
最強無比の九天玄女を相手に鉄扇は?




