まさかの共闘?迫る未来視の攻撃!?
鉄扇は単独で八仙の何仙姑との一騎討ちの最中だった。
その戦いはまだ序盤だった。
私は鉄扇
私と八仙の何仙姑との一騎討ち。
互いの死力を尽くし、力と力が交差する。
私の羅刹変化は身体能力をはねあげ、手にした両扇を叩きつける。
爆風と雷撃の破壊力が何仙姑の持つ大地の芭蕉扇と衝突し、互いに吹き飛ばされないように堪えた。
「つ、強い。けれど私は強化された。金聖霊母の術を堪えて、生き延びた。二度の敗北はない!私が八仙を引き継ぐのだから」
「そうかい。けれど私にも負けられない理由があるのよ。あの玉面乙女をこの手で討つまで、負けられない!」
「何ですって!!」
すると何仙姑が戦う手を止め、私に向かって突然提案してきたの。
「お前、どうやら私と目的は同じようだ。ならば手を組みましょうよ」
「何言ってるの?」
「お前の目的は玉面、この私も同じ。なら無駄な争いで力を削るより、目的果たすまでの間でも協力すれば話が早いと思わない?まぁ、私は直接玉面に恨みはないし、お前のサポートに徹する」
「で、弱ったところを二人纏めて討つつもり?」
「信じないなら仕方ないわ」
「信じられと思うの?」
すると何仙姑は私に向かって何かを放ると、私は警戒しながら手に取り、その物を指を開けながら見た。
「これは!」
「それでも信じない?」
それは羅針盤。
しかも玉面乙女に指針が向かっていた。
「この闘技場で闇雲に探す?それともソレを使って目的を果たす?」
「このまま持ち帰ってとんずらする選択は考えない?」
「少なくとも私に向かって真っ直ぐに戦って来たお前は、そうはしないだろうと思っている」
「あら、そう」
私は考え込むと、羅刹変化を解いて何仙姑に向かって返答したの。
「良いわ。あんたを信じてあげる」
休戦した私と何仙姑が戦意を消したその時、
突然私達の戦っていた砂漠が消えて、闘技場へと姿を変えた。
「どうやら私達が手を組んだ事で、別の対戦相手が転移されて来たようね」
そして別の空間から二人の人影が現れると、
「まさか!?」
私の手に乗せた羅針盤が強く揺れだしたの。
「フフフ。まさかあっちから現れなんて」
「しかも相手は二人、やはり私と手を組んで正解だったわけね」
「結果的にね」
そこに現れたのは、驚いた顔で突如現れた私達に警戒するサクヤ龍王と、玉面!
「この塔では二人一組になる事はそうない。戦いを求めない者には裏技的な手段だと思っていたけれど、まさかねぇ」
サクヤ龍王は私達二人を見ると、
「けれど八仙の何仙姑に、後は見知らぬ娘ね」
そして、笑顔で質問して来た。
「この場に来たって事は、私達の敵と思っても良いかしら?」
私は玉面乙女を指差し、
「貴女には何の恨みもないけれど、そこの玉面乙女の首を取りに来たって言ったら?」
「なら私の敵とみて承知したわ」
「!!」
瞬間、私は目の前にいたサクヤ龍王の姿を見失い、そして一瞬の寒気がした時、無意識に一歩後ろへ下がったその時、
「ハァアア!」
私の眼前を下降から跳ね上げるように剣先が通りすぎた。
「よく躱したわ」
「危なっ!」
何仙姑は右肩から斬られて腕が飛び、痛みでしゃがみこむと同時に私はすかさず鉄の扇を振り回してサクヤ龍王に向かって攻撃するも、全て躱されていた。
(まるで・・・)
「私は心を読んでいるわけじゃないわよ」
「えっ?」
「貴女が、いえ?私を相手にした者全てが最初にそう思うらしいの。けど違うわ」
「何が言いたいのよ?」
「教えてあげる。私は数秒先の未来を視る眼(龍未知眼)」を持っているの」
「未来を視る?噂には聞いた事がある。仮にお前にその力があって、何故容易く私に教えたの?」
「教えたところで何も出来ないと知っているから。未来は変えられないのよ」
すると斬激が大地を斬りながら迫り、私は近付く前に左方に躱すと、先回りしたサクヤ龍王が剣を突き出していた。
「させるかぁ!」
私は芭蕉扇を抜いて吹き荒らすと、その突風に乗って寸前で飛び上がる。
「攻撃を視られるだけでなく避ける方も知られるって何!ちょーメンドイ!」
(けれど、目の前の敵を倒さないと私の仇は討てやしないわ)
私の視線の先の玉面乙女は、私達の戦いに興味なく手にした人形に話しかけていた。
(何よ?気でも狂ったって?そんなオチは許さないわ!玉面!)
私は突風に乗って玉面乙女に向かって襲いかかる。
「私を無視しないで欲しいわ」
サクヤ龍王が前方に飛び出して来て深紅の双剣を構えると、十字に斬られた斬激が迫る。
しかし目に見えない壁に阻まれ、助かった。
「無視しないで欲しいのは私の方よ」
何仙姑は手にした玉板を向けると見えない壁を出現させて私を救ったの。
「サクヤ龍王。私達八仙がいるにも関わらず官職になって私達を見下ろしていた事は前々から苛立っていたわ」
「討たれた八仙の仙具を持っているのか。それは多少厄介のようね」
「余裕噛ますな!私は以前よりも遥かに力を増しているのだから」
が、サクヤ龍王は笑みを見せて
「私も強くなったのよ。この闘技場に来て守られているだけだと思ったの?この闘技場で私は少なくとも五本の指に数えられているのだから」
サクヤ龍王は掌を剣で斬って血を宙に吹き掛けると、まるで紅色の花弁のように舞う。
そしてその姿が覆われると、紅色の龍の鎧を纏い、更に額に龍の紋様が浮かび上がった。
「逆鱗百華」
凄まじい力が込み上げているのが分かる。
「とんだ化け物ね」
「カミシニの力を手に入れて、己の限界を越えたようね」
「あんた、その腕は大丈夫なの?」
「カミシニはカミシニの攻撃に対しては傷口の再生力が鈍るのは確か。けど付け根を削ぎ取れば問題ない」
何仙姑は腰から短刀を抜くと、刃を自分に向けて失った腕の付け根を切り落とす。
「フン!グゥぅ」
噴き出す血が固形化しつつ、腕の形へと変わって元通りの腕が生えていく。
「トカゲの尻尾みたいね」
「うるさいわね」
「とにかく力を貸して貰うわ。あの龍神の女を倒せたとしても、玉面を倒す体力残ってなかったら意味ないからさ」
「簡単に言うな。あの女は強いぞ」
「そんなの言われなくても知っているわ」
私と何仙姑は警戒しながら芭蕉扇を抜く。
「芭蕉扇・雷鳴」
「芭蕉扇・地爆」
雷が降り、足下が爆発して逃げ場を削っていくが、サクヤ龍王は本当に未来の動きが見えているのか?全ての攻撃を容易く躱しながら接近してくる。
「玉柱」
見えない壁が出現して行く手を阻むが、
「龍閃斬」
抜刀する双剣の斬激が壁に接近する間近で勢いが消えて消失すると、
「なっ!?」
壁をすり抜けたかのように斬激が私と何仙姑の間合いに出現して私達を襲う。
「何なのよ~!」
私の叫びにサクヤ龍王は呟く。
「斬激を未来へ送ったのよ。私の能力の前には、お前達は無抵抗なのですわ」
「それはどうだかね」
私は飛び出すと全身の肌が黒く、髪が紅く染まっていく。
「羅刹の突拳」
その速さは一瞬で間合いを詰めていた。
「例え未来が見えていたとして、この動きを躱せられなければ避けられまい!」
「あらあら?確かに躱せないですわ~けど」
「!!」
突き出した渾身の拳は止められた。
「龍神の力を舐めて貰ったら困りますわ」
「そう、けど私の力を舐めて貰ったら痛い目にあうわよ!」
「!!」
その時、サクヤ龍王は私の瞳が金色に光輝いている事に気付き、受け止めた手を引く。
「遅い!」
私の拳が開かれた時、金色の光が閃光の矢となってサクヤ龍王を襲った。
「きゃあアア!」
一矢報いたその時、
「時間稼ぎ助かるわ。今から私の奥の手を見せてあげる。この能力は・・・取って置き」
何仙姑は両掌を重ね合わせると、その前方に血溜まりが宙に浮かび上がり、異様な動きを見せていた。
「血身蘇生操!」
血溜まりは徐々に姿を人の身に変えて、その場に新たな存在を造りだした。
「お前が私を蘇生させたのか、何仙姑よ」
「そうです」
「ならば私は既に死んだようだな。カミシニとして甦った時には既に一度死んで拾った命だと思っていたが、再び生を与えられるとは」
「御願いします李鉄拐」
それは八仙の首領であり、戦死した李鉄拐を己の血を媒介にして召喚させた術。
私の足を引っ張らないでよね!
私の復讐は終わらない。
次回予告
蛟魔王を倒したサクヤ龍王を相手に戦う鉄扇と何仙姑。
二人がかりでも、この相手は強敵すぎた。




