蛟魔王の新たな覚醒!?
瑤姫を相手に法子と剛力魔王は絶対絶命の危機だった。
そこに現れたのは、まさかの救援者だった。
私は法子よ!
私と剛力さんの危機に現れたのは、あの蛟魔王さんだったの~
もうね、これ以上の救援はないったら~
「何だお前、お前もその二人と同じく己の力を過信して迷い込んだ愚か者か?」
「そうだな。己の力を過信したことは確かにあったよ。しかし今の私は少なくともお前には負けない強さだと思っているぞ」
「ぐぅう。どいつもこいつも吠え面かくなよ。龍神の女」
「お前もな」
互いに誇り高く、その強さに自信を持つ二人が、同時に動いたの。
「ホォアアアア!」
瑤姫の拳が高熱を帯びながら蛟魔王さんの盾に衝突すると、火花が散り、発火した。
燃え盛る炎の渦の中で二人は戦う。
「お前の盾は強度だな。しかしその盾を失えば、お前は裸同然よ」
「そうか?」
すると何を思ったのか?
蛟魔王さんは左手首の盾を放り投げ、その盾は瑤姫の顎に直撃したの。
「フギャ!」
仰向けになって倒れる瑤姫に対して蛟魔王さんは得意気に言うの。
「命中だな」
まさか盾を投げるなんて。
確かに強度のある盾を円盤にしてぶつけるのは間違いなく破壊力はあるわよ。
けど・・・
「この龍神女ぁアア!」
怒り狂う瑤姫は顎を押さえながら泣きそうな顔で蛟魔王さんを睨み付けると、沸き上がる怒りの炎が更に炎上して遡る。
「頭来たぁアア!この私に向かって絶対に許さないわ!お前は!」
逆鱗に触れた蛟魔王さんに向かって掌をむけると、五本の指から火炎放射が放たれ、形作る大きな炎の掌が蛟魔王さんに掴みかかる。
「唯一の盾を捨てた地点でお前はもう逃げる事しか出来ないわよね」
指が握られる前に躱した蛟魔王さんは手首に装着した宝具から龍鞭を出現させると、向かって来る炎の掌に打ち付ける。
「ぬっ!」
しかし龍鞭は炎掌に触れて握られると、黒焦げになって跡形もなく消える。
「私の掌握炎に掴まれたら最期さ」
「・・・」
炎握掌は瑤姫の思うがままに動き、
「掌握炎・指圧」
指先が突きだして蛟魔王さんの腹部を突き上げるように吹き飛ばしたの。
「ぐぅぅウウウウ!」
圧倒的な瑤姫の強さに歯が立たない蛟魔王さんを見て私はいても立ってもいられずに戦闘に加わろうとした時、私は肩を掴まれて止められたの。
「剛力魔王さん?」
「参加、無用。蛟、何か策、ある目だ」
「えっ?」
振り返ると蛟魔王さんは吐血しながらも、その目は諦めてはいなかった。
そればかりか・・・
「まだ不安定でな。力の起こし方が慣れてきないんだよ」
それって?
蛟魔王さんは思い出していた。
先の戦いで、カミシニの血を持つ実姉のサクヤ龍王さんに敗れ、忌眼をも奪われた。
「忌み嫌っていた力を手放した時にハッキリと実感した。私は頼っていたのだ。あの諸刃の剣であった忌眼の力。私はその魔性の美酒に酔いしれ、何処かで己の力だと思い込んでいた。愚かだったよ」
その話を聞いていた浦島さんは、
「乙姫、俺はもうお前には戦って欲しくない。俺が代わりに戦う」
「・・・」
しかし浦島さんは、笑みを見せて言葉を続ける。
「しかしそれでは俺の好きな乙姫さんではなくなってしまうのだろうな。戦う事が乙姫さんを更に魅力的にして、そして美しくする」
諦め半分、期待半分の浦島さんに蛟魔王さんは近寄り、自分の額を浦島さんの胸に押し付けて目を綴じると、幸せそうに答える。
「私が見込んだ夫は、私をよく理解しているな。調教した甲斐があるよ」
「調教って・・・」
「なら今度はお前が私を調教してくれ」
「こんな真夜中からか?」
「そうだな。時間が惜しい」
そう言って二人は何かの修行を始めた。
浦島さんは瞼を綴じると、龍神の力と覇蛇の力を己の体内で廻らせ集中させる。
「覇蛇龍の力」
龍神と蛇神の力を手に入れた浦島さんの究極変化。
この力はカミシニの力と反発し、力を失われずに戦えるの。
「乙姫さんには覇蛇の力は持ち合わせてはいないが、どうするつもりだ?」
「お前にも話してはいなかったな。どうして私が黄龍王亡き後、代わりに王座に座り龍神界の王となっても誰一人反抗しない理由」
「強いから逆らうのが怖いからでは?」
「お前、私を何だと思っている?少し興醒めしたぞ?」
「すまん。呆れずにいてくれ」
「なら実戦で答えを教えてやるぞ」
「へっ?」
そして二人の修行は、私達が天界に幽閉されていた間、ずっと続けられたの。
そして手に入れた力とは?
「龍神族は蛇神同様に野放し出来ない種族だと聞く。その頑丈さは大したものよ。けれど私を相手にした事が運の尽き」
瑤姫は両手を一気に広げ構えると、二本の炎の腕が頭上に出現した。
「掌握炎掌・炎罪放面」
飛び出した二本の腕は一瞬で蛟魔王さんの間合いに入り、高熱で両腕を焦がしながら吊る下げる。そして握るようにして炎の渦の中に閉じ込めたの。
「ウガァアアアア!」
全身に高熱を浴びせられ、流石の蛟魔王さんも悲鳴をあげた。
「止めないと!私の如意神向で炎を捌いてみせるわ!」
私が我慢出来ずに飛び出そうとすると、私はまた剛力さんに掴まれて止められる。
「今度はもう我慢出来ないわ!手遅れになったら後悔出来ないわ」
「違う、見ろ」
「えっ?」
私は振り返ると、炎の渦が広がっていき、そして揺れだしたの。
「何が起きていの」
瑤姫もまた戸惑うと、炎の渦から金色の光が飛び出して来て、中より炎が割かれた。
「あれは!」
私達は見て驚いた。
炎の中より現れたのは、金色の龍の鎧を纏った蛟魔王さんだったから。
そして掌を向けると、無数の光線が放たれて瑤姫の頭上に降らす。
「うぐぅわああ」
けれど光線の雨の中を抜けて飛び出した瑤姫が蛟魔王さんに襲いかかると、蛟魔王さんは慌てることなく炎の拳を受け止めた。
「!!」
互いの覇気が衝突し、二人を中心に震動が熔岩世界を飲み込みながら消していく。
「幻術?違うわ。空間が戻されたのだな」
「とんでもない力。そうか、お前の力は紛れもなく始祖の力。龍神の始祖神か!」
「始祖、確かにそうだな」
蛟魔王さんは己の沸き上がる力を肌身に感じて、その力に酔いしれる。
「これが私の真の力か。我ながら驚かされたよ。本当に」
蛟魔王さんは、己の力を感じ、
「この私の父、応龍は先代の黄龍王の子孫。私はその血を引き、我が娘の黄龍姫は黄龍王の転生した姿。ならば私には始祖の黄龍の血が間違いなく流れていて、その血の力が開花したとしても可笑しくはなかろう」
「そうか、始祖の血統は私だけではないと言う事か。面白い」
瑤姫は始祖神の末裔。
そして黄龍もまた始祖龍。
蛟魔王さんは瑤姫と同様に始祖の血を覚醒させたのよ。
二人は互いの力を拳に籠めて衝突させると、破裂するかのような音が割れて私達のいた熔岩世界を一瞬で消し去った。
「これは!」
今度は私達の目の前に広がる世界は、何処までも続く花畑の世界だったの。
「今度は花を燃やして再び炎上世界を作り出すつもりか?」
皮肉を込めた蛟魔王さんは、目の前の瑤姫を見て戦意を失う。
えっ?何が起きたかですって?
「きゃあ~」
瑤姫は目を輝かせて花弁を触ると、
「こんな綺麗な花を燃やすなんて野蛮よ!こんな綺麗な場所で戦闘なんて出来るわけないじゃないのよ!」
「へっ?」
すると花弁が舞う中を宙に浮かび、
「今度会った時こそお前達の最期にしてあげるわ。その首を洗って待ってな」
瑤姫は私達の前から忽然と消えたの。
それって戦線離脱って事?
そんなことって、ある?
そんなこんな。
次回予告
この塔戦場では、鉄扇もまた一人戦っていた。
その相手は、




