正義のジャスティス!内の神の正体!?
迫る恐怖!
正義は友を守れるのか?
再び正義くんの学校に現れた化け物。正義くんは体調不良で休んでいたけれど、襲われている友人達にいてもたってもいられずに再び地獄のような地へと向かったの。
だけど、学校の前に来て正義くんは身体の震えで立ち止まってしまった。
自分が行った所で何が出来るのか?わざわざ死にに行くだけじゃないか?
無数の死体を見ていただけに、その凄惨な躯を我が身に置き換えた時に余計に恐怖が襲った。
自分は無力なのは解っている。そもそも化け物相手に何が出来る?前回助かったのは本当に奇跡的だった。また同じ奇跡が起きるなんて有り得ない。
震える足が余計に重く感じる。まるで身体中を鎖で縛られ足が鉛になったようだった。
「!!」
その時、この中でどれだけの生徒が今現在犠牲になっているのか?もしかしたら生き残った自分達を追って来たのか?この無関係な学校へ連れて来てしまったのでは?それに胸を締め付けるのは友人達の事だった。
正義くんは自分と一緒にいた横内さんが目の前で化け物に襲われている現場を目の当たりにした。本来ならそんな状況を目の当たりにしたら尚更動けなくなるはず。なのに正義くんは足を踏み出し始めたの!正義くんは友人達が再び襲われる姿をイメージした途端、いてもたってもいられずに身体が動いていた。
隆くんが、彰くんが、そして幼なじみの美奈さんがこの中で自分を待っているかもしれない!自分と同じ恐怖を抱きつつ、今にも襲われるかもしれない!そう思った時には自分に何が出来るなんか頭から抜けて身体が先に動いていたの。
《身体が先に動くか?》
「えっ?」
その時、例の声が再び正義くんに聞こえて来たの!
「君は誰なんだ?ずっと自分の幻聴かと思ってた…恐怖体験からのトラウマかと思ってた。けど、よくよく思い出してみたら…あの石柱のある寺に行った時だったと思う。そもそもあの寺はインターネットにもないし、ググっても地図にすら出ないなんて変だと思ってたんだ。あの悪夢のせいでずっと考える事も忘れていたけど、君は本当に誰なんだ?」
《よく喋るな?頭は廻るみたいだ。それがあの窮地を切り抜けた理由か?》
「だから誰なんだよ!」
《強いて言えばお前の力になる者だ!》
「僕の力?もしかして神様とかなんかなの?」
《もしかしてではなく神様だよ!しかも、ずば抜けた神様だよ!》
「神様って、マジに言ってるのか?洒落とかじゃなく?あはは…だったら神頼みするから、力を貸してよ!僕に守る力をー!」
《良く言った!守る力こそ正義!己を顧みずに友のために動ける意志の力!気に入った。それでこそ私が見込んだ人間だ!それがジャスティスだぁあああ!》
直後、正義くんの右腕が熱くなって焼けるような痛みを感じる?
「うわぁあああ!」
肉が焼けて右手の甲から赤い石が浮き出てきたの!?痛みと熱が消えた後、正義くんは手の甲の石を見て恐がる。
「何、これ?えっ?取れないよ?えっ?」
けど、同時に身体中から力がわいてくる?更に『出来る』感じがしたの。
「うわぁあああ!」
正義くんは見えない壁に殴りかかると、壁に穴が開き飛び込む。
そこには美奈さんが驚いた顔で自分を見上げていて、目の前に化け物が…
「嘘だ…」
友人である隆くんが化け物によって、殺された状況だった。
「ゆ…許せない!隆を、隆を!許せないぞー!」
「正義くん?」
美奈さんの目の前で正義くんの身体が炎に包まれて、その姿が神憑っていたの。
「私の名はアータル!最高神アフラ・マズラ様の使途であり、正義の使途!」
アータルと名乗った正義くんは業火に包まれながら化け物へと突進すると、その手に光輝く剣が出現する。
「邪神も悪魔も、カミシニですら斬る事が出来る正義の刃!ジャスティス・ソード!!」
その剣が化け物を通り過ぎた後、化け物の身体が一刀両断され、ゆっくりと真っ二つになりながら業火に包まれながら消滅したの。
「うっ…」
アータルの姿が再び正義くんに戻ると、その目から大量の涙が溢れ出ていた。
「た…隆…」
そんな正義くんに美奈さんが近寄り、抱き締めると二人で泣きわめいたの。
けど、まだ終わってはいなかったの。
学校の方で、硝子が割れて生徒が落下した!?
悲鳴が学校の中から聞こえて来る?化け物は一体だけじゃなかったの!
「美奈?見えない壁はもうないよ。一人で行ける?」
「もしかしてあの中に行くつもりなの?」
正義くんは学校を見て答えたの。
「もしかしたらまだ救える命があるかもしれない。僕には…何でか分からないけど、救える力があるみたいなんだ?だから、行かなきゃいけない…」
美奈さんは正義くんを見詰めて言った。
「止めても行くんでしょ?その代わり必ず戻って来ないと絶交だよ?」
「絶交は嫌だから戻って来るね?必ず…」
それだけ言って正義くんは学校に向かって駆け出していた。
学校の中に入ると、血まみれの生徒達が転がっていた。
もう息はしてない。
下唇を噛む正義くんは叫びながら学校中を走ったの。
「誰か生きてないか!大丈夫!もう大丈夫だから!」
死体の中から数人の生徒が涙を流して出てくる。崩れた壁の残骸からも、
「良かった…まだ生きてる人がいたんだ」
その時、一体の化け物が生存していた生徒達に向かって姿を現す。恐怖に泣き叫ぶ生徒達の中で正義くんだけは化け物に近寄ると、
「これ以上、誰も死なせやしない!」
瞬間、再び正義くんの姿がアータルの姿へと変わると、化け物に向けて炎の剣を振り払ったの。
化け物は何が起きたかわからないまま身体が蒸発するように燃え上がり消滅した。それを見ていた生徒達も驚いたまま正義くんに従ったの。
「一階には化け物の気配はない!このまま校庭に向かって逃げるんだ!」
頷く生徒達を見届け、正義くんは二階、三階へと上がっては化け物を倒して、生き残った生徒達を救う。
「これで終わりだ!」
最後の一体を倒した所で正義くんは張りつめていた糸がほどけたの。
涙し、うずくまりながら、
「僕がもっと早く来ていたら…朝から登校してさえいれば…」
その時、再び声が?
《過去を責めるな?人間の少年!》
「アータル?」
正義くんはその時、声の主が神であるアータルだと理解したの。
「君は何故、僕にとりついるの??」
《獣の霊じゃあるまいしとりつくとは無礼な!私はお前の身体を借りているに過ぎない!》
「それをとりつくって言うんじゃ?」
《煩い!わけあって肉体を失ったがために、仕方なく宿主を探していたらお前が現れたのだ!有り難く思うのだな?》
「うん」
《ん?やけに素直だな?》
「君がいたから守れた命があるんだ。それに大切な友人の命も…」
《そうか…だが、うん。何でもないぞ》
恐らく隆くんの事を言おうとしたけど止めたに違いない。
「でも、どうして僕達が転校して来た場所にまた化け物が現れたんだろう?」
《恐らく…》
「ん?何か気付いたの?」
《主らが連れて来たのだろうな?》
「どういう事?僕らが連れて来た…って!?」
そこで正義くんも気付いたの。
あの修学旅行で生き残った生徒の中に、化け物が紛れ混んでいたって事に?
「けど、この学校に転入して来たのは…僕と、美奈と隆…それと?」
冷や汗が流れる。
信じられない答えが導かれ、そして事実を飲み込む。
その頃、総本山の僧侶達が戻らない仲間達を不振に思い、立ちよったと思われる家の玄関先で衝撃を受けていたの。血まみれの玄関、廊下の先には仲間の僧侶達の変わり果てた姿に、この家の夫婦だと思われる男女の肉塊。素人なら嗚咽し意識を失っても仕方ないかもしれない。けど僧侶達は並みの僧侶ではなく、このような裏の世界を熟知した総本山の者達。そしてこの家は?間違いなく彰くんの家だったの。
その頃、助かった美奈さんは朝から休みを取っていた正義くんと同じく朝から学校でも姿が見えなく連絡が取れない彰くんの家に向かっていたの。
「彰くんは無事?」
その背後に血にまみれた黒い影が屋根上から美奈さんの後を付けていたの!!
正義くんは学校の中にいた全ての化け物を倒し、生き残った生徒達を救いだした後、その足で美奈さんを追ったの!嫌な予感がした。もし化け物が本当に彰くんだったなら、既に倒した化け物の中にもいなかった。なら?家?家に直接何度も電話をかけても繋がらない。それに…先に学校から逃げたはずの美奈さんとも連絡が取れない?
胸騒ぎがする。
「美奈は何処に?」
《待て!慌てるな?今、探ってやる!》
「出来るの?」
《神だぞ?私は?先程の乙女を探せば良いのだろう?容易い事だ!》
正義くんは目を綴じると闇の中に幾つもの光が見える?
これは生命の光?
《あまり遠くには行っていないな?問題ない。直ぐに追い付……ん?》
「どうしたの?」
《くそ!急ぐ必要がありそうだ。良からぬ気配が乙女の後を追い掛けているようだぞ?》
「何だって!?」
直後、正義くんの身体は炎に包まれ、爆発的な勢いでその場から消える!気付くと上空高くにまで飛び上がっていたの。そして美奈さんの向かった方角に向きを変えると、
「間に合えぇー!」
炎に包まれながら弾丸の如く追い掛けて飛んで行く。
その時、美奈さんは?
「あぁ…嘘でしょ?」
美奈さんの目の前に変わり果てた隆くんが、化け物の姿で現れていたの。
次回予告
美奈の前に現れたのは化け物の姿をした隆だった。
正義は間に合うのか?




