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隔世異伝・転生記~神を導きし救世主~  作者: 河童王子
女子高生救世主編!
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トラウマを乗り越えろ!


正義くんの学校で起きた化け物の出現。


生き残れた彼らはどうなったのか?


修学旅行の惨劇。


半年間の療養生活。


そして新たな学園へ転校して来た正義くんは、同じ学校からの親友である彰くんと隆くん、それに美奈さんと一緒に新たな学園生活を送る。


「きっと、一人だったら戻って来れなかったと思う」


「俺もだよ」


「私も…」


その言葉の後に彰くんが「横内もいれば…」と、言いかけて言葉を飲み込む。


「で、どうよ?勉強付いていけてるか?俺なんかもう未知の領域だよ…あぁ」


隆くんが話題を変えて場の空気をかえる。


「半年間のブランクは大きいよな?実際…けど、美奈はもう上位の成績に名が上がってたな?」


「やる事がないからずっと勉強してたのよ」


「俺なんかずっとゲームやってたよ!」


と、盛り上がる。


その時、物音がして四人は異常に顔を青ざめて振り向くと、猫が走り去っていた。


「あはは…ね、猫だな?」


「うん」


互いに顔を見合せ笑いだした。そして一日の授業を終えて家に帰る生活。戻って来た平穏な日常生活。ありきたりの日常。


けど、皆は解っていた。


ゲーム?勉強?何かに没頭していなければ、壊れそうだったから。


今もなお、平穏な生活が戻って来ても、彼等は部屋の電気を消せず、物音一つに怯えていた。毎日のように魘される悪夢に、何度と繰り返す嘔吐。学校では平静を保ってはいるが、一人になればあの日の恐怖が蘇って来ては苦しむ毎日。けど、彼等はまだ良い方だった。中には人格崩壊、他に生き残れた生徒には苦しさに耐えられずに自ら命をたつ生徒もいたと言うの。


そして正義くんもまた、部屋にこもり、物音一つに怯えては部屋の隅にうずくまっていたの。


震えが止まらない…


どうしてあの時、冷静な判断が出来たのか?しかも集中力が異常に高まり、友人達からもあの日の正義くんは別人格のように人が変わっていたと言われるくらいに。


自分でもそう思う。


その場にあった縄やスプレーで、あの死地から仲間達を導き生還出来たのだから。どうしてあんな真似が出来たのか?


けれど実際の正義くんは張りつめた緊張の糸が切れた途端に腰が抜けて、その後の半年間の療養中も見えない恐怖に泣き叫び、食事は勿論、人に接する事も拒み、薬も飲めなかった。そして日常生活を取り戻せた今も、その恐怖からは完全に回復していない。


「はぁ…はぁ…」


過呼吸に苦しみながら正義くんは意識を失う。すると家の中に僧侶が入って来て札を額に貼る。すると落ち着いた状態になって眠りについたの。


「次の家に向かおう」


僧侶達は速やかに家を出る。正義くん達は総本山からの監視管理下で日常生活に帰されているの。


そして次の朝、正義くんは頭痛で起き上がれなかった。


「ダメかも…」


正義くんは学校に連絡し休ませて貰った。昼くらいになると頭痛は軽減されて携帯を手に取ると、友人達にメールを送ろうとした。


「!!」


正義くんは驚愕する。


携帯の画面にはメールが何通も入っていて、


「おはよう?今日休みなんだね?」

「風邪か?学校終わったら見舞い行くからな?」

「体調どうだ?無理するなよ?正義」


と、朝のメール。


けど、次に入っていたメールを読んだ時に察したの。


「正義くんは生きて…」

「悪い、見舞いに行けそうにないや?」

「正義…」



このメールは何を意味しているのか?


直ぐに察した。


正義くんだから気付けた友人達からのメールの意味。


けど、同時に身体から異常な震えが身体を拘束する。身動き出来ないくらいに、その場に倒れて嘔吐する。嫌な記憶が頭を廻る。ホテルで起きた悪夢。クラスメートの形が残らないような肉塊の中を駆け巡り逃げ延びた地獄体験。


このメールから記憶が鮮明に蘇った。


つまり…


何故、このような事になっているのか解らない。


けど、他に考えられない?


今、新しい学校で起きているに違いない…


あの惨劇が再び!!


でも、どうして?どうして自分達の学校ばかりに同じような悪夢が起きるんだ?


正義くんは怯えて膝を抱えて震える。


《良いのか?それで?》


その時、あの寺で聞いた謎の声が再び正義くんに聞こえて来たの。


「だ、誰?」


《良いのか?と聞いている。このままだとお前の友人達はどうなる?》


「!!」


正義くんの震えがピタリと止まった。


《ふっ…身体の震えを意思で止めたか?》


正義くんも自分自身に驚きを隠せないでいた。吐き気が止まり、意識がハッキリしている。そしてこの衝動に?今、直ぐにでも学校に向かいたいと! あの惨劇を繰り返す地獄に再び足を踏み込み、友人達を救い出したいと!


正義くんは支度をすると家を出る。その目は強い決意が漲っていた。


「今、行くよ!」



場所は代わり、そこは一軒家。そこには血が壁や床に飛び散り、住んでいた夫婦が死んでいた。更に数人の僧侶が血まみれで息たえていたの。何が起きたの?


考えられる事は…


あのホテル事件で生き残れた生徒の中に化け物が紛れ込んでいた?




その頃、学校は惨劇が繰り返されていた。既に数多くの生徒達が化け物に襲われていたの。


その中で、


「美奈?大丈夫か?」


「うん」


「彰とははぐれちまったな?無事ならよいけど・・・」


「どうしよう」


「大丈夫!俺達はあの時だって生き残れただろ?」



震える美奈さんに隆くんが励ます。


「マジに怖いぜ…あの時は正義がいたから、負けてたまるかって強がっていたけど、今はとんだ腰抜けだ」


「隆?」


「アイツは昔から変な奴だったよな?曲がった事が大嫌いで、臆病なくせに虐めに遭遇する度に巻き込まれては怪我してさ?そんで俺が加勢する始末」


「うん。それに覚えてる?正義くんが川で溺れた時の事を?」


「覚えてる。あの時は本当にどうなるかと思った」



それは中学生になったばかりの時、正義くん、彰くん、隆くん、美奈さんと横内さんの五人で川にキャンプに行った時、幼い子供が川に流され溺れていたの。


戸惑い何も出来ないその場にいた大人達を含め、唯一飛び出していたのが正義くんだった。その場にあったロープを岩に縛り付け川に飛び込んでいたの。


泳ぎながら追い付いた正義くんは、溺れている少年の身体にロープを縛り付けると、今度は自分自身が力尽きて流されてしまった。


少年はロープで引っ張られて助かり、泣き叫ぶ友人達。しかし正義くんは運良く流されていた大木に身体が引っ掛かって助かったの。まさに奇跡的な出来事でニュースにもなった。


「アイツは誰かのために自分自身を顧みずに飛び出して、必ず俺達を悲しませないように生きて戻って来てくれる。俺さ?アイツの事をマジにヒーローだって思ってたんだぜ?いつもはあんなに頼りないのによ?」


「私もそう思ってたよ。正義くんは私のヒーローよ」


「美奈?お前、正義の事を?」


頷く美奈さんは、


「けど、もう伝えられないよね。だけど今はそれで良かったと思う。こんな場所に正義くんが来たら…今度こそ死んじゃうわ」


「そうだな…」


二人はもう生きて正義くんには会えないと思っていたの。それに二度も同じような体験をして、もう元には戻れないと感じていた。トラウマから解放される日が来たのだと。それともあの悪夢から今の今までが夢で、目覚めた今が現実のあの日の続きなのだと。


そう諦めようとした時、二人の携帯が鳴ったの!


「!!」


バイブで良かった。化け物に気付かれてしまうから。携帯の電源を切ろうとした時、美奈さんが驚いた顔で隆くんを見る。


「どうした?」


「正義くんから…」


「正義から?何だって?」


「正義くん…こっち来てるって!こっちに向かってるんだって!」


「なぁ?あの馬鹿!俺達のメールの意味を理解してなかったのかよ?だったら直接何が起きてるか教えて来るなって言ってやるよ!」


「違うの!」


「えっ?」


メールには二人に同じ内容で送られていた。



『今から行くよ!だから隠れて逃げて必ず生きていて!僕が必ず二人を救うから!』



正義くんは全てを承知でこの地獄に足を踏み込もうと言っているの。自分達のために!


隆くんも美奈さんも薄々気付いていた。


正義くんは来てしまうんじゃないかと…


だから最初のメールを送る事に最初は抵抗があった。だけど、不安や恐怖から堪らずに正義くんからの言葉を求めてしまったの。自分達にとって窮地から救ってくれるヒーローを!



「でも、やっぱり無茶だ…直ぐに来るなってメールをしなきゃ!」


「待って!」


二人は息を止めて外からの声に意識をする。何処かの生徒が数人泣き叫びながら逃げて来る声がして、鈍い音とともに声が消えた。


近付いて来ている?


二人は震える身体を堪えながら化け物がやり過ごすのを待つ。悲鳴が聞こえる度にトラウマがよみがえる。生きた心地がしない。


そして音がしなくなった後、二人は息を吐いて顔を見合せ頷く。


逃げよう!


二人が隠れていた場所は一階の木工準備室。武器になる物もあれば、色々道具があったの。この学校に転校して来て、二人とも無意識にこの場所を見付けていたの。それも、また同じような事があっても直ぐに逃げられるようにと…


二人は武器になる物を手にすると、外に出る。隠れていたら必ず捕まり殺される。だから先ずは学園の外に逃げる事を試みる!


二人は窓ガラスをゆっくり開けて外に出る。一階を選んだ理由もここにある。直ぐに逃げ出せるから。


二人は音を立てずに外に出る。だけど外に出るためには校庭を突っ切らないといけない。裏口は?裏口は逃げるには逆に危険が伴ったの。場所は狭く、見付かったら必ず捕まる。なら、広く見付かる可能性があっても、二人いれば運が良ければ一人は助かる…かもしれないと考えたから。


「美奈?行くぞ?恨みっこ無しだぞ?」


「解ってるよ!」


二人は呼吸を整えると、校庭を突っ切るように走る!


二人は前だけを見て走ったの!無我夢中に、


『ミツケタ!』


屋上から何かが飛んで来て二人の前に落下して転がる?二人は足を止めると目の前に何かが転がる?それは人体の一部?二人は理解する。屋上から自分達目掛けて人間を投げ付けているのだと。二人は足を震えながら立ち竦む。そこに二人の後ろから何かが校舎から飛び降りて来たの。


二人は青ざめて冷や汗が異常に流れる。


「美奈?正義に会ったら伝えてくれないか?」


「えっ?」


「俺はお前みたいになりたかった。お前は俺にとってのヒーローだったって!」


すると隆くんは美奈さんの背中を強く押すと、自分は化け物側に向かって走り出したの!その手には金属バットを手にし、


「おらぁああ!」



美奈さんは校庭を抜けて門を抜ける。


「あっ!!」


けど、美奈さんは見えない壁にぶつかり倒れこむ。


「そんな…」


ホテルと同じ見えない壁が美奈さんを逃がさないように弾き返したの。


直後、


「うぎゃあああああ!」


隆くんの泣き叫ぶ悲鳴が聞こえて来たの。振り向く美奈さんの目の前で、隆くんが化け物に噛まれた状態で、腕と足をもげられたの!


「痛い!痛い!いてぇー!うぎゃ!うぎゃ!うぎゃあああああ!」


美奈さんは耳を両手で塞ぎながら涙を流す。もう絶対に助からない。


そして隆くんが、


「死にたく…な…ぃ」


と、全身を化け物に噛み砕かれ息絶えたの。


そして化け物が美奈さんに近付いて来る。


涙で、もう何も見えなかった。


美奈さんは、自分が助からない…助からない…助からない…助からな…




「うわぁあああ!」


「!!」


その時、美奈さんの背後の見えない壁から、


「せ…正義くん?」


正義くんが飛び出して入って来たの!


この地獄に再び!!


次回予告


間に合った?間に合わなかった?


正義くんの葛藤!


正義くんは守る事が出来るのか?

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