四人の覚醒!四人で怒りの脱出!
妲己は、サクヤ、玉面、姜子牙と共に誘拐された。
そして計画する。
この地獄からの脱出を。
我は妲己
我達は逃げ出せたと思った。
しかし我達が脱出した牢獄の外は、空に浮かぶ島だった。
雲に覆われた地表。
どれだけの高度なのか?
飛び降りられるなら飛び降りるが、もし飛行不可能空域であれば落下に全身を焼かれて消滅する。
因みに飛行不可空域とは、天界や仏界と地上界の狭間の空域。
その空域では何者も飛行能力は失われると聞いた。
理由は世界の境界線。
天界と地上界が飛行して簡単に行き来できたら、世の中混乱が起きるとか。
有り得ぬとは思うが地上世界から天界へ戦争を起こす事が出来ないように隔てたとか。
「どう見る?お主ら」
「わからないわ。この飛行島自体が何処にあって、何処を飛んでいて、そして至る場所に結界が張り巡らされていて」
「手の込んだ連中だのぅ。儂らはこれだけ厳重な場所で極秘裏に扱われていると言うわけだ。これはお手上げか?」
「馬鹿を言うな!我達をどうにかしようとしている連中だって、戻る場所がある。ならば出口があるはずじゃ」
「なら、さっき寝かせて来た連中を起こして吐き出させる?」
「サクヤ、それも良いが」
我の尻尾の気が先立つ。
「どうやら追手が来たようだぞ。戻るより、そいつ達をどうにかした方が早いかもな」
姜子牙の言葉に我達は殺気立つ。
不可能ではない。
我達四人は少なからず国一つ滅ぼすほどの力を持つのだから。
あ、玉面はまだ寝ておったか。
すると影に身を包む追手達が襲いかかってきた。
その動きは、
(は、速い!)
追手達は皆々、今まで我が倒してきた者達とは比べ物にならない力を持っていた。
「ヌッ!よりゃあ!」
姜子牙は攻撃を躱し、体術で相手をひっくり返し、そこに掌打を打ち込む。
サクヤも竜気を高めると、その手に剣が出現して玉面を庇いながら追手達を斬り伏せる。
妾は相手の顔面を掴み、
「正体を現せ!お主ら何のために妾達にこのような真似をするのじゃ!」
怒りに妖気を打ち込むと、その者はよろめきながら剣を杖に堪える。
しかし身を包む影が消えていき、中より正体が姿を現したのじゃ。
「な、何と!?」
我だけでなく皆も驚愕した。
そんな馬鹿な、有り得ぬ。
「正体を見せおれぇー!」
衝撃が走った。
何故なら、妾達が戦っている者達の影が晴れるように消えていくと、その者達は信じられぬ事に天界の武神の姿をしていた。
偽物?それとも?やはり?
「お前達は天界の者共か!今件は全て天界神の計画かぁー!」
しかも奴らの武装は武神の中でも選りすぐりの猛者しか纏うことのない鎧を身に付けていた。
恐らくは最上位の神直属の精鋭に違いあるまい。
「そうか、このような外道を成している裏に、神が関わっていようとはな」
これは天界が地上界を裏切った。
敬うに価値のないと証明されたと同意。
「私達龍神族と天界は相入れぬ関係だからまだ理解出来る。しかし他の皆は何?もはや別の意図を持った策略があると言うの?」
サクヤは混乱していた。
「ど、どうしたの」
「玉面、起きてしまったの?」
玉面は周りを見回して、信じられない状況に何も口を開けずにいた。
「そうじゃろうな。我も口が開かんよ。これはもう天界と地上界、龍神族を交えた戦争になりかねん事態だよ」
しかし我達が今、ここで殺され、又は捕らわれたら全てが隠蔽される。
「必ず生きて戻るぞ!」
他に分かった事もある。
我達がおるのは天界の何処か。
恐らくは天界でも部外者が踏み入る事が叶わぬ隠蔽された天空島。
つまり目の前の連中をどうにか出来れば、後は奴等が移動に使う空間移動装置から地上世界へと帰れるはずじゃ。
「皆よ!我達は運命共同体よ!必ず生きて帰るぞ!」
頷く三人の顔を見た後、我は飛び出した。
我達は戦った。
武神達は強かった。
突き出す槍が肋を刺し、肩を斬られる
後退した所を、サクヤが龍気を高めて大地を殴り亀裂を作り、我への攻撃から守ってくれた。
玉面も叫びながら無尽蔵に湧き出る水流を操り、反暴走させながら武神達を寄せ付けずにいた。
(サクヤは勿論、玉面の奴は臆病だが、その内に秘めた力は大したものじゃ。だから目を付けられたのだろうが、かなりの戦力になるだろう)
そこで我は気付く。
(あ奴は何処へ消えた?)
それは姜子牙の姿が先からおらんのだ。
はぐれた?まさか既に倒された?
人の身で仙術を学び、類いまれな才を持つ唯一の男だったが、我達のような強靭な再生力を持ち合わせてはおらん。
攻撃を受ければ一溜りもあらん。
しかし我にも助けに向かう余裕はなかった。
武神達は我達に対して捕らえる素振りはなく、本気で殺しに来ていた。
「返り討ちじゃ!」
しかし我の身体が突如重くなる。
それはサクヤも玉面も同じ様子じゃった。
な、何が我達に起きている?
身体が重い?
その異変に気付いた武神達は一斉に襲いかかってきた。
「!!」
死を覚悟したその時、最初に異変が形となったのはサクヤじゃった。
「み、見えるわ」
直後、数百の武神達の雨のような攻撃の中を擦り付けるように移動して躱して見せた。
「先の動き?いえ、ほんの少し先の未来が見えるわ」
それは覚醒じゃった。
先の未来を見る事で攻撃を躱したのだ。
そして玉面には、
「ふるえ~ゆらゆら、ゆらゆら~」
その言魂に従うように無数の水玉が浮かび上がり、
「いやぁあああああああ!」
まるで炸裂弾のように拡散すると武神
達の身体を貫いていく。
その覚醒は我にも起こっていた。
「漲るようじゃ」
我の九本の尾が広がると、鋭利な剣と化して大地を両断した。
浮かぶ大地が削られ崩れると、足場が揺れて武神達も宙に飛び上がり飛行雲の上に乗り、我達を見下ろしていた。
何がなんだか分からぬが、我達は突如覚醒し、この状況をひっくり返し始めた。
「何とかなるかもしれんぞ!」
我に帰還への希望が見えて来た。
が、その時我は気付く。
「!!」
サクヤと玉面が倒れている事に。
そして、二人を倒したのは信じられぬ事に、まさかの奴じゃった。
「何のつもりじゃ?何のつもりじゃ!」
怒りに震えたその直後、
「悪いが寝ていて貰うぞ」
それは空間転移の術。
妾の間合いに飛び来んで来た奴によって妾は首に当て身を受けて、気が遠退く。
「う、裏切ったのか?キョウシガよ・・・」
その後、意識が消える間際に聞こえたのは?
「この儂は信用なる者と分かっただろ?儂は勿論、こやつらも覚醒はした。したが儂には劣る者達だ。次のステップはあの忌眼の選定。儂が最初にその資格を持つに価すると、上の者に伝えよ」
忌眼?なんじゃ?何を言っとるのじゃ?
姜子牙?
すると我の力が急激に失われ、そのまま深い眠りに落ちて行った。
「くぅ、このまま、このまま落ちてたまるものかぁー!」
妾は九本の尾を広げて閃光で目眩ましを放った。
が、ボヤける視界がシャッターが落ちたかのように暗闇に変わる。
(あっ・・・)
この先の記憶は途絶えた。
妾は勿論、他の者達がどうなったのかもわからないまま。
完全に動かなくなった妾を囲む者達が妾を運ぶ。
そして再びあの地獄の牢獄に幽閉された。
次回予告
再び捕らわれた妲己は・・・
地獄へと落ちていく・・・




