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隔世異伝・転生記~神を導きし救世主~  作者: 河童王子
女子高生変革封神大戦編
582/713

妲己!地獄からの脱走!


妲己は何者かによって拉致された。


敵は何者?


そして同じ境遇の三人は?

我は妲己。


我は、今、い、


「イギャアアアアア!!」


我は泣き叫び、この世の痛みとは思えぬ激痛を味わっていた。

全身の神経に無数の針を打ち込まれているような感覚。

爪や指先から至る場所。


それは猛毒?

魂が強引に分離させられるような気持ち悪さに、今置かれている状況へのパニック。

直ぐにでも死にたいと何度と思い、いや、実際何度も自害を試みたが失敗に終わった。

妾が死ぬギリギリのところで、この悪魔のような実験は止められ、回復させられ、再び地獄へと突き落とされるのじゃ。


これは拷問?

妾への怨み?

それとも見せしめ?

何故に直ぐに殺さぬ?

どうして妾が?

いつまで続く?

何もかも分からない。



そしてこれは妾だけでなかった。

同じく響き渡る悲鳴が妾の耳に入る。

それは妾と同じく連れて来られた者達。


サクヤ、姜子牙、玉面。


精神が崩壊する。

自分が何者なのか?

自分だった存在が失われていく。

そんな中、目覚めた妾の傍には、同じ境遇の三人と一緒に倒れて眠っていた。


(また目覚めてしまった・・・)


つまりまた同じ地獄を味わう事。

朝か夜かわらかない中で、瀕死状態の三人の寝息だけが、心地よかった。

それは他の三人も同じく感じていた。

知らず知らずに、このような境遇の中で妾達は兄弟に近い関係を抱いていた。


頭がハッキリして来ると、我は思考を廻らす。

我達が受けているのは猛毒への耐性実験。

少量で即死するような猛毒を、絶え間なく微量に与え続けられているに違いない。


その毒にも心当たりがあった。

我を襲った連中に流れていた血と同じ。

あの時、妾は返り血を浴びて、同じ激痛を感じて意識を失ったのだから間違いない。

心臓を直接鷲掴みにされるような感覚。


なら、あの血は何だ?

どのような猛毒も、我には効き目ないはず。

あの龍神族のサクヤも、水精霊の玉面にも耐性があると思うが?

あ、姜子牙は人間だから不明だが。

とにかくただの猛毒ではない。



「儂らは特殊な能力を持つ血の耐性を付けさせられているのだよ。あの血を身に受けても死なぬようにな」


「!!」


姜子牙の声だった。



「何か知っておるのか?お主?」


「儂らを殺さない理由が他にあるか?人体実験されているのだよ」


するとサクヤが話題に入る。



「私達の身体に猛毒を与えて、私達を襲って来た化け物みたいにまた誰かを襲わせるつもりなの?」


「いや、誰かを襲わせるとか他愛のない理由なら、儂らを洗脳して対象を暗殺させた方が簡単であろう?何せ儂らは並の者ではないからの~」



確かに妾達は一人で大国を滅ぼすぐらいの能力は持っていよう。

なら、他に何の目的があると?



「とんでもないない事である事は間違いなかろうな。この世がひっくり返るような」


「お主、余裕ではないか?」


「いや、儂はこの状況を分析しているに過ぎないよ」



姜子牙。

何か掴み所のない奴であった。



「で、本題に入ろうかの」


「?」



我は三人に集まるように言うと、外から聞かれぬように小さな音でテレパシーを送る。

口パクをしながら別の言葉を発し、テレパシーでは真意を語る。



〈お前達、脱出するぞ!その為には我一人では無理。お前達の力が必要だ。手を貸すのじゃ!〉


〈!!〉



三人が頷いたのを確かめた後、我は策を告げる。

その作戦に三人は顔を見合せた後、了解と我の目を見て答えた。




そして結構日。

我達は明朝、決まった時間に力を奪われる。

それはあの血の障気を嗅がされるのだ。

視界が薄れ、力が抜けていく。

そして一人一人倒れると、気付けば拷問部屋へと運ばれているのだ。


先ず最初に始まるのは幻視。

脳に直接、この世のありとあらゆる背けたくなるような非道な醜い映像が写し出される。


吐き気が止まらない。

親が子を殺し、子が親を殺す。

肉親や愛し合った者達の裏切り、無情な大量殺戮から、その者達の最期の嘆きが脳に直接流れ込んで来る。


この四人以外なら、狂人と化してもおかしくない。

いや、玉面に関しては、本当にギリギリだと思う。

幾度と限界を超えて発狂し、その身を傷つけていた。



次に妾達が受けるのは狂獣から逃げるために走らされる。

妾達は力を封じられ、肉体と知恵のみで生き延びなければならない。

姜子牙とサクヤは基礎力が優れているようで無難にこなすが、甘やかされて育ち、恵まれた才能と能力に胡座をかいていた我と玉面には身体能力は並程度。

毎度毎度生きた心地がしなかった。



最後に、あの血を毎日毎日微量に体内へと流し込まれるのだ。

この試練が一番辛い。

猛毒への耐性を付けさせるのが目的だろうが、そんな簡単に身に付くわけなかろう。


しかしこれには玉面が一番適合性があった。

妾とサクヤは本当に微量だが、姜子牙と玉面は既に我の倍の血を与えられた。

どうやらこの血は人間に適するらしく、もともと人間であった姜子牙は耐える身体を持ち合わせ、玉面は特有の能力を持ち合わせていた事が耐性へと繋がったようだ。

特有とは水精霊である彼女の体内で猛毒が多少無毒化されているとの事らしい。



では本題に入ろうか。

妾達がこの地獄から抜け出せるチャンスは、最初に眠らされた時しかない。

この牢獄から移動させられる時に流し込まれる障気の中で意識を保ち、入って来た者達を返り討ちにして脱出する。


(し、しかし)


この毒ガス効果の障気の中で意識を保つ事は至難であった。

霊力をゼロ化させられ、防壁は張れない。

純粋に息を止め、障気の猛毒の中を耐えなければならないのだから。


何て警戒心の強い。

一時間は流し込まれている。

息を止めても、肌から皮膚を通してすいこまれる猛毒に、精神力が崩壊するような意識の混濁。妾が耐えれたとしても他の皆は?


(あ、あぁ・・・)


その場に倒れて動かない四人。

そこに今まで姿一つ見せなかった我達を拉致した者達が現れたのだ。

そして我達を背負い、連れて行こうとしたその時、


「今じゃ!」


我の掛け声で眠ったふりをしていた姜子牙とサクヤが目を見開き、動き出したと同時に我達を運ぼうとする奴らに攻撃を仕掛け、気を失わせた。


「コノォ!」


我は怒りに身を任せ首を落とそうとするが、姜子牙が我の手首を掴み止めた。



「何のつもりじゃ?我達に与えた苦痛を返すのに何の情けが必要だと?」


「そうではない」


「?」


「この者達は下っ端に過ぎん。もし殺せば仲間達が再び儂らを捕らえに集まって来るとは思わないか?一時的な感情で逃げる機会をみすみす逃すのは良い考えではあるまい?」


「う、うむむ」



我は仕方なく殺すのを止めた。

そして縛り上げ、我達は外に出た。



「二人とも待って」


呼び止めるサクヤは、意識のない玉面を背負っていた。



「耐えられなかったか。このまま連れて行けば足手まといじゃぞ?」


「そうかもしれないわね。けれど、私には玉面と同じ歳の妹がいるのよ。だから見捨てて逃げるなんて出来ないわ。玉面は私が責任持つ。もし足手まといなら見捨てて行って」


「そうか。なら仕方ないな」


「!!」



妾はサクヤと一緒に玉面に肩を貸す。



「同じ死線を味わったのだ。この縁はまさに義兄弟と同じじゃ。この後、逃げ延びた後に三人女同士で酒を飲もうではないか」


「それは良いですわね。けれど私はまだお酒は無理だから、甘蜜にするわ」


「良かろう。妾の国に美味な菓子もある。共に夜遊ぼうではないか」



そんな私とサクヤの話を聞いて、



「待て待て?その女子会には儂を入れてくれんのか?同じ境遇だぞ?仲間はずれはどうかと思うぞ!」


「あはは!冗談じゃ。仕方ないからお前にも菓子を与えてやろう」


「仕方ないからって、おい!」



そして我達はこの忌まわしい牢獄から逃げ出したのだった。


「!!」


が、我達は意気揚々と足を速め、光が見える外の景色を見て足を止めて動けなかった。



「そ、そんな・・・」




我達は逃げ出せたと思った。

しかし我達が脱出した牢獄の外は、空に浮かぶ小島だった。

雲に覆われた地表。

どれだけの高度なのか?

飛び降りられるなら飛び降りるが、もし飛行不可能空域であれば、妾達は落下に全身を焼かれて消滅する。因みに飛行不可空域とは、天界や仏界と地上界の狭間の空域。その空域では何者も飛行能力は失われると聞いた。


理由は世界の境界線。


天界と地上界が飛行して簡単に行き来できたら、世の中混乱が起きるとか。

有り得ぬとは思うが地上世界から天界へ戦争を起こす事が出来ないように隔てたとか。



「どう見る?お主ら」


「わからないわ。この飛行島自体が何処にあって、何処を飛んでいて、そして至る場所に結界が張り巡らされていて」


「手の込んだ連中だのぅ。儂らはこれだけ厳重な場所で極秘裏に扱われていると言うわけだ。これはお手上げか?」


「馬鹿を言うな!我達をどうにかしようとしている連中だって、戻る場所がある。ならば出口があるはずじゃ」


「なら、さっき寝かせて来た連中を起こして吐き出させる?」


「サクヤ、それも良いが」



我の尻尾の気が先立つ。



「どうやら追手が来たようだぞ。戻るより、そいつ達をどうにかした方が早いかもな」



姜子牙の言葉に我達は殺気立つ。

不可能ではない。

我達四人は少なからず国一つ滅ぼすほどの力を持つのだから。


(あ、玉面はまだ寝ておったか)


すると影に身を包む追手達が襲いかかってきた。

その動きは、


(は、速い!)


追手達は皆々、今まで我が倒してきた者達とは比べ物にならない力を持っていた。


「ヌッ!よりゃあ!」


姜子牙は攻撃を躱し、体術で相手をひっくり返し、そこに掌打を打ち込む。

サクヤも竜気を高めると、その手に剣が出現して玉面を庇いながら追手達を斬り伏せる。

我は相手の顔面を掴み、


「正体を現せ!お主ら何のために妾達にこのような真似をするのじゃ!」


怒りに妖気を打ち込むと、その者はよろめきながら剣を杖に堪える。

しかし身を包む影が消えていき、中より正体が姿を現した。


「な、何と!?」


我だけでなく皆も驚愕した。

そんな馬鹿な、有り得ぬ。


「正体を見せおれぇー!」


我は全ての敵に向かって衝撃の妖気をぶつけた。

衝撃が走った。

何故なら、妾達が戦っている者達の影が晴れるように消えていくと、その者達は信じられぬ事に天界の武神の姿をしていたから。

偽物?それとも?やはり?



「お前達は天界の者共か?今件は全て天界神の計画かぁー!」



しかも奴らの武装は武神の中でも選りすぐりの猛者しか纏うことのない鎧を身に付けていた。

恐らくは最上位の神直属の精鋭に違いあるまい。


「そうか、このような外道を成している裏に、神が関わっていようとはな」


これは天界が地上界を裏切った。

敬うに価値のないと証明されたと同意。


「私達龍神族と天界は相入れぬ関係だからまだ理解出来る。しかし他の皆は何?もはや別の意図を持った策略があると言うの?」


サクヤは混乱していた。

そこに玉面が目を覚まして問う。


「ど、どうしたの」


「玉面、起きてしまったの?」


玉面は周りを見回して、信じられない状況に何も口を開けずにいた。


「そうじゃろうな。我も口があかんよ。これはもう天界と地上界、龍神族を交えた戦争になりかねん事態だよ」



しかし妾達が今、ここで殺され、又は捕らわれたら全てが隠蔽される。


「必ず生きて戻るぞ!」


他に分かった事もある。

我達がおるのは天界の何処か。

恐らくは天界でも部外者が踏み入る事が叶わぬ隠蔽された天空島。

つまり目の前の連中をどうにか出来れば、後は奴等が移動に使う空間移動装置から地上世界へと帰れるはずじゃ。



「皆よ!我達は運命共同体よ!必ず生きて帰るぞ!」



頷く三人の顔を見た後、妾は飛び出した。

我達は戦った。

武神達は強かった。

突き出す槍が肋を刺し、肩を斬られる

後退した所を、サクヤが龍気を高めて大地を殴り亀裂を作り、我への攻撃から守ってくれた。玉面も叫びながら無尽蔵に湧き出る水流を操り、反暴走させながら武神達を寄せ付けずにいた。


(サクヤは勿論、玉面の奴は臆病だが、その内に秘めた力は大したものじゃ。だから目を付けられたのだろうが、かなりの戦力になるだろう)


そこで気付く。


(あ奴は何処へ消えた?)


姜子牙の姿がおらんのだ。

はぐれた?まさか既に倒された?

人の身で仙術を学び、類いまれな才を持つ唯一の男だったが、妾達のような強靭な再生力を持ち合わせてはおらん。

攻撃を受ければ一溜りもあらん。

しかし我にも助けに向かう余裕はなかった。

武神達は妾達に対して捕らえる素振りはなく、本気で殺しに来ていた。


「返り討ちじゃ!」


しかし我の身体が突如重くなる?

それはサクヤも玉面も同じ様子じゃった。

な、何が妾達に起きている?

身体が重い?

その異変に気付いた武神達は一斉に襲いかかってきた。


「!!」


死を覚悟したその時、最初に異変が形となったのはサクヤじゃった。


「み、見えるわ」


直後、数百の武神達の雨のような攻撃の中を擦り付けるように移動して躱して見せた。


「先の動き?いえ、ほんの少し先の未来が見えるわ」


それは覚醒じゃった。

先の未来を見る事で攻撃を躱したのだ。

そして玉面には、


「ふるえ~ゆらゆら、ゆらゆら~」


その言魂に従うように無数の水玉が浮かび上がり、まるで炸裂弾のように拡散すると武神達の身体を貫いていく。

その覚醒は妾にも起こっていた。


「漲るようじゃ」


我の九本の尾が広がると、鋭利な剣と化して大地を両断した。

浮かぶ大地が削られ崩れると、足場が揺れて武神達も宙に飛び上がり飛行雲の上に乗り、我達を見下ろしていた。

何がなんだか分からぬが、我達は突如覚醒し、この状況をひっくり返し始めたのじゃ。


「何とかなるかもしれんぞ!」


我に希望が見えて来た。

が、その時我は気付く。

サクヤと玉面が倒れている事に。

そして、二人を倒したのは信じられぬ事に、まさかの奴じゃった。


「何のつもりじゃ?何のつもりじゃ!」


怒りに震えたその直後、


「悪いが寝ていて貰うぞ」


それは空間転移の術。

我の間合いに飛び来んで来た奴によって我は首に当て身を受けて、気が遠退く。


「う、裏切ったのか?キョウシガよ・・・」


その後、意識が消える間際に聞こえたのは?


「この儂は信用なる者と分かっただろ?儂は勿論、こやつらも覚醒はした。したが儂には劣る者達だ。次のステップはあの忌眼の選定。儂が最初にその資格を持つに価すると、上の者に伝えよ」


忌眼?なんじゃ?何を言っとるのじゃ?

すると我の力が急激に失われ、そのまま深い眠りに落ちて行った。



「くぅ、このまま、このまま落ちてたまるものかぁー!」


妾は九本の尾を広げて閃光で目眩ましを放った。

が、ボヤける視界がシャッターが落ちたように暗闇に変わる。


(あっ・・・)


この先の記憶は途絶えた。

妾は勿論、他の者達がどうなったのかもわからないまま。


完全に動かなくなった妾を囲む者達が妾を運ぶ。

そして再びあの地獄の牢獄に幽閉されたのじゃ。


次回予告


再び連れ去られた妲己達はどうなったのか?


更なる悲劇が待ち受ける。

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