振る舞われた豪華な食事!?
姜子牙は紂王の城内を駆けまわっていた。
探し求めるは、この国の王、紂王の首。
わ、私は姜子牙だよ。
ハァハァ・・・
それにしても伯邑考の奴!
私に聞仲を押し付け、先に行くとはけしからん!何様だ!
私は聞仲との戦いの最中、救援に現れたナタクに聞仲を任せて来た。
この新生殷国の真王である紂王は、この私が討つからなー!
それにしても伯邑考は既に紂王と相まみえているのだろうか?
あの復讐心は半端ない。
もしや先に倒してしまっているなんて事なら助かるとか言ったら駄目かな?
(主様〜。わざわざ恐い相手と戦って怪我する必要なんてないですよ〜)
「おっ?四不象もそう思うか?だよな?」
(そうですとも〜)
「それにお主は本当の主に返してやる必要もあるし、お前こそ危険になったら私を見捨てても恨まんからな?」
(私の主様は主様ですよ〜)
「うむむ。ところで本当にこっちの通路で良いのだな?まるで迷宮みたいで私はもう何処を走っているのか分かっていないぞ?」
(お任せください〜。私の特技は空間把握能力ですよ。この城全体を覆う血界に最初こそ迷いはしましたが、もうバッチリで〜す)
「頼もしいの〜」
四不象が言うには、この紂王城の中にいるのは現在、八名。
黄天下と張奎、ナタクと聞仲。
それから別に戦闘している二人。
そこに紂王と、私か?
コレには聞仲の聖獣、四不象は入れてはいないようだが、四不象の能力は気配を感じる能力は異なり、空間を立体的に区切り、その空間を動く物体を把握しているらしい。
「気配を消されていても確実に生物なら見極められるなら間違いなかろうな。甦ったカミシニが生者なのか死人かは曖昧として」
(今向かう壁を左に曲がって、それから真っすぐ走った方向に誰かいますよ)
「うむ。警戒する!」
仲間の可能性もあるし、他の誰かかもしれぬ。
もし紂王なら一触即発の戦闘が始まる最終戦線になるだろうな。
そして私は駆け抜けた先の部屋の扉を開き、その中に飛び込んだ。
「紂王はおるか!」
私が叫ぶと、そこには・・・
「おぉおお??」
そこには全く予想していなかった風景が私の拍子を抜かしてくれた。
「な、何だ?ここは?」
そこにはテーブルが並べられ、見たこともない豪勢な御馳走が並べられていたのだ。
するとそこに私に振り向く若者が振り向いたのだ。
私は先にその者に名を問う。
「お、お主は?何者だ?」
この場に居るのだから只者ではないと思う。
「いらっしゃい」
「えっ?」
その若者は私に笑みを見せると、手に持っていた茶を手渡したのだ。
「良かったら食べて行かないか?お前の口に合うかは分からないが?私が好きな茶だ。一口飲んでみると良い」
「えっ?あ、あぁ」
私は毒が入っていないか警戒したが、私の中で四不象が答える。
(主様。何も異物はないようですが)
(そ、そうか?分かった)
私は人思いに飲み干したのだ。
「うっ、うっ!」
私は喉に達する液体に詰まると、
(主様!??まさか?)
「うっま〜い!こんな美味い茶は始めて飲んだぞ〜!!」
「そうだろ。そうだろ」
嬉しそうに喜ぶ私を見る若者は、
「わざわざ遠く離れた地から取り寄せた一品だ。食事にも手を付けて良いぞ」
私は唾を飲み込んだ。
確かに見たこともない料理ばかり。
喉から手が出そうだ。
しかし場違いではないのか?
こんな戦場のド真ん中で、食事とか?
「腹が減っては戦は出来ぬな」
私は誠意を無駄にしては、ならぬと食事に手を伸ばしていた。
「今、誰も居なくての。一人の食事は詰まらぬからな。良い所に来た」
「私もこんな場所で腹を満たせるとは思わなかった。礼を言うのは私の方だ」
そして夢中になって食事をしていると、
(私も食べたいですよ〜)
「おっ?そうだったな?あの~宜しければ私のお供も食事させても宜しいか?」
「構わんぞ」
四不象が飛び出すと、私と一緒にご馳走にありつく。
「本当に美味し過ぎますよ~ご主人!」
「そうだろ?そうだろ!」
そんな、がつく私と四不象を楽しそうに見ている若者は言った。
「久しくこのような食事はしてはいなかった。いつもは門仲が無口に黙って見ているから、飯が不味い」
「アハハ!目に浮かぶわ~あの門仲が隣で飯を食っていたら、いたら?」
「!!」
そこで我に返った。
聞仲を隣に置いて食事なんて、普通の者に出来るはずがない。
しかしそんな??
私の目の前にいる若者は何か優しげな笑みを私に向ける好青年でしかなかった。
「今更ながら尋ねても良いか?」
「なんだい?」
「お、お主の名を聞いても良いか?」
私と四不象に緊張が走った。
それほど目の前にいる者が、私達のイメージしていた者とは掛け離れすぎていたから。
「余は紂王。この国の真王だ。姜子牙よ」
「!!」
仰け反るようにテーブルから離れ、私と四不象は目を丸くする。
「お、お主が紂王だと!?」
すると紂王は私に座るように言ったのだ。
「危害はくわえないよ。世はお前と話をしてみたかったのだ。妲己と同じ運命を与えられ、世界を滅ぼす運命を持った実行者に」
「!!」
な、何が起きようとしているのだ?
私は四不象と顔を見合せると、再び目の前のテーブルの席に付いたのだ。
逆らえないと言う感情と、この紂王が何を話すかにとても興味があったからだと思う。
私はここで、嘗ての仙界大戦で起きた裏の話を聞く事になったのだ。
次回予告
紂王より聞かされる妲己の物語。
聖輪奇聞・転生記!~神を導きし救世主~
又、小角伝にも登場した妲己の過去に何が?




