文王・姫昌!復讐の復活!!
復讐の鬼・文王・姫昌が蘇り、誓うは一つだった。
俺は文王・姫昌。
俺は愛する息子の名を継いだ。
生前、紂王に受けた非道なる仕打ち。
それは我が子の肉を料理と振る舞われ、口にするしかなかったのだ。
俺は、己の所有地であった国の民を守るために、戦争に使われることを拒むために、気づかぬふりをして、我が子の肉を口にした。
「何と美味なご馳走」
と、道化を装い、そのような俺を紂王は愚かと罵り、興味を失った。
そして私は息子の犠牲のもとに国を守る事が出来たのだ。
「うっ」
しかし俺はあの日以来、何も口にする事が出来ない身体になった。
憎しみと悲しみの震え、
痩せ細る身体は、朽ち果て、やがて栄養失調で俺の命は終わりを迎えた。
はずだった。
「!!」
俺は再び瞼が開き、光を見た。
それは俺に与えられた生だった。
俺は甦ったのだ。
しかも水面に映る俺の顔は、
「伯邑考!」
理由は分からぬ。
しかし俺は確かに生きていた。
息子の顔をして。
いや?正確には親子であるのだから、若返っているのなら似ていても変ではない。
俺には生前の記憶が残っていた。
紂王への復讐。
そのために俺は命を与えられたのだ。
俺は息子の伯邑考もこの世界に復活したのではないかと探し回ったが、
どこに向かっても、何処を探しても存在しなかった。
俺はその後、己を磨いた。
俺の身体は人ではない事にも気付いた。
死ぬ程の傷を負ったとしても再生し、そして流れる血が己の意思で操れるのだ。
旅の途中、俺は俺と同種の能力を持ち合わせた人と遭遇し、襲われた。
奴らは俺を殺す事で、食し、その力と能力を奪うつもりなのだと知る。
「なるほど」
同種の化け物を始末し、喰らえば俺は更に力を手に入れる事が出来るのだな。
「うぉおおお!」
俺はその後、カミシニと呼ばれる人種を狩り始めた。
「力が漲るぞ!」
俺は知っていた。
嫌でも感じ取っていたから。
俺は感知能力が異常に持ち合わせていたようなのだ。
他のカミシニも?いや、これは俺にはのみの優れた才能だと知る。
そもそもカミシニには気配を探る手段がない。
近距離まで近付けば、血が騒ぎ、臭いで見分けられる。
この地上に残るカミシニの能力者の居場所、力量、そして目的の相手を感知する事。
俺の感知能力は他にない特殊能力なのだ。
「憎き紂王の気配を感じる」
直ぐにでも仇を取りに向かいたかったが、奴の周りには化け物染みた猛者が守護していると分かった。
「聞仲と趙公明か!今世でも紂王に付くか!」
俺には力が必要だった。
そこで俺は異様な気配を感じた。
カミシニと似てはいるが、異なる人種。
人なのか?カミシニなのか?
しかも妖怪なのか神族なのか分からない存在と同行しているようだ。
「興味深い」
力の増幅に焦りを感じていた事で、藁にもすがる思いだった。
そこで俺は姜子牙と出会う。
まだ未熟であった姜子牙は相手ではなかった。
奴の持つ力の秘密を手に入れる事が出来れば、突破口が見つかるかもしれん。
が、その神妖(大上狼君)に阻まれた。
楽に勝てる相手では無かった。
下手をして、このような場所で死ぬ事だけはあってはならぬ。
その時、油断した姜子牙の忌眼の力が解放し、俺は手傷を負ったのだ。
あの瞳の能力が力の秘密か?
しかし手に入れる事に執着している余裕は無かった。
俺は撤退したのだ。
「しかし収穫はあった」
神妖が持っていた剣を手に入れたのだ。
この剣から感じる力は、俺の力を段階的に跳ね上げる程の宝剣であった。
それから俺は己の力を高める為に動く。
紂王を討つ為には聞仲達が邪魔だからだ。
そこで俺は反勢力の元へ付いたのだ。
カミシニの勧誘に働く八仙に近付き、仲間として入り込んだ。
「血の盃」
西王母に従う為に交わす主従の契。
盃を口にすれば、その主には決して逆らう事は出来ぬ血の契約。
しかし紂王を討つ為には迷いが無かった。
俺は唯一カミシニであった玉面乙女から血の盃を受けると、その身の血が焼けるように全身を襲ったのだ。
「うぎゃあああ!」
死ぬ程の激痛を耐えた。
三度、盃を飲み干した。
八仙でも二度口にした事が限界だった。
それでも俺は生き抜き、大六仙血の力にまで覚醒出来たのだ。
大六仙血の上には倶利伽羅の王が存在する。
紂王率いる聞仲は倶利伽羅の王と聞く。
叶わぬか?
だが俺は七星剣を手に入れていた。
この剣を持つ俺は、倶利伽羅の王にも匹敵する。
これは自負だけではない。
俺の感知能力で、知った事実。
例え王たる器であろうと、討てられぬ化け物ではないのだと知ったのだ。
王たる資質は無くとも、奴を討てれば他に何も望まぬのだ。
その後、仙界に異変が起きた。
内乱が起きたのだ。
西王母を主神として統一していたが、新たに現れた倶利伽羅の王・東華帝君がその座を奪い手に入れたのだ。
俺はそのどさくさに再び人間界へと移り、この新生殷国に起きた反乱の動きに乗じてこの戦場へと現れたのだ。
それがまさか、あの日、俺に手傷を負わせた姜子牙が居ようとは思わなかったが。
俺は聞仲を姜子牙に足止めさせ、先に向かったのだが・・・
紂王だと感知した場所には、その血を引く殷郊が待ち構えていた。
紂王を討つ為に、今は目の前にいる邪魔者を先に討たねばならぬ。
「良かろう。紂王に我が子であるお前の首を手土産に持って行くのも余興だな」
しかし殷郊は軽く笑みを見せ、
「父上は私の命に価値は持ってはいない。決して涙を落としてはくれぬ。それでも俺はお前を父上のもとには行かせぬ」
この殷郊の言葉。
何か意味深であった。
次回予告
新生殷国の真王である紂王の息子。
殷郊
しかし、その生まれは呪われていた。
 




