姜子牙動揺??聞仲より告げられた真実!
聞仲を相手にする姜子牙。
しかし聞仲は倶利伽羅最強の武人だった。
私は姜子牙。
目の前に現れた聞仲にビクついているわけにもいかない。
殺らねば殺られる!
私は打神鞭を右手に持ち、左手に趙公明から手に入れた風の打神鞭を手にする。
「力の差は二刀流で補う!」
左右から繰り出される雷と風の打神鞭を巧みに操りながら攻撃を仕掛ける。
「・・・」
聞仲は無言だった。
ただ、ゆっくりと右腕に持つ打神鞭を人思いに振り下ろす。
「!!」
凄まじい衝撃が手首に走った。
聞仲の打神鞭は私の両方の打神鞭を床に押し付けるように沈ませ、その振動が私の手首を麻痺させたのだ。
まさか一撃で私を押し込めたのか?
こんなに力の差はあるのか?
「とんでもない化け物だよ」
正直、勝ち目は勿論、生きて逃れる事さえ不可能だと思い知らされた。
「どうやらお手上げか?痺れて腕も上がらないけどな」
せめて口だけでもと抗ってみたが、聞仲は私を睨みつけ、言葉を発したのだ。
「この世でも神の人形を演じるか?太公望よ」
「何度も言うがな?私の名は姜子牙だ!太公望は別人であってな、そうだ!お前の友人の趙公明を討ったのは私ではなくその太公望だぞ!この場にいたら差し出してやったぞ!残念だ」
だが、聞仲は動揺する事もなく、この私の知らぬ事を告げた。
「姜子牙。それは太公望の人の身であった頃の名だ」
「なっ!?」
コレには私も自分自身の耳を疑った。
「ちょっ?ちょっと?何故、お前がそのような事を知っておる?そもそも私も知らない話だぞ!たとえ偽りでも信じそうになった」
「偽りはお前の今の存在だ」
「!?」
何を言っているのかわからない。
そもそも太公望と私には本当に何かしら関係があると言うのだろうか?
「なぁ、聞仲よ?冥土の土産と言ったらなんだが教えては貰えぬか?その太公望って奴を。私は正直、太公望の事を天界の遺跡で読んだ書物でしか知らぬのだ。知らぬ者と関係あるか別として、何も知らずに殺されるのは死んでも死にきれぬと思わないか?」
聞仲は無言のまま私を見ていた。
う〜時間稼ぎのつもりであったが、やはり無駄のようだな。
こうなれば!
「太公望は嘗て仙界と地上界に起きた仙界大戦の英雄・・・」
って、話すんか〜い!
(有難う)
「しかし本当の太公望の目的は戦争の終息などではない」
「何だと?どう言う事だ?」
「あの者は別の目的で動いていたに過ぎぬ。それは許されぬ所業」
「太公望の目的とは何だったのだ?」
聞仲は答えた。
「世界に蔓延った神にも等しき強き力を持つ魂の収集だ」
「はっ?」
神にも等しき力を持つ者達の魂を集めていたって?
何のために?
「一体、誰がなんの為にそんな事を?太公望が始めたわけではあるまい?黒幕がおるのだろう?そして何の為に魂の収集なんてやらせていたのだ?」
「神だ・・・」
「へっ?」
突拍子もない。
神が太公望に命じて魂収集だと?
「いやいやいや!意味分からぬわ。神が魂集めてどうするつもりだ?それに何故、お前がそのような事を知っておるのだ?」
聞仲は私の問いに答え続ける。
「俺は昔、天界で仙の力を求め修行していた。力を手に入れ、この地上を平和にするためにな。だが、そこで俺は聞いたのだ」
聞仲は学んだばかりの千里眼で天界全土を見通してやろうと意識を飛ばして覗いていた。
聞仲の天才ぶりは天界下級層を抜けて、天界の最上層にまで登り詰めた。
そこで強固な結界を擦り抜け、最高神達が行っていた計画を知ってしまったのだ。
今、地上界には聞仲程ではないが力を手に入れた人間が「仙」として増え続けていた。
このままでは神と人の関係はいつか逆転してしまうのではないかと。
そこで最高神達は地上界で戦争を起こし、そのどさくさに人間達を始末しようと。
しかも神々は人間の持つ力は惜しいと、消すのではなく天界の動力として使う事を計画する。
その為に魂を封神する必要があった。
しかし神々が表立って虐殺は行えない。
そこで駒を地上界へと投じたのだ。
神の力を無効にする忌種能力を持つ眼を宿させた二人の若者に。
それが妲己と、太公望なのだ。
「し、信じられぬ!」
「俺は神々の計画を知り、そして反旗を翻した。この俺が先立ち、投じられた刺客を始末する事を誓った」
そして聞仲を中心に天界の野望に相対するため、金星霊母と趙公明が加わる。
そしてもう一人の親友であった黄飛虎も!
「何だってぇー!?」
黄飛虎が親友??
「覚えているか?あの黄飛虎が俺を前にして無抵抗に命を落とした事を」
「!!」
それは天界遺跡での邂逅。
張奎との一騎打ちの最中、この聞仲が現れて、私達の目の前で討たれたのだ。
しかも殆ど無抵抗に。
あの時の私は、ただ実力差からだと思っていたが、そうではなかったのか?
「黄飛虎は既に呪われていたのだ」
「どう言う事だ!」
「あの者の意思は、前世同様に操られていた。それは本人の意思が及ばぬ無意識に働くように仕掛けられていた」
「何を?」
「ある者をその命をかけて守るように」
それは、あの時にいたのは私と黄天下?
「馬鹿な話を。黄飛虎は息子の黄天下と、旅の途中で知り合った私を守るために戦ってくれたに過ぎない。呪いとか関係あるものか!アレは黄飛虎の義だ!」
「違う」
すると聞仲は私に真実を伝える。
「前世の戦いにて黄飛虎が私と袂を分かった理由。それは奴が先に出会ってしまったのだ。太公望にと!」
「なぬ?」
太公望は黄飛虎を気に入り、聞仲との戦いを有利に進ませる為に、忌眼の能力で無意識下に暗示をかけたのだ。
「その命を私を守るために使え」
その呪いはカミシニとして甦った黄飛虎にも働いた。
正確には、再び発動した。
この私の忌眼を目にした時に再び。
本人は抗えない。
気づかない。
何も違和感に気付く事はなく、人が食し、寝て、生きる事に違和感を感じないかの如く。
当たり前の事のように。
「そんなこじつけは止せ!」
「あの時、俺は奴に告げた」
「!!」
「そして問いた」
「な、何をだ?」
「今、お前が救おうとしているのは息子か?それとも」
その問いに始めて黄飛虎は気付く。
無意識に救おうとしていたのは息子ではなく、この私の顔が先に浮かんだ事に。
知り合ったばかりの私の姿。
最優先に守ろうとする本能の違和感に。
「奴は俺に言った。運命を変えるために俺は退場すると。それが抗う唯一の手段だとな。そして俺に介錯を頼んだ」
「そんな、ば、馬鹿な。ありえぬ」
膝を付き、私は座り込む。
「馬鹿な。それが本当なら、黄飛虎は私のせいで死んだようなものではないか」
全ての話が真実か分からない。
しかし奴ほどの猛者が無抵抗に殺された理由が納得出来る。
出来てしまうのだ。
最期に黄飛虎が私を見たあの眼差しは、アレは私への怒りか?
恨みなのか?
「!!」
では、私は?
この話が真実ならば、今、一緒に戦っている黄天下はどうなのだ?
アイツにも同じ暗示をかけている?
だから一緒に戦っている?
それが本当なら、私は・・・
「黄天下に顔向け出来ぬではないか」
戦意を喪失した私に、聞仲は言った。
「お前を始末すれば、全て終わる」
「!!」
聞仲が近付くのが分かる。
そして私は顔を上げた時、
「ぐぉおおおお!」
聞仲が苦しみ始めたのだ。
(な、何が?)
「キサマ!この俺に暗示をかけるつもりか!黄飛虎の代わりに!」
「何を言って?」
が、私の忌眼が光り輝き、その閃光が聞仲を苦しめていたのだ。
わ、私は何を?
私の意思では無かった。
勝手に忌眼が発動しているのだ。
しかしこれでは?
「・・・聞仲が話した話が真実だと言っているようなものではないか??」
が、聞仲の様子が変わる。
「ふ、ふはははは!愚か!」
聞仲は額の第三の眼が光り輝き、私の忌眼の暗示から解き放たれたのだ。
「忌眼の者を滅ぼすのは忌眼のみ」
すると、聞仲の額の眼が銀色に光り輝いていた。
あの光は間違い無かった。
「あ、アレはまさか?い、忌眼なのか!」
聞仲は私を見下ろし答える。
「かつて俺と紂王様が手を結んだ妲己が教えてくれた。倶利伽羅の器を持つ者は、その力を進化させた時に覚醒すると。この忌わしき忌眼の力をな!」
「!!」
そして振り下ろす剣に私は覚悟した。
何も出来ないまま。
このまま死んでも構わぬと。
「!!」
が、その剣は止められたのだ。
私の目の前で抜刀された剣が聞仲の剣を受け止め、そして弾く。
その者は背中越しに私に言った。
「雑念は捨てろ!真実を知りたくば生きて、その真実を全て解き明かせ!それでも死にたくばその後にしろ」
その者は私を叱咤した。
そして聞仲を引きつけ私に伝える。
「準備は出来た。この聞仲は俺が相手をする。お前は先に行け」
「しかし、私は」
「ぐずぐずするな!」
「!!」
私はその場を任して、この場から逃げるように部屋から立ち去ったのだ。
「な、ナタク。私は分からぬ」
私を救ったのはナタク。
「邪魔をするか?天界神」
前に出る聞仲の足下の床が斬撃で裂かれて行く手を塞がれる。
「お前と戦う準備が出来たと言ったはずだ」
ナタクはイメージトレーニングで、聞仲と戦い続けて、対聞仲に焦点を合わせていたのだ。
その勝率は9999戦4999勝5000敗。
(大体、半々だ。まぁ、忌眼覚醒までは想定してはいなかったがな)
少し不安だが、倶利伽羅最強の聞仲を相手に闘神ナタクが挑む。
次回予告
知らされた真実。
姜子牙の代わりに戦うナタクは聞仲を本当に倒せるのか?
法子「あら?ナタク、私達に挨拶無しって酷くない?」




