因縁の戦い?あの日の決着!?
黄天化が張奎を倒した。
その頃、先に向かった姜子牙は?
私は姜子牙。
私は紂王城の中を走り回る。
私を先に向かわせてくれた黄天下に報いる為にも、私が必ず紂王を討つ!
私は紂王城の通路と階段を行ったり来たりしていた。
(おかしい。同じ道を何度も通っているようだ。何か仕掛けられているのか?もしそうなら、幾ら走り回っていても拉致があかない。体力の無駄だ。なら、どうする?)
私は一度足を止めると、忌眼を集中させて壁や天井を見回し、そしてその先を見透してみた。
私の忌眼が銀色に光り輝くと、カミシニを探知するかのように動く物体を見付けた。
「この城はもぬけの殻か?いや?雑兵はおらんが、他に私の他に黄天下と張奎。その他にも居るな」
この紂王城に感じるのは四人?五人か?
恐らく、残るその者達のどちらかが紂王に間違いあるまい。
「ん?」
その時、私は移動を繰り返している何者かの動き、その感じに足が向く。
「・・・」
恐らくだが、その者は間違いなく紂王ではあるまい。
紂王ではないのに何故、最優先する必要があると言うのか?
しかし私は動かずには、その者のいる場所に行かねばならないと感じた。
「七メートル、いや?違う」
私はその者の居場所が瞬時に移動し、私の背後へと移ったのだ。
「ふぅ〜。どうやら再びお前と会えるとは思わなかった。しかもこのようなタイミングで、この場所でとな」
私は背後を振り向くと、そこには見知った武人が立っていたのだ。
「それは俺とて同じだ。この俺に土を付けた者が居ようとは思わなかった。そうか、お前は紂王の配下か?いや、そうか、なるほどな。お前が噂に聞く新生殷国に楯突く身の程知らずの反乱分子と言うわけか」
私は腰にかけた打神鞭をすかさず手に取り振り払うと、鞭は目の前の武人に襲いかかっていた。
「!!」
しかし私の鞭は全て、その者の持つ剣にて弾かれたのだ。
「姫伯邑考!」
姫伯邑考、私が大上狼君のもとで修行している時に現れ、襲って来たカミシニ。
嘗て私は第三仙血の姫伯邑考相手に手も足も出なかった。
しかし今日までの戦いの日々、成長した私なら勝てる。
「私の旅はお前から始まった。お前との因縁を返させて貰うぞ!」
飛び出した私だったが、姫伯邑考は動かずにその手に持つ豪勢な剣の鞘に手を置く。
「!!」
その瞬間、私は吹き飛ばされた。
何が起きた?
目の前に七つの閃光が通り抜けたかと思うと、気付いたら吹き飛ばされていた。
そうか、アレは七星剣。
大上狼君が所持していた宝剣。
聞いた話だと、真王が持つ剣だと言われ、星の力が宿るとか。
しかもカミシニに傷一つ付けられない神剣の中で、太陽剣以外に効果あると。
しかもそのはず、太陽剣とは七星剣より放つ光の欠片を錬金術で留め、剣に宿させたものだから。カミシニを斬る唯一無比の剣。
「つまりあの剣を持てば本来の格は当てにならないわけか」
しかも今の姫伯邑考は以前よりも、実力は跳ね上がっているようだ。
第四、いや!第五仙血か?
しかもあの七星剣を持てば、第六仙血以上の倶利伽羅の王に匹敵する。
「ふん。しかし今、俺の獲物はお前ではない。俺の用事が終わった後に相手してやる。黙って待っていろ」
「ふざけるな!お前の残して来た呪いを断ち切る事も、この私の目的なのだよ!」
今、私が修行していた仙山には、大上狼君が氷の棺の中に自らを封じている。
その理由は、この姫伯邑考との戦いで受けた魔性の血の浸食を抑えるため。
その血の呪いを解くには、姫伯邑考を倒す事しかないのだ。
「そうか、あの神妖の呪いを解くためか?良かろう」
「ん?」
すると姫伯邑考は自らの血を掌に浮かばせると、手を叩いたのだ。
「!!」
私の忌眼で見える姫伯邑考の手から広がる糸のようなものが断ち切られたように見えた。
「今、何をしたと言うのだ?」
「お前の目的を果たしてやった。俺の呪いは既に解かれただろう」
「何だと!?」
それはつまり、大上狼君を蝕む魔性の血が解き放たれたのだ。
嘘偽りでないのは、私の忌眼だからこそ解る。
確かに断ち切られた。
恐らく、今頃大上狼君は氷の棺から抜け出し解放されたに違いない。
「よ、良かった・・・」
が、しかし何故?
「何のつもりだ?姫伯邑考!」
「俺の邪魔されたくないのでな。呪縛は解いてやった。それともお前が早死にしたくば後にしろ。俺には先にやらねばならぬ」
「・・・・」
迷う。確かに目の前の相手は敵だ。
しかし今倒すべきなのか?
少なくとも、私情で力を使い果たしてしまえば、後に待ちかまえる大物相手に力の温存は出来ぬだろう。
「分かった!お前との決着は後回しだ。その時は、お前が持つその剣は返してもらうからな」
すると姫伯邑考は私に近づきながら、隣に来たところで呟く。
「だがその前に、お前には俺のために一つ働いて貰うぞ」
「へっ?」
その瞬間、姫伯邑考が私の背中を押すと壁にぶつかりそうになり手を付く。
「ふわっ!?」
が、その壁は幻覚で私は転がるように転んでしまった。
「何をする!早速裏切るつもりか?」
姫伯邑考は私を見下ろし、答える。
「裏切りはせん。俺はお前とは戦わない。お前と戦うのは、そうだな。お前が再び俺の前に現れるまでお預けだ」
「んんん?」
「一つ付き足せば、お前が生きて現れる事が出来たらの話だがな」
「そ、それはどう言う?」
が、私の目の前で壁が徐々に塞がっていき、腕を伸ばす前に閉じる。
「おっ、おぃいい!」
私が入った場所は王を中心に配下の官職達が集まり会議が行われるような広い部屋だった。
「この空間には誰一人いないようだが?何か、とてつもなく嫌な予感するぞ」
直後、この空間からではなく、別の場所から何か!?
本能的に感じたのだ。
何かが近付いて来ている。
とてつもなく強い力を持つ者が、私のいるこの場所に迫って来ていたのだ。
私は頭上を見上げ、そしてその者から発する圧に圧し潰されないように堪える。
「やはりお前との戦いは避けられぬと言う事か。のぉ?聞仲!!」
天井を貫き私の目の前に現れた者。
聞仲!!
紛れもなく最強のカミシニであり、倶利伽羅の王に最も近い存在。
どうやら私の戦いは楽にはいかないようだ。
次回予告
最強の倶利伽羅。
聞仲との再戦?
しかし聞仲を足止めしていた者達は?




