焦る女子高生!!
黒川の相手をするのは勇斗!
姉を泣かした黒川をぶっ倒せ!
私は法子。
私の弟の勇斗が真言を唱えると、その姿が神へと変わったの!
軍茶利明王…
その姿こそ勇斗の転生前の姿!
「神になっただと?所詮は見かけ倒しだろ?それに神の力は俺には効かないんだよな!むしろ俺は神以上の存在なんだ!」
「試してみるか?」
黒川の安易な考えに勇斗は一瞬で間合いを取る。
「はゃ!」
勇斗は拳で黒川をぶん殴ったの!吹き飛ぶ黒川はパニックを起こす。速すぎる動きだけでなく、自分自身にダメージを与えるなんて?
「忘れたのか?俺の蛇神の血はお前達の血と反発するんだぜ?」
気付くと勇斗の拳には真っ赤に染まる自分の血が染み込んでいたの。
「先ずは俺の怒りをぶつける。次が本題だ!」
勇斗の手から垂れる血が異様な動きを見せると、それは二匹の赤い蛇となり、更に鞭のように扱う。
『蛇血鞭』
その速度は音速!僅かに触れた瞬間、黒川の鎧が割れたの!その事に気付いた黒川は初めて危機感を持つ。
「マジかよ?俺は神以上の存在になれたんじゃなかったのかよ!」
「とんだ勘違いだぁ!このエロ蚊野郎!」
鞭が唸り、黒川の身体を叩き付ける。
「た…たまらん!」
黒川は鞭に打たれながら逃げ始める。が、鞭の攻撃は逃げ場を塞ぐ。
「逃がさねぇよ?お前は俺が始末する。姉貴を泣かした罪は万死だ!」
『蛇血矛』
勇斗の鞭が形を変えて二本の矛になると、黒川目掛けて投げ付ける!
「う、うわぁあああ!」
投げられた二本の蛇血矛は黒川の胸を貫き更に顔面をも貫いた。黒川はそのまま動かなくなり、そして固まるようにひび割れていく。
やったのね?
「上等!」
勇斗の勝利に私が駆け寄ると、宮ちゃん達も集まって来たの。
「今回は勇斗君に助けられたわ?」
「別に…」
ボソッと答える勇斗は普段は女の子と喋らないんだよね。
その時、黒川の死骸を見た美和さんが叫んだの!
「これ、脱け殻よ!中身がないわ!」
「何ですって!?」
戸惑う私達は警戒しながら辺りを見回す。黒川はまだ何処かに隠れているの?
その時、私は大切な事に気付いたの。黒川の狙いは間違いなく…
「葉子!!」
私達が振り向いた先に意識を失っていた葉子の姿がなかった。そして風穴が空いた体育館の天井から黒川の声が?
「ばーかぁ!ばーかぁ!俺がそう簡単にくたばるものかぁ!今までの憂さ晴らしにこの娘はいただくぜ?美味しく頂いてやるから安心しろよ?ひゃはははは!」
私達は天井に向かって飛び上がる。絶対に黒川を逃がしたりはしないわ!
私達が天井の上に着地した時、私達は囲まれていたの。化け物達によって…
「お前ら?こいつ達の相手を頼むわ!」
黒川は蚊の羽を背中から出すと、葉子を連れて校舎へと逃げて行った。
嘘よ…
「させるかぁー!」
私は黒川を追って校舎へとジャンプし、突入したの。
「待てよ!姉貴、無茶だ一人で!」
勇斗の制止を無視して私は飛び出していた。
「待ちなさい!あのまま行かせたら無駄死になるだけだって何度も言ってるのに!あんな温室育ちに何が出来るのよ!」
玲羅の言葉に勇斗のかんにさわる。
「姉貴が温室育ちだ?お前ら、知ったかぶりするんじゃねぇーよ!」
「何がよ?」
「姉貴はな…あんな感じに無茶ばかりする馬鹿で、それでも立ち止まらない…それは何故か解るか?姉貴は…いつ死ぬか解らないんだよ!」
「それって?」
「姉貴は16の歳になるまでに必ず死ぬ予言が出てるんだ。それはいつか解らない…明日か?明後日か?今、直ぐに死ぬ可能性だってあるんだよ!今だって!」
顔を塞ぐ玲羅は、
「それって…」
玲羅や他のカミシニの力を持つ者達にとって、死と隣り合わせは誰よりも知っている。死神が鎌を首にかけた状態で生きた心地なんかしない。心を閉ざして死を待っていた過去、自分達はかつて救われた。けど、法子は今、鎌を首にかけられた状態で笑顔を皆に見せ、自分自身の事でなく、他人のために命を張っているなんて…
そして走る背中を目で追うと、私は飛び上がる。
「何?あのジャンプ力?一度で校舎まで?」
驚く玲羅に、宮ちゃんが答える。
「あの娘はピンチになる度に驚異的な力を発揮するのよ。もう今の彼女は追えないわ!私達は目の前の敵を殲滅し後を追います」
「は、はい!」
「姉貴、絶対に俺が行くまで死ぬんじゃねぇよ!」
私は体育館の屋根上からジャンプして、校舎の三階の窓を割って廊下に転げるよう侵入する。
「ウゴゴゴ…」
「!!」
校舎内には飛び込んで来た私に気付く化け物達がいた。一体?二体?五体はいるわね?
「餌ぁ…」「餌ぁ…」
もう人間じゃない…
化け物よ!
私は金の錫杖を掌から出現させて構える。同時に手首に貼った太陽神の加護札が光る。
「私の邪魔するなら手加減はしないわ!あんた達がどんな過去から魔物となったかなんて関係ない!私を邪魔する者は全て敵だぁー!」
開き直り?
違う。言葉にして自分自身に言い聞かせないと戦えないから…
私に、この化け物達が人間の、この学園の生徒達だった記憶が流れ込む。平穏かつ平和な日常生活に、突如化け物に襲われ、その恐怖から悪魔の誘いに手を伸ばして魔物となった。
けど、ごめんなさい…
私は今、止まるわけには行かない!
黒川に連れて行かれた葉子を一刻も早く救わないといけないんだから!
私は襲い掛かる化け物の攻撃を躱しながら先を急ぐ。
黒川は屋上に向かって行ったわ!
目指すは屋上!
その時…
「えっ?」
私は腕を伸ばした化け物に襟を掴まれて、窓際に投げられたの。私は窓硝子を割って外に落下する。
「くぅおのぉお!」
私は身を翻して無事に着地したの。落下した場所を振り向くと、化け物達が同じく窓硝子を割って飛び降りて来たの。更に最初から地上にいた化け物が物音に気付いて姿を現す。
完全に囲まれた?
だけど、
「邪魔をするなぁー!」
私の覇気が化け物を怯ませる。私は飛び上がり、化け物の図上に着地しながら倒すと、錫杖を化け物の顔面に突き付ける!
「死にたく…ない…」
「!!」
化け物の命乞いに私は錫杖を寸前で止めてしまい、その隙をつかれて腕を振り払われ吹っ飛ぶ。
校舎の壁にぶつかり、私は意識が飛びそうになったけれど、葉子の姿が頭を過り、奮い起たせる!
けど、足に力が入らずに崩れた。
倒れる私を囲む化け物達に私は歯を食い縛る。
その時!
『後悔しないように戦え!守りたい者がいるなら、決して手を離すな!離したら、また手を伸ばして掴みなおせ!』
「えっ?」
直後、化け物達が声に気付くと同時に斬られたの!
一体、二体、倒れ、命乞いする化け物の首が容赦なく飛んだの!
「あぁ…」
私はその彼を知らない?私くらいの歳の彼は、まるで…素人のような剣捌きで魔物をぶった斬ってた??
「貴方は?誰?」
彼は私に声をかけられて名乗ったの。
「真坂 正義です。総本山から来ました!」
あれ?
さっきの声と違う?
すると彼の右手に付いてる宝石が光輝くと、その光の中から少年が現れたの!
『よぉ?法子!久しぶりだな?』
「えっ?誰?」
「そうかぁ…本当に記憶ないんだな?寂しいもんだ。オシメ交換してやったのによ!」
「ななぁににを??」
「まぁ、良い…まだ厄介ななのがいるみたいだぞ?正義?油断するなよ?」
「えっ?あ、うん」
そして彼等が何者か解らない状態で新たな敵が姿を現したの。
「まさかの真坂かよ?」
「!!」
真坂君を知る化け物の言葉に、真坂君は身体を震わせていたの。
「隆?なのか?」
まさか、知り合いなの?
そして、その隆と呼ばれる蚩尤鬼人の背後に姿を見せる女の子もまた、
「正義くん?」
「嘘だろ…君まで?」
真坂君は私に向かって問い掛ける。
「君は、あそこにいる二人が人間に見えるかい?」
「えっ?あ、うん。化け物にされた人間の姿よ…」
「だから戦えないんだね?だったら教えてあげる!奴等は人間の皮を被った化け物だ!決して人間じゃない!人間じゃないんだ!」
「でも…」
真坂君の瞳は先程までの頼り無い眼差しから、真の戦士の目をしていたの。
一体、あの二人と何があったの?そして真坂君の豹変ぶりは何?
すると真坂君の右手から出た光の少年は私に向かって答えたの。
『気になるか?だったら教えてやろう。お前が戦っている連中が何者なのかを!』
「えっ?」
すると私の頭の中に光の少年から放たれた光が、真坂 正義君と光の少年、それに二人の関係が映像となって入って来たの。
次話より、再び番外編?
そんなこんな。
次回予告
急遽、番外編
真坂 正義くんの過去?