趙公明の無念!
太公望と趙公明の戦いの結末は?
俺は黄天下。
俺は何を見ている?
趙公明を相手にしている太公望。
今まで狩った死者の躯を操り戦わせ、その影に潜み、盾にしながら攻撃を仕掛ける。
正直、胸糞悪い戦術だ。
「お前達、直ぐに楽にしてやる」
かつて手下だった者達を倶利伽羅の力を手刀に使い斬り裂いていく。
消滅していく仲間達の中より、弟弟子であった余元が剣を抜き向かって来る。
「余元よ。直ぐに楽にしてやる」
振り下ろした手刀を受け止めた余元が頭上から一刀両断にされて消滅する。
「次はお前だぁー!」
突き出した手方が奥から飛び出して来たカミシニを粉砕すると、その背後に潜み迫っていた太公望を捉える。
「終わりだぁ!」
が、その攻撃を見越していたかのように太公望は指を交差させていた。
「血縛」
その術が発動した時、この空間の壁や天井、足元から血縄が飛び出して来て趙公明の四肢に絡みつき拘束したのだ。
「ぬぅうう!このようなもの!」
倶利伽羅の力を解放して引き千切ろうとするが、ビクともしない。
「ぐぉおおお!」
それどころか倶利伽羅の力が収縮しているではないか?
そうか、あの血縄が趙公明の力を吸収しているのか!
この血界の中では、倶利伽羅の力をも抑え込むと言うのか?
「趙公明よ。お前は油断してこの空間に閉じ込められた地点で、既に詰んでおるのだよ。後は覚悟するだけよ。点穴」
突き出した指が趙公明の胸に突き刺さり、正確に血流を破壊していく。
「うがぁぉああ!」
「楽に封神してやる。お前の力はこの忌眼の中で糧となるだろう」
「ハァハァ。させるか」
趙公明は抗うように倶利伽羅の力を解放させ、せめて目の前の太公望を巻き添えにして自爆を試みるが、身体に巻き付く血の拘束が倶利伽羅の力すら吸収していく。
まるで力が強いほど、吸引力は勢いを増す。
「諦めよ!そして成仏せよ!」
太公望は指先に忌眼の力を込め、趙公明の胸に容赦なく突き出す。
倶利伽羅の力を吸引した忌眼の力は趙公明の身体を鎧事貫通したのだ。
「ごふっ!太公望!この怨み決して許さぬ。この俺が死すとも、俺の友、聞仲が必ずお前を地獄に落とすからなぁー!」
貫いた腕から忌眼の力が趙公明の身体を内部から崩壊させていき、そして広がるように塵と化していく。
「封神!」
マジに倒しやがった!
この血界に閉じ込め、その力を抑え込み、
さらに力を奪い取りながら消耗させ、確実に仕留める。
まるで全て計算されていたかのような。
趙公明の魂が太公望の右目の忌眼に吸い込まれようとしたその時だった。
「!!」
突如、結界に亀裂が入り込み、眩しい光が入り込むと血界が気化していく。
そして、この血界を破壊して何者かが入り込んだのだ。
敵か味方か?
その者は趙公明を倒した太公望に斬りかかる。
「ぬっ!」
その者は立ち上がると、太公望に奪われつつあった趙公明の魂を己のマントで覆うと、奪還したのだ。
「趙公明。お前の仇は必ず俺が取る」
その者から発する力は何者も寄せ付けない迫力があった。
同時にその者が何者か分かった。
「まさか総大将自ら現れるとはな?聞仲」
や、奴が聞仲なのか?
「だが今ではない」
その言葉には怒りと悲しみが込められ、威圧感に押し潰されそうだった。
そして聞仲は浮遊すると、趙公明の魂を抱き、黒麒麟に跨り戦場から離脱したのだった。
「残念だが、お前に私は倒せぬ。そしてお前を倒すのは私ではなく…」
太公望の姿は血界が消えると同時にその場から消えたのだ。
残された俺は未だに動かぬ姜子牙を抱えていた。
「ぐほぉ!」
「姜子牙!」
息を吹き返した姜子牙は状況を何一つ分からずに、指一つ動かない消耗と疲労に口をパクパクさせていた。
「主様〜!死なないで〜」
「えっ?」
気付くと人語を話す獣が隣にいた。
「誰?お前?」
「私は四不象です!」
「非常食で良いのか?」
「違うわ!」
と、そこにナタクが近づく。
「お前達、中で何があったか教えろ」
そして俺は、語った。
俺達が倒すべき敵が余りにも強大なのだと言う事を。
次回予告
目覚めた姜子牙とナタクは黄天下から聞いた話は、戸惑いしかなかった。
法子「あら?画面が写ったようね?続き見よ」




