姜子牙死す?現れし噂の男??
趙公明との戦いで姜子牙は敗れ去った。
しかし姜子牙の身に?
姜子牙の右の忌眼から噴き出す血液が大地を染め広がっていく。
姜子牙の身に何が起きていると言うのか?
そこに体力の回復とともに遅れて向かって来ているナタクがその異変に気付く。
「何だ?この力は?倶利伽羅の力とは別の嫌な感じがする」
その状況を目の当たりにした時、急ぎ金色の魔眼を発動させて斬りかかっていた。
姜子牙を中心に広がる血液が途中から方向を変えるようにドーム状に塞がっていくのだ。
その中には姜子牙だけでなく、趙公明と意識なく倒れている黄天下の姿が見えた。
「!!」
しかし剣は弾かれ、ナタクは血界の外に追いやられる。
そして閉じ込められた趙公明は塞がれた世界で見回すしかなかった。
「まさかこのような力を隠し持っていたとは驚かされる。この俺の倶利伽羅の血界のようなものか?しかし私の血中毒とは異なるようだが、何か別の特殊な能力があるのか?しかし術者を始末してしまえばそれで終わりだ」
趙公明が倒れたまま動かない姜子牙に向かって飛び出した時、
「させるものかぁー!」
目覚めたばかりの黄天下が妨害したのだ。
「お前から先に始末しても変わり無い。早死にしたければ構わんぞ」
趙公明の鋭い拳は鋭利な爪のように振り下ろされも、黄天下は冷静に受ける。
「姜子牙の奴が何をするつもりか知らないが、まだ何かやってくれるなら俺が時間を作る」
「身の程を知れ」
趙公明の差し出した腕から噴き出す血が霧のように広がっていく。
この霧全てが倶利伽羅の猛毒で、同種のカミシニでもその濃さゆえに死に至る。
「毒血噴霧」
「!!」
迫る猛毒に、黄天下は正面に向けて猛火を発し炎上させる。
「そんな霧、俺の炎で消し飛ばしてやる!」
黄天下は拳を握り締めると、倶利伽羅の力が赤く染まった右腕に集約し、異様な力を持った炎を趙公明に向けて放つ。
「倶利伽羅の炎拳!」
しかし趙公明は向かって来る炎に微動だにせずに、振り上げた手刀を振り下ろし斬撃を放つ。
「うッ!」
斬撃は炎を両断し、黄天下の胸を割いたのだ。
同時に辺り一いったいの毒霧が傷口に入り込み、激痛を与えた。
「がぁあああああ!」
目やら鼻やら耳から血が垂れると、黄天下は崩れるように膝の力が抜けてその場に正座の姿勢で座り込み動けなくなった。そして指一つ動かない事に気付く。
そこに趙公明が迫り、近づいて来ていた。
覚悟した黄天下だったが、
「!!」
その横を趙公明が通り過ぎ、そのまま倒れたままの姜子牙へと向かっていく。
「お前はやはり後回しだ。俺が先に殺すは、あの者(姜子牙)よ」
「や、や、め、ろ、手を、出すな」
そして趙公明は未だ倒れて動けぬ姜子牙の前に立ち止まると、
首元を片腕で掴み上げて睨みつける。
「ふふふ、ふはははは!そうかそうか」
突然、笑い出す趙公明に黄天下は意味が分からないでいた。
すると趙公明は足下に掴み上げた姜子牙を放り投げて転ばせたのだ。
「この男、既に事切れておる。つまり最後の力を使い果たし俺をこの血界に閉じ込めたつもりか」
「な、何だと!?」
黄天下は趙公明の言葉を聞き、信じられずにいた。
姜子牙が死んだなんて?
だが視界に写る姜子牙は確かに動かずに、何も感じなかったのだ。
「しかし愚策。俺ばかりでなく仲間を共に閉じ込めるとはな。この俺に殺してくれと言っているようなもんだ。黄天下を始末した後、この忌まわしい血界を破壊してやろう。それで全て終わる」
趙公明は振り返ると、
「待たせたな?お前は俺への生贄のようだ。この手で始末出来なかったソイツの代わりに慰み者にしてやろう」
そして一歩一歩引き換えして来た趙公明が黄天下を見下ろしたのだ。
「多少、いたぶるが我慢してくれ。今の俺はサディスト気分なのだ」
「か、勝手にしろ!例えう、動けずとも、喉元に噛み、ついて、やる」
「あはは!覚悟しろ!」
趙公明が黄天下に指先を向けた時、
「オイ!私も相手してくれぬか?趙公明よ?お前が会いたがっていたのは私の方であろう?」
「!!」
振り返った趙公明は、その場に立つ者の姿を見た時に身震いがした。
そして殺気だった目で睨み付ける。
「お、お前はた、太公望!!」
その者は太公望?
黒き仙衣を纏った若者だった。
そして確かにその容貌は姜子牙に似ていた。
「本当は出て来るつもりはなかったのだがのぉ。その者達がお前に殺されるのを黙って見ておれんかったのでな」
その者は指先を向けると、趙公明の足下から垂れ流れる血液が鋭い棘となって飛び出して来た。
「つまらん!」
趙公明が払うように棘を粉々にすると、粉砕した血液が視界を隠した。
「黄天下よ、その者の身体を大切に守っておれよ?」
「えっ?あれ?」
黄天下は自分の身体が動く事に気付く。
そして目の前に姜子牙が仰向けになっていた。
「お主に点穴を押させて貰った。失われた血を増殖させたから回復も多少出来たであろう?戦えるには程遠いがな」
「いつの間に?はっ!」
黄天下は慌てて未だ動かぬ姜子牙を抱き抱えると、
「う、嘘だろ?おい!姜子牙!」
姜子牙の身体は冷え切り、その目に光は失われていた。心臓の鼓動も止まり、趙公明の言った通り姜子牙は既に死んでいた。
「うわぁああああ!」
泣き叫ぶ黄天下に、太公望は制止した。
「大事に守っておれ?奴を倒したら蘇生せてやるつもりだ」
「何だって?生き返るのか?姜子牙は?動かないのだぞ?それでも?」
「生き返るさ。この私が趙公明を倒す事が出来たならな?おほほほ!」
まるで茶化すように太公望は趙公明と対峙していた。
「太公望。生前の俺を殺しただけでなく、仙界大戦を起こした張本人。俺はお前を殺す為に甦ったのだぁー!」
「そうかそうか。それは悪かったな?しかし悪いがもう一度封神させて貰うぞ。この私の新たな封神計画のためにな」
「!!」
この太公望なる者は何を巻き起こすのか?
そして姜子牙との関係は?
次回予告
太公望の参入に急展開が起きる。
法子「えっ?ちょっと!中が見えないわよ?何が起きているの?誰か実況してよ~」




