姜子牙と趙公明、限界の戦い!
趙公明もまた友である聞仲を王にするべく戦っていた。
互いの想いは、どちらに軍配を上げるのか?
私は姜子牙。
私と趙公明の戦いはどちらも退かず、お互いの攻防戦は極限の状態が続いていた。
私らを中心に雷と爆風が、まるで天変地異の嵐のように巻き起こる。
「決着がつかぬ。このまま消耗戦となるか?いつまで持ち堪えられる四不象?」
私は四不象に問う。
「・・・・・・」
「返答がないのが答えか?」
「ご主人様。ぎりぎりまで頑張りますから〜」
「気にするな。お主がおらんかったら、とっくに八つ裂きにされとるよ」
有利に思える趙公明も戦いの中で頬から冷や汗を垂らしていた。
(まさか、ここまでとは思わなかった。やはり早急に仕留めねば、いずれ聞仲に刃が向かうに違いない。それだけは今、ここで食い止めねばならぬ!)
趙公明の血管が浮き出ると、全身を廻る血が血蒸気を発する。
「あ、あれは!」
趙公明の発する血は猛毒。
カミシニですら、その倶利伽羅の血中濃度は猛毒であった。
巻き起こる突風に乗せて私に向かって障気が降りかかる。
「うぐぅあああ!」
私の全身に猛毒が降りかかり、身体が熔けていく。
「酷い攻撃とは思うが、私にこの手を使わせたのはお前がそれだけの手練だったからだ。誇りながら死せよ」
が、気付く。
「!!」
猛毒に溶解し硬直した私の身体の異変に。
そして上空を見上げる。
「ウォおおおおお!」
そこには雷を纒い急降下する私の姿があった。
「まさか、あの一瞬で身代わりを用意して、上空に逃れていたのか!しかし格好の的だぞ!」
趙公明は雷の矢の如き迫る私に向けて、
「毒手血刀!」
合わせるように手刀を突き出す。
直近で私の身体を貫く趙公明の手刀が突き出された時、気付く。
全く手応えが無かった事に!
「!!」
私の姿をして落下して来た雷の矢は姿を崩しながら地面に突き刺さると、それは打神鞭に変わっていた。
「この状況で身代わりだと?」
打神鞭は身代わりの罠。
本体の私は遅れて急降下し、加速して迫る私の攻撃に趙公明は出遅れていた。
「趙公明ーーー!!」
「オゴォオオオ!」
私の拳がその顔をぶん殴り、地面に叩きつけた。
私は勢い余り地面に転げ落ちると、直ぐ様に立ち上がり、トドメを刺しに駆け出そうとした時、
「ウヌよ!退けぇー!」
趙公明の聖獣である大黒虎が道を塞ぎ、そして私に向けて口から雷を放った。
「うがぁ!」
正面から雷をくらった私は、全身が麻痺して足止めを受けてしまった。
この一瞬が趙公明を倒せるチャンスなのに、何とか近づかねば!
威嚇する大黒虎の妨害に、私は念を込めると突き刺さっていた打神鞭が動き出して宙に浮くと、鞭が伸びて大黒虎に絡みつき放電させた。
「主人を守りたいと言う思いは天晴だが、私はお前の主を討たねばならぬ!悪く思うなよ!」
そして趙公明に駆け寄ろうとした時、私はその異変に気付く。
「な、何が、何が起きている?奴に?」
趙公明の身体が小刻みに痙攣し、そして宙に浮かび上がったのだ。
「アァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
叫びながら吐き出すような高密度の磁場が私の接近を拒む。
ソレは趙公明の意思とは関係ない異常事態であった。
「何が起きたと言うのだ?」
趙公明の指が微かに動くと、腕が持ち上がり自分の顔を掴む。
すると顔の皮膚が割れて、中から黒い顔が覗いた。
そしてギョロつく目がコッチを見た時、その趙公明は口を開く。
「す、全て思い出したぞ。俺はお前を知っていた。俺はお前に殺されたのだ。俺が殺すはお前が仕える王ではなく、お前だったのだ」
「何を言っとるか知らんが、私はお前をまだ殺してはおらんぞ!たわけ!むしろ今からトドメを刺すところだったのだ」
趙公明は立ち上がり私を黒面から覗く眼で睨みつけると、
「太公望!今度こそ俺がお前を討つ!」
「んなっ!?」
ま、また太公望だって?
「太公望なる厄介者が、どんだけ私と似てたのか知らんが、あかの他人だぞ!難癖をつけて八つ当たりするのは止せやい!」
「問答無用だ!太公望!」
「あれは!」
趙公明の殺気に同調した黒大虎が背後に出現すると、まるで同化するかのようにその身に消えていく。って、あれはまさか??
「倶利伽羅忌獣変化唯我独尊・黒虎!」
その身が黒く変色し、黒虎の鎧を纏い私の前に立ち凄む。
「まさか、まだあんな力を隠し持っておったのか?あ奴は!!!!」
まさか趙公明まで私と同じく聖獣変化するなんて冗談キツイぞ!
その威圧感に全身が震えた。
コレは間違いなく恐怖。
私は勝機を完全に失ったのだった。
次回予告
さらに手が付けられなくなった趙公明に姜子牙に策は残っているのか?
法子「なんか趙公明の様子が変じゃない?」
 




