趙公明の誓い!
姜子牙と四不象の奇策は趙公明相手に敵うのか?
私は趙公明
わ、私は今、どうなった?
姜子牙が突如、信じ難い力を目の前で解放し、この私に向けて雷の攻撃を放った。
油断していた私はまともに受け地面に直撃したのか?
黒虎は?
まだ麻痺して動けぬ私を庇うようにして、姜子牙が近付かないように威圧して牽制していた。
助かる。
まさかこの私が、こんな不覚を取るなんて完全に私の傲りだった。
こんなんでは、聞仲を真王にさせる私の目的が叶えぬではないか?
聞仲は未だに紂王を真王にさせようと尽くしているが、真に王たる資質はお前しかいない。それは配下の全てがそう感じているに違いない。
この私が、唯一認めし男。
そして信じるに価する親友。
私が聞仲に出会ったのは幼少の頃、金霊聖母の弟子として同じ門を叩いた時だった。
出会った時に私は感じた。
(只者ではない。存在が眩しい!?)
まるで太陽のようであった。
私は蒼遊宮で金霊聖母の下で道術を学び、聞仲と他の門下生と共に厳しい修行を受けていた。
数百もいた門下生は一人ひとりと己の実力を悟り、抜けていく中で、私と聞仲だけはその実力を上げていった。
気付くと、私の隣にはいつも聞仲がいた。
もともと口数が少ない聞仲も私の他に、同等に話せる者がいなかったから気が合った。
そんな時、私らは試された。
修行の最中、突如先の見えない霧を覆われ、私は道を失い彷徨った。
恐らく聞仲も共に霧に飲み込まれたから、同じく彷徨っているに違いない。
そんな時、私の目の前に光がさしたのだ。
「アレは?」
私の目の前に現れたのは大型の黒虎であった。
しかしただの獣ではないな?
「私に何用だ?この私を餌として望むなら、この私とて死にたくはない。お前を討ち倒してでも生きる事を望むぞ?」
すると大黒虎は答えた。
「食いはせぬ。俺は貴方を探し求めていた。我が主として」
「俺がお前の主だと?説明せよ」
すると大黒虎は答えたのだ。
自分の目的たる使命を。
始祖の聖獣神が聖獣の王達に命じた。
「我が命、永くは保たぬ。この世界の終わりを見届ける事は不可能である。そこでお前達に我が意志と力を分け与える事にした。そしてお前達は探さねばならぬ!この世界を統べる真王の主を!」
その場に集いし聖獣達は涙し、始祖の聖獣に託された聖獣は666体いた。
聖獣達は散り散りに消え、己の主を求め去ったのだと言う。
やがて天界の神々と契約したり、中には人間と契約する者までいた。
やがて始祖の聖獣が望まぬ方向へと動き始める。
各々が信じる主を真王へと奉る聖獣戦争が繰り広げられたのだ。
この事態に、聖獣の中でも高異種の者達が収拾を求めた。
それは聖獣達が聖獣の中より真王を選定した事から始まる。
そして選ばれし新たな聖獣の王こそ、黄龍王であった。
聖獣同士の戦いの抑止力となった事で、聖獣達は黄龍王の下でその血統の龍神族が指導権を持つ。
また四霊( 麒麟・鳳凰・霊亀・応竜)や四聖獣(青龍・朱雀・白虎・玄武)が新たな王として聖獣達を纏め始め争いは終わった。
しかし始祖の聖獣の意志を継ぎ、争いに組しない者達も残っており、この黒虎もまた己の主を探し求めていたのだと。
「この俺が王だと?アハハ!面白い冗談だな。それに俺が俺自身が王だと認めた男がいる。俺はその者に王たる資質があると信じているのだ」
すると大黒虎は答えた。
「我が主は貴方のみ。貴方が王を望まぬのなら、それも良し。私は貴方と主従を結びたい。コレは俺が貴方に王として惚れ込んだだけの事。貴方はただ、この俺を使ってくれれば良いのだ」
「そ、そうか?それなら断る道理をあるまい。良かろう。お前を俺の聖獣と認めよう」
「永遠の主従を誓います」
そして霧を抜けると、聞仲が俺の前にいた。
しかも聞仲もまた聖獣を仕えていたのだ。
「俺に使われたいらしい」
「あはは!やはり聞仲は俺の見立ては間違いは無かったな。お前には王たる資質があるのだよ!」
聞仲が手に入れた聖獣は黒麒麟。
聖獣の中でも高異種との事だ。
そして我ら二人は五十年の修行を終えて道術を全て学び下山した。
「私がもし聖獣なら、間違いなく聞仲を選ぶだろう。いや!私が聞仲を真王にさせてみせるぞ!」
私は立ち上がると、大黒虎を退かせ、姜子牙の前に立つ。
「!!」
そこで気付く。
まさか聖獣を仕えたのか?
この姜子牙なる者は?
この者も真王の器なのか?
「良かろう。災いの芽は今のうちに摘まねばなるまいな。この私の手で、聞仲の王道に雑草一つ残さんぞ!」
あの日、聞仲は私に問いた。
「趙公明、お前は地上に降りた後、何を成すつもりだ?」
「何って?特に考えてはいなかったな。仙となった我々の寿命は気にならなくなるなった。長い生の中で探し求めるつもりだったし、それに私はお前に付き添う予定だったからな。聞仲は目的があるのか?」
「俺は、俺は世界を本来ある形に戻すつもりだ」
「本来ある形?」
「そう。対等なる世を俺は造る」
「対等?何に対して対等と?」
「それは」
その言葉を聞いた私は目を丸くした。
聞仲は言ってのけたのだ。
「人間の世を造る」
それは何を意味しているのか?
我々は仙界で修行をしていて、人が知らされる事のない裏の秩序を知った。
人間界、地上界は天界の神々によって、全てが管理されていると言う事。
過去の戦乱や時代の変革には必ず神々がテコ入れをして、世界を思い通りに導く・・・支配していたのだ。
「俺は人を高みに上げる。その為に神々の呪縛から解き放つつもりだ。その為に俺は下剋上を天に突きつける」
「お、お前」
返答に困る私に聞仲は手を差し出した。
「俺が成そうとしている事は天への反乱。許される事ではなかろう。いや、俺は許されようとは思ってはいない。俺は人の世を、神々と対等の世界を作る為に、この命を捧げる!」
「何故、そんな事を私に話した?私が天に訴えればお前は打首になるぞ?」
「承知。俺の目的は俺一人では到底に叶わん。お前が俺と共に茨の道を歩いてくれなければ全ては虚言」
「そうか。ならば私はお前を嘘付きにしたくはないな。何せ、一度決めたら馬鹿真面目に突き進む単純者だ。大ボラを話すようなお前を私は知らない。出来ぬ、叶わぬ事を口にするような男でないと私はお前以上に知っている。私はそんなお前の良き理解者であり、友だと思っている。だから私はお前をホラ吹きにはしたくない。その為に私はお前の手を握り返す。私はお前と共に世界を変革させようぞ!」
そして握り合う私と聞仲は、世界を相手に二人から反乱の火を灯した。
しかし、私達は道半ばにて敗れた。
それが今度は神を殺す血を持ったカミシニとして再びこの世に生を受けて、道半ばして叶わなかった戦いを再び始める事が出来たのだ。
もう二度と負けはせぬ。
次回予告
姜子牙と趙公明。
倶利伽羅の力を持つ圧倒的な趙公明に姜子牙はどう戦う?
法子「ぐう~パンよ!」




