ナタク危機?渦巻く羅宣の業火!
姜子牙は危機を逃れ、黄天下も撃退した。
その時、ナタクは?
俺はナタクだ。
まさか、この俺が・・・
俺は姜子牙と黄天下と分かれて、追って来たカミシニを迎え討つ策に出た。
俺は離れた場所で立ち止まると、追って来た長い髭を生やしたカミシニは俺に対して余裕の笑みを見せていた。
「俺はお前がこの新生殷国に来た事を知って、心より喜んでいるのだ」
「ん?何処かで会った事があったか?」
「いや、ないだろう。しかし俺は前世でお前の父親、李靖に討たれて死んだのだ。その怨みを実の子であるお前を血祭りにして晴らしてやろうと思ってな」
李靖とは、我が父である毘沙門天。
托塔李天王 (たくとうりてんのう)の地上界での名だ。
「フッ」
「何が可笑しい?」
「俺を討った所で、父上は何も心傷まぬ。それに、討たれるのはお前の方だからな!」
俺は鞘から抜いた剣が魔眼の光と同調して鋭い斬撃を繰り出すと、羅宣は己の手首から垂れた血が硬直し、剣と化して受け止める。
「ヌゥゥウ!これが俺達同胞のカミシニを討ってきたお前の力か!奇怪な力よ」
受け止めた羅宣の力は間違いなく第五仙血であり、その力は俺が今まで戦って来た連中よりも強い。
「ならば、」
俺は駆け出すと同時に発光する俺の残像分身で眩ますと、四方八方から斬りかかった。
「どれが本物だ?どれだか分からないなら、全て斬り伏せるまでの事だ!」
羅宣は自ら身体を傷つけ血が噴き出すと、全身を真っ赤に染め、凝固しながら鎧が強化し、更に三面の頭と六本の腕が出現した。そして真ん中の顔面の額が割れて第三の眼が出現する。
「コレが俺の六手三顔の術よ!」
三面の六つの眼が俺の動きを見切り、剣を握る六本の腕から繰り出す攻撃は、向かって来る俺の残像を消し去り、そして本体の俺に剣を突き立てる。
「!!」
咄嗟に身を翻し軌道を変えて躱すと、追撃の斬撃を捌きながら後退する。
「この姿の俺は倶利伽羅の王につぐ強さだと自負しておる。うはははは!」
すると血溜まりの足下から盛り上がってきて、真っ赤な火を吹く馬が出現して羅宣を乗せて宙に浮く。
「今からお前の逃げ場を無くしてやろう。それ!赤煙駒よ!」
赤煙駒と呼ばれた馬は口から火炎放射を吹き出すと、俺の周りに炎の壁を作り上げて閉じ込めたのだ。
「どうだ?見下された気分は?そのカミシニの血が混ぜ込んだ業火の中では長くは保つまい?」
「・・・」
確かに長くは保たんだろう。
抜け道は一つ。
頭上に見える羅宣の騎乗した羅宣への道。
しかしこれは間違いなく誘っている罠。
突っ込んだ所を返り討ちにするか?
「ならば受けて立つ!」
俺は腰を下げて剣を鞘に収めると、魔眼の力を籠めて一気に抜刀する。
「ウォおおおお!超神速・魔眼抜刀術!」
神速を超えた超神速。
「ヌゥ!」
羅宣も七つの眼を凝らし、俺の接近を視界で捉えていた。
「そのまま向かって来た所を斬る」
羅宣が俺の速さを目に捉え、その六本の腕から繰り出す剣を振り下ろした時、視界から俺の姿は消えた。
「また加速し、した!」
直後、俺は炎の中から抜け出していた。
同時に俺の抜刀は羅宣の胴体を両断し、血を噴き出させながら落下していく。
「!!」
が、落下していく羅宣の姿が液体のまま蒸発すると、残された赤煙駒の背が盛り上がり突き破る。すると中から抜け出て来たのは羅宣だった。
「ふははははは!本体はコッチだ!」
そして振り下ろす斬撃が油断した俺に直撃し、吹き飛ばされながら地面に落下して直撃する。
「ぐはぁ!」
完全な俺の油断。
勝利を焦り過ぎた。
本来の俺なら考えられない致命的なミス。
それも魔眼の発動時間制限が有る事も一つだが、余力を残して戦ったから。
その理由が・・・
「羅宣よ、いつまでも遊んでいるな」
新たに現れたカミシニに羅宣は楽しみを奪われたような顔で答える。
「せっかく俺が前世の敵を討つ所なのに水をさすな。劉環」
「俺達の目的は姜子牙だろ?俺達はナタクの足止めが役目ではないか」
「勿論、そうだが。しかしこの場で討てるなら、それも良かろう?」
「ならば俺も加勢する」
「仕方ない。遊びはここまでにしよう」
すると二人は全身を発火させると、高熱を帯びた炎が俺の周りを竜巻のように覆い隠した。
「跡形もなく消え失せよ」
竜巻の業火の中で傷付いた俺は魔眼の力で堪えるが、その力にも限界が来ていた。徐々に衣が焦げ、身体に火傷が。
「うぐぅわあああ!」
魔眼が尽きれば俺は完全に尽きる。
その時だった。
離れた場所から声が響いた。
「七星に輝け!玉皇の水弾珠」
飛んで来た珠から濁流の如き水圧で羅宣と劉環の炎を消し去ったのだ。
「馬鹿な!俺達の炎を消し去るなんて!有り得ぬ!」
「何なのだ?今のは!」
すると炎の中より俺は何者かに抱き起こされ救出されていた。
「くっ、お、お前は!」
俺は顔を上げて、その者の顔を見て、信じられぬ存在に驚愕した。
「ナタク、久しぶりだね。元気にやっているみたいね?とか、言えない状況だけど、どう?まだ戦えるかい?」
「当然だ!竜吉公主」
竜吉公主。
天界の元支配、玉皇大帝の娘であり、二郎真君の従兄弟(姉)。
かの大戦の最中、消息不明になっていたが、生きていたのだな。
しかし、何故此処にいる?
「私に聞きたい事は多々あると思うけれど、今は目の前の敵を討つ事に意識した方が良いと思うわよ?ナ・タ・ク」
「わ、分かっている!」
誰かに似ていると思えば、やはり二郎真君に似ている。
この俺を未だに子供扱いするのは、コイツ等だけだからな。
「で、お前は戦えるのか?奴らはカミシニ。神力は無力化させられるのだぞ?」
「さっきの見ていなかったの?」
すると竜吉公主は手にした珠を浮かばせて俺に見せた。
「ソレは!!」
幼き日に一度、見た事がある。
かつて玉皇大帝が持ちし真王七星剣。
「この珠はね?七星剣に嵌めてあった星の力を宿したモノよ」
「何故、ソレを?」
「今はソレは言えないわ」
(盗んだのだな)と、俺は思った。
「奴らほどの(第五仙血)カミシニを倒せるとまでとはいかないけれど、この珠に宿る星の力は、いくらカミシニとてそうそう簡単に無効化させられるものでないわ」
「つまり倒す為には俺の魔眼にかかっているのだな」
「そうでなければ、命張ってまで危険な場所に出て来ないわよ」
「・・・そ、そうか」
俺は竜吉公主の実力を知っている。
流石、玉皇大帝の娘であって、体術、神術、全てにおいて天界最高級。
カミシニ相手に、あの珠を合わせて戦う事を計算にいれて、無効化されずに戦えるのであれば、俺の良い援護が出来るだろうな。
竜吉公主の参戦で状況に好機が!
次回予告
竜吉公主の加勢にナタクは羅宣と劉環にどう戦う?
法子「えっ?竜吉公主さん??」
※法子と竜吉公主との遭遇は邪神編にて




