三人の戦場に現れたお節介!
姜子牙の危機に現れたのは三人のお節介者達だった。
私は姜子牙だ。
私の絶体絶命の危機に現れたのは、見知らぬ三人のお節介達だった。
その者達は人と似た姿だが妖怪と呼ばれる種族で、私が知る限り、恐らく無駄に命を奪われて殺されるだろう。
何せ妖怪も神族同様にカミシニの前では力を消され無力なのだから。
「誰だか知らないが、始末してやろう」
高継能が全身から血を噴き出すと、無数の蜂が襲いかかる。
「飛んで火に寄るお前の虫!」
すると赤髪の若者がその手に灯る炎を掌で噴き出させると、迫る蜂に向けて業火を放ち消滅させたのだ。
「馬鹿な??カミシニの蜂に何故、お前の炎が通用するのだ??」
それに気付いたのは私だった。
「まさか、あの瞳は?」
ソレはナタクの魔眼と同種に思えた。
金色に光り輝く魔眼?
ナタク以外にも所持者がいたのか?
すると今度は土行孫が突進して来ると、女が前に出て受け止めたのだ。
「な、何ぃ?動かないぞ?何なんだ?お前は?」
ソレには他の者達も気付く。
この褐色の女妖怪はカミシニなのだと。
しかも、信じられぬ程の怪力。
そして最後の大男は異様な気を全身から湧き立たせる。
「俺の中に有る覇蛇の血は、お前らカミシニの血と反撥するそうだぞ!フンヌゥオオオオ!」
繰り出された剛拳が大地を割り、その場が広範囲に陥没したのだ。
崩れる地面に油断した連中は、その場にいた通りすがりのお節介三人と、
そして瀕死状態の私の姿が消えている事に気付く。
あの一瞬で逃げたのだ。
それから、どれくらい経ったのか?
私は意識を取り戻すと、そこには例の三人が飯を食っていた。
「起きたか?」
「どうやら助けられたようだな?礼を言う。で、お前達は何者だ?」
「先にお前の事を話すのか礼儀だろ?」
「悪かった!それもそうだな。私の名は姜子牙だ」
起き上がろうとしたが、まだ目眩がしてふらつく。
「無理はせんで良いぞ」
「横になりながらで、すまぬ」
横になりながら、私は自分の事を説明したのだ。
今までの戦いの事を。
「なるほどな。面白い境遇だ」
「面白いか?で、お主達は?」
すると大男の口から、ナタクの名が出て来て驚いた。
「俺の名は牛角魔王。コイツは俺の倅の紅孩児。その女は剛力魔王だ」
「う、うむ」
「聞くにお前と共に戦っている神族はナタクであろう。地上に降りて来た事は噂で知っていたが、この地で戦っていたとはな」
「ナタクとは仲間なのか?」
「腐れ縁だ」
牛角魔王達の目的は、仙界にいる西王母が率いるカミシニ達を倒す事らしい。
それが天界から地上界へ降りる際に、トラブルでこの新生殷国に到着したとか。
「あの時は天界軍に追われて、拘束されたくなかったからな。孫悟空達を囮にして抜け出したのだが、上手くいったと思ったのだが、とんだ手違いだった。恐らくナタクも、同じ転移装置を使用して地上界に降りたのだろう」
話の意味は分からぬが、私ら以外にも大きな敵を相手に戦っている者達がいる事を知り、心強く思えた。
「ん?」
すると牛角魔王が私の目を見て黙り込む。その瞳は何かを見透かすように感じた。
「お前も数奇な運命の下に生きているようだな?」
「自分でもそう思う」
それから私は治癒を受けて、多少動けるようにはなった。
それでも戦えるようになるまではいかなかった。
「すまぬな。俺達も旅を急ぐゆえにお前に付きっきりにはいられぬのだ」
「構わんよ。治癒の霊薬に、私が食べられる食物も分けて貰えたのだからな。私も頑丈な方だ。恐らく、もう暫くすれば何とかなると思う」
「共に生き延び、再び何処かで出会える事があれば、今度はゆっくり共に酒を交わそう」
「それは楽しみだ」
そして三人は私を残して先に旅立った。
「とにかく私は早く回復して戦えるようにならねばならぬ。回復せねば無駄死にしてしまうからな」
再び、奴らと戦う事になる事は火を見るより明らか。
しかし心配なのは黄天下とナタクだな。
無事でいるのだろうか?
場所は代わり、今より時を戻そう。
姜子牙と離れ離れになった黄天下は、追って来た呂岳と戦いを繰り広げていた。
呂岳は全身からカミシニの障気を噴き出させ、肉弾戦で襲い掛かる。
「ホぉ!そりゃ!うらぁ!」
互いに拳を交え、衝突する度に二人は衝撃を堪えて凌ぎ切る。
「強いな?お前?まだ格闘の荒さはあるが、俺の拳闘と互角。それはセンスだぞ?今からでも遅くない。俺達の仲間になれ!お前!」
「断る!俺は俺の王道を貫く。俺は父上が道半ばで叶えられなかった王になって、その道を継ぐのだからな!」
「お前が王だと?笑える!」
「勝手に笑え!」
互いの拳は徐々に鋭さを増し、更に加速しながら相手の命を今か今かと狩ろうとしていた。
それでも勝負が付かない。
「!!」
均衡が崩れ始める?
少しずつ、黄天下の身体に打ち込まれた痣が滲み、全身に痛みが走る。
「まだ全力では無かったのか?」
「そうでは無い。お前が気付かなかっただけさ!俺の罠に嵌ったのだ」
「何だと!?」
すると嗚咽がして視界が朦朧とし始める?
何が自分の身に起きているのか?
「お前は俺の毒に落ちたのだ」
「毒だと?」
すると黄天下はそのまま力が抜けるように、その場に倒れて痙攣し泡を吐く。
「死ぬ前に教えてやろう。俺達カミシニには大抵の毒など効きはしない。しかし俺のは特製の猛毒だ」
呂岳の身体から漏れれ出る毒霧は血蒸気。
その霧に己の血を混ぜ込む。
しかも過剰の酸素をコーティングした血蒸気なのだ。
「酸素はな?過剰に身体に入ると解毒能力を超えて、猛毒となるのだ。と、言っても俺達カミシニには大した時間はかからずに回復する。しかし戦闘時にその毒に侵されれば動きを制限され、何も出来ずに俺に殺されるのを待つのだ」
そして迫る呂岳がトドメを刺そうとしたその時、
「馬鹿な!!」
黄天下の右腕が起き上がり、黄天下を持ち上げるように立たせたのだ。
そして、まるで意思でもあるかのように拳を振るい、呂岳を寄せ付けない。
「何なんだ?あの右腕は?」
すると、感じる。
「奴の右腕から桁違いの力の波動を感じるぞ?何なのだ?奴は!?」
そこに黄天下が回復して首を振った。
「助けられてばかりだな。父上」
そして徐々に元通りになった黄天下は燃え盛る右腕を振るって呂岳の毒を全焼させたのだ。
「コイツ、何かに憑かれているのか?奴から発する力の質が変わったぞ?アレはまるで??」
黄天下の右腕に浮き出すのは紅い龍の紋様。
そして全身に広がり真っ赤に染まると、今まで戦っていた黄天下とは別の何かに感じられた。
「今から三つ数えてやる。逃げたくば逃げろ!この力は俺の力と呼ぶには相応しくない借り物だからな。しかし残るなら構わずお前を狩る」
「ふ、ふざけるなよ!この俺が!!」
が、黄天下からのプレッシャーは桁違いだった。
そして本能が告げた。
「血が騒ぐぞ。良いだろう!お前の言うとおり、この俺は!」
すると呂岳は全身から血蒸気を噴き出して一目散に姿を消すと、その場から逃走していた。
そして黄天下も追わずにいた。
「いずれ借り物でない力でお前を倒すから、それまで命は預けてやる」
そして勝利した黄天下。
だが、その頃、あのナタクが危機的状況にあった。
次回予告
ナタクが危機?
ナタクの身に何が起きているのか?
法子「ナタク?あんた心配させないでよ?」




