武人・余化の剣!
余元と余化と呼ばれる武人が現れた。
そして対するは?
俺は余化だ。
余元師匠唯一の弟子。
共にカミシニとして甦り、新たな強さへの進化を求める武人。
「俺は高みを求める」
今は師である余元様と共に、更に師である金霊聖母様に手解きを受けている。
第三仙血だった俺も限界を超え、第四仙血にまで進化した。
「しかし相手が一度見過ごした天界神だとはな。直ぐに片付けてやる」
俺は剣を構えると、目の前の天界神に向けて初立ちを繰り出す。
簡単な仕事、いや?狩りだ。
余元師匠は二人相手にしているようだが心配なかろう。
急ぐ必要もないと思うが、長らす必要もない。
「!!」
が、俺は目の前に起きた状況に動きが止まり、思考が狂う。
俺の繰り出した剣は天界神の首を撥ねたはず?
なのに俺の剣は弾かれ、そして間合いに入り込まれていたのだ。
油断?信じられない!
そして抜かれた斬撃が俺の胸元に斬りつけられた。
「ぐわぁああ!」
辛うじて躱し致命傷は逃れたが、胸元を斬られて後退する。
「クッ」
斬られた箇所が沸騰するかのように蒸発していく。
何が起きている?
何をされた?
何が俺の身に?
「コノぉ!」
俺は自らの剣で斬られた部位を斬り落とすと、噴き出す血が硬直して再生する。
「太陽剣?違う?もっと別のカミシニの血を犯す何か?お前、何をしたぁ!」
すると天界神は剣を向けて、
「あの時の借りを返す」
あの時?
天界軍がこの国へと攻め込み、太陽剣なる武器を手に現れた時の事か。
太陽剣は確かにカミシニを斬れる武器。
しかし格の差が離れていれば無力!
第三仙血の力で太陽神の加護は無きに近く、この天界神を相手に挑んで来たが、返り討ちにした。殺すつもりであったが、この者の部下達が命を賭して庇い、逃した事に後追いはしなかった。何より逃したところで何の支障もないと高を括っていた。
「己を恥じる。どうやら俺は武人としてのお前の個を見ていなかったようだ。お前は俺達カミシニに対して、進化を遂げて舞い戻って来たようだな?改めて聞こう!俺のは余化。お前の名は?」
すると天界神は名乗る。
「俺の名はナタク。 中壇元帥ナタク!今、ここでお前を討伐する」
するとナタクの瞳が光り輝く?
その瞳の輝きに俺の中のカミシニの血が震えた。
あの瞳?以前の奴からは無かったはず?
あの魔眼の力が俺を斬り、命を削った力か?
「面白い。お前も俺に斬られれば死ぬのだろう?互いに剣技のみで勝敗がつく」
俺とナタクは構え、ひと呼吸をつき飛び込むと、互いの剣が衝突し、そして無数の連撃が繰り出され弾き合う。
お互いに退かず、繰り出される手数が増え、その衝撃波が一帯を吹き飛ばす。
「剣を交わし、分かるぞ!前回は俺のカミシニの血で力を発揮出来ずに敗れたのだと言いたいのだろ?その魔眼の力で対抗出来る条件なら、俺に負けないと言う意思が込められている。面白い、その意思!俺が勝利し、叩き折る!」
俺はナタクの強さを認め、本気を示す。
「この俺はお前を認めた。全身全霊の力で相手する。ナタクよ、お前も手加減は許さぬぞ?良いな!」
俺は剣に力を込めると、頭上にあげてカミシニの力を発現させた。
「化血神刀」
カミシニの血を吸収するが如く力が剣に集中し、禍々しい力を発する。
「これぞ我が師・余元殿、そして金霊聖母様より伝授された奥義・化血神刀飛金剣!」
俺の頭上にカミシニの血で作り出された無数の剣が出現し、浮遊する。
「自在に操る飛行する我が剣。全て受け止められるか?ナタク!」
放たれた無数の剣がナタクに向かって突き刺さるが、残像で躱したナタクは素速い動きで移動しながら距離を縮めようとする。
「間合いには入れさせん!」
足下に突き刺さり、行く手を阻み、四方からの攻撃に対してナタクは躱す。
「!?」
俺は気付く。
ナタク、この男?
俺の無数の剣から繰り出される攻撃に対して見切っていると言うのか?
否?慣れているように思えた。
「何故?俺の化血神刀飛金剣はただ無数の剣を出現させ操り飛ばす技ではない。全ての剣が俺の意思で軌道を変え、その場その状況で攻撃するのだ。つまり全ての剣一つ一つに俺が宿る如し」
その疑問にナタクは呟く。
「俺はお前より先に似た技を持つ者と戦っている。刀剣魔王と呼ばれる者の奥義は、お前の奥義と同質の物であった。同じ剣を極める者が行き着く終着点が似ても不思議ではあるまい」
すると今度はナタクが力を発動させた。
「見せてやろう。俺の奥義をな」
「何だと?」
ナタクは剣を頭上に向けると雷が上空はと放電させた。
すると空間に無数の歪みが出現し、そこから無数の武器が歪みから出現したのだ。
「武器転移の術か?」
武器転移とは、普段所持していない武器を空間の歪みに収納する便利術。
俺達カミシニは使えないが、仙術を使う者が得意とすると聞いた事がある。
「俺はかつて討伐し倒した者達の武器を奪って来た。それが俺の強さの証としてな。そして今、お前に俺の強さの証たる全ての宝具を見せてやろう」
上空に出現する歪みより出現した宝剣にナタクは魔眼の力を籠める。
「宝具解放・魔眼天響!」
それは出現した宝剣に金色の魔眼を纏わせ、雷雨のように降らす奥義。
恐らくは名高い宝剣の数々なのだろうが、カミシニの血の前には無力。
しかしナタクの魔眼の力が纏われ、その威力を持ったまま俺に向かって来る。
「しかし一直線的に飛ばすだけ!俺の奥義化血神刀飛金剣とは洗練さが違う!」
俺の操る化血神刀はナタクの降らす宝剣を弾き返していく。
「俺の真似をしたつもりだろうが、格の違いを見せられたようだな?ナタク!」
しかし俺は気付いた。
ナタクの飛ばす剣の中に混ざってナタクが足場にして移動し、俺に向かって突っ込んで来ていたのだ。
「く、ソぉ!」
出遅れた。
完全にナタクは先読みしていた。
「超神速抜刀!」
振り払われた抜刀は完全に俺を捉え、反応出来ず身動きが遅れた俺を斬る。
「がはぁ!!」
腰から肩に振り上げられるように両断された俺の身体がズレていく。
き、斬られたのか?
お、俺は負けたのか?
この目の前のナタクと言う男に?
「ほ、本気で、本気なら、」
「お前が余力を残し本気を出していても俺は負けなかっただろう。俺はお前を何度でも超えるからな」
「!!」
その言葉に俺は敗北した。
勝敗は戦う前に決まっていた。
俺はナタクより武の精神で敗北したのだ。
全力だとしても、俺は敵わなかったに違いない。
「お、俺の負けだ。見事だ、ナタ…」
そこで力尽き、俺の身体は赤い血の塵と散って消滅した。
「お前も強かったぞ。しかし残る一体に回せる余力も残ってはいないようだ。後はお前達に任せるぞ?お前ら!」
次回予告
強敵余元を相手に姜子牙と黄天化はどう挑む?
法子「二人がかりでボコボコよ!」
 




