金光聖母の弟子?余元と余化なる武人!
金光聖母と東華帝君の戦いが起きていた頃、物語は再び姜子牙達へ
私は姜子牙だよ!
私と黄天下、ナタクは魔家四将を倒した後、休養と反省し、再び新生殷国中心部に向かって足を進めていた。外から見るなり、巨大な血界に閉ざされていたから分からなかったが、中はかなり広い大国だった。
「三日歩いてまだ着かないとか」
「地図が欲しいところだよ」
私は見上げる太陽もどきを見て舌打ちをする。
頭上に浮かぶのは本物の太陽とは異なる光る物体に過ぎない。
そもそもカミシニは太陽を好まないからな。
だから方向を見定める手段が困難で、目に見える方向に向かうしかない。
この新生殷国では霊圧を使った千里眼や、神気や術を行えば、直ぐにカミシニ達に居場所を教えてやるようなもんだから。
「さ〜て〜と!」
私は石を力強く投げると、遠くまで飛んで消えた方向を凝視する。
「投げた石に己の忌眼の念を込めれば、飛んだ先の方を多少なりとも見て取れる。千里眼の初歩の仙術だよ」
「便利だな?」
「七キロは飛んだと思うが、何も見えんかった。次は反対側に投げる!」
すると飛ばした石が途中で消滅した。
「正解!」
飛ばした石は見えない壁に衝突して消えた。
つまり、そこに何かがあるって事。
「投げた石の先へ急ごう!」
そして我々は方角を決めたのだ。
そこには見えない壁に閉ざされた門があった。
「私の忌眼は血界で閉ざそうが無駄だ!黄天下?頼むぞ?」
「任せろ!」
黄天下がぶん殴ると、血界が脆くも砕かれて、城が見えた。
「さて、この門を抜ければ紂王が居る居城までまっしぐらだぞ?だろ?ナタク」
「そうだな」
「どうした?何か言いたげだな?」
「気付いているくせに言わせるな。馬鹿者」
黄天下は私ら二人が飛び上がる合図で拳を地面に殴りつけると、地面に潜り潜んでいたカミシニ兵達が凄まじい衝撃で地割れの中に埋もれていく。
「隠れていたのは先の姜子牙の千里眼で気付いてたんだ!」
そして着地する私とナタクは、まだ動けるカミシニ兵に向けて打神鞭と、ナタクの振るう斬撃が粉々にしていった。
「強い力を感じるぞ?二人とも油断するなよ」
私が叫ぶと黄天下は頷き、ナタクは目線で「誰に言っている?」と返事をしてくれなかった。
「奴か!」
私の忌眼が捉えた敵に向けて打神鞭を打ち込むと、その鞭は見えない力に弾かれる。
それは振り払われた斬撃!
「あの者は!」
ナタクは現れた二つの人影に、思い出したくもない敗北の記憶を思い出す。
それは天界軍の全権を任され、地上界へとカミシニ討伐に出兵した日の事。
カミシニ相手に百本の太陽剣を手にした武神の殲滅戦。
結果はナタク率いる天界軍の惨敗であり、ナタクは単独、瀕死の状態で生き延び、戻った。
その時のカミシニの軍を率いていたのが、目の前に現れた余元と余化なる武人だった。
「こんな場所で再戦の機会があるとは俺には嬉しい誤算だ」
ナタクは単独で二人のカミシニ相手に挑もうとしたが、
「まぁ〜待て待て!ナタク?私らも戦わせてくれんと経験値が上がらんぞ」
「そうだ!俺はもっと強くなって父上に追いつく必要があるのだ!どちらかを寄越せ」
「我が儘な連中だ・・・」
「お前がな!!」
二人で突っ込むと、余化が剣を向けてナタクを挑発する。
「何処かで見たと思えば、太陽剣なる玩具を手に意気込み、返り討ちにしてやった天界の将軍か?命拾いしたのに殺されに戻って来たのか?」
その言葉にナタクはムスッとする。
「俺が奴を斬る。その前にお前達がもう片方の奴を仕留め終えてなければ俺が斬る。良いな?」
「了解!」
ナタクが手にした剣を振り上げると、地面を裂きながら余元と余化の間を斬る。
「!!」
そこに飛び出したナタクが抜いた剣が余化の首元に斬り込まれると、咄嗟に剣を抜いて衝突させた。さらに余元の左右を私と黄天下が囲む。
「お前達がこの俺の相手をしてくれるのか?良かろう。我らは我が師金光聖母殿の命によりお前達を狩りに来た」
「誰の命だか知らないが、返り討ちにしてやるぞ!」
「弟子の余化にはあの天界神を殺らせて、この俺、余元は与えられたもう一つの役目を果たすとするか」
一瞬、私の視界に光が迫った。
「ヌゥううううう!」
咄嗟に身を反らすと、頭上を余元の抜いた剣が空を斬った。
「ほぉ?俺の初手を躱したか?それもお前の忌眼の力か?」
「お前の狙いは私の忌眼か?」
と、そこに黄天下の拳から放たれた業火が余元を飲み込んだのだ。
「不意打ちだが、やったか?」
が、炎は余元から放たれた無数の斬撃に打ち消されたのだ。
「この俺に用があるのは、その忌眼の男だ。邪魔をするなよ?雑魚!」
と、その言葉に黄天下は頭に来て飛び出すと、拳で殴り付ける。
「愚か者め!素手で俺に殴りかかるとは愚かとしか言えん!その腕、斬り落としてやろうぞ!」
抜かれた剣が黄天下の腕に迫った時、
「加速の追撃!」
踏み込みが勢いを増した。
加速した拳は剣をすり抜けるように余元の顔面を捉えたのだ。
「な、なんと!?」
直撃した拳は勢いで余元の身体を空中で回転させながら地面に叩き落とした。
「やったか?黄天下!」
私が駆け寄ろうとすると、黄天下は腕を出して止めた。
「いや、手応えがない。コイツ、俺に殴られる前に自分で吹き飛んで回転し、威力を殺したのか?器用な奴だ!」
黄天下の言葉通り、余元は立ち上がって来たのだ。
しかし、その頬は火傷を負っていた。
「おのれ、この頬の傷は俺自身の傲りだ。お前達を見縊っていた。今より、全身全霊でお前達を斬る!」
凄まじい圧力を感じる。
間違いなく、手強い。
多分、恐らく、この余元の実力は魔家四将の魔礼青と同じく第五仙血だぞ?
どうやらとんでもない相手を私達は敵にしたものだ。
次回予告
余化、そのカミシニは剣武を極めし武人!
新生殷国への侵入者、天界神のナタクを見事に討ち取れるのか?
法子「ナタクが敵みたいじゃない?これじゃ?」




