明かされる美少女転入生の過去!
転入生の三人の女子高生の過去、
それが今、明かされる?
私は法子。
えっと、自称プリンセスの三人は、私の何気ない質問に対してムキになり、自分達の過去を話始めたの。
それは今から六年くらい前の話らしいの。
かつてカミシニが神の転生者である者達と交戦中の頃、日本に棲息していたカミシニの中に異端的な者がいたの。そのカミシニは頭脳的な存在で、カミシニの力を使った武器を開発したり、人間を使ってカミシニ化を促進させたり、人造カミシニまで作っていたの。
そのカミシニ博士がその頃に取り掛かっていたのが神の転生者をカミシニ化させる実験だったの。そもそも神はカミシニの血に触れると消滅してしまう。転生者とて同じなんだけど、産まれる前から転生者を判別し、カミシニの血を極限的に薄めながら投与したの。
当然、真逆の反発する力の作用で、数多くの産まれる前の転生者の赤子が死んだ。その中で奇跡的に赤子の摘出に成功したの。それが彼等達。
けど、彼等彼女達もまた成長段階で自我を失い化け物に変わってしまっていた。
仲間達の死を何度も見送り、やがて生き残りは九人だけになったの。その頃には生き残った少年少女は生きる事に希望を持てなくなっていた。生き残った子供達は発作を起こすと、化け物へと変貌して暴れ、兄弟であった仲間達を襲い、喰らい、最後は力尽きて消滅して逝った。
そんな子供達は失敗作とカミシニ博士によって廃棄処分になる所を、子供達に情が出ていた女性のカミシニによって救われたの。
女性のカミシニはマザーと呼ばれ、孤児院を作って育てたの。マザーは博士の研究から薬学を学び、子供達の延命に努めた。
そんなマザーを、カミシニ博士は許さなかったの。
自らの欠陥品を残す事を汚点とし、消しに来たの!
その時、子供達に救世主が現れた。それはガサツな感じの見るからに駄目そうな口だけ中年僧侶に見えたらしい。だけど、その僧侶はマザーと子供達をカミシニ博士の魔の手から救いだしてくれた。
まさに救世主だったの。
だけど、複雑だった。子供達は助けられたとしても、いつ終わるか解らない命で、延命出来ても一年か二年と思われていた。もしかしたら今、突然発作が起きたら?その日が命日。
しかし救世主の僧侶は更に助け船を持っていたの。カミシニ化を術で止め、呪縛を解き放つ力を持つ巫女を紹介してくれたの。更に孤児院を失った子供達に総本山にいる仲間に世話を頼んだらしいの。
それが彼等彼女達が総本山に入った経緯。
ここまでは良かった。
その際に子供達は僧侶から転生者の話を聞いたらしいの?その内容が…
「何ぃ?自分達が何の転生者か知りたいだって~?」
目を輝かせて聞く子供達に対し、その僧侶は戸惑いながらも自信持って答えたの。
「おぃ?お前は物語で何が好きだ?」
「えっ?それは桃太郎だよ!だって強いもん!」
「なら、お前は桃太郎の転生者だ!」
「えっ?僕は桃太郎の転生者だったの?」
「そうだ!良かったな?」
「僕は?」
「お前は金太郎かな?」
「金太郎!金太郎なんだ?僕?」
「そうだ!」
迷いなく言い切る。
「僕も桃太郎が良いよ…」
泣きそうな子には、
「何を言ってる?お前は一寸法師だぞ?綺麗なお姫様を嫁に出来るんだぞ?」
「!!」
すると女の子達からは、私達は?と目で訴えられる。
僧侶は少し考えた後に一人ずつ指をさして、
「シンデレラ!白雪姫!えっと、美女と野獣!」
と、次々と決めていく。
「最後に赤ずきんちゃんだ!どうだ?」
ドヤ顔の僧侶に対して子供達は無邪気に喜び…
信じたの!!
「あんな素晴らしい僧侶様が嘘をつくはずないわ!聞けば総本山でも座主様と匹敵する実力者って言うのよ?間違いないわ!」
いやいやいやいやいや!
そんな人が実在するなんて今まで、私は会った事は勿論、聞いた事もないわ!
三人は昔を懐かしみ、自分達がプリンセスの転生者だと自覚した日の事をしみじみと思い出していた。
ごめんなさい…
幼い頃は仕方ないとして、今もそれを信じているって、どれだけ純粋…通り越して…
馬鹿なの!!
私が、それは貴女達を元気付けるためにの、その場しのぎの嘘だったと言おうとしたけど、
「す…素敵!」
「えっ?」
振り向いた先で葉子が三人の話を聞いて感動していたの!?
えっ?今の信じるの?
私が変なの?
知らないうちに私が純粋に物事を信じられなくなったの?
「法子!プリンセスだって!私、握手しても良いかな?ねぇ?」
「良いんじゃない…」
葉子は目を輝かせて本当に三人に一人一人握手をしていた。
「………」
私は自分自身が解らなくなって来たの。
と、脱線した所で突然玲羅さんが私に向かって真面目な顔で言ってきた。
「この学園の事件は私達が任されているの。だから貴女は直ぐに外へ逃げなさい!怪我したお友達もいるんでしょ?」
「逃げたくても外に奴らの血塊[結界]があって出られないのよ!それに校庭にも化け物いるし!」
私と葉子は迷宮を作る蚩尤鬼人を倒して校舎から出たものの、校庭から門の先が血の塊で外界から閉ざされて抜け出せなかったの。
そこで体育館から誰かが戦っているのに気付いて見てみたら彼女達がいたって事だったの。
「それなら大丈夫さ!そろそろ奴等が来るからさ?」
「私もそう思う」
えっ?誰が来るって?
同時刻、血塊[結界]の外に集まっていた総本山の中から、三人が前に出る。
「久しぶりに張り切ろうぜ!」
「力には任せろ!」
「ボクもいるよ」
そして、
「貴方達?一度で壊すよ!気合い入れな?」
三人に指示するのは、赤羽 宮ちゃん!彼女と、この三人桃井剣太郎、金丸 剛、一瀬 明希はカミシニの力を持つ転生者なの。つまり彼女達の幼なじみで仲間って事だよね?さっきの話だと?
四人はカミシニの刀を抜くと、血塊に向けて気合いを入れる。そこに、血塊から化け物達が出現して邪魔をするために襲い掛かって来たの!
「一式・包囲網!」
襲い掛かって来た化け物達に、晴明師匠の一声で百輝夜行の一軍が壁を作り化け物達に邪魔されないように攻撃を仕掛ける。
「中に入れるのは何人だ?」
「あの障気の中で満足に戦えるのは私を含めて十人でしょう」
「すまぬな?後は任せたぞ!晴明!」
「必ず!」
四人はカミシニの血で刀を構成し構えると、同時に血塊に向けて斬激を放つ!
それは化け物の血塊に穴を解放させたの。しかし人が入るには小さい?
「後は任せろ!」
後方より同じくカミシニの血で刀を構成する者が?
その者は構えると、更に背後に鮮血の龍が出現する!?
「喰らえ!血龍速神!」
※ケツリュウソクシン
鮮血の龍は彼の刀に合わせて穴に飛び込むと、炸裂して穴を広げたの!
「今だ!特攻隊突入!」
晴明師匠の合図に選ばれた十人が穴から突入した。
十人の姿が消えると同時に血塊は再び穴を閉じる。残されし座主様率いる百輝夜行達は目の前に現れた化け物達を見上げる。
「まさか学園に残っていた生徒達を全て蚩尤鬼神へ変えるつもりか?歪禅!」
歪禅[ワイゼン]とは最初に総本山に侵入した蜘蛛の蚩尤鬼神。
その者が全ての元凶だったの!
座主様は思い出していた。総本山五重塔にて晴明師匠と二人で対策を練っていた時、
「恐れながら呼ばれまして参上致しました」
この禁制の間に、呼ばれた者がいたの。
彼は?
聖 太子くん?
彼は聖徳太子の転生者で、以前に私と夢の中に現れた魔物退治の事件で絡んだ事があったのだけど、敵にとんでもない大神が現れて木端微塵に消されてしまった…はずだよね?
でも、彼は失った肉体から魂を離れて、過去に蘇我入鹿に奪われた転生前の肉体に入り込んで一か八かで蘇生出来たらしいの。
つまり聖徳太子本人になったのかな?でも魂は現世の魂だし?どっちになるのか解らないから、いつか晴明師匠に尋ねてみようかな?
でも太子くんは過去の肉体を取り戻した事で、新たな力を取り戻したみたいなの?
それが…
「未来書」
過去の聖徳太子は未来を予知した事を、霊気で作った本に残す事が出来る能力者だったの。
「未来書は私達にとって願ったり叶ったりの能力だ。これよりはクシナダ殿に代わり未来予知を任せるぞ?」
「そんな大役、私なんかで良いのですか?」
「聖徳太子さんの未来予知の能力は神である私以上だと聞きます。お任せ致しますよ?」
クシナダさんが入って来て太子君を励ます。
「本当に我が儘を言って申し訳ありません。総本山がこのような時に、私達が総本山を出るなんて…」
「仕方ありませんよ?仲間達の消息が解ったとあっては、クシナダ殿もいてもたってもいられますまい?」
「えぇ…」
クシナダさんは、同じヤオヨローズの仲間の消息を探していたの。総本山で情報を得る事を条件に今まで力を貸してくれていたの。
その情報がついに入ったの!
「スサノオ…」
クシナダさんは誰かの名を呟くと、付き添いの二人を連れて総本山を下山して行った。
「嘘だろ!?」
突然、太子君が大声をあげて驚いたの?何?
太子君の手には例の未来書が?そこに新たな文字が記されたの!未来書にはランクがあって、芸能ニュースから世界情勢、宝くじの番号まで百パーセント当たるんだって!!
けど…
その本に特別なページがあって、そこに記された文字は世界を震撼させる内容のみ。総本山の壊滅や信長の復活まで記されていた。けど、今回は更にランクが上の啓示が出たの!
その頃、私は言い合いをしていたの。
「今、総本山から救出部隊が到着するの。だから、あんたはその娘を連れて避難しなさい!」
「嫌よ!私だって戦えるわ!」
「馬鹿なの?足手まといだって気付いてないの?女子高生は下校の時間よ!」
「貴女だって私と同じ女子高生じゃない?私だけお留守番なんて嫌よ!」
「馬鹿なの?馬鹿なの?とことん馬鹿なの?」
「誰が馬鹿よ!失礼ね!」
「私達は…死と隣り合わせで生きて来たの。貴女みたいにヌクヌクと育って来たような女子高生とは違うのよ!」
「なら、大丈夫!」
「えっ?」
「だって、私!」
私には決められた死が待ち構えているんだって?
十六歳になった、その時…
再び過去の総本山、太子くんが未来書に突然私の名前が記されたの?そこには、私の未来が今日、歴史から完全に無くなるって…
そんなこんな。
次回予告
法子達に迫る蚩尤鬼神、しかしもっとヤバい奴らが現れる?
※今回の物語は第二部の「神を導きし救世主」にて繊細が語られています。




