新生殷国の最強の倶利伽羅の王集結!
姜子牙達が新生殷国に入り込み、その動きは知れ渡っていた。
ここは新生殷国。
今、この国を統べる紂王を守護する最強の総大将達が揃い踏みしていた。
当然、その者達はカミシニであり、信じられない事に王の器を持ちし強者。
その中でも聞仲は他の総大将からも信頼を得ていた。
「集まってくれたか」
「聞仲殿、その者が私達と同じく王の器なのだな?」
「そうだ。趙公明」
黒面の武人。
趙公明は聞仲の旧友であり、倶利伽羅の王の一柱。
その実力は聞仲に引けを取らないと言われる程の実力者であった。
そして紹介された者は張奎。
かつては澠池城を支配した君主であったが、妻の高蘭英を姜子牙に討たれた事で怒りと悲しみよりカミシニの限界を超えた覚醒をし、王の器へと進化した武人。
その力を聞仲に見込まれ、今は新生殷国の総大将の一人して数えられたのだ。
「しかし王の器が三人も揃うとは正直、驚きだ。我らはカミシニの持つ血の覚醒、倶利伽羅を発動出来る数少ない王の器。しかし本当に良いのか?聞仲よ」
「何がだ?趙公明」
「俺は今でも真王はお前にこそ相応しいと考えている。もしお前が望めば、いつでもお前に加担するぞ?」
「それは言うな。俺は今の紂王様にこの身を捧げ、忠臣として仕えると誓ったのだ。お前も俺と共に紂王様に仕えてくれ」
「お前がそう望むなら俺は構わん」
その会話を聞いていた張奎。
張奎は腑に落ちないでいた。少なくとも自分も目の前にいる趙公明も聞仲を推しているのに、野心がないのかと?
「俺が紂王様に仕える理由は一つ。あの方は過去の紂王様ではない。少なくとも妲己に惑わされ、非情な暴君と呼ばれし過去は全て拭い去ったと信じている」
「過去?聞仲よ?あんたは転生前の記憶を覚えているのか?俺はまだうろ覚えだ。かつて澠池城の王であり、妻の高蘭英と愛し合っていた記憶は残っていたが、それ以上の事は曖昧のままだ」
「張奎よ。後々、お前にも聞かせよう。かつての仙界大戦で俺達が生き、戦い散った歴史をな」
「う、うむ」
すると趙公明がソワソワしながら周りを見回す。
「どうした?趙公明?」
「ん?あ、いやな、あ〜。あの方がまだおらん事が気になってな」
「はぁ、師匠の事か。確かに王の器を持つ我らが揃い、師匠を除け者にしたら俺が痛い目にあうからな」
聞仲と趙公明が気遣う者?
それは二人の師匠であり、そして自分達と同じく倶利伽羅の力を覚醒させた強者なのだと聞かされた。
「その者とは一体?」
すると聞仲が溜息をついて背後を見るように言う。
「!!」
そこで張奎は気付いたのだ。
気配を全く無しに、樽の酒を飲む真っ赤な八卦衣装の女仙であった。
「も〜んちゃ〜ん。師匠の私様を忘れないでよ〜。あ〜ゲップ」
その女、弟子の聞仲を誘うような目で見ながら、誘惑染みた声で甘えてみる。
「お止しください。他の者が見ております。もう少し恥じらいを知ってください。師匠はいつもいつも自由過ぎます」
「もうー!優等生なんだからぁ〜。それより、彼?新しい王の器は?」
すると女は張奎を凝視すると、張奎は一瞬、鳥肌が立つ。
まるで見透かされたような感覚だった。
「素質は申し分ないわ。けれど倶利伽羅の力に振り回されているみたいね。趙公明ちゃん?貴方が使い方を教えてあげなさい?良いわね?」
「はぁ、私は構いませんが、張奎?お主も良いな?」
「この力を使いこなせるものなのか?確かに俺はまだこの力を使いこなせてはおらん。これからの同志として趙公明殿に身を任せようと思う」
「強くなる事に余計なプライドを持たない事が一番の近道。この私がお前を間違いなく倶利伽羅の境地へと引き上げてやろう」
「頼む」
二人のやり取りを見ていた聞仲は数度頷いていた。
「間違いなく我々は強い。我らの結束力があれば間違いなくこの世界を支配出来得るだろう」
すると張奎が一言入れる。
「聞仲殿、今、この新生殷国を騒がしている侵入者については耳に入っておろう?その者達、恐らくは俺の知る者達」
「黄飛虎が生き逃した連中だな?」
「そして俺の妻の仇だ。俺は奴らを知っている。いずれ奴らはこの新生殷国を騒がす火種になりかねん。それを何故見逃したのか」
「そう言うな。それは俺が黄飛虎との取り決めだった。魔家四将を討った事は既に黙って見過ごせん。それに紂王様がその者の一人が持つ忌眼にご執心で、必ず手に入れるように命じられている。確かに黄飛虎の頼みで一度は命を見逃したが、この先は黙って見ているつもりはない」
そこに女のカミシニが割って入る。
「安心するが良い。心配する程とは思わないが、そのような小者には私の可愛い弟子を向かわせておいたわ」
「師匠、それはあの二人ですな?」
「そうだよ。私様が育てた奴らの手にかかれば、直ぐに首を聞仲の前に持ってきてくれよう」
「余元と余化か。奴らなら間違いなかろう。少なくとも俺にとっても弟弟子。今、もっとも第五仙血に近い実力者だ」
すると趙公明が棘を指す。
「私達の一番の問題はやはり仙界を統べた西王母の一派だな」
「趙公明ちゃん?心配ないわ。私様が此処に来た理由は、この私様が今より直接仙界に殴り込む前の挨拶よ」
「なぁ!?」
それには張奎が驚愕する。
「まさか単独でではあるまいな?」
「当然よ」
「なら良いが・・・」
「当然、私様一人で十分よ」
「えっ!?」
張奎が話を聞いて、その無謀な発言に聞仲と趙公明の顔を見る。
「師匠ならやり遂げよう。下手に同行すれば我々の方まで巻き添えをくらうだろうな」
「何せ、師匠は私達の、いや、新生殷国の中で最も危険で強い事は間違いないのだから」
「そ、それほどか?」
女は話しを聞いて付け足す。
「違うわ。私は最も強く危険な魅力のようぜつ美女!西王母も、戦場に現れたあの奇怪な玉面なる娘の首を土産にしてやるから、絶好の酒の準備をして置くのだな!オホホホホホ!」
すると女は片手を挙げると聖獣が姿を現したのだ。
乗騎「五点斑豹駒」
女は五点斑豹駒に飛び乗ると、
「行って参るぞ!おはははは!」
と、騒がしく飛び出して仙界へと飛んで行ったのだった。
「とんでもないな?お二人の師は?」
「あれが我らの師・最強の倶利伽羅である金光聖母殿だよ」
「ふぅ〜これで全てに方が付くな」
「気苦労が絶えぬな?聞仲よ」
「それも全ては目的のため!俺は前世で残した遺恨を、現世にて晴らし、そして紂王様の願いを叶えよう。そのために俺にはお前達の力が必要だ。頼むぞ?」
三人は互いに注がれた酒を飲み干し、新たな義兄弟として誓ったのだった。
次回予告
金光聖母が動き出す。
その者の実力はどれ程のものなのか?
法子「また強い女性キャラ現れたわ!?」




