双思共闘!最強の長男・魔礼青!!
残る魔家四将は長兄・魔礼青のみ。
姜子牙と黄天下が戦う!
私は姜子牙だ。
私と黄天下の前には、この佳夢関を守る最後の魔家四将であり長兄・魔礼青が現れてニヤニヤと我らを物色していた。
「俺の弟らを倒すとはな。兄の立場上仇を討たせて貰うぞ?」
「立場上だと?」
「まぁな。奴ら俺を兄として敬わないし、調子乗り過ぎるから天罰が落ちたのだな。そうだ。やはり兄は敬われるもの!弟らは普段からの行いが悪かった」
何を言っているか分からんが、私も黄天下も動けずにいた。
「お前らよ?俺を本気にさせてくれよ!俺を熱くさせて命の取り合いしよう!そしたら弟らの事は水に流して許してやるよ?」
「何か最低だな?俺が言うのもなんだが、弟達の仇を前にして?まぁ、良い!どちみち勝って倒すまでだ!行くぞ?きょうしが!」
「そうだな。黄天下!」
私と黄天下は最初から飛ばすつもりでいた。
私は忌眼を全開にして打神鞭に力を注ぎ、黄天下は右腕に業火を噴出させる。
そして飛び出そうとしたその時、私も黄天下も足が止まったのだ。
「!!」
頭上から降って来た剣が足下の床に突き刺さり、動きを止めたのだ。
そして見上げると魔礼青の頭上には何万もの剣や矛が浮いていて、私らを囲んでいたのだから。
「俺の青雲剣について説明してやろう」
「何だと?」
すると魔礼青は手にした青雲剣にカミシニの力を込めて振り回すと、霧のように雲が立ち込めて頭上へと上がっていく。
すると雲の中から剣やら矛が出現して頭上を覆っていく。
「逃げも隠れも出来ない全面方位の惨殺刑から逃れられるか見せてみろよ〜。お前らの力を俺に見せろよ〜」
そして剣を私と黄天下に向けると、頭上から雨のように剣や矛が降る。
「黄天下!私の後ろに!」
「お、おう?」
黄天下が背後に下がったのを見て私は打神鞭を振り回して防御する。
降り注ぐ剣や矛を打神鞭で全て弾き返してやる。
「うぉおおおおおお!一本も擦り抜けさせてたまるかぁ!」
「姜子牙!」
「ごフッ!」
その時、一本の剣が私の右胸に突き刺さり、私は吐血しながらも片膝をつき、それでも打神鞭を止めずに振り回す。
「しぶといね〜。でも次はそうはいかないと思うぜ?ホレ!」
すると私の腿に剣が刺さり、私は崩れるように倒れた。
「守られているだけでは王にはなれん!俺の父上ならきっとそう言うはずだ!」
すると降り注ぐ剣と矛の前に今度は黄天下が前に出て炎を伴う拳圧で全ての剣を吹き飛ばす。
「黄天下、お前?」
私が思う以上に黄天下は強くなっていた。
黄飛虎に早く追い付き、託された力を自分のものにする努力の賜物。
しかし黄天下もまた右肩に剣を受ける。
「全て躱したつもりなのに!くそぉ!何故だ?」
すると新たに頭上から降り注ぐ剣の変化に私の忌眼は気付いた。
「そ、そう言う事か!」
降って来た剣の中に、落下しながら分裂した剣があったのだ。
あの途中で分裂した剣に気付かずに私も黄天下も攻撃を受けてしまったのか?
そして打神鞭で増えた剣を弾き、黄天下をフォローする。
「おぉ〜?俺の手品に気付いたとは畏れ入った。弟らが負けたのも頷ける。しかしだからといって俺に敵うとは思うなよ?ほれ!増殖する剣を増やしてやろうな!」
すると今度は頭上だけでなく、魔礼青の振り払う剣からも、新たな剣が飛び出し、増殖しながら無限に向かって来た。
「くぅう」
しかし胸に刺さった剣に私の力は抜けるように忌眼が消えてしまう。
「あ、あぁあ」
そして倒れる私に黄天下は言う。
「俺の後ろにいろ!姜子牙!俺が友であるお前を守れる王になる。そうでなければ父上のような強き王にはなれんからな!その代わり、お前はいずれ俺を王にする為に死ぬなよ?」
「黄天下、お前?」
胸が熱くなった。
黄飛虎の事だけでなく、償いからの仲間だと思っていたのは私だけ?
黄天下は私を信頼し、そして友だと思っておるのか?
今まで生きて来て、私に友と呼べる者なんていたか?
いや、記憶する限り、私に命を任せられる友がおったか?
否、ない!
すると黄天下は向かってくる刃の雨に拳を連打して弾き返す。
「全ての攻撃を撃ち落としてやるだけ」
燃え盛る炎が向かって来る攻撃を溶解しながら、魔礼青に向かって走り出す。
「うぉおおおおお!」
「向かって来るか?無謀だな?」
「!!」
魔礼青は青雲剣を翳すと、剣から暗雲が噴き出して一帯を覆っていき、魔礼青の姿が闇の中に消えていく。黄天下は視界を奪われ、闇の中から声が響く。
「俺を捉えられまい。お前は何をされたか分からずに死ぬ」
闇の中から剣が突き出されると、黄天下は躱せずに身体に傷を負う。
「ぐぅおおお!」
振り回す拳は炎を灯すが、この闇の中では黄天下の炎すら光を失っていた。
「クソぉ!何処だ!隠れていないで出て来い!正々堂々と俺と戦えー!」
「言ったろ?お前は何をされたか分からないまま死ぬとな」
闇の中から迫る青雲剣が黄天下の背後から忍び寄る。
「先ずは一匹」
魔礼青が勝利を確信し青雲剣を黄天下の心臓目掛け突き出した時、黄天下の右腕が無意識に動き出す。
「ぬぁー!?」
黄天下は右腕が勝手に動いた時に、その身を任して振り払ったのだ。
「!!」
砕け散る青雲剣に魔礼青は驚愕しながら弾き飛ばされると、そのまま壁に衝突した。
同時に闇が晴れていく。
「なぁんだ〜?コイツの腕?桁違いじゃん?俺の青雲剣を砕くなんて、上異種の力を感じた。おもしれー!」
すると魔礼青は目をギラギラさせて再び黄天下を物色する。
「お前を喰らえば、俺はまだまだ強くなれる!俺は強くなって第五仙血、否!それ以上へと進化してやるぞ!お前のその馬鹿げた腕、それに倒れているその男の忌眼を手に入れれば可能だ!アハハハ」
魔礼青は全身の血を鎧に変えて、己の両腕から血が噴き出し槍へと変化させた。
「貫く!」
魔礼青の攻撃に黄天下もまた右腕に炎を噴き出させて受けて立つ。
「力勝負で押し通す!」
黄天下と魔礼青が衝突した。
凄まじい衝撃が床を崩し、私達はその余波で落下したのだ。
「う、うぅぅ」
気付くと、私は一人だった。
けれど意識があるはずなのに指一つ動かず、闇の中にいるようだった。
何処?私はどうなった?
黄天下は?魔礼青は?
すると私に向かって何者かが近付いて来た事に気付く。
気配とかでもなく、存在を感じるような感覚。
何者だ?
動こうにも動けず、その者は私に攻撃する様子もなく見下ろしているようだ。
すると声が脳に伝わる?
《オマエの使命は全てのカミシニの王を討ち滅ぼす事。その為にオマエにその忌眼を与えてやったのだからな》
「!!」
私に忌眼を与えた?
何者なのだ?
その時、再び声が聞こえた。
「何処だぁーー!何処に消えたぁ!」
その声は魔礼青の声だった。
やはり生きていたのか?
そして声がどんどん私のもとに近付いて来る。
もう少しで私の所に来てしまう?
何とかして動かねば!
「見ぃ〜つけた!お前、忌眼の方だな?今からお前をコロして、その眼を戴くぜ?ん?」
ヤバい。
今、攻撃されたら抵抗出来ないぞ?
動け!動け!私!
「お前、何か雰囲気が?ん、お前は!」
そう魔礼青が言いかけた時、
「う、うぎゃ!おわっ!お前、止め、止めろぉおおお!ぎゃあぎゃあああ!」
(な、何が起きている?何がどうなって?)
すると魔礼青の声が途絶えた。
同時に感じた。
『封神』
私の忌眼の中に魔礼青の魂が封神された事に。
何者かが倒し、私の中に封じたと言うのか?
しかもあの魔礼青を?
「!!」
すると私の視界が戻り、そして身体も動けるようになっていた。
私の隣には黄天下が寝ていた。
そして私は意味も解らずに戸惑うしかなかった。
「どうやら討ち取ったようだな?」
「ナタク?」
振り向くとナタクが壁に寄りかかりながら私と黄天下を見て言った。
ナタクが倒したのではなさそうだ。
それでも私達は佳夢関を落とし、そして前進した事は間違いなかった。
前途多難と、謎を残しながら。
次回予告
姜子牙達が戦っていた頃、謎の若者が地上界で動いていた。
法子「あ~忘れてたわ~」




