姜子牙の限界突破!
黄天化が限界を超えた。
そして姜子牙もまた限界を超えられるのか?
私は姜子牙だ。
私は第四仙血の韓変を相手に戦っている。
しかし完全に力の差が離れていた。
「うおっと!」
凄まじい迫力で迫り、左右から抜かれた剣が眼前を通り過ぎた。
「ひぃえええ〜」
恐るべし血の身体強化。
動きが半端ない。
「よく躱したな?それにしてもお前は何だ?神族でも無さそうだが、人にしては異常な身体能力だな。仙人か?しかし不思議とお前からカミシニの気配を感じる?何から何まで理解出来ぬ」
「そうですか?理解しないで結構!」
私は忌眼を解放する度に力を放出させて打神鞭を振り回して攻撃を仕掛ける。
しかし韓変は軽々と見切り、迫って来た。
「その眼か?その眼が開かれている時だけお前からカミシニの力を感じるぞ?奇怪な奴め!」
韓変は間合いに入り込み、抜刀した剣が私の身体をかすり傷つく。
それでも紙一重で躱しているのは忌眼の力が発動している瞬間は動体視力で動きを追えているからなのだ。それでも肉体は人間。全てを躱して受け止める力は無い。
「ぐはぁ!」
私は膝を付いて息を切らした。
一度一度の集中力が半端ないぞ?
これが格上との戦いの緊張感なのか?
神経が削られそうだ。
私は黄天下のような生粋のカミシニではなく、
忌眼が発動した時のみ力が使える偽物に過ぎない。
その理屈は未だに不明だが、自分の血をカミシニ同様の力を与えて敵を討つ。
その能力は至って単純で、肉体強化と武器の強化のみなのだ。
だから血を武器に構成する事は出来ぬために持参の武器に力を込める必要がある。
「打神鞭!」
韓変の接近を阻む雷を込めた攻撃を諸共せずに間合いに入り込まれる。
「これでもかぁー!?」
地面から伸びた打神鞭の尖端が死角から飛び出して韓変の剣を弾き飛ばした。
「剣など不要!」
韓変はそのまま拳で私の腹を殴りつけると、
たまらずに私は吐血してもんぞりかえる。
「貧弱な!」
し、仕方ないだろ?
「くぅう!」
悶絶状態の私に興味を無くした韓変は不用意に近づくと、私は策にハマったと術を発動したのだ。
「忌眼!」
私の右眼が銀色に発光する。
その瞬間、韓変の動きが止まり、私は打神鞭に雷を込めて剣のように突き出した。
「危ない危ない!」
韓変は紙一重で後方に飛び上がり躱すと、私の策はまんまと外されたのだ。
私の忌眼の能力はカミシニ効果だけでなく、カミシニの目を合わせれば、ほんの一瞬だけ相手を金縛りのように怯ませる事が出来る。
しかしそれも失敗に終わった。
「どうやら策で俺を誘っているのか?だったら接近戦ではなく遠距離から攻撃をすれば良いこと!」
韓変は掌から血を噴き出させると、風車のような武器を構成させた。
「万刃車・旋風」
真っ赤な竜巻が巻き起こり私の前に幾つも出現して迫って来る。
「マジか?」
私の忌眼が竜巻の中に韓変の血が刃と化して回転している。
あの竜巻に巻き込まれたら間違いなく刃に身を切り裂かれてしまうだろう。
私は竜巻から逃げるように走りまわり躱しつつ、打神鞭で竜巻に叩きつけてみた。
「イツっ!」
竜巻に打神鞭が弾かれ、びくともしない。
それどころか竜巻の数が増えていきながら私の逃げ場を塞いでいく。
「おい!カミシニモドキ!逃げ場を失ったお前に助かる手立てはないぞ?どうするつもりだ?ふふふふ」
確実に勝利を確信しているな?
「決着つく前に確信するのは死亡フラグだぞ!見せてやろう。私の真骨頂!」
私は大上狼君に止められていた力を使う事に躊躇しなかった。
何故なら、これから先の戦いでは絶対に必要であり、使いこなせなければ生き残れないと肌身で感じたから。
「忌眼・真性多血掌!」
私は指先から忌眼に気を流し込み、強引に活発化を促進させる。
すると充血した瞳が脈打ち、銀色に輝く忌眼の力が増幅したのだ。
この力はまだ未熟な私が大上狼君の危機に怒りで格上だった第三仙血の姫伯邑考をも撃退させた時に見せた爆発力だ。
今日まで忌眼の力は暴走しないように三割近く?発動ギリギリの能力で制限していた。
しかし力を付けた今の私なら、あの時よりもこの忌眼の力を使いこなせられるに違いない。
「そうであってくれぇー!」
直後、身体中に痺れと同時に脈拍があがり、動脈が浮き出してくる。
い、痛い!
痛いどころじゃないぞ?これは?
全身が火傷するかのように熱い?
同時に魂が抜けるような冷え?
動脈と静脈に血が廻るごとに激痛が止むことなく襲う感じだ。
目から流れているのは涙か?それとも血か?どちらとも分からない。
感覚が麻痺し始めて来た・・・
このまま意識を飛ばせば楽になれるのか?
「!!」
いや!負けてなるものか!
ここで諦めたら、何も残らぬではないか!
「せ、制御、してやるぅぞ!」
カミシニの血が全身を廻り、私が想像していた以上の力を与えた。
私は打神鞭を打ち放つと、その爆発力は目の前にまで迫る竜巻をも切り裂き、瞬く間に消し去る威力だった。
「ハァハァ、辛うじて意識を保っているぞ?このまま、このまま」
まるで溢れる水を掌で掬った状態で戦わねばならぬ心境だった。
私の忌眼の解放に韓変は警戒しながら飛び退くと、攻撃の手を構え直す。
「何だ?この者から発する威圧感は?本当に人間なのか?カミシニだとしたら、コイツの力は第三仙血以上ではないか?そんな事は許せぬ!お前のような不可解な奴は後々、我らカミシニにとって災いを呼ぶ。そんな気がするぞ!」
怯み始めた韓変に私は答える。
「そうか?そうかもしれぬな。なにせ私はお前たちカミシニを殲滅するために生まれた執行者だからな」
私は打神鞭を左右上下と十字に振るうと、隙をつかれた韓変の万刃車が粉々に粉砕し、そして、
「ば、馬鹿な!?」
韓変の身体が降り注ぐ閃光の如き打神鞭の攻撃で粉々に切り裂かれ、そして蒸発したのだ。
「封神!」
気化した韓変の身体は吸い込まれるように私の忌眼に吸い込まれると、同時に私の身体の痛みが消えて忌眼の力が落ち着いたのだった。
「ハァハァ、ハァ、ハァ」
へたり込む私はギリギリだった。
脳が思考をするのも疲労するような眠気が襲い、このまま眠りたかった。
「う、嘘だろ・・・」
しかし私を休ませてくれるほど状況は甘くはなかったのだ。
私と黄天下が門番である韓昇・韓変を倒した事で、我らの戦いを隠れて見ていたカミシニ連中がチャンスと姿を現して近付いて来たのだ。
「漁夫の利か?くそ!身体が、う、動かぬぞ!どうすれば」
それは黄天下も同じ状況だった。
「お前ら卑怯だぞ!正々堂々と戦え!」
だが、奴らは下卑た顔で剣を鞘から抜くと、我らに向かって斬り掛かって来たのだ。
これにはもうどうしたら?
「ぬっ?」
その時、ボヤける私の目に何者かの背中が見えた。
いつの間に現れた?
突如、その者は戦場に現れて立っていた。
金色の髪の甲冑を纏う若者?
私は本能的に気付いた。
その者は神族ではないか?
奴ら天敵であるカミシニ相手に神族が敵うはずないぞ?
逃げるのだ!
神族の若者は剣をゆっくりと抜くと、私と黄天下は信じられぬものを目撃した。
「し、信じられぬ?有り得ぬ!」
その者は、抜いた剣で向かって来たカミシニを素早い動きで斬り裂くと、斬られたカミシニが粉々になって消滅したのだ。そして次々と現れたカミシニ連中を相手に剣一つで斬っていく。
まるで舞っているかと思えば、瞬発的な速さで剣を振るい、カミシニ達は同じく粉々になって塵と消えた。
「な、何者なのだ?あやつは?」
すると全ての残党を斬り捨てた神族の男はゆっくりとこちらに向かって歩いて来ると、
無様に倒れている私を見下ろして言った。
「俺の名はナタク。お前達の戦いは見せて貰った。このまま俺に斬られたくなければ俺に従え!良いな?」
「へっ?」
な、何言っているの?
意味不明の事を言うナタクと名乗る神族の顔を改めて見た時、
私の忌眼が震えるような感覚を覚えたのだ。
あの金色に光り輝く瞳に?
次回予告
姜子牙の前に現れた天界の若者。
神族でありながら何故、カミシニ相手に戦えるのか?
法子「ずる~い!ナタク~!出番あるってズルくない?」
 




