姜子牙と黄天化の決意!
脅威は姜子牙と黄天化を休ませてはくれない。
黄飛虎を失った二人は今・・・
私は姜子牙だよ。
私は黄飛虎を失ったあの戦いの後、黄天化と共に旅を続けていた。
私と黄天化の共通の目的。
それは黄飛虎の仇である聞仲を討つ事。
しかし聞仲のいる場所は現状、地上を支配する紂王のいる新生殷国。
そこには腕の立つカミシニがゴロゴロいるのは嫌でも耳に入っていた。
むやみやたらに踏み込めやしない。
しかし私の目的は全てのカミシニを殲滅する事には変わりない。
いずれ戦う事になるのであれば遠かれ早かれと言うわけだ。
それにしても黄天化の奴・・・
アイツは最初こそ泣き叫び、黄飛虎の散った場所から動こうともしなかった。
しかし黄飛虎の意志を継ぐと言う事を胸に再び立ち上がったのだ。
「俺が父上に代わり、この世界を一つにする真王になってやる!」
「人間も神族もカミシニも共存出来る世界か。本当に出来るか分からないが、少なくとも茨の道。黄天化、お前には無理だろう」
「何だと!!」
頭に来た黄天化に私は言葉を続けた。
「しかしこの私がいれば別だ!この姜子牙様がお前の参謀になってやろう!それがお前の父、黄飛虎に救われたこの命の代価だ!」
「姜子牙!」
私は黄天化の変色した腕を見て、その思いを強くした。
それは聞仲が立ち去り、私と黄天化が旅の覚悟を決め旅立つ日の前の事だ。
「も、もう少し〜もう少し!」
黄天化は張奎に斬り落とされ失った腕を再生させようと踏ん張っていた。
カミシニの再生力は半端ない。
切断面を再び切り、血を流した状態で形を作り上げ、
自由に動かせるようにすれば元通りになる。
「まるでトカゲの尻尾だな?」
「うるさい!気が散るわ!」
黄天化は新たな腕を握り開きを試すと、液体が溶けるように溢れ落ちた。
「やはり無理なのか」
本来なら、コレで再生出来るらしいのだが、今回は出来ないでいた。
それはカミシニはカミシニの血で殺せる所以であり、張奎から受けた血の攻撃はカミシニの上位種のもの。
「失われた腕は元には戻らないか。しかし命が残っただけでも拾いものだ」
私の同情に黄天化は唇を噛みしめる。
「これから先、片腕で戦っていけるか?強くなれるのか?あの張奎を討てると思うのか?」
その問いに私も言葉を失った。
「!!」
その時、私の忌眼が突如光り輝き、何か強い力を感じ取ったのだ。
「な、何だ?この強い力は?」
辺りを見回すが何者もいなかった。
そして力の感じる場を見た所は埋もれた地面だった。
(確か、あそこは?)
その場所は黄飛虎が聞仲に討たれた場所。
死体すら残さずに消滅した黄飛虎の墓標。
胸騒ぎがした。
「どうした?姜子牙?」
「いやな?何か感じるのだ」
私は力の感じる場所に近づき、その場を恐る恐る掘ってみた。
「コレは!!」
そこに埋もれていたのは腕だった。
そして間違いなく黄飛虎が聞仲に切り落とされた片腕。
「消滅せずに腕のみ残ったと言うのか?そんな事が?」
その腕を拾い上げた私は黄天化に差し出す。
「黄飛虎の肉体は残ってはいなかったが、せめて腕だけでも供養してやろう」
「ち、父上。そうだな、姜子牙」
そして黄天化が私より黄飛虎の腕を残された左手で掴んだその時、黄飛虎の腕が生きた触手のように伸びて黄天化の失われた右腕に食い込んだのだ。
「う、うがぁあああ!」
「黄天化!」
激痛と熱く力強い重みがのしかかる。
「まさかそんな事が!?」
しかし黄天化は暴れる黄飛虎の右腕の暴走を気合いで耐え忍ぶと、黄飛虎の残された腕が黄天化の右腕として備わったのだ。
「ち、父上が俺のために残してくれたと言うのか?なら俺は父上と共に強くなり、戦い抜くぞ」
赤く変色した黄飛虎の腕を手に入れた黄天化は天に掲げて誓うと、その思いは私の心を胸打った。カミシニであろうと、心と絆があるのだと始めて知ったのだから。
そして私ら二人の旅は新生殷国へと向かう。
私と黄天下が向かったとは、虎牢関と呼ばれる関所であった。
この関所を通らねば新生殷国に入る事が出来なかったからである。
しかしこの関所には二人のカミシニが守っているようだ。
しかも立ち入りを禁止されているこの関所に入り込む者を一人足らずと出す事も入れる事もさせない門番だと噂されていた。それでも私と黄天下が見張る間でも数多くのカミシニ連中が突破を試みるが返り討ちにされていた。その理由は、この関所を通れた者は二人を倒せる程の強者として、国に召しかえられると言う。
「やはり戦うのは避けて回り道をするか?遠回りにはなるが、他の関所の門番より難易度高そうだぞ?」
「いや、俺は奴らと戦って勝って通りたい。そうでなければ、この先に待ち構える連中を倒すなんて出来ないからな」
「そうだな。私もお前のその覚悟が聞きたかっただけだ」
私と黄天下は臆する事なく真正面の関所の門に向かって歩き出す。
その姿を視線が集中していた。
この関所を通ろうとするカミシニ達が新たな餌食となる贄を見ているのだ。
そして門の前から二人のカミシニが待ち構えるように姿を現す。
「兄貴よ?百人目の獲物が来たぞ?奴らの血を持参すれば、俺達は門番などではなく城の将軍として召しかえられるはずだからな」
「そうだな。俺達こそ紂王様に認められるべき従者なのだ」
噂で聞いたが、二人の名は韓昇と韓変と呼ばれる兄弟。
第三仙血のカミシニらしい。
「もう退けぬぞ?戦って勝ち、押し通る!」
「任せろ!姜子牙!」
が、気合い万全の私らは見誤っていた事にまだ気づいていなかった。
まさか、奴らの実力が第四仙血なのだと思ってもみなかったから。
万が一辛うじて逃げたとしても、この周りを見ているカミシニ達の餌食になる。
逃げる事も出来無いこの状況で、
私と黄天下は第四仙血に勝って、門を抜けるしかなかった。
次回予告
第四仙血の相手に姜子牙と黄天化は勝つ事が?
生き残る事が出来るのか?
法子「頑張って!応援しているわ!」




