決着!?黄飛虎と張奎!
倶利伽羅の力を覚醒させた黄飛虎
張奎との倶利伽羅同士の決着は?
私は姜子牙だ。
身体が全く動かない。
張奎に背中を突き刺され、激痛に耐える私の前で、突如黄飛虎が再び立ち上がった黄飛虎だった。
「うぉおおおおおお!」
しかしその黄飛虎は遥かに別次元の存在になっていたのだ。
そう、倶利伽羅の力を覚醒させ血咒の忌鎧装を纏う王の姿へと!
「こ、コレは?」
その変化に黄飛虎自身も戸惑いつつも、漲る力を手に入れ確信した。
「どうやら俺はまだ戦えるようだな」
その変化に驚くのは張奎も同じだった。
「お前も覚醒したのか?超越した血の目覚め。なるほど、お前もまた俺と同じく選ばれし者と言うわけか」
黄飛虎。
その資質には目を見張るとは思っていたが、本当にカミシニの王として覚醒するなんて。
張奎の脅威、この状況を打破する唯一の可能性として喜び半分、複雑な心境であった。何故なら
「わ、私は全てのカミシニを殲滅させる執行者なのだぞ・・・」
いずれ私は張奎だけでなく、黄飛虎とも命をかけて戦う時が来るのかもしれんのだ。それでも、今だけは黄飛虎よ!
「お前に勝って欲しいと願うぞ!」
そして張奎もまた黄飛虎の覚醒に対して私に対する復讐の手を止め、一人の武人として好敵手になろう黄飛虎に集中する。
私ならいつでも殺せると思ったか?
それとも隙を見せれば黄飛虎に首を落とされると警戒したかのどちらかか?
「選択せよ!カミシニの王は一人で十分。お前が俺に従僕せぬなら、この場で始末する!今度は手を抜かぬぞ?」
「ならば俺は俺の王道を貫く!」
同時に飛び出していた。
張奎の振り払う剣に対して黄飛虎は手刀と拳を繰り出して攻めと防御で衝突する。本来なら間合いの分だけ剣を持つ者の方が利があると思うが、覚醒した黄飛虎は剣の間合いに入り込んでからの打撃を繰り出して張奎を翻弄していたのだ。
「ち、父上」
そこに二人の凄まじい戦いに目覚めた黄天化が呟いたのだ。
「黄天化!無事であったか?」
黄天化は切断された腕を押さえながら、父親である黄飛虎の戦いに感動していた。
「やはり父上こそ真の王になるべきなのだ!この地を争いのない世界へ導く王」
「ぬっ?」
それは初めて聞く話だった。
そして聞かされたのは黄飛虎の目的。
突如、カミシニとして甦った黄飛虎は息子である黄天化と合流した。
そこで何故、再び自分が甦ったのか?
何のために?
その意味を知るために己の生前の歴史を知る必要があった。
己を知った上で、カミシニとして世界を滅ぼす側になるか?それとも?
そして私から生前の生き様を聞いた上で、黄飛虎は黄天化に自分の目的を告げたと言う。
それは
「俺はこの世界を変える」
「父上?それは?」
「他の甦ったカミシニのように力を破壊と暴力に使うのではなく、俺は共存の世界を作ろうと思う。人も神族も、我らカミシニすらも共に生きられる世界をな」
「そ、それは!」
カミシニである黄飛虎にとって、それは困難な道である事は分かる。
己の中に宿る殺戮の本能を制し、敵である神族との和平を結ぶなんて。
そんな事が出来るのは間違いなく
「し、真王!」
呟いた言葉に黄飛虎は笑いだして、黄天化の頭に手を置き答えたのだ。
「俺が真王とは限らんぞ?もし道半ばで俺が倒れたならば、今度はお前が俺の意志を継ぎ、その真王になるのだからな」
しかし黄天化は首を振り言い返す。
「そんな事は俺がさせません!俺が必ず父上を真王にさせてみせるからな!」
その話を聞いた私は動揺した。
もし本当にそんな夢話を現実に出来るなら、それほど平和な世があるのか?
私の戦いも終わるし、誰も苦しまない。
ならば私もその夢に乗っかれば…
私は黄飛虎の戦いを見て、確信した。
だが、その為にも必ず勝って貰わねばならんぞ?黄飛虎!
「あの黄飛虎なら叶えられるかもしれん。そのような馬鹿げた平和な世界を導く真王って奴にな」
己の生きる道を悟り戦う黄飛虎。
「高まれ!俺の血中濃度!」
黄飛虎の血液が沸騰するかのように身体の皮膚が赤く染まっていく。
「ヌゥああああ!」
お互い、その剣と拳は凶器。
隙見せれば肉体共々削られる。
共に限界を超えた紙一重の戦い。
「俺はお前を倒し、姜子牙を討ち果たす!我が妻、高蘭英のために!」
複雑にも張奎もまた退けぬ戦いだった。
本来ならこの私が戦うべき戦なのに。
「俺の剣に我が血を捧げる。血戦高血刀!」
時が止まったかに思えた。
張奎の踏み込み抜き出した剣は大地を裂きながら黄飛虎の身体を斬り裂く。
「勝負あっ・・・」
が、黄飛虎はその踏み込まれた剣に臆する事なく、さらに奥へと踏み込んでいた。
まさに間合いの取り合い。
制したのは黄飛虎の方だった。
「高指血掌!」
鋭く突き出した掌は張奎の顔面を掴み、握り締める。
「ぐぐぐぅおおお!」
張奎は顔面を握り締められ、剣を落下させて黄飛虎の腕を掴み抗う。
「逃がさん。このままお前の頭を潰し、二度と甦らないように消させて貰う」
完全に勝負がついた。
「く、くそぉおおおおおおー!」
悔しさと無念の叫びが響き渡る。
いくらカミシニとて頭を潰されれば直ぐには再生出来ない。
その前に残された身体に黄飛虎の血を垂らして熔かしてしまえば完全決着だ。
「!!」
が、その直後、轟音が響いた。
上空より紅い雷が落下し、黄飛虎の腕を両断したのだ。
あれはただの雷ではない?
カミシニの攻撃だ!
「ぐわぁあああ!」
黄飛虎は腕を失い、その場に白目をむいた張奎が意識を失い倒れる。
そして見上げた先に攻撃して来た者の正体を見たのだ。
ソイツは黒い麒麟に乗騎した武人。
只者ではない気迫と存在感。
何者なのだ?
するとその者は降りて来ると、黄飛虎の前にて止まった。
「黄飛虎、どうやらお前はまた躍らされているようだな?」
「お前、誰だ?いや?俺はお前を知っているぞ!お前は、聞仲か!!」
聞仲?
その名は私も知っていた。
今、この地上を支配している紂王の側近であり、最高司令官参謀。
そして過去の仙界大戦でも歴史に名を残す渦中にいた伝説の男。
その男が何故、ここに?
すると聞仲と黄飛虎が何やら語り出し、そしてムキになる黄飛虎に対して聞仲は首を振り、そして涙した。
「聞こえぬ?何の話をしているのだ?」
黄天化もまた飛び出したい気持ちはあったが、聞仲が現れたその時から足が震え出して金縛りにあっていたのだ。
それは私も同じで、あの二人の会話を盗聴しようとするが阻まれていた。
その後、私と黄天化は信じられない状況を目の当たりにして、固まった。
話し合いをしていた二人に動きがあったかと思うと、聞仲の振り出した金鞭が黄飛虎の身体を細切れに切り裂いたのだ。
う、嘘だろ?
飛び散る黄飛虎の血が蒸発して消えると、聞仲は倒れている張奎を担ぎ黒麒麟に乗せて浮かび上がる。
「ま、待てぇーー!よくも父上をー!」
怒りに金縛りを自力で解き、飛び出した黄天化が駆け出すと、その足下に門仲の打ち出した金鞭が亀裂を作って動きを止めた。
「それ以上近付くならお前も容赦なく始末する。お前達の力量では無駄死にだぞ?黄飛虎の遺言として今一度だけ見逃す」
「何だと!」
「その命、今散らすか?それとも力を持ち改めて俺の前に立ちはだかるか?俺は構わん!俺は新生殷国で待っているぞ」
そして、その場から張奎を連れて聞仲はその場から一瞬で消え去った。
残された私は膝をつき、
泣き叫ぶ黄天化と共に悔し涙を流すしかなかった。
次回予告
黄飛虎を失った姜子牙と黄天化
そして仙界と新生殷国に動きがあった。
法子「黄飛虎さん?嘘よね?会った事なかったけれど、なんか残念だわ・・・」」




