姜子牙と玉面乙女!共鳴する忌眼!?
張奎 (ちょうけい)と黄飛虎に任せ、姜子牙と黄天化の前に迫る脅威。
玉面乙女!
二人は生き延びる事が出来るのか?
私は姜子牙だ。
私の忌眼を狙う玉面乙女。
その魔の手が迫る。
「この眼は産まれついた時から私のだ!取られてたまるものか!」
玉目乙女の左眼が私の右目と同じく銀色に光り輝く。
左右片目同士の忌眼。
自分で否定しようと何かしら関わりある事は馬鹿でも分かる。
しかし取られてたまるかよ!
「その眼は妾から奪われた真王の眼。お前如きが持ち合わせるには分不相応」
「知るかぁ!」
真王の眼?
知るか!とか言ってはいるが、かなり興味深い。
この玉面乙女って女は私の眼の秘密を知っているのか?
そもそも何故、私がこの眼を持っているのか?
この眼があるから、私はカミシニなんて化け物を退治して旅しているのだ。
理由を知りたくないなんて言ったら嘘になる。
「だが、殺されてまで知りとうない!」
私は忌眼の力を打神鞭に込めて振り回すと、玉面乙女に直撃して切り裂いた。
「油断大敵だぞ!」
が、手応えがない?
私の打ち出した打神鞭が直撃するよりも先に玉目乙女の身体が液状化して擦り抜けた形となったのだ。
「馬鹿な?」
身体を液状化させて、元に戻る。
仙術で己の身体を水や霧、炎等に溶け込ませ同質化させる術は存在する。
カミシニの連中にも失われた指や腕を自らの血で硬直化させて動かし、再生するのは幾度と見た事がある。今のはその二つを組み合わせたに違いないが、前者は己の意識を強く持っていなければ元に戻らない。後者は同質のカミシニの攻撃に対しては再生が困難。
つまり私の忌眼の力を込めた打神鞭の攻撃は、たとえ玉面乙女が液状化しようとも再生出来ないはずなのだ。
「・・・」
考えられる事は二つ。
玉面乙女の血の能力が私よりも桁違いであるか、奴の忌眼が私の忌眼の力を相殺しているかのどちらか。考えていても答えは出ないし、無意味だ!
「もう終わり?抗うのも止めたなら、もう殺しても良いかしら?」
「!!」
玉面乙女の足下から渦を巻くように血溜まりが広がっていき、私の足場は完全に奴の血の池地獄に捕らえられてしまったのだ。
「や、やばっ!抜かったぞ??」
足が抜けない?逃げ場がない?
すると玉目乙女が血溜まりの上を滑るように私に近付いて来た。
「フフフフ」
そして細い腕を伸ばして私の右目に迫った時、頭上から何かが落下して来た。
「血炎の手刀」
燃え盛る血を手刀に込めた一撃。
それは黄天化の不意打ちだった。
「何をもたついている!姜子牙!コイツを始末し、父上の救援に参る」
「お、お前!」
燃え盛る手刀は黄天化の能力。
その手に染みたカミシニの血が高熱を発して炎上しているのだ。
「おい、女!俺はコイツの関係者だ。今は急用であるゆえ、お前が邪魔するなら姜子牙に加勢する」
黄天化は両手、両足から同時に発火した。
「四肢炎・業車輪」
凄まじい勢いで飛び出した黄天化は蹴りや拳、手刀を繰り出す。
その怒涛の体術は玉面魔王の操る血を蒸発させて接近し、顔面や身体に幾度と突き出される。
「オホホホホホホホホ!」
しかし当たるよりも先に液状化する玉面乙女の身体には手応えなく擦り抜けた。
「この化け物が!」
繰り出した蹴りが真横から玉面乙女の身体を両断するが、直ぐに元に戻る。
まるで実体のない幻に攻撃しているようだった。
しかし伸ばした腕は黄天化の顔面を掴み、強い力で締め付ける。
「うがあぁあああ!」
「させるものか!」
私も加勢し、打神鞭を伸ばして剣状にして掴みあげる玉面乙女の腕を切断した。
「お前達に妾に傷を負わせる事は不可能よ。それが格の違いなのよ」
すると血の池地獄の血蒸気が凝固して結晶化していき私と黄天化に向かって飛んで来る。
「打神鞭・回転防輪陣」
打神鞭を回転させて球体の防御を張り結晶を寄せ付けず、黄天化も拳で粉砕する。
「どうだぁ!」
私と黄天化は防戦一方だった。
防御の手を止めれば、即座に命を断たれるのは間違いなかった。
打開策を練らねば!
「姜子牙ぁー!何か考えろ!」
「分かっておる!しかし!」
私はこの状況で分析する。
空間感知能力。
この一帯の土地が広がるように見えてくる。
そして、見つけたのだ。
「一か八かか!」
「何か策があるのか?姜子牙」
「済まん。しばしお前一人で堪えて貰えぬか?」
「この状況をひっくり返せるなら何でもしてやるよ!」
私が打神鞭の手を止めると黄天化が私を庇うように前に出て、
向かって来る水晶を連打で粉砕にかかる。
「ウォおおおおお!」
そして私は意識を集中していた。
この地を四方ではなく、足下から地下深くにまで伸ばすように。
「いつまで耐えられるのかしら?オホホ。その分だの直ぐに力尽きてしまうわね」
と、その時!
「!!」
足下が揺れだしたのだ。
地震?
そう。突如強い地震が起きて地割れが発生し、玉面乙女の血の池地獄が地割れの中へと流れ沈んでいく。
「ふふふ。黄天化!今だぁー!」
「任せろぉ!」
黄天化の全身が高熱で真っ赤に変色すると、残った玉面乙女の液体が蒸発する。
「今だぁー!」
完全に私らの動きを拘束していた呪縛が消えたと同時に私は打神鞭を伸ばし剣と化して玉面に向かって突っ込んだのだ。
「忌眼・雷血剣」
鮮血の雷を纏わした剣が玉面乙女の眉間に向けて突き出された。
「それで妾を終わらせられると本当に思っているのか?」
その時、玉面乙女の忌眼が銀色に光り輝き、私の忌眼が同調するかのように同じく光り輝いた。
この輝きは私の意図するものではないぞ?
玉面乙女が何かしたのか?
「!!」
しかし玉面乙女もまた、この状況に戸惑っていた。
これは私と玉面乙女の忌眼が共鳴していると言うのか?
な、何だ?
時が止まった感覚がした。
何故なら身体の感覚がない?
指一つ動く感覚も分からない。
意識だけが存在を感じるのみ。
何なのだ?
と、その時私は光か闇か分からない空間で、映像を見た。
そこには狭く暗い牢屋の中に集められ閉じ込められた四人の幼い子供達がいた。
(あの者達は?)
私は子供たちの姿を見て気づ付く。
人間でない者もいる?
人間、獣人?龍人?精霊?
九本の尾を持った娘、鱗を持ち角のある娘、それにあの精霊の娘は玉面乙女か?
それに人間の子供は男の子のようだ。
何故、こんな場所におる?
すると声が響き渡る。
『お前達は選ばれし忌み子!この世界を終わらす運命の子供だ!』
その声の後、四人の子供が奇声をあげるように悲鳴をあげた。
激痛?恐怖?悲しみ?憎悪?
様々な感情が流れ込むように伝わって来た。
そして、私もまた発狂して苦しみもがいたのだ。
「ぎゃあああ!た、助けてぇえ!嫌だぁあああああ!」
私の眼から血が流れ見上げると、正面に同じく眼から血を流して同じく苦しみもがく娘が見えた。
「ぎ、玉面?」
お互いの顔が見合わさった時、私達の意識は弾き飛ばされたのだ。
「うぐぅわあああ!」
その時、また声が聞こえた。
『妲己、太公望、お前達が世界を終わらす使徒に選別された真王だ』
妲己?太公望?
「ごほっ!」
私は胸を押さえられ息を吹き返した。
意識のなく心臓の止まっていた私に黄天化が人口マッサージをして蘇生してくれたのだ。
「わ、私はどうなったのだ?玉目乙女は?」
「大丈夫か?お前が玉面に突っ込んだ後に閃光が覆ったと思ったら、玉面の奴は飛び去るように逃げていき、お前がぶっ倒れていたのだ」
「た、助けてくれたのか?」
「父上がお前を信じていたから俺もお前を信じて生かしただけだ」
私が無事だと分かった黄天化は立ち上がり、
「お前が無事だと分かればもう大丈夫だな。俺は父上のもとに行く!そして父上の加勢をする」
「待て、馬鹿!黄天化は私とお前を生かして逃がすために戦っておるのだ!足手まといになるだけだぞ!」
「なら俺は父上の盾となっても、父上を生かす!父上こそこの世界を変える真王に相応しいのだからな!」
「真王だと?」
その時、私は黄天化の腕を掴み止めると、
「離せ!お前が止めても行くぞ!」
「止めやしない。私もお前と共に戦う。そうだな、私は今死んだ。それをお前に救われたのだ。恩義は返すものだと私は心得ているつもりだぞ。それに親子共に助けられ見捨てたとあったら寝覚め悪いしな?」
「姜子牙、お前・・・」
そして私と黄天化は再び、黄飛虎の戦う戦場へと引き返したのだった。
次回予告
張奎 (ちょうけい)と黄飛虎の一騎打ち。
その勝敗はどちらに傾くのか?
法子「重い方かな?多分・・・」




