倶利伽羅の印?復讐鬼・張奎 !
澠池城の真の主である張奎と、玉面乙女が姜子牙に迫る。
しかし黄飛虎がその間に割って入ったのだ
それは姜子牙がで澠池城の女主・高蘭英を倒して間もなく、遅れて独角烏煙獣という霊獣に乗騎した張奎 (ちょうけい)が戻って来たのだ。
「!!」
そこで張奎 (ちょうけい)は崩壊した澠池城を見て驚愕し落胆する。
崩れ落ちた廃墟と残骸の中を駆けずり回り、高蘭英を探したが姿なく、その血が城に残っていない事で何者かによって敗れ、殺された事を知った。
「だ、誰だ?誰が俺の愛する高蘭英を手にかけたぁー!」
怒り叫ぶ張奎 (ちょうけい)の背後に気配がした。
振り向かずに張奎 (ちょうけい)は言葉を発する。
「お前か?お前が高蘭英を手にかけたのか?」
静かな殺気。
返答次第では、次の瞬間に命が狩られるだろう。
すると背後に現れた者は両手を左右に振って否定する。
「お待ちくださいな。貴方の愛する高蘭英さんを手にかけた者を僕は知っています」
「何が目的だ?それを告げるために俺の前に現れた善人者には見えないが?」
「それは失礼な。僕はね?貴方の仇を討つ手助けをしたいまで」
「手助けは無用。その者の名だけ教えろ!」
「はい。その者の名は姜子牙。その右瞳に忌眼を持ちし人間」
頷くと張奎 (ちょうけい)は独角烏煙獣に乗騎する。
「お待ちください。張奎 (ちょうけい)様!役目を遂げた後に紂王様のもとへお越しください。聞仲殿が貴方をお待ちしております。そしてこれを!」
男が投げたのは宝貝だった。
その宝貝から映像が浮かびあがり姜子牙の姿が浮かぶ。
「この者が姜子牙だな。紂王?聞仲?お前には礼を言う。心に残して置こう」
そして殺気と憎しみに震える張奎 (ちょうけい)が飛び立ったのだ。
私は姜子牙だ。
とんでもない大ピンチに私はなすすべない状態にいた。
それは私と同じ忌眼を持つ玉面乙女なる娘が私の眼を奪おうとし、はたまた澠池城で倒した高蘭英の夫である張奎 (ちょうけい)が復讐のために私の前に現れたのだ。
しかも二人共、私が予測する限り第三仙血以上?第四?五なのか?
とにかく私の手におえる相手ではない事は直感的に分かった。
このまま殺されてしまうのか?
と、覚悟した時。
その間に割って入ったのは、共に旅をしていた黄飛虎であった。
「誰だか知らないが、そこを退け!俺が始末するのは、そこにいる姜子牙のみ!邪魔立てするならお前も殺す!」
張奎 (ちょうけい)は完全に私を標的としていた。
「待ちなさい?その獲物は妾が先に唾を付けたのだ。邪魔は止しなさい」
玉面乙女もまた私の忌眼を手に入れるためにひかないようだ。
とんだモテモテ状態だな?私は~
「ほぉ〜?お前達の狙いはこの姜子牙か?ならば俺はコイツを守る約束をしておるのでな?邪魔させて貰うぞ!」
「そうか、ならばお前から斬る」
直後、張奎 (ちょうけい)が先に飛び出していた。
その手にした剣が閃光の如き一閃で私の首に迫ると、
「おっと!コイツを斬りたかったら俺を倒してからにするのだな!」
その剣を血液を凝固させた篭手で受け止めたのだ。
「ぬっ!?」
そして振り払う黄飛虎の裏拳を躱した張奎 (ちょうけい)は飛び上がり剣を構えて着地する。
「ほぉ?俺の拳を躱したか?お前の名を聞いても良いか?」
「・・・」
張奎 (ちょうけい)もまた黄天化に対して警戒する。
渾身の一撃を受け止められたのだから。
「良かろう。俺の名は張奎 (ちょうけい)。お前の名も聞こうか?」
「!!」
その名を聞いて黄飛虎は一瞬、目を丸くした。
その理由は私が話した黄飛虎の過去の死についてが理由だった。
生前の黄飛虎は目の前にいる張奎 (ちょうけい)によって討たれたのだ。
「なるほど。因縁か。共にお互いの過去は覚えてはおらずとも、再び交える事になるのは運命と言うわけか!」
「お前が何を言っているかわからん!俺は妻を手にかけた男を斬るだけよ!」
「俺の名は黄飛虎!ゆえあってキョウシガを守らせて貰うぞ!」
が、そこに異様な力が二人に目掛けて迫ったのだ。
「この妾を無視しないで欲しいわ!」
玉面乙女の身体から汗のように流れる血が水溜りを作ると、浮き上がるようにして触手のようにクネクネと動き出す。
「ふるえ〜ゆらゆらと〜」
玉面乙女の足下から伸びる血触手が私達に向かって伸びて来る。
「ぬっ!?」
血触手が黄飛虎の腕や足に絡みつくと、針が刺さったような痛みを感じて血が吸い出される。
「おおぉおおお!?」
あの血触手は捕らえた者の血を吸いだす蛭みたいなものか?
「打神鞭!」
私は咄嗟に打神鞭で血触手を両断して助ける。
「だ、大丈夫か?黄飛虎」
「助かった。あの触手は気をつけないとならんな」
すると黄飛虎は新たに向かって来る血触手に向かって光速拳を放つと、目の前で消滅させた。
「邪魔するならお前も斬るぞ?女!」
張奎 (ちょうけい)も合わせ三竦みとなる。
どちらかが先に動けば、もう一人に狙われる。
この状況では誰一人動けない。
それだけ力が拮抗していたから。
「姜子牙だけなら容易いが、まさか邪魔する者が現れるとは。しかし我が妻を殺した者を庇う者は全て俺の敵だ!」
すると張奎 (ちょうけい)の激昂がその血を更に濃拘縮させて、湧き上がる血が沸騰し始める。
「俺の唯一の支えであった愛する高蘭英を奪われ、失った怒りと悲しみをお前達に、その身をもって味合わせてやる」
張奎 (ちょうけい)の瞳が充血し異常な輝きを見せる。
「許さん!許してなるものかぁあああ!殺してやるぞ!姜子牙ぁーーー!」
覚醒!?
身体中の衣が破れさり、その肉体に黒い紋様が浮かび上がる。
まるで漆黒の龍のような入墨のように。
すると玉面乙女が張奎 (ちょうけい)の変化に口に出して説明した。
「倶利伽羅の紋様。カミシニの王たる資質の覚醒か!まさかこうも簡単にみつかるとは思わなかったわ」
そして噴き出す血が鎧と化していく。
その鎧には名前があった。
「血咒の忌鎧装」
王たるカミシニが持つと言われる倶利伽羅の痣と鎧。
この張奎 (ちょうけい)はカミシニの最高上位種として覚醒した。
私への怨みを糧に!
口から吐き出す赤い霧に全身から湧くカミシニの障気が立ち込める。
「この場にいる全てを抹殺する」
まるで別格だった。
私だけでなく黄飛虎も全身に震えが走る。
「まさかこんな化け物を相手にする事になるとはな」
そんな黄飛虎の姿を見て私は叫んだ。
「黄飛虎よ!逃げよ!黄天化を連れてこの場から立ち去れ!奴の狙いは私だ!だから無関係のお前が関わる必要はないぞ!コイツは私が食い止めているから、さぁ!行けぇー!」
私は右目を開き忌眼を覚醒させ打神鞭に力を込める。
数分。そのくらいなら保たせられるかもしれん。
「!!」
が、私の目の前に黄飛虎が出て背中越しに言ったのだ。
「仮にも武王と呼ばれたこの黄飛虎が、敵を前にして背中を見せられると思うか?それにあの張奎 (ちょうけい)と俺には前世で因縁がある。忘れたとは言わせんぞ?」
「そ、それは」
それは私がこの神殿の書物から知った過去の仙界大戦での結末。
その中には人間だった頃の黄飛虎の最期も記されていた。
一騎討ちの際に戦死。
その因縁ある相手こそ、この張奎 (ちょうけい)なのだと。
「あの張奎 (ちょうけい)は俺にとっても因縁深く、俺自身の仇のようなものだ。だから姜子牙よ!お前こそ黄天化を連れてこの場を任せて逃げるのだ!」
「そんな事は出来ぬ。ならば私も共に戦おう。二人がかりなら何か突破口が見つかるかもしれん」
「馬鹿者ぉおお!」
「なっ!?」
黄飛虎は逆ギレ的に言った。
「足手まといと言っておるのだ!この俺が本気になったらお前が巻き添えになると言っている。だから邪魔だ!早く消えろ!」
「黄飛虎!」
その時、私は黄飛虎の目を見て察した。
黄飛虎は死ぬ気なのだ。
この私と黄天化を逃して生かすために。
この場を乗り切る策はない。
その中で合理的に考え生き抜ける手段。
それは誰かが犠牲になる事。
誰かが時間稼ぎとなって残る二人を逃がす時間稼ぎをする他なかったからだ。
黄飛虎はそれを引き受けてくれたのだ。
「くっ、済まぬ。死ぬなよ!黄飛虎!」
「無論だ!」
私は振り返り、駆け出した。
「逃さんぞ!姜子牙!」
張奎 (ちょうけい)が逃げる私を追いかけようとすると、
「お前の相手は俺だ!」
「邪魔だぁー!」
二人が衝突したのが分かった。
そして私は崩壊した神殿の中を移動しつつ、砕けた金剛魔王の身体を拘束していた黄天化を見つけると、その手を取って逃げ出したのだ。
「お、おい!お前、何をする?何を慌てている?父上はどうした?」
「何も言うな!」
引き返そうとする黄天化に私は、
「打神鞭!」
「お前、何を!!」
黄天化の身体を打神鞭で絡めて自由を奪い、担ぎながら神殿を離れる。
「黄飛虎は私とお前を生かす戦いをしている!だから奴の思いを無駄にするな!」
「ち、父上!」
が、私達は突如攻撃を受けたのだ。
「忘れておった・・・」
私の前には玉面乙女が笑みをみせながら先回りしていたのだ。
「妾から逃れられると思っておったのか?ホホホ。その右目、頂くぞ!」
「何だってんだよ!コノヤロー!」
マジに絶体絶命。
私は今、命懸けの真っ最中。
だが、必ず生き残ってやるからな!
次回予告
姜子牙と黄天化に迫る玉面乙女
その魔の手から逃れる事は出来るのか?
法子「ねぇ?これってば不味くない?ねぇ?」




