新たな王の資質の男!
地上界と仙界の覇権をかけた戦争。
決着がつかないまま互いに牽制しあいあっていた。
地上界と仙界の覇権をかけた戦争。
決着がつかないまま互いに牽制しあいあっていた。
それでも攻め込めないでいたのは戦力差の均衡と、消耗が原因。
仙界も第三仙血で八仙でもあった鍾離権の戦死。
新生殷国もまた総大将であった聞仲が手傷を負い、決め手に欠いていた。
そこで新たな戦力を招き入れるための動きが活発になる。
それも第三仙血以上の猛者を求めた争奪戦へと移行していた。
俺の名は王魔
俺達は崖上から遠く離れた道を二人連れで旅をしている者達を発見していた。
「聞仲が言っていた強者とは奴の事で間違いないな」
すると俺は冷や汗を垂らす。
「マジかよ。奴もカミシニとして甦っていたのかよ」
「知っているのか?」
「知っているも何も!」
そこで俺は口を閉ざした。
俺は仲間である四聖達にも自分の抱いている不信を隠していたのだ。
確かに目の前にいる三人を俺は知っている。
何せかつて義兄弟を結んだ仲間であり、三人も自分の事を知る。
懐かしき仲間達のはずなのだが…
俺は自分の記憶と、仲間達の記憶の相違点が気になって仕方ないのだ。
俺はかつての仙界大戦の生き残りで、その激しい歴史を記憶していた。
しかし一度死んだ者達は全員が全員記憶が断片的なのだ。
血の繋がりや強い主従関係を持った者達への刻まれた記憶は残ってはいるようだが、何故死んだか?誰に殺されたのか?過去の戦争の記憶が所々欠けていた。
俺の不安とはそれ。
この目の前の仲間達は本当に過去に共に戦い、絆を深めた仲間なのだろうか?
それとも記憶を手に入れた別の者?
そう考えた時に、心を完全に許す事が出来なかったのだ。
「奴が俺の知る奴なら、間違いなく手強いと思うぜ?」
「強き力を持つ者なら紂王様に従う配下として役に立つはず。それに聞仲殿が指名したほどなら間違いなかろう」
「必ず味方に引き入れろと、かなり御執心だったしな」
「それに先に仙界の連中に拉致られたらまずい。時間の猶予はないぞ」
俺と仲間達は飛び出すと、旅をする二人組のもとに降り立ったのだ。
立ち止まる二人組に俺は単刀直入に自軍へと勧誘した。
「紂王様、それに聞仲がお前の力を当てにしている。俺達と共に来い」
すると二人組の大型の男が呟く。
「紂王と聞仲?」
男は俺に向かって睨む。
「この俺を誰だか知っての申し立てか?それとも手当たり次第か?」
「知っている。お前の事は。お前こそ仙界大戦の立役者の一人。俺もお前の事は高く評価していたぞ!武王・黄飛虎!」
その名を聞いて男は笑みをみせ、突如大笑いをあげたのだ。
「ガハハハハハハ!この俺を黄飛虎と知っての勧誘なら、その命賭けられるって事だよな!」
その宣戦布告に四聖達は焦り出す。
「俺達はお前を勧誘に来ただけだ!争うつもりはないぞ」
しかしそれを制したのは俺だった。
「無理だ。この黄飛虎は紂王の敵だ!それに聞仲は忘れているのだ。この黄飛虎が宿敵だとな!」
「王魔?なら、どうする?」
「決まっているだろ?俺達で黄飛虎を半殺しにしてでも身動き出来ないようにして、その後は聞仲に洗脳でもさせるまで!」
王魔の言葉に他の四聖達も覚悟を決める。
しかし第三仙血が四人も揃えばそう難しい事ではないと軽んじた時、
「父上、俺も!」
黄飛虎と共にいた若者が言い出した。
「天下よ、コイツ達は俺の客だ。手を出すな!そして俺は答えを見つける」
黄飛虎が拳を握ったその時、空気が変わる。
まるで蛇に睨まれた蛙にでもなった気分だった。
背筋に寒気が走り、本能的に警戒が俺達四人を後方に飛び退かせたのだ。
「何だぁ?俺とやり合うのではないのか?それとももう終わりか?」
俺は黄飛虎に感じる力に身に覚えがあった。
しかも直ぐ最近感じた。
「ま、まさか?まさか嘘だろ?」
それは仙界との戦いの最中、感じたのは玉面乙女と聞仲と同格。
「第五仙血か???」
その言葉に黄飛虎は理解していなかった。
「第五?よく分からないが、お前達の主君が誰だろうと誰の下にも従うつもりも命令されるつもりもない。俺はこの第二の人生は俺自身のために使うと決めたのだ。俺は俺の強さを極める!」
黄飛虎は拳を地面に突きつけると、大地が揺れて陥没し、王魔達は崩落に足を掬われてしまう。
「馬鹿な!コイツは血の力を身体強化だけで特化させたと言うのか!?」
カミシニ達はその血で神力こそ失われるが、身体に流れる血は肉体を人智を超えた超人へと変える。そして血を凝固させたり操る事で武器を作り上げたり、血を操る武器へと使えるのだ。
しかし黄飛虎はカミシニとして初歩的な肉体強化のみを極め、第五仙血に匹敵する力を本能的に身に着けたと思える。
「第五仙血は王たる資質を持つ領域。奴にも王たる資質があると言うのか?」
俺は引き際を知っていた。
「お前達!命が惜しいなら、この場から撤退だ!」
「やむを得ない」
と、脱出を試みようとした時だった。
突如、この一帯が光の壁に覆われて閉じ込められたのだ。
「な、何が起きているのだ?」
俺も焦ったが、黄飛虎も同じく周りを見回して状況を見回していた。
「新手か?次から次へと今日は客人が多いようだな」
すると、そこに現れたのは八仙。
鉄拐李 (てっかいり)と藍采和)、そして壁を造っている曹国舅であった。
「とんだ化け物がいたものだ。しかし手に入れれば西王母様も喜ばれよう」
すると鉄拐李 (てっかいり)と藍采和は飛び出していた。
突き出された鋭い蹴りは大槍の如き、そして藍采和は笛を吹き術を発動する。
地面から突如伸びて来た植物が黄飛虎の身体に絡みつくと身動きを止める。
「コレは?」
そこに鉄拐李 (てっかいり)の蹴りが炸裂した。
「!!」
その状況に俺は不覚を取る。
まさか仙界の連中に先を越されるとは。
が、しかしそう甘くはなかった。
「何だぁ〜?もう終わりか?」
「馬鹿な!」
鉄拐李 (てっかいり)の蹴りは黄飛虎に足を掴まれ止められていた。
そして力任せに身体に絡む植物を引き千切ると、鉄拐李 (てっかいり)を投げ飛ばす。
「こうなれば俺が!」
曹国舅が壁を幾つも出現させて黄飛虎の周りを囲みながら閉じ込めると、完全に動きを止めたのだ。
中から拳で殴り付けている音が響くが、曹国舅は自慢げに伝える。
「不可能だ!俺の作り出す壁は第五仙血をも閉じ込められるように西王母様より力を与えられているのだからな!このまま連れ帰るから大人しくしておれ!」
が、その様子を見ていた黄飛虎の息子の黄天化が初めて父親の危機に口を開く。
「何を遊んでいるのですか!そのような壁など、我らがこれこら進む過酷な覇道への壁に比べれば他愛もないはず」
その言葉に黄飛虎は閉じ込められた中から笑い出す。
「よく言ったぞ!確かに薄っぺらい!この俺こそ新たな真王として荒れ果てた現世を統一させてやろうぞ!」
すると強烈な拳が放たれ中から曹国舅の作り上げた壁を粉砕したのだ。
「ば、馬鹿な?そんな事が!」
すると黄飛虎はその場にいる全員に威圧し、その存在感を見せつける。
「まさかこの者も王たる資質を持つと言うのか?現世に現れるカミシニの王の一人になり得ると?」
鉄拐李 (てっかいり)は投げ飛ばされて藍采和に肩を借り立ち上がりながら黄飛虎を見て確信していた。
「どうやら簡単には世界の統一は出来ぬと言う事か。退くぞ!」
鉄拐李 (てっかいり)は仲間達を連れてその場から消えた。
恐らく転移の術だろう。
そして曹国舅の張った壁も完全に消えた事で、俺達も自由になり、この場から立ち去ったのだ。
「王の資質とか関係ねぇよ!」
残された黄飛虎は溜息をつく。
「今度は誰だ?本当に今日は客人が多いようだな?」
黄飛虎の視線の先には鞭を片手に握る黒衣装の仙装束の少年が立っていた。
「カミシニ同士の争いがあって見に来ただけのつもり。いや、あわよくば漁夫の利を取るつもりだったが失策だったようだ。これは退散するべきだな」
姜子牙と黄飛虎の邂逅。
それはバッドなタイミングであった。
次回予告
黄飛虎と黄天下の前に現れた姜子牙
この邂逅は何をもたらすのか?
法子「また登場キャラ増えてない?前回の話で私、パンク状態なんですけど~」




