波乱を呼ぶカミシニ?
再び戦う姜子牙と高継能。
姜子牙は打倒出来るのか?
私は姜子牙。
この澠池城の女主・高蘭英を倒したは良いが、無数の蜂を操る高継能がその力を得て強力になっていた。
「高蘭英の太陽神針を手に入れた俺には恐い者はないぞ?この力を使い手始めにお前を始末してやろう」
高継能の操る無数の蜂が飛び回り、私を狙っていた。
私は打神鞭を握りしめると警戒しながら構えを取る。
太陽神針を持ち進化した蜂により、先みたいに暗闇も雨も寒さも効果無かろうな。
「だが、所詮は虫よ!」
私の打神鞭が放電し始める。
高蘭英を倒した私の秘奥義。
「忌眼・雷鳴打神鞭」
私は打神鞭を頭上で振り回すと雷を呼び、その雷撃で蜂の接近を阻んだ。
しかし私の力が尽きれば、無数に増え続ける蜂達が押し寄せ、その針を突き刺されて、肉を喰われるだろう。
「ゾッとするな〜」
けれど私には勝機が無くはなかった。
いや?試したい事があったのだ。
既に一度、通路で私は高継能と戦っている。
残念ながら敗北したのは言うまでもない。
その後、運良く生き延びれて私は幾度となくその時の事を振り返っては思い返していたのだ。
もし、あ〜していれば?
もし、こう動いていれば?
もし、もう一歩踏み込んでいれば?
理由は分からないが生き延びた人生なら、同じ失敗は繰り返さない。
その為に思考しろ!
イメージトレーニングと言われるそれで、私は何度も何度も高継能と戦ってみた。
繰り返し負けたが、数えきれないバトルの末に私は一度、二度と奇跡的に勝つ事が出来て、それが半々から勝率が確信となった時、自信がわいていた。
それが本物相手だとしても。
「もう私は負ける気がしない。お前にはな!」
「何を世迷い言を!」
が、徐々に私の打神鞭が動きを変えながら飛び回る蜂を確実に仕留めていく。
雷鳴が響いた!
その速さは次第に速く鋭く、蜂の反応速度を越えた一撃が命を狩る。
そして広がる鞭の範囲が高継能へと迫った時、鋭い一撃が全身を打ち付ける。
「ま、まさか?う、うがぁああ!」
このままでは殺られると恐怖を感じた高継能は、私の姿に震え上がる。
「こんな所で死んで、死んでたまるものかぁあああ!!」
高継能は奥の手を隠していたのだ。
両手を合わせて掌の蜂を潰すと、
「蜂・蜂・蜂・太陽発電!」
開く掌から閃光が放たれ、一帯が光に飲み込まれていく。
「うぐぅうううう!」
私は目くらましにあい、攻撃に対応するべく打神鞭を防御に徹したのだ。
しかし?
「ん?攻撃が来ないぞ?」
いつになっても次の攻撃が来ないぞ?
すると光が消えて落ち着いたその場に高継能の姿が完全に消えていた。
まさかと思うが、そのまさかだった。
「に、逃げやがったぁ〜!!」
まさかの逃避に私はしてやられた。
気を感じないカミシニを追う事は、殆ど不可能であった。
「してやられた〜」
しかし高継能こそ仕損じたが、第三仙血を二体も倒す事が出来た事は大きな成果だった。
少なくとも私はそれだけの実力を兼ね備えている自信に繋がったから。
「前向きに行こうかぁ〜!」
高蘭英が封神された事により、この妓楼国は支えを失い崩壊していった。
妓女達も主を失った事で血の呪縛から解き放たと同時に身体が血蒸気となって消えて逝った。
「これが血の主従か」
カミシニは血の主従関係が成り立つと、主を失うと同時に配下は存在を失う。
だから命懸けで主を守護するのだ。
そのため私は効率的な頭だけを潰す事に専念する。
その方が合理的によく事が進む。
「・・・」
しかし生き延びていた妓女達は主である高蘭英が死んだと同時に主従の血が途切れた事に恐怖を感じ、自らの命が消える事に発狂して死んでいった。その阿鼻叫喚を聞かぬふりをして、私はこの地を後にしたのだ。
場所は変わる事、高継能は閃光と共に遠く離れた場所へと転移していた。
「万が一に離脱の術式を施していて良かった。まさかこの俺が命の危機に陥るとは、あの狂死がって奴は厄介だ」
高継能は荷物を手に、その場から立ち去ろうとしたその時だった。
背後から視線を感じて冷や汗をかく。
「!!」
ゾッとする視線。
まるで見透かされるかのように高継能はゆっくりと振り向き、その正体を目の当たりにした。
その視線の相手は白額虎に跨がりし神仙の姿をした若者だった。
「お前は何者だ?この俺に何か用か?」
カミシニがカミシニの前に現れるには理由は二つしかない。
相手を喰らうか、従僕させるか。
「僕の名は申公豹。これから手土産持参で真王に拝謁するつもりなのだ」
「王?拝謁?手土産だと?」
「と、言ってもまだ真王を決めかねているのだけどね」
「お前が何を言っているか分からない」
「そうかい?君は何処まで過去の記憶を残している?」
「過去の記憶だと?」
「そう。僕らから見れば前世。かつて神仙として地上界を分けた仙界大戦で散った魂。それが何の因果か再び命を持ってこの世界に生きている。カミシニと呼ばれる新たな力を持ってね」
「お前、何を知っている?」
「僕も曖昧な記憶だけだよ」
カミシニとして甦った者達は過去の記憶が曖昧でいた。
突然、この世に命を与えられて復活したが、己の名と存在を辛うじて記憶を残してはいたが断片的でいたのだ。それは復活の際に起きた何らかの問題が起きたか?それとも何者かによって記憶を操作されたか?はたまた手違いで甦ったのかは分からない。
「僕は刻まれた記憶がある。それはお前を追い詰めたあの姜子牙を決して許さないって事。その為に、僕は真王を使う」
「!!」
「真王とは今、この世界を二つに分けている仙界を統べる女王・西王母と、地上界を統べる紂王。どちらかの真王に近付く為に僕を含めた手練を集めていた。どうだい?僕に使われてみる?それとも今この場で死を選ぶかい?」
「な、何だって?」
高継能は危機感から、この場から離脱しようとしたが、それは不可能だった。
背後を囲むように新たなカミシニが逃げ場を塞いでいたのだ。
その全員が第三仙血。
つまり判断一つで命が終わる。
竜鬚虎、土行孫、羅宣、劉環、馬元、呂岳
高継能は両手を上げて降伏し、
「分かったよ!あんたに着いていくよ」
「ありがとう。懸命な判断だよ?高継能」
この申公豹の登場で新たな波乱が巻き起こる。
次回予告
王魔!この名前を覚えているだろうか?
あの王魔が再び・・・
法子「むにゃ?ん?それって、まさか?誰だったかな~」




