澠池(メンチ)城の女主・高蘭英の策?
傷ついた姜子牙。
そして澠池城の女主の高蘭英の前には?
妓楼の迷宮、澠池城。
八人のカミシニ(中にはキョウシガも含む)が入り込んだのだが、妓楼の主である高蘭英のもとへ向かうには互いに競い殺し合わねばならなかった。
そして今、高蘭英の前に辿り着いた者がいた。
「ようやく辿り着いたぞ?ふざけた招待だったな。その分、お前の身体で払って貰うがな!」
すると高蘭英は軽蔑するように答える。
「私には愛する主人がいる。ゆえにお前のような男に好きにはさせんわ」
「その男とは何処にいる?夫婦纏めて俺の養分にしてやろうか?あはは」
すると、別の扉から新たに入り込んだカミシニが現れたのだ。
姜子牙と高継能に毒ガスを吹きかけたカミシニだった。
「お取り込み中悪いのだが、この俺、陳奇様も遊ばせて貰うぞ」
陳奇と名乗るカミシニに高蘭英は計画が狂った事に怪訝な顔をする。
「お前には残っていた男を充てがったのだがな?どうした?」
高蘭英は自分のもとには生き残ったカミシニを一体ずつ相手にしていくつもりであった。そこで最初に高継能の通路を自分の部屋に導き通すと、陳奇に対しては残るカミシニと争わせていたのだ。高蘭英の計画だと、姜子牙との戦いで傷を負った高継能を先に仕留めた後に、戦わせていた残る二体のカミシニのどちらかの相手をすれば良かったのだ。
まさに漁夫の利作戦。
そのはずが陳奇は怪我一つなく、もう一体のカミシニを始末して、こんなにも早く自分のもとへと現れたのだ。
「見縊ってくれた事がお前さんの過ちだったな?うへへへ」
陳奇は思い出していた。
陳奇は妓楼の中を彷徨っていると、通路の壁が開いて部屋の中に入ってしまった。
同時に別のカミシニがその部屋に閉じ込められていたのだ。
「何だ?お前、あの女の手下か何か?」
そのカミシニは手首を噛むと血が垂れて、大型の剣を出現させた。
「一撃で潰してやるよ」
すると陳奇は突然膝をついて頭を下げ、土下座しながら叫んだのだ。
「お待ちください!お、俺はアンタとやり合うつもりはない!それより俺と手を組まないか?この妓楼の主は俺達を戦わせて、傷付いた方を楽に始末するつもりなんだぜ?だから、なぁ?」
陳奇の誘いに、もう一方のカミシニは笑みを見せて答えた。
「安心しろよ?俺はお前を始末するのに怪我一つ負う事はないからよ!」
そして振り上げた大型の剣を土下座したままの陳奇目掛けて振り下ろそうとした時だった。
「ブゥー!」
異様な臭いが部屋中に覆ったのだ
。
「お、お前死を前にして屁をこいたか?なんて奴だ!」
だが、陳奇は冷静に答える。
「俺の雑用に使ってやろうと持ち掛けたのに使えないから、死ねよ」
「何だとぉー!」
土下座した男に軽口を叩かれて頭にきたカミシニは力を込めたその時、
「あぁ!?」
身体中が麻痺している事に気付いた。
「お前、まさか?毒ガスか?カミシニの俺に毒ガスなんて、うっ!」
身体中から痛みが生じて、身体中の穴という穴から血が垂れ流れる。
「毒ガス?俺のは血中毒と言ってな?俺の体内で作って錬成され、カミシニをも殺す唯一の猛毒を使えるのだよ!」
すると陳奇は口から猛毒を噴き出すと、目の前のカミシニは全身から大量の血を噴き出して猛毒に熔けていった。
猛毒使いの陳奇、そして蜂使いの高継能を相手に高蘭英はそれでも余裕を見せていた。
その頃、姜子牙は残された部屋で一人、座禅を組んでいた。
「うむむ。こうやって、あ〜やって?それから〜う〜ん?こうか?」
姜子牙は瞼を綴じながら手を振ったり、回したりして、変な動きをしながらブツブツと独り言を呟いていたのだ。
「何とかなるだろうかな?試してみんと分からないな〜こればかりは」
姜子牙は立ち上がると、自分の身体がちゃんと動く事を確かめる。
麻痺はしていない。
陳奇の毒の後遺症もない。
「忌眼!」
姜子牙は右目の忌眼を解放させると、自らの血流が心臓の鼓動とともに早くなり、そしてカミシニ化する。すると妓楼の壁や天井を擦り抜けるように、その先で動く人影を見つけた。
「残るは私含めて四人か?だったら最後に残る者を決めようではないか!何せ私はこう見えてもカミシニを終わらすために産まれて来たようだからな」
姜子牙は手に持つ打神鞭を壁に打ち込み破壊すると、今三体のカミシニが戦う戦場へと向かった。
今、この妖しき澠池城にて四つ巴の戦いが始まろうとしていた。
次回予告
カミシニ同士の殺し合い。
そこに姜子牙はどう対策すると言うのか?
法子「も~う!無理はダメよ?」




