因縁の二人の相性にドキドキ?
果心居士を追い詰めた法子と晴明。
そして信長の前には?
私は法子。
私と過去の晴明師匠が果心居士の相手をしていた時、もう一つの凶悪な奴、カミシニの織田信長を相手に戦ってた人がいたの。
その人は、私がこの過去に来た時に出会った最初に会った失礼な奴!
だけど、絶対に死んだら駄目だからね?
確か名前は…
ゲンさん?
「まじかよ~?」
ゲンさんは織田信長を相手に怯んでいたの。
「カミシニには神の力が通用しないとは聞いてはいたが…俺の不動明王の力が完全に消されちまってるじゃんかよ?」
するとゲンさんの背後に不動明王が現れて、印を結ぶ。
そして炎が拳に宿ると、
「くらえー」
『不動明王火炎拳!』
ゲンさんの動きに合わせて不動明王が殴り付けると、炎の拳が信長へと飛んでいく。
「ふん!」
信長は軽く刀を振るっただけで、炎の拳を打ち消したの。
「他愛もない!雑魚は引っ込んでおれー!」
信長が刀を振るうと大地が裂けて、斬撃がゲンさんを襲う。
「うおっと?」
飛び退きながら躱すゲンさんは、首にかけた数珠を手に取ると、霊力を込めて飛ばす。
『数珠魔弾!』
数珠は銃弾のように信長を襲う。
・・・って、あれ?あの技?私の必殺技と同じじゃない?どういう事?更に?
『数珠連弾!』
続け様に数珠を弾き飛ばしたの。信長は数珠魔弾を紙一重で躱しながら、ゲンさんに近付く。
「つまらぬ!」
「どうかな?」
すると飛んで行ったはずの数珠が互いにぶつかり合いながら軌道をかえていく?
そして再び背後から信長目掛けて戻って来たの?
「ぬぅ?」
隙をついた攻撃は信長を背中から貫通させた。
「ど~うだ?信長!」
しかし信長は少々痛みは感じたけれど、直ぐにニヤリと笑むと貫通して流れる血が傷を埋めて再生したの。
「………マジ?」
「これで終わりか?」
「な…何を言ってるのかなぁ?こ…これから、これからだ!ばーか!」
しかし神の力も通じずに再生力が半端ない信長に勝つ手段があるの?
「チッ!近寄る事も出来ねぇし、カッコつけて任されてみたものの…八方塞がりじゃねぇかよ?」
すると、ゲンさんは真剣な顔をして再び印を結び唱えたの。
『煙玉!』
へっ?
印を結んだのは掌に隠した煙玉を隠すためで、信長に向かって煙玉を投げつけ炸裂し部屋中が充満した所で、ゲンさんは窓があった場所から飛び降りて逃げた。
「あはは!俺は逃げたのではないぞ?戦略的撤退だ!あはははは!」
しかし、信長は
「逃がすと思うか?誇り無き虫けらが!」
信長も飛び降りると、ゲンさんに向かって刀を振り払う。それは自分達がいたビルを真っ二つにして崩れ落とさせた。
「しつこい!俺をぺしゃんこにするつもりか~?」
ゲンさんは掌に不動明王の火炎を籠めると、自分に向かって落下してくる瓦礫を次々と粉砕させていく。
「!!」
視界を覆う瓦礫を火炎で粉砕したその時、その目の前に信長が斬りかかる。
「終わりだ!」
信長が刀を降り下ろした時、ゲンさんは…
「調子こくなよ?この自信家がぁー!」
紙一重で刀を躱して、信長の頬を素手でぶん殴ったの??
そのまま二人は地面に直撃する。信長は予想外の攻撃に頭から地面に直撃して顔面が潰れていた。
しかし?
信長の頭はみるみると再生していく。
本当に不死身なの?どうやって倒すの?
あっ!!
肝心のゲンさん?
ゲンさんは?ビルから落下して、普通?の人間が無事のはずないわよね?
すると瓦礫を炎が噴き出して消し去ると、中からゲンさんが頭を擦りながら起き上がってきたの。
生きてたの?
この人、マジに何者なの?
「頭来たぁ…つまりカミシニは神の力が通用しないんだよな?だったら拳で殴り付ける!」
って、何を言ってるの?馬鹿なの?素手で?拳で?そんなんで倒せるはず??
なるほど!
私は何故か共感した。
と、そこに別の何かが現れたの?それは私達から逃げ出して来た果心居士だったの?
「信長ぁ?いつまで遊んでおるのじゃ?」
「果心居士か?」
果心居士は私達に敵わないと判断し、信長の元に逃げて来たの。
そこに、
「待ちなさぁーい!」
私と若い頃の晴明師匠が駆け付けたの。
「!!」
その時、私の背後から殺気が?えっ?何、この殺気?
私が振り向くと同時に、その殺気の主は私を飛び越えて、目的の相手に向かって斬りかかったの?
って、それは晴明師匠?
その殺気を向けた相手ってのが果心居士じゃなくて、ゲンさん?
「せ…晴明??馬鹿ぁ野郎!空気読めぇよ!相手は俺じゃねぇだろ?馬鹿ぁ!」
「構わぬ。お前も私の討伐対象だ!」
えっ?何なの?
あの二人は仲が悪いの?
敵同士なの?
そこに信長が私を見付けて笑む。
「見付けたぞ?小娘!お前は余が自らの手で始末してやろう!」
「あら?私、モテモテね?あはは…嬉しくないわ」
私は構えると、それを無視して晴明師匠とゲンさんが喧嘩している。
「ここで会ったがお前の命日だ!お前との因縁はここで絶つ!」
「お前のは真面目を通りすぎて、ただのストーカーだぞ?って、イテッ!テメェ?殴ったな?よ~し!だったら俺も本気で…」
直後、私が二人の頭上から飛び降りて来て、二人の後頭部を拳でぶん殴ったの!
「あんた達!今、戦う相手は果心居士と信長でしょ?喧嘩なんかしてたら、私がぶん殴るわよ!本気よ!」
二人は頭を擦りながら、「殴ってから言うな」って目で私を見る。
「ふん!」
私の叱咤に二人は嫌々顔を見合せ、
「仕方ねぇな?先ずは目の前の敵を倒してからだ!」
「その後はお前だからな?逃げるなよ!」
「誰が逃げるか!」
取り敢えず一件落着。
私って、えらいわ~
そして晴明師匠とゲンさんは、信長に向かって指を指す。
「先ずはお前をぶった押す!」
二人の啖呵に信長は見下ろすように答える。
「虫けらが二匹になろうと同じ事!余が興味あるのは、そこの小娘だけよ!」
二人は同時に動く?それは合図もなく、同じ呼吸で息ぴったりに?
「奴は術や神力が効かない!更に不死の化け物だ!」
「承知している」
先にゲンさんが飛び上がり信長に殴りかかると、信長が刀を降り上げる。そのタイミングで晴明師匠が懐に入って掌打を打ち込む。が、それを読んでいた信長が刀の軌道を晴明師匠に変えた時、ゲンさんが掌から炎弾を信長にぶつける。
「ぬぅ?」
それが目隠しになって、晴明師匠は掌打を信長の顎、胸、溝に三打撃与えた。
「直接致命傷にはならなくても目隠しにはなったろ?」
全く性格も戦い方も正反対の二人の呼吸はぴったりで、争っているようだけど相手を信頼していなければ今のような我が身を囮にするに等しい攻撃なんて出来ないわ?
あの二人って、どんな関係なのかしら?
まさか?
私の知らない言葉に出せない関係なの?
だったら、どっちが受けで攻め?見た感じはゲンさんが攻めで晴明師匠が受けよね?でも晴明師匠ってドSな面もあるし?興味そそるわ~!
私はマジマジと二人の戦いに集中する。
二人の同時攻撃に信長の攻撃が空を斬り、更に攻撃を受けてはストレスがたまる。
やがて苛立ちがMAXになると、
「うぬら?いい加減にせよー!どれだけ攻撃を仕掛けようが、余は不死身だ!勝ち目があると思うか!」
怒り心頭の信長にゲンさんは薄ら笑いをして答える。
「あんな事を言ってるぜ?晴明よ?気付いてないようだから、そろそろ教えてやらないか?」
「どうして私が?」
「説明はお前のが得意だろ?それにお前の策だしな?」
えっ?二人は何を言ってるの?もしかして打開策があったの?
すると信長が突然動きを止めて、自らの身体の異変に気付く。
「これは?」
信長の身体に負わされた傷口が再生していないの!
「お前の回復力は確かに驚異だが、それも万能ではなかったようだな?カミシニの力の根元は血だ!そしてカミシニの弱点は太陽神の持つ特殊な力のみと聞く。つまり!」
つまり?
ゲンさんが信長に攻撃して傷を負わせる度に、晴明師匠が傷口に太陽神の加護の籠った千本の針を投げて突き刺していたの。それは痛みも怪我に恐れもない信長にとって気にもしない攻撃だったがために、見過ごされていたの。
そして太陽神の加護の籠った千本の針は信長の体内に蓄積されていった。
「その馬鹿げた再生力が隙をうんだようだな?お前の敗因は俺達を見下した結果だぜ!」
そしてゲンさんの合図で、
「今だ!やっちまえ?晴明!」
「煩い。解ってる!」
晴明師匠は印を結んで術を発動させたの。
『呪縛太陽針!』
信長の体内の針が信長の身体中の血脈のツボを突き、体内の血流が止まっていく。そして身体がみるみると固まっていったの!
「倒せないなら、その力の供給を止めて動かせなくすれば良いだけ!」
「ぐぐががが!!」
信長は悔しがるように動きを止め、石像のようになった。
もしかして…勝ったの?あの信長に?本当に?
「凄いわ~!二人とも!」
私は二人に抱き付くと、
『当然だ!』
二人は同時に答えたの。
何て息があってるの?
その戦いの結末を見ていた果心居士は、
「信長の馬鹿者がぁ!だから、あれだけ油断はするなと言っておったのに!こうなったら…」
果心居士が動く。
霧が立ち込めると、私達の目の前にあった信長が消えていたの?見ると上空に果心居士が動かなくなった信長の身体を担いで逃げていく姿が見えた。
「こら~!逃げるなぁ?また蘇らすつもりね?そんな事はさせないわ!めんどくさいし!」
けど私達の目の前に鎧姿のカミシニ連中が出現して私達の道を塞ぐ。
「何だ?このカミシニは?」
「果心居士が造った人造カミシニよ?油断しないで!」
「人造カミシニ?信長をまた蘇らす?」
「そうよ?前にも倒したはずの信長を連れ帰られて、蘇らされたんだから~もう面倒は嫌よ!」
「俺ももう関わりたくねぇぞ?てか次に勝てるか解らないしな…」
その後、私達の道を塞ぐ鎧武者を相手に私達は苦戦する。
そして気付いた時に私は…
「はぐれたわ…」
私は一人、新宿のど真ん中で行き場を失い、あてもなく果心居士を追う。
だけど…
困ったわ…
もう私には武器が残ってはいなかったの。術札はもちろん隠し武器もない。
自分の霊気を武器にする金の錫杖で戦う手段もあるけど、果心居士には通用してもカミシニの信長には通用しないだろうし…
何か他に武器はないかしら?
果心居士を止められる武器…
私は辺りを見回す。
そんな簡単にそんな都合良い武器なんて…
あるはずないわよね?
あるはず…
ん?
あった!!
私は目の前にあるソレを見た時に、確信にも思える何かを感じたの。
そして恐る恐る手に取ると、私はその重量感に身震いした。更に先端に付いたこれは見るからに何て破壊力がある造形なの?まるでこの日のために作られたような?
こんな強力な武器が大都会の真ん中に都合よくあったなんて…
灯台もと暗しだったわ!
私は新たな武器を手に、目指すは果心居士のいる何処か?
「必ずお前を止めてみせるわ!」
そんなこんな。
次回予告
また最初から戦うなんて、まっぴらよ?
必ず、果心居士を止めるわよ!