白蛇伝風語(はくじゃでんふうがたり)
沙悟浄、鉄扇は白蛇王の放った光に飲み込まれて消えた。
そして、語られる物語。
こ、ここは?
私は一体?
何も思い出せない。
私は、そう、一匹の蛇。
名も無き白い雌蛇。
私は特別だった。
幼蛇の時から様々な生き物の言葉を理解出来た。
それに手が無くとも念じたモノを動かせたり、狩りも他愛なく出来た。
特殊な力は他にも未来を見たり、危険を察知し長寿だった。
風の噂で自分のような生き物は霊獣と言われると知る。
百年生きた所でイメージした姿に変わる能力を身につけていた。
この地上で君臨しているのは人間だと聞いた。
だから私は人間の女に身を変えた。
その方が世界を知る事に容易だったから。
私は人の身で旅をして回った。
その日その日を生きる為だけの獣とは違う人の生き方は戸惑いもあったけれど、学び得るものは沢山あった。文化や交流、歴史が生き方を作り出す。
それが人間だった。
いつしか私は人間になる事を望んでいた。
そんな時、私に言い寄る人間の男が現れた。
私は興味本位で男と夫婦になったのだ。
人間と雌蛇の夫婦。
当然、男には私が蛇だとは伝えてはいない。
私を愛していると言ってはいるが、私が蛇だと知れば恐怖して私の前から消えるに違いないから。
その秘密さえ守っていれば私達は幸せだった。
そんなある日、私達夫婦の前に災いが訪れたの。
「この地に感じる禍々しい妖気はこの屋敷からのようだな」
それは法術を持った男だった。
遥か遠き地より私の発する妖気を感じて現れた。
確かに都は疫病が流行っていた。
それは私の厄ではなかった。
しかし私達夫婦には災いは降りかからず、巨万の富も得ていた。
何不自由ない生活。
私が現況だと怪しんだとしても納得出来たかもしれない。
「歪んだ力が世界の理を変えているのだな」
男は帰宅する私の夫を呼び止め、私の正体を告げた。
当然、夫は信じなかった。
しかし法術師は屋敷中に結界を張る事を願い出たの。
「私の言葉が本当か否か、これで証明させて貰いましょう」
渋々、その言葉を了承した夫は、
「何も無ければ帰るのだぞ?」
「当然でございます」
そう言うと、私の寝所に結界を張りめぐらせた。
「ぃいゃあぁああ!」
私は酒を飲まされて熟睡し油断していた。
結界に私の変化が解けて、蛇の姿が夫の前に露わになってしまったの。
すると駆け付けた兵士達が私に無数の矢を放ち、私は無防備に受けてしまった。
泣き叫ぶ私に夫は恐怖しながら言った。
「ば、化け物!私の前から消えてしまえ!」
「!!」
その後、私は山の牢獄に運ばれて幽閉された。
何故なら殺しても死ななかったから。
幾重にも拷問を受け、弱っても私は死なない。
私の生命力を奪う槍を何本も身体中に串刺しにされた状態で、私は過ぎる時を数える。
どのくらい時が経っただろうか?
声がした?
何者かが私を呼んだのだ。
その者は私に選択を選ばした。
このまま死ぬか?
それとも?
「この世界を変える覇王を導く巫女となるですって?」
私には選択は無かった。
私は後者を選択した時、突如私を拘束していた結界の槍が次々と一人でに抜け、地下牢が大破した。
崩れ落ちるから抜け出した私は立ち上がる。
「この私の道は決まった。先ずは何をすれば良い?何者かは分からぬ怪しき者よ」
すると私の意識に映像が流れ込んだ。
脳が揺さぶられる程の大量の情報。
目や鼻、口から血が垂れる。
それでも私は受け止めた。
「並行世界?」
私の存在する世界とは異なる世界が存在する?
私に声をかけた者は、その世界の住人?
しかもただならぬ力を持った存在。
何者かは知らないが、私に生きる道を示した。
異世界の私を自分の世界に導き寄せ、覇王たる君主を私に探させるために。
何のために?
何故、私が選ばれたの?
「私が覇王を導く巫女ですって?私にしか探せない?それが私の縁ですって?」
覇王が目覚めれば世界が混沌に変わる。
世界を滅ぼすのが目的?
それとも他に何か目論みが?
「構わないわ。その前に私にはやる事があるわね」
私は外界に出ると都へと飛んだ。
巨大な白蛇が空を泳ぎ、地上に見える人間の都に疫病を振り撒いた。
些細な復讐だった。
私を拘束した法術師も、私を裏切った旦那様も皆、死んでしまえば良いわ。
口から吹き出された障気が一夜にして人間の都を充満させて絶滅させた。
そして私は導きし者の手を取り、
「覇王様。この命の生涯をかけてでも見つけ出してさしあげますわ」
直後、空間の歪みがゲートを開けた。
私は迷う事無くその扉へと身を委ねた。
次回予告
白蛇の巫女の覇王を探し出す旅が始まった。
白蛇の巫女の総集編風な次話必見?




