死の運命なんて却下よ?私はただの正義の女子高生よ!
法子は危機を若き晴明に救われた。
二人は謎の能力者である果心居士を倒せるのだろうか?
私は法子。
私は果心居士と戦っていたのだけど、そこに現れたのは若い時の晴明師匠。
その晴明師匠は頑固のわからず屋で、私にまで喧嘩吹っ掛けて来たもんだから私も流石に…ちょい、キレました!
私は型構えしながら、呼吸を整える。
「奇妙な?私と同じ流派の型を?」
晴明師匠も構える。
そして果心居士もまた私と晴明師匠を見下ろして、
「邪魔が増えおったな?じゃが、小石程度の小物!」
すると晴明師匠が飛び上がり、果心居士に向かって斬りかかる。その動きは若くしても繊細かつ勢いがある戦い方で、私も見習う所あった。
私の知ってる晴明師匠は完璧過ぎて、逆に手が届かない所があったけど…
「こっちなら、イケそう!」
私も果心居士に向かって攻撃を仕掛ける。
とにかく果心居士を倒さなきゃ始まらないわ?
「えっ?」
だけど、足下に結界が張られていて私は動けないでいた。
これってまさか?
「晴明師匠!」
「誰が晴明師匠だ?私は君を知らないし、黙って静かにしていなさい!」
私は晴明師匠の張った術で金縛りされていたの。
「くぅそ~」
邪魔者扱い?足手まといにされ、私は晴明師匠の術を解く印を結ぶ。
「もう!術が手が込んでて簡単に解けないじゃないの~」
若い晴明師匠は印を結ぶと術札を紙吹雪のように撒き散らして果心居士を囲む。
逃げ場封じた?
けど、次の瞬間に晴明師匠の背後から果心居士が現れたの?
まるで、未来の晴明師匠がやられた時と同じ状況?
「危なーい!」
でも、果心居士の突き出した剣が空を切る?晴明師匠は私の声に反応し、背後からの攻撃を紙一重で躱し、手刀で果心居士の顔を殴る。
「ひょえ~?」
たじろぐ果心居士は驚いた表情だった。
自分が殴られるとは思わなかったように?
「………」
晴明師匠もまた何かを考えつつ、再び攻撃を仕掛ける。それは九字切りをしながら印を結ぶと、正面に魔方陣が現れる。
「我を守護する十二体の鬼神よ!我が敵を滅せよ!」
魔方陣から十二体の強力な鬼神が出現し、果心居士に向かって襲い掛かる。
あの鬼神は晴明師匠の守護鬼神なの?
しかも十二体も同時に?
初めて見るわ…
鬼神達が四方八方から果心居士に襲い掛かる。考えて見れば果心居士はカミシニじゃないから、鬼神達の攻撃は通用するのよね?
果心居士は飛び回り逃げながら、
「うっとおしい!」
と、同じく印を結びながら術を行う。それは晴明師匠と同じく召喚の獣だった。しかも角のある蛙や蝙蝠、それにパンダまでいたの。
パンダ予想以上に強いわ?やはり熊だから?熊だからね??
魔獣と鬼神が激しく戦う中で、私は不思議に思う。
魔獣召喚なんかしなくても、あの謎の力で鬼神を倒せるのでは?瞬間催眠?瞬間移動か?それとも空間転移か?解らないけど…
すると果心居士が晴明師匠に向かって宝剣を突きつける。
真っ直ぐと?
その単純な攻撃に晴明師匠は気付いてなかったの?
私は咄嗟に叫ぶ。
「晴明師匠!前よ?前!前!」
私の声に反応して、初めて晴明師匠は果心居士が向かって来ている事に気付き、突き出された剣を躱して果心居士の手首を打って剣を落とす。
ん?何か様子が変よ?
いくら若い時の晴明師匠でも、あんな隙を作るなんて?何かそこにカラクリがあるの?
その時、私は突然目眩に襲われたの?そして、突然頭の中に身に覚えのない映像が入って来たの?
何、これは?
それは不思議な感じだったの?果心居士が晴明師匠に襲い掛かると、晴明師匠は果心居士の攻撃を躱して返り討ちにする。するとまた記憶が変わり、再び果心居士が向かって来ると晴明師匠の鬼神が背後から果心居士の首を掴み切り裂く。そんなグロい果心居士が死ぬ映像が何度と繰り返され、やがて果心居士が晴明師匠の隙をついて剣を突き付ける映像が残ったの?だけど、それは私の声に反応した晴明師匠が上手く躱してくれた。
無数の同時間の記憶が重なる?
これは?何を意味しているの?
これが果心居士の使う奇怪な術の謎?
場所と時代が変わり、そこは私がいた未来の総本山。
ここに座主様の前に現れた晴明師匠が告げたの。
果心居士の術の謎を!
座主様は信じられない顔で驚愕していた。
「そんな力が本当に存在するなら、それこそ神をも超越する力ではないか?」
果心居士の能力とは?
「未来選択の時空間移動能力者」
つまりそれは何かと説明するとね?幾つもある未来の成り行きを知った上で、自分の都合良い未来を選択出来るらしいの。
その影響で本来未来に起きる筈だった映像が書き換えられて、果心居士が選んだ新しい未来が上書きされたように後から皆の記憶に残るし、リアルになる。
って、チートじゃない?それって反則よ!絶対!!
「間違いありません」
「根拠は?」
そこで晴明師匠は答えたの。かつて若い頃、果心居士と対峙した時の体験談を語る…
それが今の私の置かれている状況ってわけね?
でっ?
未来の晴明師匠は語る。
「果心居士と再会した時に、果心居士は私を知らないと言っていました。つまり私が過去に遭遇した果心居士は私達がこの時代で戦った果心居士に間違いありません」
「つまり果心居士は本当に過去へ飛んだと言うのか?それでは…法子もその時代に?」
「………」
晴明師匠は無言で頷く。
「私も今の今まで、あの時の記憶が消えていました。恐らく何か記憶を消さねばならない理由があったのでしょう」
「時の改変は神々にとっても禁忌だからな」
二人の話に、田村磨呂さんが割り込む。
「思った通りだ…漸くスッキリしたぜ?で、対策はあるのだよな?晴明さん?」
「あの術の対策は…」
対策は?
「法子君だ!」
へっ???
どういう事?私??
まぁ、ここで謎が解けても過去にいる私には解らない事なんだけどさ~
あはは。
で?
場所は再び過去の私の時代に戻します。
「私の記憶が何度も上書きされたようだ?これは一体?」
そこで若い晴明師匠も自分自身が置かれている状況に気付き、違和感を覚える。
「もしや?これが小角様が仰られていた…果心居士が時間移動、つまり時間を飛ぶ事が出来ると言っていたのと関係があるのか?」
晴明師匠の頬に冷や汗が流れ、一つの仮説を導く。
「幾つもある未来を選び飛んでいるとしたら?」
それはトランプで例えるなら、ババ抜きでジョーカーの場所を先に知って安全で都合良いカードを引くような感じ。
でも、不可解は?
「あの娘には、その影響がないのか?いや…私の前に戦っていた時には確かに苦戦していたはず?つまり?」
その導き出した打開策は?
「解らない」
うん。解らないわよね?流石は晴明師匠!
これで何とか……ならないわよ!!
えっ?勿体ぶって解らないで済んだら、晴明師匠いらないからね!
失礼でした。
すみません。未来の師匠。
「だが、何かあるはず!」
すると、
「そこの娘!今より私の指示に従え!」
えっ?
突然、従え!って何?
言っとくけど、私はそこまで御人好しじゃないし、都合良い女じゃないわ!
「却下!」
「何だと?この状況を見てそう思うか?」
「関係ありません。先ずそれが人にモノを頼む態度ですか?この時代の貴方はまだ私の師匠になってないのだから、あんまり調子乗らないでよね?それとも見返りあるのかしら?」
「私特性の術札では駄目か?」
晴明師匠の特性術札?
私は唾を飲み込むと、手のひらを返したかのように答える。
「商談成立よ!」
晴明師匠の術札はレアなのよ?マジに?売れば、ちょっと通な術者なら数千万とかなるって噂!女子高生には喉から手が出るわ!
晴明師匠は私に命じる。
「今より私と果心居士の戦いの中で、少しでも違和感を感じたら伝えよ!」
えっ?意味が解らないわ?
すると晴明師匠は闇雲に攻撃を仕掛け始めたの。
術札から剣が現れ手に取ると、物理攻撃を仕掛ける。
この時代から術だけでなく剣技にも秀でているのね?
流石だわ!
晴明師匠が果心居士を追い詰めていき、その二人の様子を私が見ていた時?
あっ?
突然、私の中に幾つもの映像が流れる?それは晴明師匠が果心居士を倒し勝利する未来?だけど、それが幾つものパターンで流れて来たの?
そして、最後に流れる映像の中で、晴明師匠の突き出した剣が折れ、その折れた尖端が晴明師匠の心臓に突き刺さる…そんな映像?
映像が終わった時、私が我に返ると同時に晴明師匠の剣がさっきの映像のように折れたの?そして、その尖端が晴明師匠の胸に…
「数珠魔弾!」
私は残っていた数珠に霊力を込めて弾くと、晴明師匠に突き刺さるはずだった剣の尖端に命中して弾き飛ばしたの!
それには果心居士も本気で驚き、信じられないと思っていた自分自身の能力を二度も外させた私に目を向けた。
「あの…小娘?まさか本当に儂の決めた未来を改変しおったのか?ありえ…いや、もう確信じゃ!」
すると果心居士は晴明師匠との戦いを放棄して、私に向かって飛んで来たの!
指で印を結び、
「先程は必要と思い手加減してやったが、この小娘は危険じゃ!この場で殺してやろう!」
向かって来た果心居士に、私は目を見開く!
その時、果心居士は私の瞳が金色に光輝いている事に気付いたの。
その瞳を果心居士は言う。
「まさか未来を見る魔眼か?それが私の未来改変を邪魔したカラクリか?」
しかし、
「じゃが、カラクリが解れば簡単じゃ!その未来予知も含めて、小娘が死ぬ未来を選び、始末してやろうて!」
迫る果心居士に、
私は拳を握りしめ、
「私の未来は私が決めるんだからー!」
ぶん殴ったの。
私の拳が果心居士の顔面にヒットして、勢いよく壁に衝突した果心居士は…
「まさか…そんな筈は…つまり、それでは…この小娘?」
果心居士は私を殺す未来の選択肢を探したけれど見付からなかったの。
いくら探しても今、私が死ぬ運命が?
その理由は?
「既に近いうちに決められた死があるというのか?変えられぬ未来があるというのか?」
私には近いうちに死ぬ予言があったの。
それは誰も抗えない定められた未来。
その日が私の命日。
だから、今は死なないって事なのね?
ラッキー!
「こんな小娘と関わっていたら身がもたん!」
すると果心居士は私達の前から霧となって消えたの?
「あ、逃げた!?」
そこに晴明師匠が駆け寄ると、私に言う。
「君は本当に何者だ?」
私?
私は晴明師匠に答える。
「私はただの正義の女子高生よ!」
と、そんなこんな。
次回予告
法子と晴明が果心居士を相手に快進撃を・・・
する予定です。




