女子高生の頼れるお父さん?
法子と女教師のゆかり先生は、虐めが原因で鬼と化した少年の暴走の前に危機迫る。
そこに現れたのは、法子の父親だった?
私、法子!
私がまだ小学校の時に起きた失踪事件。それは虐めに合っていた少年の怨みが鬼を生み出して起きたの。
深夜の学校に忍びこんだ私は、担任のゆかり先生と鬼の前になすすべなく絶体絶命の時に、突如救いの手が?
それは三階の窓から入ってきた…
お父さん?
「貴方は誰ですか?」
驚くゆかり先生に私が答える。
「私のお父さん!」
「えっ?お父様?それよりこの校舎は三階建てのはず?」
するとお父さんは頭を掻きながら教室の中に入る。
「いやぁ~娘の帰りが遅いんで迎えに来てしまいましたわ~ほら?学校なんて久しぶりだし、滅多に来ないんで迷ってしまいましたよ?先生」
「あ…はい」
「私、法子の父の三蔵 玄三です」
お父さんは頭を下げて、ゆかり先生に挨拶をする。
「って、そんな場合じゃ!」
一瞬の唖然としていたゆかり先生が我に返る。
そりゃ、そうね?
目の前には鬼がいて、今にも襲われる寸前なんだからね?
だけど、
鬼もまた唖然としていた。
「それにしても…学校に鬼とはな?学校は教われる場であり、襲われる場ではないと思っていたが…うん。時代も変わったなぁ~いや?今も昔も同じか?」
と、鬼を前に怯む所か冗談を言うお父さんを目の当たりしたゆかり先生は…
「あ…あの人…」
固まっていた。
私はゆかり先生の袖を引っ張ると、伝える。
「もう大丈夫だよ?先生?お父さん来たからもう何も恐くないよ」
「貴女達は一体何者?」
「うふふ、正義の味方だよ!」
お父さんは印を結ぶと、後ろにいる私に向かって。
「法子!目の前に現れる悪は倒さねばならん。だが、よく見て考えるのだ!目の前の者の真を!救うべきモノが何なのかを!」
「救うべきモノ?」
お父さんは数珠を手にして振り回すと、真言を唱える。
それは地蔵菩薩真言だった。
「地蔵菩薩の加護により、我が前に立つ憐れな魂に救いを!オンカカカ・ミサンマエ・ソワカ!」
数珠が光輝くと同時に投げると、それは鬼を縛る。
「オギャアアアア!」
鬼が光に包まれ叫びながら足掻くが、抜け出せない。
「待って!」
その苦しむ鬼を見て、ゆかり先生が止めに入ろうとする。
そう…あの鬼はもしかしたら自分の生徒になる子の、変わり果てた姿…
我が子を産まれる前に中絶させた自分自身もまた…
考えもなく欲求に身を任せ、保身の鬼のような女…
我が子の代わりに…
命に代えてでも、その鬼となった少年の心を救うことで償いをしたいと…
それが自分自身への罰であると…
それを察したかのようにお父さんは諭す。
「先生?貴方は死ぬべきではない。まだ貴方のような先生を必要とする子供達が沢山いるはず。貴方は生きて、これからの未来を歩む子供達を導いて欲しい」
「!!」
ゆかり先生はその言葉に涙を流していた。
「さて、そろそろ魂に弛みが出てきたな?」
お父さんは再び印を結ぶと、新たな印を結ぶ。
「オン・ドドマリギャキテイ・ソワカ!」
それは訶利帝母の真言。
新たな光が鬼を包み込む。それは慈愛に満ちた光だった。
「かつて我が子を喰らう鬼神であった鬼子母神。だが、悔い改め、訶利帝母と転身した!」
光は鬼を包み込み、中で二つに裂いたのだ!
光が消えて現れたのは、赤子の魂と禍々しい鬼であった。
赤子はゆっくりと、ゆかり先生の胸に降りてくると、先生は優しく抱きしめた。
「優くん?」
すると赤子は光に包まれて消えていった。
それはゆかり先生の心からの慈愛により、穢れた魂が浄化されたの。
そして残された鬼は?
「魂には荒魂と鎮魂が存在する。生を全うする中で互いの魂を繰り返し経験しながら平常心を保たねばならぬ。そして人は魂と共に成長していく。それが生者の試練であるのだ」
だけど、その荒魂と鎮魂は二つで一つ。
分けてしまえば魂は一からやり直さねばならないの。
「少年の魂は再び転生し一から試練を受けるだろう。それもまた今世の罪と罰。そして、残されし荒魂は邪悪な鬼として再び厄となす。それを浄化清めるのが我らの責務であり役目!」
お父さんは荒魂の塊となった鬼に向かって、今度は別の顔を見せる。
「邪悪な魂よ滅びよ!」
「臨・兵・闘・者・解・陣・烈・在・前!」
それは九字の印!護神の力を引き出す。
お父さんの手に金色の錫杖が出現すると、その錫杖を床に突き付ける!響く鈴の音が音波の如く波動を起こして鬼を消滅させた。
「うむ。一件落着だな?では、法子?帰るぞ?」
私は立ち上がるとお父さんに向かって駆け寄る。
「私一人でも何とかなったんだから!」
「未熟!未熟!あはは」
そんな父娘の姿を一人残されたゆかり先生は、
「あの…」
お父さんは思い出したかのように付け加えて言う。
「先生!そうでしたな?もう暫くしたら私の関係者達が現れて、眠っている子供達を親元さんに連れて行ってくれますよ?先生も恐かったでしょ?でも、今日の事は忘れてください。貴女は平穏な日常を送るべきです」
「そうじゃなくて!」
「はい?」
先生は言った。
「三蔵さん?失礼ですが、以前…何処かでお会いした事ないですか?」
「はて?思い当たりませんが、入学式ですかね?すみません?俺、貴女のような美しい方は一目見たら忘れないはずなんですが?」
そう言って立ち去ろうとした時に先生は呟いたの?
「もしかして…」
その次の言葉にお父さんは一瞬、立ち止まる。だけど、振り向かずに私を連れて立ち去って行った。
その後、数人の修行僧が学校に入ってきて残されたクラスメート達を親元に連れて行く。その額には札を貼り付けながら?
それは記憶を消す札。
今日の事は夢として、悪夢として忘却するために…
それは、ゆかり先生にも貼られるはずだった。だけど、記憶の消去はお父さんが止めたの。もし今日の事を忘れてしまったら、またゆかり先生は無茶をするだろうし、同じ悲しみを抱きながら生きていくだろうから…
「彼女は強い女性だから…大丈夫だろう」
壊れた教室は暫く復旧のために使われなかった。少なからず前任の先生が殺されているし、多分もう使われないだろう。
そして再び学校が始まった時には、そこに私はいなかった。
私は転校したの。
はぁ~
やんなっちゃうなぁ~
こんな夢を今頃見るなんてね…
あれから私も力を付けて、強くなったつもりだったんだけどな~
全然駄目!
私は布団から起き上がると両手で自分の頬を叩いた。
「切り換える!」
私は強くなりたかった。
誰にも負けない自分に…
この先の運命にも負けない自分になるために!
意志を改めて決意する私は今日も頑張ります!
と、
そんなこんな。
次回予告
新たな事件に法子は再び首を突っ込む。
今度の事件は?
「私が解決するからね!」