最高の私!最高の戦い!救世主法子のケジメ!
覇王と救世主として覚醒した法子の戦い!
その決着が今!
私は法子!
駆け付けてくれた玉龍くん。
私と玉龍くんは一つとなったの!
ん?いや、何か誤解生じる言い回しね?
玉龍くんは龍神族で聖獣族なの。
そして神族は聖獣族と契約する事でお互いを融合させて強力な力を出す事が出来るの。
それは1+1ではなく、お互いの力を相乗効果で跳ね上げる事が出来るのよ。
相性が良ければ更に基礎能力も上がるのよ。
そして私と玉龍くんは相性ドンピシャ!
更に聖魔の剣を持った私に敵はない!
「ハァーーー!」
私の動きは閃光の如く、その破壊力は天地を揺るがしたの。
覇王は私の驚異的な進化に笑みを見せる。
「それがお前の本気か!ならば俺も全力でいかせてもらうぞ!」
覇王を中心に空間が歪む程の妖気が立ち込め、私達との戦いで砕かれ傷付いていたはずの鎧が再生しながら禍々しく変化していく。
「真覇の鎧」
そして再生した覇王の剣を手に覇王は雄叫びをあげたの!
大地が一瞬沈むように重圧がのしかかる。
そこに私が飛び出して剣を振るい衝突した。
その余波は私と覇王を中心に広がっていったの。
戦場にいた者達はその余波を浴びた途端、力の弱い者から次々と意識が飛び倒れていく。
私と覇王の一騎打ちは戦場に混乱を生じるほどだった。
そして遠く離れた場所から私と覇王の戦いの行方を見ていた白澤と金禅子にも突風の如き余波を浴びて、その行動を決めさせた。
「行くのか?白澤よ」
「どうやら私の探し求めていた真王が現れたようだ。そして私は真王とともにある」
さらに、
「は、覇王様?そんなまさか?ありえません」
白蛇の巫女は覇王と互角に戦う何者かの存在に気付き、不安を感じる。
「この気?まさか法子はんらか?」
八怪も驚いていた。
信じられないくらい膨れ上がった覇王と戦っている正体が私である事への驚き。
「このまま放っては置けないわ。那我羅様の覇道の邪魔はさせません!」
「お。オラは・・・」
八怪は蛇神を無限に作り出している塔を破壊しに来ていた。
しかし今は状況が変わったの。
「オラは世界を守る事よりも!」
八怪は塔の破壊を断念して、引き返す事を選択したの。
この私のもとへと!
そして、
「覇王様を本気にさせる者がいるとは驚いた。ならばこの俺も向かわねばならんな」
「邪魔はさせません!」
「そうだな。先ずはお前から始末してやろう!」
牛帝覇蛇と戦っていた沙悟浄も私と覇王の戦いに気付いたの。
と、その時!
「うぉおおおおお!」
突如、上空から飛び降りて来て乱入して来た者がいたの。
その者は着地すると牛帝覇蛇に拳を向ける。
「父上!父上は俺様が元に戻す!」
「紅孩児さん!」
紅孩児君は一度、父親によって致命的傷を負わされて安静にしていたのだけれど、このタイミングで回復して沙悟浄と牛帝覇蛇のいる戦場に降り立ったの。
「紅孩児か、まだ生きていたか?」
牛帝覇蛇の言葉はもう実の子である紅孩児君を守るために覇王に討たれ犠牲になった過去の牛角魔王さんではなかったの。
また、この戦場に向かっていた彼らも驚いていた。
「信じられん。本当に、覇王と戦っているのは?」
「あぁ。間違いねぇ。法子だ!」
驚く蛟魔王に孫悟空は確信に満ちて答える。
「しかし、法子。この気、この力強さ・・・」
孫悟空は知っている。
今の私と似た熱い強さを持つ者を。
「急ごう!」
そして先を急いだの。
世界の命運をかけた戦いは天にも轟く。
「蛇神の王と戦いし人間か・・・」
そこには天上界の帝王である最高神が座していた。
そしてその前に立つ四天王の面々。
最高神は頭上に浮かぶ巨大な水晶の映像で地上界で起きている戦場を見ていたの。
そこには覇王と戦う私の姿が映し出されていたの。
「お願い致します。蛇神軍を倒す機は今しかありません。今、覇王と戦っている彼女とその仲間達は必ず世界を守りし力を持っています!しかしそれは我々天界の神が何もしないで良いと言うわけではありません!今こそ天界の総力をあげて永きに渡る神々の天敵であった蛇神との戦いに決着を付けましょう!天よー!」
最高神を前に天界軍出兵を訴えていたのは二郎真君さんだった。
この私の戦いが皆を衝き動かす。
世界を守らないといけないと戦う私の思いが勇気と行動を与えているの。
「うぉおおおおお!」
「上等だぁー!人間の娘よ!」
互いの力は拮抗していた。
私の金色の魔眼が覇王の力に同調するかのように更に輝きを増して力を引き出していたの。
その戦いを見上げるナタクに、
「アレは本当に法子なの?信じられないわ。本当に何者なの?法子って・・・」
傷付き、目が覚めた鉄扇ちゃんが問う。
「俺にも分からん。ただ俺は法子の戦いから目が離せられない」
頭上で幾度と交差し衝突し合うのは二つの巨大な太陽にしか見えなかった。
眩しさと灼熱。
度々、大地を震わせ、天が荒れ果てる。
「つぉおおおおお!」
私の剣は覇王と互角に渡り合っていた。
もう手品は通用しなかった。
それでも互角に渡り合えているのは、記憶?
私は幼い頃から恵まれていた。
それは環境。
私の周りには戦闘に長けている人達が沢山いたの。
お父さんに、晴明師匠。
田村麻呂さんや鈴鹿さん、それに仁王さん。
他にも沢山知っているわ。
それは来たる日の為に募られたの。
世界の終わりに抗うために。
同時にソレは私にも関係していた。
私は何度も聞かされていたの。
私は来たる日に命を落とすってね?
だからこそ、その運命に抗うために私も力を付けた。
守られるだけは嫌だったから。
そして度重なる敵を前にして勝ち続けて来たの。
私の成長は私を守りたいと思ってくれる人達の為に、私が守りたいと強く願ったから得られたの。
だから、私の大切な皆を、未来を破壊する覇王なんて大嫌いよ!
私は産まれてから今日までの記憶が走馬燈のように廻り、今置かれている目の前の危機に立ち向かう為に必要な記憶を思い浮かべさせる。
道場で見たお父さんや清明師匠の殺陣や舞、実践的な組み手や剣術なんかも。
実戦での戦いも沢山あったわ。
悪霊に悪魔、戦国武将なんかも・・・
経験してきた全てが私の糧になっていたの。
私が見てきた記憶通りに身体が動く?
まるで歴戦の猛者にでもなったような感覚。
それはこの世界に来て出会った皆んなの動きも戦い方も模倣出来ていたの。
孫悟空、阿修羅、八怪、沙悟浄、鉄扇ちゃん、白骨乙女さん、ナタクに二郎真君さん、楊善さん。
もっともっと沢山出会っていたわ。
その全ての皆んなが私と一つになったみたい。
「模写の魔眼」
それは魔眼の力だったの。
一度見たモノを自分のモノとする能力。
コレってチートじゃない?
だからこそまだまだ未熟な私なんかが覇王相手に渡り合えているの。
けれど、そう長くは戦っていられない。
私の急激な成長力に玉龍くんが飲まれていたの。
〈大丈夫です!僕の事は気にしないでください!僕はまだ戦えます!そのために僕は戦場に来たのですからぁー!〉
玉龍くん、ありがとう。
でも、私も決着を付けさせて貰うわ!
私は目の前の覇王を倒すために一番強い自分をイメージする。
私が知る一番の私!
私が信じられる一番頼れるのは・・・
お父さん?清明師匠?
それとも孫悟空?阿修羅?八怪?沙悟浄?
違う・・・
私を一番強くさせるのは?
「!!」
その時、私の記憶に閃光が走った。
それは私の失われた記憶?
誰かが私を抱き締める。
強く!熱く!激しく!
私を守る腕に支えられ、私は強い安堵を感じた。
信じられる強さが伝わる。
あの人は誰?
私はその人の背を見て思った。
あの人は私の救世主?
その時、私の動きが変わったの。
無意識に剣を上斜めに構えたその姿を見た覇王は、かつて死力を尽くし戦った者の姿と被らせる。
「身体が疼くぞ!お前なら俺を引き出してくれる。あの者と同じく俺を熱くし、命を燃やせられる!」
歓喜の笑みを見せた覇王は剣を握りしめ、私に向かって駆け出し迫る。
同時に私も覇王に向かい駆け出していた。
これが私の限界突破よ!
互いに振り払われる渾身の一撃。
「うるぅああああ!」
「うぉおおおおお!」
私の振り払った剣は斬った。
確実に感触が伝わる。
覇王の踏み込みよりも先に覇王の胸元を斬り裂いたの。
その剣先は覇王の鎧を砕き、肉を裂く!
「ぐぉおおおおお!」
覇王は私に打ち負けたの。
そして私は最後の力を振り絞り、最大限の出力で覇王に向かい剣を振り下ろした。
戦場が私の一撃に大地が割れ、その爆風が天にまで上昇していく。
それからどれだけ時が経ったのか?
もう私には考えられない。
それだけ出し尽くしたのだから。
静けさが戦場の時を止めたように思えた。
そこに覇王はいなかった。
唯一、私がその場に立っていたの。
そこに、遅れて現れたのは?
「法子ぉおおおお!」
「法子はーーーん!」
「法子さーーーん!」
孫悟空、八怪、沙悟浄だったの。
三人はやっと私のもとに来てくれたの。
も〜う!
本当に遅かったんだから〜!
三人は私に慌てて問いかける。
「法子!覇王は?奴は何処だ?」
三人は辺りを見回して警戒する。
しかし、そこにはもう覇王の気配はなかったの。
ふぅ〜
私は答える。
今、私の戦いの結末を。
「覇王は逃げたわよ?この私がコテンパンにしたからさ!けど、もう私は一歩も動けな〜い!」
「マジか?やっぱ、覇王と戦っていたのは法子だったんだな?マジに信じられねぇや」
「法子はん、凄いらよ」
「本当に驚き桃の木ですよ〜」
三人が私をチヤホヤ褒めるもんだから、私も有頂天になって笑みを見せたの。
「けどね?覇王はまだ倒したわけじゃない。また力を回復する前にアンタ達が何とかして?」
そう。
私との戦いの後、傷付いた覇王の前に白蛇の巫女が現れて連れ去ったの。
そして一足先にナタクと鉄扇ちゃんは傷付いた身体で後を追った。
「アンタ達、出来るわよね?」
「当然だぜ!」
すると三人は覇王の城を睨む。
そんな緊張感漂う中を、突然私が三人の背中を強く叩いたの。
「いってぇええ?何すんだよ?法子!」
「気合いよ!気合い!だからアンタ達も例のアレをやって気合い入れなさい?」
「アレってアレか?今か?」
「そうよ!ちょっと久しぶりで忘れちゃった?」
「何だよ?突然よ~」
「私が見たいの!気合い注入のためよ!」
すると三人は横に並んで勇んで各々の武器を構えながら叫んだの。
最初に名乗りを上げたのは孫悟空。
「やぁ!やぁ!俺様こそはかつての妖魔王地上の支配者だった妖猿こと、泣く子も笑って黙って跪く大妖怪!美猴王改め、聖天大聖・孫悟空様よおおお!」
次に八怪が名乗りをあげる。
「かつて天界の破壊神と呼ばれし漆黒の魔神。地上に堕ちて黒豚妖怪八戒となりしは再び新たな名を持って名乗らせてもらうら。オラは天蓬元帥・八怪ら!」
そして沙悟浄が名乗りをあげた。
「数奇な運命で弱小妖怪として産まれ、父と母の愛に守られて、大切な出会いを経て守るために戦う事を誓いし捲簾大将・沙悟浄でーす!」
その名乗りは三人を鼓舞するための儀式みたいなものだった。
三人は私ともう一度拳を重ね合わせて誓う。
必ず勝って生き残り戻って帰って来ると!
そして私も安心して三人を送り届けられたの。
三人の背中が見えなくなった時、私は呟く。
「ふぅ〜やれやれ。もう三人は行った?」
私の声に隠れて見ていた玉龍君が震える声で答えたの。
「はい、もう皆さん行かれました・・・」
「そう?あの三人の背中を押すくらいしてあげなきゃ、戦場に送り届けるんだもの、当たり前よね」
すると見届けていた私の身体が突然崩れるように私の姿が塵となって崩壊したの。
それは私の使っていた黄巾力士だった。
そして本当の私はその近くの岩影に隠れていたの。
そこには玉龍君が私の手を握っていた。
「法子様!死なないでください!必ず助けますから!」
けれど私は首を振る。
「ごめんなさい、でも無理かも・・・」
恐らく沙悟浄の治癒でももう手の施しようはなかった。
私は私の身体から流れる血溜まりの上にいた。
胸が貫かれ、そこから流れる血の上に。
そうなの。
私は覇王に斬られた。
けれど敗北したわけじゃないのよ?
私は斬られた後、覇王は私の聖魔神剣を再び奪おうとしたの。
けれど私はそれを阻み、本当に最後の最後の力で拳に金色の力を籠めたの。
「聖魔神剣!アンタは私の剣なのよね?私を主人と決めたんだったら、私と最期を共にしなさいよね」
そう言って拳で剣を殴ったの。
すると聖魔の剣は閃光を放ち、塵と消えた。
同時に私は力尽きて倒れたの。
その姿を見て覇王は呟く。
「見事な散り様であったぞ。お前の事は俺の生きた歴史の中で忘れられぬ戦士として残るだろう」
その言葉を残し現れた白蛇の巫女とともに消えた。
その後は玉龍君が治癒を施してくれたのだけど、もう無理だったみたい。
覇王の剣は私の再生を許さなかったの。
「・・・けど、最期にあの三人に会えて良かった。阿修羅には会えなかったけれど、私がいなくなったと知ったらまた無茶しなきゃ良いけど・・・」
最期まで皆の心配をする私に玉龍君は自分も助けられた事に涙する。
覇王に斬られ貫かれる瞬間、私は玉龍君を変化から解いて寸前で助けたの。
「の、法子さまぁ・・・あ、あぅ」
泣きじゃくる玉龍君、
ごめんね。
もう視界には何も映らなかった。
けど、人間の、女子高生の私が世界を壊す程の化け物相手に本当によくやったと思う。
きっとノーベル平和に頑張った女子高生賞ものよね・・・
でも、もう未来には戻れないのか。
皆、ごめんね。
本当にごめんなさい。
本当に・・・
私は気付いていなかった。
今日、この日が私の誕生日だったのだと。
この世界に来て正確な日数なんて数えてなんてなかったから。
私は幼い頃から言われ続けていたの。
私はこの歳を最後まで迎えられないと。
それが宿命なのだと。
「皆、後は任せたからね」
そして私は息を引き取った。
そんなこんな・・・
次回予告
救世主として未来から来た法子。
彼女の死はまだ知られてはいない。
そしてその思いを託された戦士達は最後の戦いに出る!




