女子高生の進化は止まらない?法子の真価!
覇王相手に法子が戦う!
しかし本当に覇王相手に戦えるのか?
私は法子
私は今、世界の命運をかけて蛇神の王である覇王・那我羅と一対一で戦っているの。
正直、力の差は誰が見ても分かりきっていたのに。
私は金色の魔眼を覚醒させただけでなく、その手には万物の真王のみ手にする事が出来ると言われている聖魔神剣が握られていたの。
私は思い出す。
覇王と戦っている私の意識に直接誰かの声が聞こえて来たと思うと、突然「力を求めるなら腕を伸ばせ」と言って来たのよ?
正直、知らない人に突然何かくれるとか言われたら警戒しちゃうのだけど、今は猫の手も借りたかった。そして運を天に任せて求めたの。
直後、私の防御壁が消滅して覇王の放つ波動が迫って来た私の手には何かが握られていたの。
私の掌を通して物凄く熱い何かが伝わって来る。
それは火傷とかではなく、私の魂に直接何かが繋がったような感覚だったの。
「えっと?貴方は剣さん?」
そこで初めて私は声の主に問う。
すると先程から私に語りかけていた声の主が答える。
「汝の事を星の数の時ほど待ち侘びた。我、汝を主と認め、この力を奮う者」
うん。突然、何?
意味分からないわ。
怪しい他何もないわよ。
もう少し確かめる必要あるわね?
「つまり私の味方で良いのよね?あんた覇王の剣ってわけじゃないの?罠じゃない?騙してたりしない?突然、私の手から離れて斬ったりしないわよね?」
「・・・疑り深いのぉ〜主様は」
「疑りもするわよ!見ず知らずの人が餌出して近付いて来るのは誘拐犯か悪いセールスに決まってるの。後は1%弱の僅かなお人好し?」
「なら私は最後のソレだと信じてくれよ、主様」
「本当に本当ね?だったら有り難く使ってあげるわ!私は法子よ?アンタは?」
「我は剣!主様のために創造されし聖魔の剣」
すると私の胸の辺りから力が湧いて来て、無我夢中で迫って来た覇王に向かって振り払った。
その斬撃は覇王を押し返し傷を与えた。
不思議なの。
この剣は見た通り私が持つには大きいはず?
なのに身体の一部みたいに重さを感じないのよ。
しかも剣術なんて触り程度しか嗜んでいなかったはずなのに、まるで昔から使いこなしていた武器のように私に馴染み、剣術の達人のように使い熟せる気がするのよ。
ナタクですらこの剣を持った直後、拒む力の反撥で腕が獄炎に飲まれ消滅した。
そして覇王も使い熟すために捲簾覇蛇の結界の中で時間を費やし、拒む力を覇王の力を持って制していたようなの。
それが私にはノーリスク!ノーリターン?
本当に私のためにある武器なのね?
「行くわよ!」
私の力と聖魔の剣の力が同調していく。
「まさかその剣がお前を選んだと言うのか?」
覇王は剣を奪われた事よりも、目の前に現れた追い求めていた強者(私の事よ?)に歓喜していたの。
「良かろう。覇王として!この俺も全力を持って相手させて貰う!」
すると覇王の掌から無数の蛇が噴き出すように湧き出し、その中から新たな剣が出現する。
それはナタクと鉄扇ちゃんに砕かれたはずの覇王の剣。
砕かれた剣は覇王の血を吸わせ、更に強力な剣となって再生したの。
「ごくり」
覇王は剣を上段で構えて私に向ける。
唾を飲み込み一瞬怯んだけれど、気持ちで負けたら他で秀でた所ないもんね?
私は聖魔神剣を持って斬り掛かる。
覇王の降り下ろす剣と衝突した途端、空気が振動を起こして次に時を止めた。
直後、私の剣を掴む手が震えて弾かれたけれど、直ぐに身を回転させ次の一撃を振り払う。
覇王と私、剣の戦いは互角だった。
特に学んだわけでもない。
まるで身体が剣技を知っているかのよう?
いえ?遺伝子レベルで身についているような?
何なの?この感覚は?
その時、覇王は私と戦いながら別の姿を被らせて見ていたの。
その者は人でありながら、覇王と一騎討ちをして互角以上にやり合った戦士だった。
覇王生誕祭にて現れ、その者との熱い戦いは覇王にとって世界を支配し破壊するといった事よりも胸を熱くさせ、戦いの高揚感に酔いしれた。
その戦いがあったからこそ、覇王は世界征服に関心を持たず全指揮を白蛇の巫女に任せ、自らは強者を求め龍神界へ訪れては歴戦の応龍と戦い、私達が集まっていた場所に現れ最初の交戦でナタクや八怪達を倒して牛魔王さんを手にかけたの。
また同じ蛇神の中から自らの力を分け与え、自分を倒すために覇蛇達を作り出した。
さらには太古の蛇神の王である始祖の蛇神をも呼び寄せたの。
しかし覇王を芯から熱くさせ満足させられる者はいなかった。
だからこそ私を一度捉えた後に強者を引き寄せる餌として再び野に放っていた。
中でも軍陀覇蛇の反逆戦は期待以上であったけれど、終わってしまえば再び虚しさが残った。
もう地上界には望む強者は現れないと諦め、天に残して来た最高神を葬る戦いに出陣するつもりだった。
その為に地上界はこの戦いの後、全て破壊するつもりでいた。
そこに現れたのが予想外であって、規格外の力を以って戦う私の出現。
「真に嬉しいぞぉー!」
振り下ろす覇王の剣を受け止め、弾き、突き出した私の剣が覇王の頬をかすめた。
そして互いに剣を合わせた状態で力勝負する。
「その細腕、そのか細い身体でよく耐える!」
「セクハラ発言よ?それ!まだまだ成長途上の女子高生をナメるんじゃないわよ!」
交差しては衝突する余波に大地が震えた。
その戦いをナタクは見ているしか出来なかった。
その目に映る全てが信じられない状況。
人であり無力と守られるはずの私が、自分が手も足も出なかった覇王相手に戦っているのだから。
「法子が、き、救世主なのか・・・」
天界から突如与えられた特別任務。
地上界に蔓延る蛇神討伐よりも人間の少女を確保し命を守り天界へと連れて行く事が最優先だと命じられた。その任務の途中で仲間であり、共に数々の戦いを生き抜いて来た楊善さんが命を落とした。
正直、この任務にそれだけの価値があったのか?
今の今まで信じられなかった。
「まさか天は法子の存在を知っていて俺達を任務に付けたのか?」
自分自身に与えられた任務の重さが今になって分かった。
そして自分はその任務を放棄し失敗した事に悔やむ。
「法子を、此処で殺されてはならない」
もし時間をかけ、天界で救世主として相応しい成長を遂げられたのなら、必ず覇王を討ち果たせたに違いない。まだ覇王と戦うには早すぎたのだと。
しかし全ては手遅れだった。
もう取り返し出来ない。
私と覇王はもう戦ってしまい、その存在を知られてしまったのだから。
逃がす手段なんてもうない。
必ず、この戦いで生死が決まってしまうのだと。
しかし勝負の結末は分かっていた。
ナタクは絶望を呟く。
「確実に法子は敗北する」
それは戦う者としてナタクが見た覇王と私の実力。
「うぉおおおおお!」
勇ましく戦う私は徐々に押され始めていたの。
戦いは驚くほど私に不利だったの。
いくら聖魔の剣を持って攻撃力が半端なく上がったとしても、防御力は何も変わらない。
金色の魔眼で強化したとしても、もしダメージを受ければ生身に受ける。
つまり私は崖っぷちの状態で綱渡りしているようなものだったの。
一度でも攻撃を受ければ私の負け?
それが無意識に攻撃に徹しきれない弱点となる。
そしてそれは私にも自覚があったの。
「やっぱり無茶でもやるしかないわね」
私は覚悟を決めた。
それは防御を捨てた渾身の一撃で攻撃を仕掛ける。
私は覇王の振り払う剣を躱して距離を取り、そして踏み込む。
とにかく覇王に斬り込めさえすれば勝てる!
私の金色の魔眼の力と聖魔の剣の攻撃は覇王に通用する。
何故なら先程覇王の頬をかすめた傷が未だに再生していない事に気付いていたから。
もし斬り伏せさえすれば勝機に繋がるの!
その為には防御を気にして踏み込みに躊躇していたら勝てるかもしれない勝機を逃してしまう。
「ノウマク・サンマンダ・バザラダン・センダ・マカロシャダ・ソワタヤ・ウンタラタ・カンマン!」
これは迷いを払う不動明王真言、
私は迷いを捨てるように念じて気合いを籠める。
この聖魔の剣って剣なんだけど、本当に私の身体の一部みたいで、剣先までが指先まで神経が張り廻らしているような感覚があるの。
それならと思う。
私は軽く剣を握りながら呼吸を整えた。
そして神経を研ぎ澄ませる。
私は正直、剣技は不慣れ。
けれど得意な技術はあるの。
得意なものってね?
何にだって活かせるものなのよ?
それは技術だけでなく、考え方や、応用。
他にも思い込みを取っ払う事で常識の壁を超えて0を1にして、2にも3にも、それ以上にすら。
「さて、覇王相手に通じるか楽しみね〜」
私は軽口を呟きながら己の恐怖を自制する。
すると私の身体が覇王の視界から消えて静かに移動した。
それは速さと言った瞬間移動とは全くの別。
けれど私は覇王の間合いに飛び込み間合いに入ったところで剣を振るう!
「!!」
覇王は私の動きを見失い、視界の外からの攻撃に動きが遅れる。
私の剣は覇王の胸元をかすめ、そして第二の追撃に悪寒を感じて初めて覇王が後退し躱す。
「ヌッ?この俺を後退させるとは!」
私の動きは覇王から見たら突如視界から消えて現れる。
まるで化かされているような感覚だった。
そうよ!
これは手品の原理。
認知能力を使ったテクニックなの。
この命のやり取りの最中、お互いに極限の集中力が必要とされている。
相手の呼吸は僅かな予備動作と言った微かな動き、そこから次の動作を先読みしあい、攻撃へと移す。
だからこそ付け込む事が出来るの。
私はわざと僅かな無駄な動きを戦闘に織り交ぜる事で相手に誤情報を与え、相手の認知とは別の動きで戸惑わせ、攻撃を仕掛ける。
まさに心理を突いた手品のようでしょ?
けれど狙いは・・・
覇王は私の動きの違和感を読み取り、徐々に対処し始めたの。
剣と剣の衝突が激しさを増してく。
「そろそろよねぇー!」
「決着を付けようぞ!」
覇王の渾身の上段からの一刀が振り下ろされると、私は剣を受け止めるのではなく突き出し沿わせながら、
「私流・合気の剣舞」
私は覇王の力を合気の要領で受け流しつつ、その力を逆に軌道をずらしながら体勢を崩させたの。
「ナヌ!?」
覇王は私のトリッキーな戦いに完全に虚をつかれる。
まるで魔法にかかったように力が抜けて上体が崩れ膝をつく。
今まで戦って来た強者は覇王と力と力で戦う者ばかりだったに違いない。
だからこそ私の戦い方にはどうしても後手に回るしかなかったの。
「また奇妙な術を!」
「てか、わざわざ相手の土俵の上で戦う意味なくない?私、か弱い女子高生なんだからさ!少しくらい大目にみなさーい!」
私は姿勢を崩した隙をつき、覇王に剣を突き出す。
「真っ向勝負が全てじゃないのよ!」
しかし私の突き出した剣を覇王は読んでいたの。
いえ?
それは戦闘で培った感の方だった。
私の剣は空を突き出し、勢い余って体勢を崩してしまった私の首元狙って覇王は剣を振り下ろす。
完全に私の競り負けだった。
「ウッ!」
振り下ろした覇王の剣は確実に私の首を跳ね落とした。
落とされたはずだった。
「ナタクかぁー!?」
覇王は寸前で邪魔されたの。
それは神速で接近して来た者の邪魔だったの。
しかし?
覇王は地上にて動けずにいるナタクを見付けて、邪魔した者がナタクでないと気付く。
「ナタク以外に俺の間合いに入り込めるほどの神速の動きが出来る者が他に?」
すると見上げる上空の太陽に被って人影が見える。
そこには私と、もう一人?
「ありがとう、って?えっ?」
私は私を助けてくれた彼に驚く。
何せ本当に心配していたから・・・
「玉龍くーん!」
「法子さん!僕、離れていて申し訳ありません!」
「良いのよ!それより無事で良かったわ」
けれど私は水晶で玉龍君の辛かった戦いを見ていた。
だから知ってる。
玉龍君もこの短期間で見違える程逞しくなったと。
すると玉龍君が覇王を見て私に聞くの。
「あいつが蛇神の親玉、覇王なんですね?」
「そうよ。私達が倒すべき敵よ!」
「なら僕も戦います!殺された一族の仇でもありますし、今度こそ逃げも隠れもしないで法子さんを守ってみせます!」
「玉龍くん・・・」
本当に、本当に逞しくなって。
「えっ?何?ん?」
すると玉龍君が私に告げたの。
それは私に勇気と安心を与えたの。
「今、孫悟空さんが向かっています!僕は蛟魔王様に頼んで先に向かわせて貰ったんです。もうすぐ来ますから、安心してください!きっと孫悟空さんが何とかしてくれますよ!」
「孫悟空が?」
「はい!それに阿修羅さんもこっちに向かっていると太白金星様から連絡が入ってます」
二人が来る。
胸が熱くなり、元気が湧いてきた。
「そうか、そうね。なら私ももう人踏ん張りしなきゃね!せめて覇王に手傷負わせて有利にしてあげる。いえ?私が倒してやるわ!」
「法子さん・・・だったら一つお願いしても良いですか?」
「何を?」
すると玉龍君が私に奥の手を教えてくれたの。
それは蛟魔王さんからの伝言。
そして玉龍君が先に来た理由。
勝利への前進!
「そんな事が出来るの?本当に?」
「僕も驚きましたが、もし本当に出来るなら僕は法子さんに全てをかけます!」
「ありがとう。なら行くわよ!」
私は玉龍君と互いに気を合わせていく。
お互いを信じて魂を一つにするような意識で感じ合う。
そして唱えたの。
「四霊変化唯我独尊・麒麟!」
直後、閃光とともに玉龍君の身体が馬のような麒麟の姿へと変化していき、私の身体と合わさていく。
同時に私は感じたの。
「あっ、あっ!何か凄い、胸の辺りから玉龍君を感じる。力が、力が漲るわー!」
麒麟の聖衣を纏った私は身体的にも精神的にも攻防共に桁違いに跳ね上がったの。
〈これが法子さんの中?凄い。僕までも潜在能力が引き上げられているようです!力が溢れそうです〉
玉龍君も私の力を直接肌身に感じて、その極限とも思える程の異常なまでの向上に驚いていた。
〈法子さんは本当に凄い。人であるはずなのに龍神族よりも神族よりも高位な力を感じる?〉
すると玉龍君の中にある宿命が告げたの。
玉龍くんは麒麟の化身。
麒麟は真王を探し仕える神獣なのだと。
〈それに不思議だ。僕は、こうなる事を知っていたようだ。今やっと分かった気がする。僕は法子さんのために、この世に生を受けたのだと〉
すると変化した私の身体から神々しい光を放つ。
「何か私、負ける気がしないわ!これからが私の本当の戦いよ!」
私の覚醒に展開が急急急なの!
そんなこんな。
次回予告
法子の進化に覇王とのバトルは更にヒートアップ!
このまま覇王を倒してしまえ!




