九曲黄河陣!怒涛の最終決戦!
覇王の力を消し去る九曲黄河陣に閉じ込める事に成功した法子達だったが?
覇王を倒したわけではない。
私は法子
覇王・那我羅を前にしてナタクの奥義が炸裂したの。
ナタクの超神速の奥義は覇王に傷を負わせ動きを止めた。
私達もコレで勝とうとは思ってない。
ちゃんとその後の策は用意していた。
私は結界陣を発動出来るエネルギーを溜め込んだ宝具を使い、最高結界を発動させたの。
「九曲黄河陣」
全ての神的能力を封じ込む結解陣。
この中に閉じ込められた者は霊的力を失い凡人と化す。
つまりその者の肉体的な力しか使えなくなるの。
けれど覇王を倒す為にはこの結界だけでは不十分。
だから私達も結界の中に留まっているの。
ここから先は肉弾戦で確実に覇王を倒すために!
しかし本当に計画通りにならないわね。
この作戦は全て太公望さんの考えた覇王討伐の最終手段だったの。
孫悟空と阿修羅が間に合わない事も考慮して私達だけで覇王を倒すための策。
本来なら沙悟浄が術を行い八怪とナタク、鉄扇ちゃんで覇王を囲み込み倒す予定だったのだけど。万が一に備えて術を習得していた私が発動させ、結解に覇王を閉じ込められたの。
だけどこれから先の戦闘は鉄扇ちゃんと力使い果たしたナタクで挑まないといけないのよ。
しかも術は成功したけれど私ではそう長くは結解を維持する事は出来ないはず。
だから短期決戦で仕留めなきゃ・・・
すると鉄扇ちゃんが心配する私の肩に手を置き、そして覇王に向かって前に出たの。
「法子はよくやったわ。ナタクもね?後は私が何とかしてみせるから」
「鉄扇ちゃん?」
鉄扇ちゃんは沙悟浄の件で私達の敵に回った事。
それに白骨乙女さんを失った事を悔やんでいたの。
だから責任は戦う事でしか返せないと思ってる。
「この結界の中で戦えるのは私だけなんだから!」
鉄扇ちゃんは飛び出すと芭蕉扇に力を籠めて覇王に叩き付ける。
「うぬが相手か?力不足!」
覇王は剣で受け止めた直後、その重圧に足が地面に埋め込む程の衝撃を感じる。
「ぬっ?この力?」
覇王の口元が緩む。
何故なら鉄扇ちゃんから伝わる力はまさに覇王が求めていた力に似ていたから。
「うぉおおおおおお!」
鉄扇ちゃんの気合いに芭蕉扇から雷撃と竜巻が吹き荒れ覇王に追撃がのしかかる。
しかもその威力は羅刹の力を使っている以上の破壊力。
それもそのはず!
今、鉄扇ちゃんの瞳は金色に光り輝いていたの。
この短期間で鉄扇ちゃんも出来る限りの事はやっていた。先の戦いで見せた金色の魔眼の力を自分の意思で引き出して戦えるように八怪と沙悟浄と一緒に特別な特訓をしていたの。
魔眼については何故三人が使えるのか?
いつから使えるのか?
そもそもこの魔眼が何なのか分からなかった。
しかし覇王との戦いにこの魔眼の力は必要不可欠であり、勝利を掴む唯一の鍵。
魔眼の修行は太公望さんが三人を指導したの。
「お主らの魔眼は感情によって引き出される事は分かった。何らかの感情がお主らの魂にある引き出しを開く事で奇跡の力が解放されるのだろう」
本来魔眼は意思でコントロール出来る。
力のチャンネルを変えるようなもの。
例えば沙悟浄なんて霊気や妖気、神気を使い分けしているの。
だから意識して魔眼覚醒させる事には早くから覚醒して術に応用して使えるようだったけれど、持続力は無かったの。逆に八怪と鉄扇ちゃんは魔眼覚醒には時間かかったけれど八怪は全身に帯びさせた状態での持続力が長く、鉄扇ちゃんは拳や武器といった部位に集中させて破壊力を高める事に特化していた。
短期で魔眼を習得しなきゃいけない現状、得意分野を伸ばす事を最優先にした。
だから鉄扇ちゃんは今、魔眼の力を出したり消したりして瞬発的に爆発的な力を解放させて戦っているの。しかもこの金色の魔眼は九曲黄河陣の中でも力を失う事なく発動出来るみたいなのよ。
これが私達の覇王討伐大作戦よ!
「私が私に出来る事をするんだぁー!」
鉄扇ちゃんの振り払う芭蕉扇、そして回し蹴りを繰り出すけれど覇王は剣を盾に受け止める。
「その程度か?その力は?」
「まだまだよ!」
それにしても覇王は何て化け物なの?
金色の力で爆発的に強化した鉄扇ちゃんの攻撃を生身で受け止めるなんて・・・
覇王は鍛え抜かれた肉体と戦場で磨いた実戦の剣術だけで対抗してる。
蛇気を持たずして生身で魔眼モードの鉄扇ちゃんと戦っているのだから。
すると覇王の蹴りが鉄扇ちゃんの腹部に直撃して転ばし、飛び上がり落下しながら剣を突き刺す。
「ぬっ?」
そこにナタクが横一閃で覇王に斬り掛かる。
覇王は咄嗟に剣で受け流すと鉄扇ちゃんへの攻撃を止め、距離を取るため瞬時に後方に移動する。
「ハァハァハァ」
けれどナタクも限界に近かった。
神気が籠められない分、攻撃に神気や雷を籠められないし傷付いた身体を治癒再生出来ないのは覇王と条件は同じ。体力は限界で息を切らせながらも隙を見て攻撃したの。
鉄扇ちゃんは打たれた腹部を押さえながら立ち上がると構え直す。
「私だけ反則ぽく心引けていたけれど、あの覇王は遠慮しなくて良いわね」
「遠慮?馬鹿な事を言ってると斬られるぞ?」
「分かってるわ!」
二人は力を奪われた覇王を前にして、その凄まじい覇気に押し潰されそうになる。
「そろそろ私も見せ時ね。キメさせて貰う!」
鉄扇ちゃんは魔眼を芭蕉扇に集中させると芭蕉扇が鉄扇ちゃんの手の甲に収まり紋様が浮き出る。
それは芭蕉扇の力を拳に乗せたの。
籠めれた力から鉄扇ちゃんを中心に足下が揺れ始める。
これでも結界は壊れない・・・わよね?
その闘気を肌身に感じた覇王は剣を前方に構えて受けて立つ姿勢だった。
「今度は何を見せてくれる?お前達の全力を見せて見ろ!この俺を打ち砕けるか楽しみだ!」
覇王はこの戦いを楽しんでいた。
「その口、直ぐにでも閉じさせてやるわ!」
鉄扇が踏み込むと同時に覇王の間合いに飛び込んでいた。
そして、
「芭蕉闘技・八宝手!」
その攻撃は武器を持たない無闘技。
鉄扇ちゃんの繰り出した手刀を剣で受け止めた覇王だったが、
「!?」
覇王の剣が粉々に砕け散ったの。
それは鉄扇ちゃんの攻撃の前にナタクの攻撃を受け止めていた事で既に小さな亀裂が入り、しかも蛇気を吸い上げて威力を増す剣がこの結界の中ではその力を存分に発揮出来なかった事が重なった。そこに魔眼の力を集約させた一撃を受けたのだから粉々になってもおかしくはない。
「これで終わりよ!」
鉄扇ちゃんの追撃の拳が覇王の身体に直撃する。
「残念だったな?女」
「!?」
完全に勝利の流れだった。
にも関わらず覇王は勝利宣言したの。
鉄扇ちゃんの拳を覇王は片腕で受け止めていた。
その手は焦げるけれど、強く握りしめて
「ボギィ」
鈍い音とともに握力で潰したの。
そして手離すと同時に鉄扇ちゃんは拳に力が入らなくなったところを、裏拳で殴り飛ばされた。
「アギャ!」
鉄扇ちゃんは咄嗟に受け止めた腕が外れたのが分かった。
そしてそのまま弾き飛ばされたの。
転げるように倒れる鉄扇ちゃんに私は駆け寄る。
「鉄扇ちゃーん!」
抱き起こすと、その瞳の魔眼の力が消えて元の瞳に戻り急激に力を失っていく。
「クッ、万事休すか」
ナタクの言葉に私も愕然とする。
まさか私達の敗北?
しかし本当の絶望はこれからだったの。
「どうやらネタ切れのようだな。ならばこの忌々しい場所から出させて貰うぞ」
覇王は腕を天に翳すと、その手に突如閃光が放たれて新たな剣が出現したの。
その剣はこの結界の中でも力を失われずに神々しい力を放っていた。
「フン!」
覇王はその剣を手にすると同時に振り下ろす。
「!!」
私達は愕然とする。
私達の目の前から空間が裂けて脱出不可能なこの九曲黄河陣が硝子が砕けるように割れて消え去っていく。しかも、まさかたったの一撃で?
何なの?あの剣は?
あの剣は龍神族が守り継いで来た宝具。
天界の神々が恐れ、万物を支配する真王のみ持つことが許されると言われているの。
光と闇を斬り裂くその剣の名は、聖魔神剣と呼ばれた。
そんなこんな。
次回予告
再び外に解放された覇王。
しかもその手に握られた剣は覇王をさらに脅威にさせてしまった。




