ナタクと覇王激突!法子の九曲黄河陣!
覇王対策は準備していた。
しかしそれを発動するのは命懸けだった。
私は法子
覇王を相手に私とナタク、鉄扇ちゃんが戦っているの。
私に化けた黄巾力士達を巧みに使い覇王に攻撃を仕掛けている間、ナタクは今一度「超神速」の抜刀で覇王に対抗しようと気を練る。
確かにナタクの一撃必殺の抜刀技は回避不可能。
しかし覇王に二度も同じ攻撃が通じるの?
超神速の攻撃は単純に瞬発力と加速。
一直線に突進して斬る。
単純かつ確実で最大限に敵を葬る攻撃なのだけど、単純だからこそ対策も考えられると思う。
この攻撃は全身全霊の一撃必殺奥義。
だから二度目はないの。
それはつまり向かって来るナタクの攻撃を受けるか躱すかすればそれで終わりなの。
まぁ〜口で言うより簡単じゃないわよ?
けれど覇王なら、或いは・・・
躱す事なく受けきろうとするはず!
「もう良いだろう」
「!!」
覇王はナタクの準備が終えた事を察した途端、その手の剣を振り払ったの。
爆風と斬撃が私の四体の分身達に直撃して粉砕した。
あ〜!!
粉々になる私の姿を見て私は青褪める。
砕け散る私が私を見て「後、頼むわ」って顔して託していくの。
自分と同じ姿をした人形が斬られる姿なんて夢見悪いったらありゃしないわ。
けれど私の尊い犠牲のお陰でナタクは攻撃の準備が終えた事を目で訴えたの。
すると覇王もまた待っていたかのようにナタクに合わせて剣を鞘に収める?
「まさか覇王も抜刀で対抗するつもりなの?」
確かにこの勝敗は早い者勝ちだからって。
「法子!直ぐに動けるようにしなさい」
「わ、分かってるわ!鉄扇ちゃん」
一瞬の対決の後、私と鉄扇ちゃんは仕掛けなければならない。
けれどもしナタクが敗けたら私達も危険な場所に足を踏み込んでただじゃ済まないの。
でも今はナタクを信じるしかないわ。
緊張が走る。
けれど身体は固まってはいない。
私は本番に強いんだから!
直後、ナタクの闘気が爆発的に解放された。
「超神速・抜刀!」
それはもう私の眼からは確認出来ない次元の違う戦い。
音も光も超えた神速からの抜刀。
鞘から抜かれた刀は覇王の首に向けて斬り放たれていた。
覇王は微動だに動かずにいる。
動かずにいたと言うのは違うかもしれない。
今のナタクにとっては止まって見えているの。
抜かれた刀は覇王の首を捉えたその時、
「!!」
ナタクの全身に悪寒が走る。
そしてナタクは察した。
覇王は止まって見えているわけではない。
自分を捉え、タイミングを見ていただけだと。
そして遅れてその剣が鞘から抜かれた。
ナタクの抜刀と覇王の抜刀が衝突する!
衝突した互いの剣の中心から閃光が爆発的に膨張して辺り一帯をも吹き飛ばす。
「なぁ???」
すると私の前に鉄扇ちゃんが庇うように防御壁を作り守ってくれたの。私も我に返り、吹き飛ばされないように鉄扇ちゃんの防御壁に霊気を注入して厚みを重ねてサポートする。
「ぐぬぬぬ」
ナタクは受け止められた抜刀が押し返されている事に気付く。
後から抜いた覇王の抜刀の方が威力が上回っていたからなの。
「どうやら拍子抜けのようだ。俺に一度見せた技が通じると思っていたのか?」
覇王はナタクに興味が失い、そして更に力を籠めて斬り裂き目の前のナタクを両断した。
「ナタク!?」
ナタクの身体は覇王の振り払われた剣で両断されて、消えていく。
まるで陽炎のように?
「!!」
覇王の腕に感じる手応えが消えていた。
確かに衝突した時に受けた感触は本物だったはず。
にも関わらず、本体を斬った感触がない?
「見事だ!ナタクー!」
覇王は殺気に気付いた時には手遅れだった。
覇王の下方から遅れてナタクが抜刀し振り上げていたの。
「超神速抜刀・陽炎返し」
その軌道は初手で超神速で迫り抜刀の一撃を繰り出すが、コレは囮。
本当の狙いはその後!
覇王が抜刀したところに逆方向から第二の刃が繰り出される。
一度抜かれた抜刀を返して軌道を変えての斬刀は確実に覇王の意表をついた。
しかしこの技の凄い所は初手の斬撃が本物に近い事。
近過ぎるがために覇王も本体と偽物が区別出来なかったくらいに。
その初手の正体は闘気!
意思の籠められた闘気は本物と見誤るほど区別が出来ない力を生み出す事があるの。
もし最初から二段式の攻撃だと知っていたとしても、初手を見逃したとしたら、その闘気に身体が引っ張られ本能的に身体が警戒してしまうだろうし、同じく斬られたような衝撃を全身に受けて身動き出来なくなる。これこそナタクが覇王対策のために私達に隠れて太公望さんを巻き込み修行をし身につけた奥義。
実戦では初公開だけど上手くいったわ!
覇王は下方から上方にかけてナタクの抜刀に斬られ、血が噴き出した。
「やったわ!さすがナタク!」
しかし立ち籠める蛇気が覇王の斬られた傷を徐々に塞ぎ始める。
「こら!法子!」
「あっ!そうだったわ!」
危なく私の仕事を忘れていたわ。
私は飛び出して手にした宝貝に霊気を籠めて発動させる。
これが究極の結界陣!
「九曲黄河陣!」
私は覇王の足下に投げつけると、その結界は魔法陣のように光の文字が描かれながら広がっていき、その効果を私達の前で示したの。
私は太公望さんに学んだ通りに術を発動させ見事に成功させた。
やっぱり私ってば出来る子なのよ!
「グゥ、ぐぬぬ!?」
覇王は斬られた身体の再生が急に止まり、血だらけの状態で息を切らせていた。
「ハァハァ、これは?」
覇王も自分の置かれた状況に気付く。
蛇気が完成に失われ力が入らないことに。
九曲黄河陣の結解の中では神も仙人も妖怪、蛇神までもその力を失い人並みになってしまうの。
こうなれば覇王とて恐くないわ!
恐くはないと思いたい。
けど、この九曲黄河陣の中にいる私達とて状況は同じ。
つまり霊的力が無効化した状態での肉弾戦で今の覇王を討たないといけないの。
「・・・・・・」
覇王は自らに起きた状況に笑みを見せる。
「なるほど。お前達の小細工はこれが目的か?俺の蛇気を奪えば勝てると思われていたとはな」
すると覇王は拳に覇気を籠める。
覇気や闘気は己の発気。
戦う意思の強さが力になる気力。
つまり霊気や神気、妖気や蛇気とは別。
ここから先は勝つ意思の強さで勝敗が決まるのよ。
覇王は自らの筋力を締め上げて傷を塞ぐと、手に付いた自らの血を舐めてこの戦いを楽しもうとしていたの。
「かかってこい!この覇王・那我羅を倒したくば命を賭けよ!限界を超えて俺に抗え!」
今、私達の最終決戦はこれからが正念場なの。
そんなこんな。
次回予告
九曲黄河陣は完成した。
しかし覇王はまだ倒したわけではない。
まだまだ戦いは終わらない。




