私達の本当の戦いはこれからよ!覇王討伐決戦!
覇王討伐に向かった法子の前に現れたのは?
その目的の覇王だった。
私は法子
蛇神との最終戦争。
倒すは覇王・那我羅!
その為には蛇神の要塞にいるであろう玉座にまで辿り着かなくてはならなかった。
な〜ん〜だ〜け〜ど〜
嘘よ!嘘!
まだ要塞にも入ってもいないのに覇王自らが私達の目の前に待ち構えていたの。
しかも護衛もなく単独で?
それはそれで面倒なく助かるのだけど、心の準備が出来てないわよ〜!
「ふふふ。待っていたぞからお前達」
那我羅は私達が来る事を見通していたようなの。
それで先回りしたようだけど、何故よ?
「親玉さんが自ら出向いて来てくれたのは助かるわ!けど何のつもりかしら?自信の表れ?」
覇王を相手に私は強気に質問する。
「お前を泳がせていれば、いずれ俺に見合う好敵手が釣れると思っていた。そしてこの戦いが地上最後になるようなのでな?この覇王自ら手を下してやりに来た」
「ムカッ!私は釣り糸かい!」
那我羅は私達を物色すると、ナタクに目が行く。
「一度斬られて敗北したナタクが俺の相手か?」
するとナタクが私の前に出て答えたの。
「フッ。それはお互い様だ。お前に斬られた後、その太刀筋に見覚えがあってずっと思い出していた。お前はかつて俺が天界で討伐し討ち逃した蛇神だな?」
「あの時の事を思い出したか?ならばお互い、次が本当の決着にするとしよう」
覇王・那我羅とナタクの因縁。
それは過去、天界で起きた事件の一つに過ぎなかった。
その頃、天界では地上から妖怪を引き連れて来た魔王の軍勢との戦争が繰り広げられていたの。
それって孫悟空の事よね?
で、同時期に蛇神が天界に現れて討伐要請があったの。
そこで蛇神討伐に出向いたのがまだ若いナタクだった。
討伐対象の蛇神は元は天界の下級武神で、蛇神の血を浴びた事で呪われ蛇神化したとされていた。
その蛇神が今の覇王・那我羅らしいの。
しかしその段階では既に上級神であったナタクの方が完全に力が上。
那我羅の全身を抜刀で斬り捨てると、那我羅は天界から瀕死の状態で落下して終わったかに思われていた。しかし那我羅は地上に落ちて生き延びたの。
そこに現れたのが真の覇王を探し求めていた白蛇の巫女だった。
白蛇の巫女はその傷付いた那我羅に覇王としての資質を見出して連れ帰ると、その魂に覇王に与えられるべき聖杯の血を与え、真の覇王として復活させたの。
それが今の覇王・那我羅の誕生秘話。
だからこそ那我羅とナタクには決着を付ける必要と因縁があったの。
「今度は俺がお前を斬る」
ナタクは鞘から剣を抜き腰を下げ構える。
「相手になろう。この俺を楽しませてみよ!」
するとナタクの姿がボヤケて残像が消える。
えっ?
既にナタクは飛び出していた。
目にも留まらない速さで覇王に向かって斬り掛かる。
その斬撃を覇王は片腕に持つ剣で全て弾き返していた。
私の目から見ても分かる。
力の差は歴然だわ。
しかしそれはナタクも理解していた。
それでも敗北は許されない。
この力の差を埋める為にナタクは速度のみを特化させた戦い方で挑んでいたの。
「!!」
その戦い方に覇王も感じ始めていた。
ナタクの動きが更に加速し、その打ち込む斬撃の重さが強く激しくなっている事に。
「ほぉ?やはり成長したか?面白い!」
覇王はナタクの斬撃を受けながら攻撃に転じる。
しかしナタクは覇王の剣を紙一重で躱したの。
確かに力量は桁違い。
それでも当たらなければ好機はある。
「私達も直ぐに動けるようにしておくわよ」
鉄扇ちゃんは気配を消しつつ力を蓄えていた。
意識を高めて集中力を研ぎ澄ませている。
流石ね・・・でも分かってるわ。
私も同じく気を集中させる。
覇王が私達の前に現れた事は予想外だったけれど、それでもナタクが先陣切って戦うのは計画通り。
ナタクがこのまま倒してくれたら万々歳なんだけど、数手先の先まで考えて戦わないと楽して勝てる相手ではないの分かってるから。
あの、覇王・那我羅は!
けれどナタクも覇王を倒す為の秘策があった。
しかしそれには溜めが必要なの。
しかし今、攻撃の手を止めれば一瞬でかたがつく。
「やむを得ん」
ナタクは覇王に向かって一直線に特攻を仕掛ける。
「馬鹿目!破れかぶれとは闘神ナタクの名が呆れる!」
覇王は向かって来るナタクに向かい、その剣を振り下ろした。
手応えはあった。
ナタクは肩から胸にかけて血を噴き出しながら、崩れるように落下して自分の血溜まりの上に倒れる。
「つまらぬ。過剰評価していたようだな」
覇王は剣を倒れているナタクの後頭部に向けて振り下ろそうとした時、
「芭蕉扇・鵺の奇声雷」
鉄扇ちゃんが芭蕉扇に雷を籠めて振り払ったの。
「雑魚には興味ない」
しかし雷は覇王の身体から纏われる防御壁に阻まれ軌道を変えて捻じ曲げられる。
しかし、そのために私がいます!
「捻じ曲げられたら元に戻す!」
私は自分の神具・如意神向を地面に突き刺したの。
すると鉄扇ちゃんの散々した雷が軌道を変えて覇王に向かって戻り直撃したの。
「なぁに!?」
それには覇王も驚きを隠せなかった。
不意を突かれたのもあるけど、覇王を覆う防御壁を擦り抜け、直接覇王の身に直撃したのだから。
「当たると思えば当たるものよ!」
私の持つ標識の形をした如意神向は軌道を変えたり、その動きを止めたりする万能武器なのよ。
しかし軌道を変える事は理解出来たとしても、覇王が纏う防御壁を擦り抜ける理屈は理解出来ない。
覇王はこの力が私が原因だと気付き睨みつけると、今度はニヤリと笑う。
「理を捻じ曲げる能力か?もしやお前が俺が探し求めていた・・・」
すると覇王が雷を振り払い、今度は私に向かって直線的に近付いて来る。
「えっ?えっ?ちょっち待った〜」
慌てふためく私だったけれど、そのタイミングで凄まじい闘気が別の場所から解放されたの。
「!!」
その闘気に覇王も感じ振り返った先には、
「お前を討伐する。覇王!」
ナタクが抜刀の構えで叫んだの。
そう。全て私達の計算通り!
ナタクの必殺技の為の時間稼ぎ。
それが私と鉄扇ちゃんの仕事。
だから後は頼むわよ!
「ナタク、ブチかましてぇー!」
私の言葉を受けたナタクは少し嫌な顔をする。
「超神速・抜刀!」
それは始祖のエキドナを斬った超スピードの抜刀。
気付いた時には覇王は全身を斬られていた。
「ぬっ!?」
すると那我羅の身体から遅れて血が噴き出し、剣を地面に突き刺して堪えたの。
ナタクは今の抜刀で仕留めきれなかった事を手応えで感じ取る。
「くっ、まだ踏み込みが足りなかったか」
それは致命傷には足りなかった事を意味していた。
ナタクが先に斬られたのは那我羅の注意を逸して抜刀の闘気を溜める隙を作る為だった。
しかしその傷が僅かにナタクの抜刀を弱めたの。
「どうやらまだお前達は俺を楽しませてくれそうだな?ふふふふはははははは!」
那我羅は自らの血を手に取り舐めると、その傷付いた身体が再生していく。
「もっと俺を楽しませてみせよ!お前ら纏めてかかって来るが良い!」
ば、馬鹿にしくさって〜!
けど、はい!
そのお言葉に甘えさせて貰います。
「鉄扇ちゃん!行ける?」
「当然よ!河童ちゃんが戻って来るまで絶対に死んでたまるものかぁ!」
覚悟は出来ている。
けど、その私の覚悟は皆が生きて戻るために戦う覚悟なのよ!
そんなの甘いって皆言うけど、私はこの戦いを早く終わらせるために、
「あんたを絶対に倒してやるんだからね。
私達の本当の戦いはこれからよ!」
ナタクは自分の身に起きてる事に驚く。
私の決意の言葉が消耗していた身体を奮い立たせたの。
「不思議だ。法子の言葉が俺に力を与えたのか?」
言霊の力にも等しい。
先程の抜刀に全ての力を籠めたはずなのに、力が漲ってくる。
火事場のクソ力のように。
「この俺も限界を超えてやる」
そうよ!
待っているなんて私らしくないわ!
私達が覇王を倒して決着付けて置いてあげる!
皆が戻って来た時にはチヤホヤしなさいよ?
私の、私達の戦いが始まる!
そんなこんな。
次回予告
覇王・那我羅を相手に法子、ナタク、鉄扇が奥の手を放つ!
最強無比の覇王を倒す事は出来るのか?




