阿修羅に託された未来!
光と闇の世界
ついに阿修羅の戦いに決着か?
僕は阿修羅
光と闇のリングをウルスラグナに奪われそうになった直後、一度は敗れ、瀕死状態からの復活したミスラが金色の魔眼の力を放ち飛び出して来たのだ。
「ソード・サン!」
炎上する掌から太陽神の加護の剣が出現しウルスラグナに斬りかかる。
「オマエの欠片は奪ったはず?まぁ構わん。今度こそ確実に葬り去ってやろう!」
ウルスラグナは手にした雷を放つ金剛杵で受け止めると、ミスラに向かって雷の雨を降らした。その戦いを見ていた僕はアータルに抱えられていたまま、ミスラに起きた事を聞いていた。
「ミスラにはワタシ達ヤザタ全員の欠片を託した。アイツが最後の希望だ!」
「欠片を託した?」
ヤザタ達にはアフラ・マズラによって救世主の魂の欠片を分け与えられていた。
本来ならこの中より三代目の救世主が現れるはずだった。
しかしウルスラグナは何者かに身体を奪われ、アナーヒターもズルワーンの神殿に入った後から消息不明で気配が途絶えたまま。もしかしたら何者かに襲われたのかと思われていた。
そしてアータルとミスラもまた致命傷を負い、動けなくなっていた。
そんな時、神殿の外から残るヤザタのアープ、スラオシャ、ティシュトリヤ、ハオマ、フワル・フシャエータ、ラシュヌ達が集まっていたのだ。
彼等はこの世界の終わりに何も出来ない事を口惜しく思っていた。
ズルワーン神殿は既に光と闇の世界から消えてしまい、駆け付ける事も出来なかったから。
その時、ミスラと強く魂が繋がっている従神ラシュヌが皆に助力を求めた。
「皆さん聞いてください!」
その助力とは分けられた救世主の欠片を集め、自分を通してズルワーン神殿の中にいるミスラに託す案であった。残るヤザタ達はその案を快く承諾した。
ミスラは仲間達から特別な神望があった。
ヤザタ達のリーダーであり、アフラ・マズラに七大天使同様の魂の力を分け与えられた存在。
ヤザタ達は掌を重ね合い全員の欠片の力をラシュヌに移すと、欠片は塊と化した。
「ミスラ様!後はお願い致します!」
ラシュヌは己の魂を空間転移に使い、繋がっているミスラに向かってヤザタ全員の塊をズルワーン神殿へと飛ばしたのだ。
「!!」
突如、力が溢れ上がり消耗していた体力と傷付いた身体が回復していくミスラは、残された皆の意思を受け取り立ち上がる。そして傷付いて倒れていたアータルを目覚めさせたのだ。
「アータル!まだ戦えるか?」
「当然だ!私の正義は折れてはいない」
そして再び僕達のいる戦場へと現れたのだ。
アータルは僕の体力を回復させながら伝えた。
「あのウルスラグナは自身の欠片の他に先の戦いでワタシとミスラ、それにアジダ・ハーカとアエーシュマの欠片をも持って行きやがった。だから今、奴と渡り合えるのは皆の欠片を受け取ったミスラとオマエだけなんだ!阿修羅」
「分かっている。僕はまだ戦える」
救世主の力を持ったミスラの力は驚異的に膨れ上がり、ウルスラグナと互角以上の戦いを繰り広げる。
「このぉ!死に損ないが調子に乗るなぁー!」
「我が主君アフラ・マズラ様のリングを返せぇー」
突き出した太陽の剣がウルスラグナの腕を掠め、手にしていた光のリングを手離した。
「しまった!」
落下していくリングを僕は飛び出してキャッチした。
「コレがアフラ・マズラの意思が籠められたリング?ズルワーン神殿の真の宝なのか?」
ウルスラグナは、
「そのリングを返せぇー!」
「此処から先は通さん!」
奪い返そうとするウルスラグナをミスラが道を塞ぎ邪魔をする。
しかあいウルスラグナとミスラの全身が揺さぶられるように震え出して動けなくなったのだ。
互いに理由は異なった。
「もう戻るタイムリミットか」
ウルスラグナの目の前に僕が来た時の鏡とは別の鏡が出現する。
「仕方あるまい。この世界に来た目的は達成している。これ以上欲を出して戻れなくなる事はそれこそ先の目的を果たせなくなるからな」
そしてウルスラグナは現れた時の鏡の中に飛び込むと、鏡は僕達の前から消え去った。
同時にこの世界が音を立てて歪み始める?
本来、この世界は光のアフラ・マズラと闇のアンラ・マンユの意思で創造された世界。
ウルスラグナが闇のリングを持ってこの世界から消えた事で世界を維持出来なくなったのだ。
「ハァハァ・・・」
そしてミスラの異変は力の負荷が原因。
過去の救世主達が力に耐えられなかったように消滅しようとしていたのだ。
駆け付ける僕とアータルはミスラを抱き抱えた。
「どうやらボクは真の救世主にはなれなかったようだ」
救世主の持つ金色の力が消えたミスラは残された僕に告げる。
「この世界はもう消える。オマエはこの光のリングを持って元いた世界へ帰るんだ!阿修羅」
「リングでこの世界は救えないのか?」
「それは無理だ。我々のいる世界は光と闇が一体となった世界。そのどちらが欠けたとしても維持し残す事は出来ないのだ」
「それでは僕は何のために・・・」
絶望する僕に弱りきったミスラは意思を籠めて答えた。
「その意味を残すためにお前はお前の世界を救うのだ!そして恐らくはそれがアフラ・マズラ様のお考えであろう」
既にこの神殿の外の世界は消えていき無に帰っていた。
この「時の神殿」だけが時空のズレで唯一残されているに過ぎない。
それももう僅かな時間。
すると僕の目の前に僕が通って来た時の鏡が出現したのだ。
そしてその先から声が聞こえる。
「阿修羅ー!戻って来るのだ!もう時間がない!戻れなくなるぞぉー!」
その声は元のいた世界から僕の鏡を守っている太白金星仙人の声だと分かった。
早く戻らないと僕もこの世界と運命をともにしてしまう。
「ワタシはもう助からない。だからそのアフラ・マズラ様のリングをオマエに託す」
ミスラは僕の手を強く握りしめる。
僕はその思いを受け止め頷く。
「オマエの世界はオマエが守れよ?」
それはアータルだった。
「ワタシは友の最期を見届ける。ここでお別れだ」
「アータル・・・」
「そんな顔をするな?最初は疑わしく思っていたが、ワタシはオマエに真の正義を見た。だから信じる!オマエはワタシ達光の使徒の正義を未来へと繋いでくれ!」
ミスラとアータルは託すように僕の手を握りしめる。
僕には法子を守る以外に生きる意味はないと思っていた。
しかし託されたのだ未来を守るための意思を。
そしてそれは僕の胸を熱くさせた。
「僕は二度と負けない」
その言葉に二人は真っ直ぐな瞳で頷いた。
そして僕は鏡の中へと飛び込んだのだ。
崩壊していくズルワーンの神殿に残されたアータルとミスラはもう一つ僕に残していた。
僕の手には二人の神炎が籠められていたのだ。
そして僕は帰っていく。
しかしそこは新たな戦場。
僕の戦場!
決して敗北が許されない未来を守る戦い。
法子を守るための戦いへ!
僕の戦いは終わらない。
-ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
阿修羅が時の鏡へと消えた後、
「本当に残って良かったのか?アータル。オマエも阿修羅の世界へ行っても良かったのだぞ?」
「馬鹿言うな!それにワタシが守る世界は此処だ。それに神友であるオマエを放って行く事はワタシの正義が許さなかっただけだ」
「アータル・・・」
崩壊していくズルワーン神殿。
もうこの世界には二人しか残ってはいなかった。
はずだった?
そこに二人向かって足音が近付いて来たのだ。
「!!」
誰だ?まだこの世界に生存者が?
すると二人の目の前に現れたのはまさかの?
「アナーヒター?生きていたのか?」
目の前に現れたのは間違いなくアナーヒターだった。
しかしアナーヒターの口から語られたのは、
「残念ですが、この世界のアナーヒターさんはもういません。私はあのウルスラグナの者と同じくアナーヒターさんの身体を譲り受けたのです」
「何だと!?」
するとアータルとミスラにアナーヒターが殺された時の映像が脳に直接入って来たのだ。
瀕死状態のアナーヒターの前に別の時の鏡が出現して、何者かが姿を現して選択を求めた。
「貴女の身体を私にお譲りください。私達の世界を救うために」
その者は間違いなく阿修羅やウルスラグナの中の者と同じ世界から現れたに違いないとアナーヒターは察した。しかし信じられるのか?
「私は貴女であり、貴女とは別の存在。その代わり私は貴女の私が出来る範囲でですが願いを叶えさせていただきます」
アナーヒターは頷くと、最後の声を届けるように願った。
阿修羅とウルスラグナとの戦いの最中、阿修羅のもとへと!
その声は阿修羅は再び立ち上がらせた。
そして阿修羅本人も気付いてはいなかったが、アナーヒターは自分の中にもあった救世の欠片を阿修羅に移したのだ。その事で阿修羅に眠っていた金色の魔眼が覚醒したのである。
そしてアナーヒターは息を引き取る前に扉から現れた者に自らの身体を託したのだ。
「オマエは何者なのだ?何故、ワタシ達の前に現れた?あのウルスラグナの中にいる者と仲間なのか?」
するとアナーヒターの姿をした者はアータルとミスラに自身の記憶を流す。
「そ、そんな馬鹿な!!」
驚愕する二人に改めて選択を迫ったのだ。
「わ、分かった。オマエを信じよう」
ミスラは答えた。
「しかしそれはオマエが!」
「気にするな?アータルよ。それにこのまま朽ち果てる命であるのなら、ワタシはアフラ・マズラ様が夢見た未来を見てみたい。例え私の存在は消えたとしても、私の魂は未来を繋げられる礎になれるのだからな。だからオマエも・・・」
「分かった。アナーヒターも!ミスラの思いも!ワタシの正義にかけて守り抜くと誓おう!」
するとミスラの身体は光となってアナーヒターの中へと消えていき、その魂は融合した。
ミスラの選択は救世主の力をアナーヒターに譲る事だった。
すると融合したアナーヒターの肉体が赤子へと変わっていったのだ。
そして残されたアータルに与えられた役目は救世主の赤子を守り抜く事だった。
「この鏡の中に入れば良いのだな?」
アータルは時の鏡に飛び込んだのだ。
だが、しかし!
この状況に仇なる者が残っていたのだ。
「オレはぁーー!死ななぃー!新たな世界で支配者になってやるぞぉー!その為にお前らは邪魔だぁーー!」
神殿が崩壊し消滅する寸前、闇のアジダ・ハーカが鏡に飛び込んで来たのだ。
「馬鹿な!?」
アータルは赤子を抱きかかえたままでは戦えなかった。
そこに追い付いて来たアジダ・ハーカがこの時空の空間で破壊波を放ったのだ!
「!!」
閃光と同時に時空の嵐が起こり、この後どうなったかは誰にも分からなかった。
そう。彼らの戦いも始まったばかり。
次回予告
再び物語は法子へと。
覇王・那我羅との最終決戦が繰り広げられる。
ついに長かった蛇神編の戦いが終局戦へ
余談・・・
この後、アータルとアジダハーカはは転生記シリーズ「神を導きし救世主」にて登場しています。




