聖戦前夜?ズルワーンの神殿!
阿修羅が時の鏡で辿り着いた場所は、
光と闇の神々の戦場だった。
僕は阿修羅
僕は時の鏡で光と闇の闘争の中に迷い込んでしまった。
そこで僕の出来る事?やるべき事を探さないといけない。
きっとこの世界で僕のするべきナニカがあるはずなんだ。
それが法子のためになると信じて!
僕は手錠も外され拘束こそされてはいないが、アータルとミスラ、そしてアナーヒターが付きっきりで同行していた。
「ねぇ?阿修羅ぁ〜?」
アナーヒターは甘えたような口調で僕に近づくと、
「貴方は何が出来るの?アータルとの喧嘩見てたけど、やっぱ神炎なのかな?」
「う、うん」
アナーヒターは本当に法子に似ていた。
口調も声も、容姿まで?
コレにも何か意味があるのだろうか?
そこにアータルが文句を言う。
「アナーヒターよ?阿修羅に御執心だな?」
「妬いてるのかい?アータル?」
「誰が妬いてるんだよ!ミスラ!私はただ部外者を簡単に信じられないだけだ!寝首を襲われたら嫌だからな。もう悪神に仲間を奪われたくないんだ!」
アータルは軍を率いていた。
だから仲間を数多く失い、それは自分の未熟さが招いたと思っていた。
だから慎重になっていた。
「で?阿修羅、君は我々の戦いに参戦してくれるのかい?それとも?」
僕は悪神との戦争に手を貸すかどうかを聞かれ暫く回答を悩む。
ここで時間を費やしていて良いのか?
僕がすべき事がまだ分からないと言うのに。
しかしこの世界に来たことに意味があるのであれば参戦する事で何か分かるかもしれない。
「僕は・・・」
「なら決定ね?阿修羅は私達の味方よ」
「・・・・・・」
僕が答える前にアナーヒターが答えた。
彼女は清浄の女神。
純粋無垢に我が道を行く。
そんな性格が法子に似ているようだ。
だからかもしれない。
僕が彼女の言葉に逆らえないのは。
アナーヒターは僕に光の神殿について案内してくれた。
光り輝く神殿は壁から通路、柱から天井まで眩しいくらいに輝いていた。
そして空高くには見上げて大陸並みに巨大な時を刻む浮遊物体が見えた。
「アレは?」
「あ〜アレはズルワーン様の時を刻む世界時計よ!」
世界時計は光の世界と闇の世界の中心にあって、何処からでも見上げさえすれば見えると言う。
「確かに世界中から見えそうだよ」
この世界がどれくらいの広さかは分からないけれど、確かに何処からでも見えそうだった。
この世界は光と闇の二つの世界しかないと言う。
しかし唯一ズルワーンの領域のみ光も闇もない。
その中心には城があるのだとか。
ズルワーンとは創造神の名前で、光と闇の最高神を生み出した始祖神なのらしい。
ヤザタ達は来たる決戦の時までに作戦会議を幾度と練り合わせていた。
戦いは相手の殲滅・・・ではないらしい。
光と闇の世界の中心にある時空城にて、ズルワーンの遺産と呼ばれているリングの争奪戦となるらしい。
そのリングを手にした者は、ズルワーンの持つ能力を一つだけ使えるとの事だった。
「どんな能力があるんだい?」
「ズルワーン様は万能無比。世界の理、秩序すら変える力をお持ちだ。つまりどんな願いでも叶うんだよ!」
「手に入れた者が相手の存在を消すように願えば戦いは終わるって事なのか。恐いね」
それはとんでもないアイテムだった。
けれど他に手掛かりはない。
会議が終わった後、僕は自分の部屋を与えられた。
「ふぅ~」
眩しくて落ちつかない部屋だった。
僕はベッドに腰を下ろして横になると、今日あった事を整理する。
僕は光と闇の神々の争う世界に来てしまった。
時の鏡は僕に意味のある場所へ連れて来たに違いない。
なら、この戦いに僕が関わる事で何か分かる事があるのかもしれない。
「!!」
すると僕にテレパシーが送られて来たのだ。
テレパシーの相手はアナーヒターだった。
「えっ?」
「今から?」
「分かった」
僕はアナーヒターに呼ばれ部屋に連れられると、彼女は僕に飲み物を手渡した。
飲み物だけなのだけど、これはお酒?
光る飲料水。
口にしただけで消耗していた身体が養われた。
それどころか力が漲る。
「この飲み物は何?」
「あら?口に合わなかったかしら?なら、はい」
アナーヒターはその飲料に自分の気を注ぐと、味覚と口触りまで変わった。
それに美味しい。
「あら?私の味がした?」
「!!」
覗くように僕の顔を見上げる彼女に不覚にも赤面してしまった。
調子狂う。
そこにアータルとミスラが部屋に入って来た。
「何処まで話した?」
「な〜んにも」
アナーヒターは平然と言い返す。
呆れながらも相変わらずとアータルは変わりに自分達に課せられた作戦を説明した。
アータル、ミスラ、アナーヒターは今回の作戦の要だと言う。
他の仲間の陽動の間にズルワーンの秘宝を手に入れるのだと説明する。
その作戦に僕も加わるように言われた。
「どうして全体会議の時に離さなかったんだい?」
「正直、オマエのような何者かも分からない余所者の新参者を連れて行く事には不満なんだぞ?私だけでなく他の連中も同じく感じてる奴もいる。けどな、アフラ・マズラ様がオマエを連れていくように我々三人に仰るから仕方なく・・・。だから黙って着いて来い!でも変な真似をしたら覚悟しろよ?」
「分かった」
本来なら侵入作戦は彼ら三神に任されていたらしい。
そこに僕も充てられたのだ。
そして侵入作戦を事細かく説明された。
覚えられない・・・
そんな僕の様子に気付いたミスラが、
「大丈夫。僕達と一緒に来て邪魔する闇の悪神の相手をして戦ってくれれば良いから」
「分かった」
するとアナーヒターがテンションを上げて言った。
「もう作戦会議は終わったのよね?だったら私達光の使徒の明日の勝利を願って乾杯しましょうよ」
「やっぱりか~ほどほどにしとけよ」
そして時が迫る中、僕は自分の胸に手を置き、
「必ず戻るから。そして法子は僕が守る」
この戦争を生き抜く事を誓う。
聖戦は十神のアザタが二十億から三十億程度の使徒を引き連れ、他のアザタが誘導している間にアータル、ミスラ、アナーヒターの軍がズルワーンの神殿に先に乗り込む。僕はこの三神と共に神殿に乗り込むチームなのだけれど、話はそう簡単じゃない。
当然、闇の軍も邪魔に入るはず。
そして闇の軍には悪神アンラ・マーユに従うマーユ使徒が同じくズルワーンのリングを手に入れるべく神殿に入り込み交戦となるだろう。
するとアータルが僕の胸に手を置き、
「オマエの力は多少信じてはいる。だから正義の名の下で戦ってくれる事を期待する」
アータルは僕に対してまだ不信感はあるようだが、それは彼が正義に従順で真っ直ぐな性格だからなのかもしれない。
「僕は僕の出来る事をするよ」
そして聖戦を告げる鐘がズルワーン神殿より鳴り響いた。
流されるまま
時は刻まれる。
刻一刻と迫る大戦。
光と闇の伝説の神戦。
その渦中に僕は投げ込まれた。
僕の戦いは終わらない。
次回予告
ついに聖戦は始まってしまった。
阿修羅がこの世界に来た意味は?




