阿修羅漂流世界?光と闇の神戦!?
阿修羅が時の鏡で辿り着いた場所は?
僕は阿修羅
僕は時の鏡で時を越えてやって来た場所は、光の聖都と呼ぶに相応しい世界だった。
天界のようにも見えるけれど、光の空間に浮かぶ神々しく光り輝く神殿等、聞いた事がない。
「此処は何処?」
戸惑う僕の背後から、向けられた敵意を感じた。
「お前は何者だ?この光の聖都に侵入して来たとは命知らずな!正義の名の下にこのアータルがお前を成敗してやろう!覚悟!」
アータルと名乗る少年神は神気を籠めると神炎が噴き出して突進して来た。
敵?それとも?
僕はアータルの炎の拳に対して同じく拳に炎を籠めて迎え打つ。
互いの拳が衝突して炎が拡散する。
「まさか私の正義の拳が止められるなんて!」
アータルは更に神炎を全身に纏い力を増してくる。
その神圧は僕を押し込み始めた。
「つ、強い。それに」
僕は下段から蹴りを繰り出すが、後方に飛び上がり躱したアータルは距離を取る。
違和感を感じた。
「・・・・・・」
かなり強い力を感じる。
「やるな?だがしかし正義は負けない!正義こそ力の根源。正義は無敵!」
今度はアータルが腰の鞘から剣を抜くと、炎を纏う聖剣が出現する。
「我が聖剣の炎の塵としてやろう」
僕に敵意剥き出しのアータルに殺されてあげる気はない。
何故なら法子が僕を待っているのだから。
「ふりかかる火の粉は払わせてもらうよ」
僕は両掌を合わせて気を高める。
「合掌印」
すると炎の掌打と手刀が繰り出される。
両手を合わせた状態での抜刀の手刀。
しかも四手の攻撃。
突っ込んで来たアータルは向かって来る炎の手刀に対して即座に剣で防御し、弾きながら間合いに入り込むと、僕の頭上から聖剣が振り下ろされる。
「終わりだぁー!成敗!」
しかし僕もまた合掌からの抜刀はアータルの首元に放たれていた。
「!!」
直後、のしかかるような神圧が僕とアータルを同時に押し込み身動きを止められたのだ。
な、何者?
攻撃を受けるまで気配を感じなかった。
すると僕達は囲まれている事に初めて気づいた。
しかも囲むのは九人の神々だった。
僕は力を抑えて抵抗しないと両手をあげて敵意がない事を示した。
それから僕とアータルは彼等に連れられて宮殿の中に案内されたのだ。
「君達は何者?」
僕の問いに、
「我々が何者と尋ねる前にオマエの素性の方を先に聞かせて貰いたいな?」
そう答えたのはアータルの神友らしき「ミスラ」と名乗る神だった。
「僕の名は阿修羅。この世界が何処だか分からないまま入り込んでしまった。君達に害を及ぼすつもりはない」
彼等はお互い顔を見合わせる。
アータル
アープ
ウルスナグナ
スラオシヤ
ティシュトリア
ハオマ
フワル・フシャエータ
ミスラ
ラシュヌ
アナーヒター
彼らはアータルと同等の「ヤザタ」と呼ばれる善神であった。
ヤザタとは最高神に従う中級の神々。
中級と言うがその力は僕の知る限り、僕のいた世界の最高神レベルに感じた。
「そのような意味分からない話を信じると思うか?悪神の手先ではないだろうな?」
再び炎を掌に灯すアータルに、
「アータル!先ずは僕の水で頭を冷やすかい?」
「それとも私の慈雨に打たれるかな?」
その二人の神の名はアープとテイムシュトリア。
共に水神のようだ。
「アータルよ。その者の魂からは我々と近い神質を感じる。無闇に攻撃するのはよせ!」
彼は太陽神の力を持つフワル・フシャエータ。
ミスラと呼ばれる同じく太陽神は僕に対して興味を持っていた。
「この者が何者かは分からないが抵抗はしていない。無抵抗の者に手を出すのは正義に反するとは思わないか?もし偽りを言っているのであればラシュヌが見極められるしな。やってくれるか?ラシュヌ」
ミスラは従神のラシュヌに僕の判断を頼んだ。
「ミスラ様。分かりました。僕にお任せを」
するとラシュヌと呼ばれた若い善神は僕に向けて光り輝く天秤を見せると、片方に傾いた。
「嘘はないようです」
「やはりな。彼は悪神ではない」
嘘発見器みたいな道具なのだろうか?
そして先程から僕の声や仕草を見ていたスラオシヤが付け足すように答える。
「彼からは偽りは発していない。今は信じて良いと思います。皆さん」
「スラオシヤとラシュヌが言うのであれば心配ないわね?私はアナーヒターよ?阿修羅」
すると僕の顔を覗き込む女性がいた。
彼女は黄金の冠、マントやアクセサリーを身に着けた女神だった。
残りはハオマとウラスラグマ。
「それで阿修羅は何の目的で私達の世界へ放流していたのか教えて貰えないか?」
ミスラに問われて僕は自分が時の鏡と呼ばれる道具を使い、意味も目的も分からないまま流れて来た事を告げた。目的が有るとすれば、自分の世界を脅かす蛇神を倒す為の力を手に入れるためなのだと。
「なるほど。やはり状況が状況なだけに我ら主神に君の扱いを委ねればならないな」
この世界に何があるのか?
そもそもこの世界は何なのか?
僕は両手を光の手錠で拘束されながら連行されていく。
「・・・・・・」
力任せで破壊出来そうになかった。
連れて行かれる場所は宮殿内。
拝火神殿。
とりあえず状況が分かるまでは無抵抗でいよう。
拝火神殿の中は想像以上に広かった。
広間には数えきれない程の下級神達が集う。
今から何か起ころうとしているのか?
少なからず武器を手にしている事で物騒だと気付く。
そして察した。
「戦争かい?」
僕の問いに答えたのはミスラだった。
「我々善神はこれより悪神との戦に入る」
すると神殿奥の聖火が燃え上がったのだ。
「こ、これは!?」
すると僕は驚愕した。
聖火の先に七つの光と共に神々しい神が出現した。
目が眩むほどの最高神以上の究極神。
しかも七体も!
この僕でさえ怯み言葉を失う。
「あの者達は一体?」
するとアータルが胸を張り答えてくれた。
「あちらにいらっしゃる方々は我らの主神。創造者たる七大天使様方なのだぞ!オマエ知らないとかぬかさないだろうな?」
「えっ?」
知らない表情の僕の胸ぐらを掴んだアータルは嘘だろ〜?みたいな顔で説明してくれた。
「何と無知で無学な者だ!ならこの私がこの世界の始まりから教えてやる!」
世界は始祖、混沌の世界に現れし時の神が産み出したとされている。
その始祖の神の名は時の創造神ズルワーンと言った。
そしてズルワーンは己の分身たる二つの生命を創り出したのだ。
それが生命と命の権化・善神アフラ・マズラ
そして死と闇の権化・悪神アンラ・マンユ
正義と悪の対立する始祖神は親神ズルワーンと同じく自身の分身たる光と闇の神々を創造し生み出していき、ついに相対する光と闇の闘争を始めたのだ。
そして互いに使徒を増やし、そして準備が出来る度に既に数千年近く戦争を繰り返していると。
そしてあの七善神こそ、アフラ・マズラの分身とも言える創造神たる七大天使。
スプンタ・マンユ
ウォフ・マナフ
アシャ・ワヒシュタ
スプンタ・アールマティ
クシャスラ
ハルワタート
アムルタート
彼らを筆頭に今、この時!
悪神アンラ・マンユ率いる闇の軍団との神戦が行われようとしていると言う。
そんな所に僕が現れたのだから警戒されてもおかしくなかったのだけど、それでも信じてくれるには他に理由があった。ミスらは僕を見て問いかける。
「不思議だ。君からは僕達と同じく主神アフラ・マズラ様の光の力を感じる。君は光の使徒なのか?」
「僕はこの世界の住人ではない。それに君達の主神に対して何の繋がりもない」
「確かに我が系列なら数億、数千億の数がいたとしても同族なら分かるはずなのに」
そこにアータルが割り込む。
「やはり悪神が我々を騙すために何か仕掛けているんじゃないのか?偽装したりして?」
「それはスラオシヤとラシュヌが証明してくれたから間違いはあり得ないわよ?」
女神のアナーヒターは僕の顔を見てニコリと笑う。
「!!」
不思議とアナーヒタには法子に似た存在感があった事に一瞬心がドキッとした。
けれど僕は直ぐに首を振り自分がこの世界に来た意味を再認識した。
「僕がこの世界に来たのには意味があるはず。そしてその意味が分からなければ元の世界に帰れないんだ!絶対に見つけだして帰ってやる!」
法子が待っているのだから!
この世界で僕の戦いが始まる。
次回予告
阿修羅は光と闇の戦いに巻き込まれてしまった。
元の世界に戻れるのか?
そしてこの世界に来た意味は?




